あなたはトイレで自分の排泄物をチェックしていますか?実は、あなたが排泄した尿も便も様々な情報を教えてくれるのです。
便についてはまたの機会にして、今回は尿について詳しくお話ししましょう。
尿とは?
尿には、人体にとって必要のなくなった様々な物質が溶け込んでいます。尿の役割は、その不要な物質を体外に排出することです。
もし尿から人体に必要な成分が検出された場合、それは生命維持に重大な支障が起きている事になります。
そのため、尿を検査することによって重大な異常が起きていないかを調べることができるのです。代表的な尿検査の項目は以下の通りです。
尿検査で測定される項目
血液検査は採血が必要ですが、尿検査はそれがないためにより侵襲性(身体に対する負担)の低い検査です。最も一般的に行われるものなので、数値の読み方を知っておいても損はないと思います。
- ウロビリノーゲン:ビリルビンが腸内細菌の働きで還元されたもので、酸化するとウロビリンとなります。ウロビリンは時間が経った尿の黄色のもとになる物質です。正常範囲内にあることが望ましく、多すぎると肝炎・肝硬変・肝がんなど疑われます。少なすぎると胆石などによる総胆管閉塞が疑われます。
- ビリルビン:古くなったり損傷を受けた赤血球が、脾臓で分解されることによって生成されます。黄疸の原因物質で、陰性が正常のため濃度上昇は何かしらの疾病のサインです。
- 尿糖/尿タンパク質:検出された場合には、腎臓の機能が低下が疑われます
- ケトン体:高値で検出された場合には、糖尿病が疑われます
- 尿pH:正常範囲はpH5.0~7.5ですが、痛風や糖尿病では酸性に傾きます
- 尿比重:正常範囲は1.01~1.03で、低いと尿が薄く高いと濃縮されています
通常は試験紙で定性試験を行い、異常があった場合に定量検査を行います。
上記検査の中でビリルビンだけは目視で直接確認することが可能です。尿の特徴的な黄色は、このビリルビンによるものです。濃度が高くなると黄色から茶褐色へと変化していきます。また、ビリルビンには界面活性作用がありますので、尿が泡立ち易くなります。黄色の尿で泡立っていたら、すぐに診察を受けてください。
尿検査の注意事項は、尿検査の前日に注意すること!食事や飲み物は?を読んでおきましょう。
尿の色は病気のサイン
ビールを飲むとトイレが近くなり、透明な尿がたくさん出ます。長時間の運動や激しい運動をした後には、茶褐色の尿がでます。
一時的に尿の色が変化する要因はありますが、腎臓の機能が低下すると、尿にわかりやすい変化が起こります。それは「色」の変化です。その色によって疑われる疾患がわかります。
以前、「血液ドロドロ・サラサラ」が流行った時期があったのを覚えていますか?科学的根拠が曖昧ということで、現在では下火になってしまいました。理由としては、同じ人でも水分が足りている時と脱水している時では状態が全く異なるのにも関わらず、その補正をせずに「ドロドロは悪」としてしまったのが原因です。
尿についても同様で、水分摂取量が少なければ濃くなるし、多ければ薄くなります。通常の状態で、色に変化があったらそれは病気のサインなのです。
- 黄色:正常な尿
- 黄~黄褐色:ビリルビン尿ー肝臓・胆のう系の疾患が疑われます
- 赤色:血尿ー腎臓のろ過機能に異常が発生しています
- 白色~にごり:タンパク尿ー腎臓のろ過機能に異常が発生しています
- 透明:多尿ー水分摂取量が多いと尿量が増えるため、色が薄まって透明に近くなります
水分摂取量は通常通りなのに尿量のみが増えている場合、腎機能の低下が疑われます。上記のような異常が確認されたら、なるべく早く専門医の診断を受けてください。
<余談1:猫は腎臓病になりやすい?>
猫はもともと砂漠の生き物なので、水分を確保するために尿を可能な限り濃縮して尿量を減らしています。ですから腎臓に負担がかかり、高齢になると半数以上の猫がCKDを発症すると言われています。猫の尿が臭いのは、濃縮度合いが人間よりもはるかに高いからなのです。
尿の色が透明でも問題ないように思うけど?
尿の色は、薄い黄色~黄色が正常です。それが透明になっているということは、大きく2つの原因が考えられます。
水分摂取量が多い
これには様々な原因がありますが、腎臓で処理できる量の上限が16mL/分と言われています。よって、約1L/時間を超える水分を接種すると処理が間に合わずに尿が薄くなってしまいます。
本来尿中に一定量なければならないウロビリノーゲンがない
ウロビリノーゲンがないということは、元になるビリルビンがないということです。ビリルビンが正常値ではないのは、肝機能障害や胆汁が通る胆道の閉塞などの病気が疑われます。
水分摂取量が多くないのに尿が透明な場合には、すぐ専門医の診察を受けてください。
尿が透明な場合に考えられる病気
その他にも、尿の色が透明になる症状のある病気を紹介します。
尿崩症
体内の水分バランスを調節している抗利尿ホルモン(バソプレッシン)の分泌量が減少するケース(中枢性尿崩症)と抗利尿ホルモンの分泌は正常で腎臓が反応しないケース(腎性尿崩症)があります。どちらも体内に水分を留めておくことができないので非常にのどが渇き、多飲となり結果として多尿になります。
中枢性尿崩症は、抗利尿ホルモンが作られる脳視床下部に何らかの異常が発生することによって発症します。原因は、脳外傷・脳腫瘍・脳動脈瘤・脳炎・髄膜炎など。
腎性尿崩症は、腎臓が抗利尿ホルモンに反応しなくなることによって発症します。原因は、慢性腎盂腎炎・高カルシウム血症・低カリウム血症などがありますが、躁状態治療薬・抗リウマチ薬・抗HIV薬・抗菌薬・抗ウイルス薬などの医薬品によって引き起こされる場合があります。
医薬品が原因の場合、服用開始から数日~1年以内に発症することが多いので、「異常なのどの渇き」と「尿量の著しい増加」が継続する場合には速やかに受診してください。
糖尿病
糖尿病の場合、血糖値が高いため、その濃度を下げようとして大量の水分が血液中に取り込まれます。その水分を大量に含んだ血液は、腎臓でろ過される際に糖を体外に排出しようとして水分も同時に排出してしまいます。
結果として、体内の水分が不足するために多飲、そして多尿というサイクルを繰り返すことになります。
尿はどのようにして作られるの?
尿は、腎臓によって作られます。腎臓はソラマメ形をした臓器で、通常健康な方は、背骨の両側に1個づつ2つあります。
血液は、腎臓の中にある糸球体という組織でろ過されます。糖やタンパク質などの大きな分子と血液細胞は、ろ過されずに血液中に残ります。ろ過されてタンパク質や血液細胞などが除去された液体は、原尿となります。
健康な成人の場合、1日に約150リットルの原尿が作られますが、腎臓内で99%が再吸収され、尿として排泄されるのは約1.5Lとなります。
肝腎な腎臓の働きは?
腎臓には、尿を作る以外にも多くの役割があります。重要な事を表す言葉として「肝心要」という言葉がありますが、「肝腎要」が後に変化したものです。昔から、肝臓と腎臓は重要な臓器として扱われてきました。
腎臓の働き
腎臓の機能をまとめると、
1、体内の水分とミネラル(電解質も含まれる)のバランスを適度に保つこと
尿を作ることが目的ではなく、水分と電解質のバランスを保つことによる生命活動維持のために尿を作って排出しているのです。
体内に入ってくる水分の量に対して体外への排出が十分ではなくなると、水分が体内にたまっていきます。(むくんでいる状態)逆に、水分摂取量が少ないと電解質は濃くなります。腎臓は、水分と電解質のバランスを調節維持して電解質の濃度を一定に保つ役割を果たしています。
2、老廃物や有害物質の排出
体内で食物が代謝されることによって、人体に有害なアンモニアなどが発生します。このアンモニアは肝臓の働きで無害な尿素へと変換されます。これらの物質は体外へと排出する必要があります。その他にも人体に不要な物質(老廃物や毒素、薬剤など)が尿中へと排出されます(これらが尿特有の臭いとなります)。
3、血圧の調節
食事や飲料の摂取によって血液中のナトリウム濃度が上昇すると、そのナトリウムを排出するために大量の尿が作られます。大量の尿を作るためには、腎臓に大量の血液を流す必要があります。そのために血圧が上昇します。
また腎臓は酵素を分泌して血圧の調節をしています。血圧が低下すると、腎臓から血液中にレニンという酵素が分泌されることにより血圧が上昇します。腎機能が低下すると、このレニンの分泌が上手くいかなくなるために血圧の調節が難しくなり、高血圧になりやすくなります。
4、エリスロポエチンの分泌
赤血球の生産や骨の成長と維持などに関与する、エリスロポエチンという造血ホルモンが作られます。腎臓の機能が低下してエリスロポエチンが減ってしまうと貧血状態になります。これを腎臓由来の貧血として、腎性貧血と呼びます。
腎臓が機能低下すると何が問題なの?
腎臓は回復しない臓器として知られています。一度損傷してしまうと回復しません。
一方で、肝臓は回復する臓器として知られており、損傷や腫瘍によって70%程度を切除しても半年程度で元の大きさまで戻ります。
腎臓が機能低下すると、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease、以下CKD)となります。以前は腎不全と呼ばれていましたが、CKDと呼ばれるようになりました。
CKDの初期は自覚症状がないため、むくみや貧血などの異常が現れた時点で病状はかなり進行していることがあります。早めに検査を行い、腎臓にそれ異常負担をかけないようにすることが唯一の対処方法なのです。
CKDが進行するとどうなるの?
CKDが進行していくと、腎臓で尿を作ることができなくなり、体内に老廃物や有害物質が蓄積されてしまい最終的には死亡します。こうなってしまうと、腎臓移植か人工透析を行うしか治療方法はありません。
腎臓移植ができた場合、腎機能は回復しますが、拒絶反応を抑える免疫抑制剤を一生涯飲み続ける必要があります。また免疫機能を抑えるため、日常生活においても感染症予防に注意を払う必要があります。
腎臓移植ができなかった場合、腎臓の機能を体外で代替する人工透析を定期的に行う必要があります。
人工透析って?
人工透析は、血液透析療法のひとつです。体内から体外に取り出した血液を透析機器(ダイアライザー)に通し、血液中の老廃物や有害物質を除去して、血液を浄化する治療法です。
透析液や透析装置が必要になるため、病院やクリニックで行います。一般的な治療の回数としては週3回で、1回4~5時間かけて治療を行います。日本ではほとんどの患者がこの治療を行っています。
腹膜透析の利点は、通院が少なくなるので行動の自由が確保されることです。しかし、この治療法を選択できるのはある程度腎臓の機能が残っている方に限られる事と、病状が悪くなってくると結局は人工透析が必要になってしまうために、初めから人工透析を勧める医者が多くいるのが現実です。
人工透析については、人工透析の余命はどれくらい?他の治療法は?を参考にしてください。
まとめ
毎日、自分の尿の色をチェックしていればその変化に気が付きます。一時的ではない色の変化があった場合には、異常のサインです。
水分摂取量が少ない場合や激しい運動を行った後には、一時的に黄~黄褐色の尿がでますが、あくまでも一時的なものです。
水分を大量に摂取した場合には、尿が透明に近づき臭いもほとんどしなくなります。これも一時的なもので、尿が常に透明な場合には腎臓の水分調整機能が低下しているか、色素の元を作っている肝臓やその通り道である胆道に問題があることが疑われます。
血尿や濁った尿が出た場合には明らかに異常です。
尿は透明に近いほど健康だというような誤った情報もあるようですが、本来の尿は黄色がかっているのが正常なのです。
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