「最近物忘れが激しくて・・・」という言葉は、よく昔のアニメなどで、主に中年以降の登場人物から聞かれることが多かったと思います。
物忘れの一般的なイメージは加齢による脳の老化が原因だと思われがちですが、最近は20代でも顔がたるんでしまった、髪の毛が薄くなってきたと言った悩みと同じくらい「物忘れが激しくなった」という言葉も聞こえるようになってきました。
「物忘れが激しくなる」ということは本当に加齢だけが原因なのでしょうか?
本当に加齢による脳の老化が原因の場合
まずは最も一般的な「加齢」に着目してみましょう。
アルツハイマー病
痴呆を伴う病気で最も認知されているのがこの「アルツハイマー病」だと思われます。アルツハイマー病とは進行性の脳疾患であり、記憶や脳の機能がじわじわと消えていき、最終的には日常生活に支障をきたすレベルになる病気です。
主に60歳以上の高齢者に多いため、加齢による脳機能の低下と思われがちですが、正確な原因としては脳の老化による「脳の萎縮」が挙げられます。アルツハイマーの危険性は45歳頃から上がりだし、アルツハイマー病になってしまった場合は80歳未満ですと10年程度生きることも出来ますが、80歳を過ぎていると3年程度とぐっと短くなります。
また、アルツハイマーの症状は進行度によって変わります。
初期:物忘れがひどくなる、今まで出来ていたことが出来なくなる、見た目に無頓着になる、短期になる、頻繁に迷子になる、段取りが下手になる。
中期:新しく経験したことが定着しない、自宅内で迷子になる、言語障害や知的障害が見られるようになる、何を食べたか忘れてしまう。
末期:着替えや食事、排泄や入浴と言った日常生活を一人で送れなくなり要介護となる。
また、アルツハイマー病患者の死因はアルツハイマー病そのものではなく、合併症によるものがほとんどです。
認知症
まずこの言葉を聞いて「アルツハイマー病と認知症はどう違うのか」と思う方も多いのではないかと思われます。確かにアルツハイマー型認知症という言葉もあるのでそう思われる方がいても仕方がないのかもしれませんが、認知症とは正に「脳の老化によって細胞が破壊されていき、結果として脳機能が低下する」という実際に脳の老化が原因の病気です。
アルツハイマー型認知症というのは、アルツハイマー病が引き金となって認知症に発展した場合のことを指します。また、痴呆症と認知症には違いはなく、元々痴呆症と呼ばれていたのが差別的だという理由で認知症という呼び名に変わったという経緯があります。
では、認知症とは具体的にどんな症状が見られるのかと言いますと、まずはアルツハイマー病と同じく物忘れが激しくなり、手順をたてるのが下手になったり、時間や場所、名前がわからなくなったりするようになります。
また、脳の細胞が破壊されること以外の原因で「周囲に暴力を振るうようになる」「被害妄想が激しくなる」「無気力で何にも興味を示さなくなる」「周囲が見えなくなる」と言った対人面での障害も多いです。
病気が原因の場合
加齢に関わらない病気が原因で物忘れが酷くなっている可能性についてお話しします。
脳梗塞・脳出血
脳梗塞とは脳内の血管が狭まり、脳内の血量不足によって様々な弊害を引き起こす上に、血液が行き届かなかった脳細胞は壊死して二度と戻らない、最悪死に至るという非常に恐ろしい病気です。
脳梗塞の特徴としては全身の痺れやろれつが回らないなどの言語障害の他に物忘れが激しくなるという症状があり、こう言った脳血管が原因の認知症を脳血管型認知症と言います。
脳血管型認知症
脳血管型認知症とは、脳内の血液の循環不良によって認知症の状態になることを指します。世の中の認知症の6割がアルツハイマーによるもので、2割が脳血管型だと言われています。
病気が発端で起こることが多く、対象となる病気には上記の脳梗塞や脳出血、高血圧、糖尿病、脳の動脈硬化と言った生活習慣病などがあります。脳血管に1箇所梗塞がなどの詰まりがある度に脳の機能が激しく低下するために、アルツハイマーに比べて進行が早いのが特徴です。
症状は典型的な認知症の症状で、言語障害や自発性の低下、段取りが組めないと言ったものになるのですが、脳の老化が最もたる原因ではないために症状が悪化する前、脳梗塞や脳出血になる前の時点で予防をすることができます。
アルツハイマーや他の認知症同様に明確な治療法が解明されていないため、まずは不健康な生活は極力避け、体の痺れなどを感じたら即座にお医者さんに相談するなどして工夫をしましょう。
実は心の病気かも?老人性うつ病
実は認知症とよく間違われてしまう病気が老人性うつです。大きな違いとしては、認知症は脳細胞が壊死してしまっているのに対し、老人性うつは「子離れ」「夫婦関係の変化」と言った高齢者にありがちな問題が引き金となって起こった精神疾患なので脳に異常がありません。
双方共に無気力感と物忘れの症状があるのでよく誤診されてしまいますが、老人性うつの物忘れは非常に短時間であり、物忘れをしてしまった自分に気付いてひどく塞ぎ込むのに対し、認知症の場合は物忘れをしたことに気付かない傾向にあります。
また、認知症は攻撃性をはらんでいると言った違いもあります。老人性うつの場合は細胞が壊死していると言った取り返しのつかない状況にはないため、症状の改善に希望があります。認知症と診断されてもどこか老人性うつの様に感じられたら、一旦精神科に相談してみてはいかがでしょうか。
増える20代後半からの脳の老化と対策
最近増えてる若者の老化の中でも、認知障害に関連するものについてまとめました。
若年性アルツハイマーとは?
では、最近聞かれるようになってきた若年性の記憶障害についてお話ししましょう。まず、若年性のアルツハイマー病ですが、症状は高齢者のアルツハイマーと同様に記憶障害を伴い、最終的には要介護となって死に至ります。
アルツハイマーは脳の老化の項目でも説明した通り重病ですので、もし若年性アルツハイマーを疑ったら早期発見、早期治療のために速やかに専門医に相談しましょう。最近では「物忘れ外来」「認知症外来」と言った専門外来が設けられていることも多いようです。
実は1番多いかも?若年性健忘症
また、もうひとつの可能性として考えられるのが若年性健忘症です。原因がスマートフォンなどの普及によって便利な社会になったために脳を使わないこと、他にはストレスなどによるものなので、アルツハイマー病のような病気と違って検査をしてもなにも出てきません。
若年性健忘症の症状は語彙が乏しくなり会話が続かない、性格が横柄になる、世間に関心がなくなりニュースを見れなくなるといった脳機能の全体的な低下が見られます。しかし原因が原因なので、脳を使えば改善します。
若年性健忘症かもしれないと思ったら、億劫でも周りの人と会話をする、本を読んだりニュースを見たりする、必要な電話番号を暗記する等と言った工夫をしてみましょう。
意外と身近な理由かも?睡眠不足にストレス
記憶を司る器官を「海馬」と言うのですが、実はストレスにとても弱く、日頃ストレスフルな生活を続けていると記憶力が鈍る他に理解力も低下してしまいます。
また、睡眠をきちんととらないと海馬が記憶を整理できなくなるため、結果として睡眠不足も年齢を問わない物忘れを引き起こしがちです。更にストレスを解消しない、眠らないと言った生活を続けているとうつ病に発展してしまう可能性もあります。
うつ病になると記憶力や理解力の他に集中力も落ちてしまいますし、体にも不調が出てきます。若者が忙しく動き回る世の中ですが、たまには休むことも大切ですね。
まとめ
恐らく自身の物忘れの多さを心配してインターネットで調べる層は20代から50代が多いだろうと想像できます。最近若年性の認知障害が話題になることが増えてきたのは事実ですが、やはり気にし過ぎであるか、現代化によって脳を使わないことが原因であることがほとんどかと思われます。
しかし、アルツハイマーや認知症と言った病気は非常に恐ろしい病気です。もし少しでも当てはまる点があれば、万が一の時の早期治療のためにもきちんとお医者さんに相談しましょう。
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