今や国民病とも言われ、2011年には患者数が300万人を超えた糖尿病ですが、病気になったら食事制限などで美味しいものが食べられなくなると言われています。でも、それって本当でしょうか?
糖尿病について、あなたはどれくらい知識がありますか?
糖尿病になったら、もう人生お先真っ暗なのでしょうか?
この記事の目次
糖尿病とは?
日本語では「糖尿病」ですが、英語では「Diabetes Mellitus 略してDM」となります。
Diabetesだけでも糖尿病という意味にはなりますが、尿崩症は「Diabetes Insipidus 略してDI」となりますので、区別するためにDMを使用することが多いです。この「Diabetes」はギリシャ語が語源で、”尿が常に出る”という意味です。糖尿病によって多尿になった状態から名付けられたのではないかと言われています。
ちなみに、「Mellitus」はラテン語が語源で、「蜜のように甘い」という意味で「Insipidus」は「透明、風味のない」という意味ですので、病態を的確に表しています。
糖尿病の種類
糖尿病には、インスリンが分泌されなくなるタイプの1型とインンスリンは分泌されるが量と抵抗性が発生するタイプの2型があります。
1型:原因不明の自己免疫疾患
小児期に発症することが多く、遺伝性でも生活習慣でもなく突然発症し原因は不明です。自分自身の免疫反応によって、膵臓ランゲルハンス島β細胞(インスリンを分泌する重要な細胞、以下β細胞)を破壊してしまうことによって引き起こされます。
β細胞が破壊されるとインスリンが分泌されなくなり、糖尿病となります。インスリンを補充する必要がありますので、膵臓移植を行わない限り一生インスリン注射を行う必要があります。
2型:原因が明らかな生活習慣病
成人になってから発症することが多く、以前は成人病と呼ばれていた病気のひとつですが、現在は生活習慣病と名称が変わりました。インスリンの作用が低下することによって発症します。インスリンの作用が低下する原因は、高カロリーの食事、運動不足、肥満、加齢、ストレス、遺伝など多くの要因が複雑に作用していると言われています。
インスリンの作用低下には、インスリン分泌量低下とインスリン抵抗性の2つが原因としてあります。いったん高血糖状態になると、膵臓がダメージを受けて機能低下をおこし、インスリン分泌量が減少します。
同時に、肝臓や筋肉ではインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性を引き起こします。肝臓や筋肉で糖が取り込まれず血中の糖濃度が上昇するため、高血糖がさらなる高血糖を呼び込む悪循環となります。この悪循環を「糖毒性」と呼びます。
糖尿病の治療
糖尿病の治療は、3つの療法を組み合わせて行われます。
1)食事療法
糖尿病においては、血糖をコントロールすることが全てです。血糖さえ正常値にコントロールされていれば何の問題もありません。よって、食事療法が全ての基本となります。
糖尿病を発症する方は、動脈硬化や脂質代謝異常、心筋梗塞や脳血管障害などを重複して発症する可能性が高くなります。これらの病気においても、食事療法は重要です。
2)運動療法
肥満を解消し、筋肉でのインスリンの働きを高め、血液循環をよくします。
3)薬物療法
現在では多くの薬剤が市場にありますので、症状や生活スタイルに合わせた薬剤を選ぶことがポイントとなります。薬剤を使用する際も、食事で血糖がコントロール出来ていることが前提となっていますので、薬剤を使用すれば食事はどうでもいいということにはなりません。軽症であれば飲み薬で対応できますが、重症化するとインスリン注射が必要となります。
食事療法について
今回は食事がメインテーマですので結論から先に言ってしまいます。糖尿病だからといって食べることのできない食品はありません。ただし、アルコール類は原則禁止となります。
アルコールが原則禁止とされる理由
1)酔っぱらうことによる食事・飲酒量の過剰
アルコールを摂取することにより気が大きくなり、過剰に飲酒したり食べ過ぎたりする場合があるため。
2)アルコール自体が高カロリーのため
- 缶ビール(350mL 1本) 約140kcal
- 焼酎1合(25度 180mL) 約260kcal
- ウイスキー/ダブル(40度 60mL) 約130kcal
3)アルコールの食欲増進効果
食前酒という習慣があるように、お酒には胃液の分泌促進作用があるため。
4)インスリンへの影響
インスリンはアルコールによって作用低下を起こしますので、血糖コントロールが悪化します。
5)塩分の過剰
お酒を飲む際には、ついつい味付けのしっかりとした料理を選びがちです。そうすると塩分過剰となり、血圧上昇を招きます。血圧上昇によって腎臓に負担がかかります。
6)アルコール性低血糖
通常、血糖値が下がってくると、肝臓でグリコーゲンを分解するなどして血糖値を正常に保とうとします。しかし、肝臓はアルコールがあるとアルコールの分解を率先して行ってしまうため、血糖が供給されない状態が続いてしまうことがあります。アルコールによって引き起こされる低血糖なので「アルコール性低血糖」と呼び他の低血糖状態と区別します。
以上が飲酒しないほうがよい理由です。
病状が安定していれば、少量の飲酒であれば認められることもありますので、かかりつけ医に相談してみてください。
本当に食べていけない食品はないの?
血糖値を急激に上げる食品の摂取に気を付ければ、食べていけない食品はありません。
食後2時間までに血液に入る糖質の量を指標化したGI値(Glycemic Index)が高い食べ物には注意が必要です。GI値の特に高い食品を以下に示します。
- GI値90以上 パン類、じゃがいも類
- GI値80以上 うどん類、米飯類、ケーキ類、あんこ類
主食のGI値が高いのがわかります。ここから、GI値を意識した低糖質・低炭水化物ダイエットが考案されました。
これらの食品は、食物繊維やビタミン、ミネラルなどと一緒に摂ることによって吸収が穏やかになることが知られています。
実際の食事例
糖尿病患者の場合、性別や身体の大きさによって1,200~2,000kcal/1日に設定します。なぜこの数値かというと、人間が健康を維持するために最低限必要となるのが1,200kcal/1日だからです。また、食事療法では80kcalを1単位として計算します。1,200~2,000kcal/1日を単位で表すと15~25単位となります。また、血糖値を安定させるために、3食決まった時間に食べることが推奨されます。
この設定されたカロリー以内であれば何を食べてもいいという訳ではありません。日本においては、昔から利用されている4群点数法を基本とした食事法が広く採用されています。
1群 | 2郡 |
乳、乳製品、卵 | 魚介、肉、豆・豆製品 |
3郡 | 4群 |
野菜、芋、果物 |
穀類、油脂類、糖類 |
1日20点(1,600kcal)を基本として、身体の大きさや病状によって調節します。栄養バランスのため1群・2群・3群をそれぞれ3点づつ合計9点(720kcal)を優先的に摂取します。4群は調整に使用し、残りとして11点(880kcal)を摂取します。
嗜好品は4群に分類されるため、クリーム・チョコレートなどの油分が多いもの、あんこや清涼飲料水などの糖分が多いものを摂取する場合には、注意が必要になりますが、食べられない訳ではありません。
1日20点(1,600kcal)の例
- 朝食: ごはん1杯(3点)、焼き魚一切れ(1.5点)、サラダ(芋・かぼちゃ類以外の野菜で1.5点分)
- 昼食: おにぎり2個(5点)、ゆで卵1個(1点)
- 夕食: ごはん1杯(3点)、ゆで豚(薄切り5枚で2.5点)、きんぴらごぼう(1点)、味噌汁(わかめ・豆腐・ネギなどで1.5点)
いかがですか?思ったほど厳しい感じはしないでしょう。
まとめ
糖尿病の方を慰める言葉として「一病息災」と言われることがあります。これは「無病息災」に掛けた言葉ですが、糖尿病患者の方は生活習慣をしっかりとコントロールしなければなりません。そうすることによって、腎臓病や高血圧などの合併症になることを予防するのです。ただ、日本の糖尿病患者の半分以上が血糖コントロール目標に達していないと言われています。
日本での死因1位はがん、2位は心疾患、3位は脳血管疾患です。食事管理と適度な運動を心がけていれば、生活習慣が原因となる心臓や脳の血管疾患になる可能性は低くなります。最新の研究では、日本人は欧米人に比べて肥満度が低くても糖尿病になることが分かっています。同じ体格で同じ食事を食べても糖尿病にかかるリスクが2倍以上あるため、海外で生活する場合には特に注意が必要です。
美味しいものを食べる時には、量と栄養バランスに気を付けましょう。もし食べ過ぎてしまっても大丈夫です。1週間単位で、総カロリーと栄養バランスの調整をしましょう。あまり厳密に管理しても、それがストレスとなり病状が悪化する場合もあります。自分の身体を自分でコントロールできるようになれば、健康でいられる時間(健康寿命)が長くなります。せっかく長生きしても、病院食で一生を終えるのは嫌ですよね。
さあ、今から食生活を見直してみましょう。
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