耳掃除しない人をどう思われますか?やっぱり不潔に思われるのではないでしょうか。耳掃除の仕方が悪くてトラブルになることはあっても耳を掃除しないのは間違っていると思うのが一般常識といえます。
ここではその根本的な点、耳掃除をしても良いのか?という奇妙な角度から耳の衛生問題に取り組みます。知っているようで、あまり知られていない耳のシステムからご説明しましょう。
すると今まで続けてきた、してはいけないことが浮き彫りになり、これから何をすれば耳掃除に最適かというコツが見えてきます。
耳垢は必要
耳の垢という名前はいかにも老廃物ですが決して不要なものではありません。
防衛の役割
耳垢とよばれるものは、外耳道の耳垢腺(耳の入り口から1センチ以内にある)から分泌される皮脂に空気中のホコリや皮膚の残骸が混じってできたモノです。
カサカサしていたりベタベタしていたり個人差ありますが、外耳でとどまり内耳への侵入を阻んで鼓膜に接触しないようになっています。それを可能にするのが耳垢の持つ粘度です。小さな虫が入り込めないようにもしてくれるので防衛力は極めて高いといえましょう。
外気が汚れていればいるほど耳垢は多くなりますが、それは多くの外敵から身を護った証です。もしツルツルにしてしまうと外敵をからめ取る武器を失います。大量には要りませんが耳垢は内耳や鼓膜を護る砦として適度に必要不可欠です。
もし全ての耳垢を除去してしまったら安心して眠ることも難しくなります。ホコリや空中に浮遊するカビを耳に入れないよう仰向けに寝なくてはなりません。うっかり寝返りして横向きになればホコリやカビが内耳に侵入してくるからです。
また、空気の悪い街では汚染物質を内耳に入れないようフィルター内臓で聴力調整可能なヘッドホンが必要になるでしょう。耳垢は生まれ持ったフィルター機能なのです。
潤いを保つ
耳の中にそっと指を入れてみてください。何だかしっとりしてると思います。乾いている、あるいは痒い、痛い方は要注意です。誤った耳掃除で傷めているかもしれません。
この潤いは耳ご元々持っている力で大事な機能です。潤いがなくなると皮膚が裂傷を起こしやすくなったり炎症、湿疹を起こしやすくもなります。特に炎症を防ぐ役割は重要で、外耳の奥に続く中耳、内耳、鼓膜への炎症もここで食い止めることができるからです。
この潤いがあればこそ、上に書いた粘度も生まれて様々な外敵を阻む土壌になるのです。潤いを無くしてしまうと皮膚表面の弾力性も失われます。耳は自力で溜まった耳垢を外へ排出する自浄機能を備えていますが、その力を充分に発揮できなくなります。だからといって頻繁に耳掃除をすると更に潤いをなくすという悪循環でますます悪化します。
一度、潤いを損なうとドミノ倒し的にマイナス要因が重なるので予防が大切です。その予防として一番、大事なのが正しい耳垢ケアをするということに尽きます。
抗菌作用
耳垢の成分はリゾチーム、IgA 、IgGは入っています。弱酸性なので細菌や真菌などの繁殖を防ぐ役割を果たします。この耳垢が皆無に近くなると感染性の炎症や湿疹、カビが発生して強烈な痒みや不快感に悩まされます。
また耳垢腺より奥の外耳道、中耳、内耳、鼓膜と一気に感染が広まり、症状は頭痛、めまい、耳鳴り、難聴と多岐にわたり長く苦しむことになります。耳垢腺エリアから奥は抵抗力のない場所ですから自力で繁殖を食い止める術を持ちません。痒いので治療中も寝ている時は掻きむしって治りを遅くします。
耳は勤勉な掃除屋さん
耳が自分で掃除するというのは信じがたいことですが事実です。ただの新陳代謝ではありません。耳が中で動くのです。
エレベーター内臓
耳の中の皮膚は、なんと1ヵ月に3ミリほど動いているとバッコウス医学博士(アメリカ耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会長)は言います。耳垢が古くなると食べたり、話をしたりして顎を動かすと奥から外へ出ていくように働くのです。新しい耳垢はそのままにして古い耳垢だけ外部へ押し上げる様子をバッコウス博士は「まるでエレベーターみたいだ」と表現しました。
これは人間が持って生まれた神秘的な機能の一つです。耳の奥にゴマを置くと数か月後には自然に外に出てきたとう発表もあります。ただ、どんな重さでも動かせるわけではありません。既定量があるのもエレベーターなみです。誤った手入れで耳垢をたくさん積みこんでしまえばエレベーターは機能できなくなります。
やりすぎた耳掃除で潤いを失うと、このエレベーターもなめらかに作動しません。炎症や湿疹を伴うとうまく機能できずに古い耳垢が患部にこびりつきます。このエレベーター機能を正常に戻すためには耳掃除を控えるとこが大切です。
耳掃除のコツ
エレベーターで運ばれてきた古い耳垢が外耳の入り口に溜まるので、そこだけで取らなくてはならないのです。外耳道を超えて古い耳垢を押し込むと雑菌が付着したものが滅菌機能のないエリアで固められるので様々なトラブルになります。
押し込まれた耳垢は堆積して固まっていきます。大きなものになると硬さが増して石のようにカチカチになります。耳石といって本当に石のようになるのですが、ここまでくると溶かす薬を何回かに分けて入れて除去します。もちろん、病院で処置してもらうことになりますが、大きな原因は大きい綿棒で耳掃除をした、ということが挙げられます。
ベビー用綿棒か耳かきを使用するのがコツです。どちらも外耳より1センチ先を越えないように気をつけましょう。粘着性のある細い綿棒は掻き出すというより外耳の入り口をチョンチョンと付けて取りましょう。粘着物で外耳道の潤いを損なったり粘着物を付着させたりしないように気を付けてください。
風呂上がりにするのが安全と言われています。耳に湿気があって傷になりにくいという利点があるからです。耳たぶやその周辺も温められて皮膚が伸びやすい、というのも理由の一つです。耳の入り口が大きくなれば手探りで傷つけることがないからです。
耳かきをしてもらう、となれば膝枕が頭に浮かぶと思います。この姿勢では古い耳垢を取り損ねて耳の奥の方に落ち込んでしまいます。してもらう時は座った姿勢でお願いしましょう。耳を後ろに引っ張ってから上に上げると外耳道が真っすぐになって見通しがよくなります。
耳掃除を自分でするにせよ、人にしてもらうにせよ、まずは安全な環境かどうか確認してください。小さなお子さんやペットの周辺では絶対にしないようにしましょう。例年、耳掃除の途中で小さな子供やペットがぶつかって鼓膜を破るケースが発生します。
そして耳掃除の回数で適切と言われているのが月に2~3回です。しかも外耳の入り口から見えたモノだけです。耳掃除はもっと回数が多い方が多いのではないでしょうか?毎日なんとなく習慣にされてる方も多いと聞きます。理由は「気持ちいいから」です。耳の中には迷走神経が走っていて、それが刺激されて快感を得ます。
カサ、コソ、と耳を優しく掃除するとウットリするのは迷走神経の作用なのです。その快感に別れを告げて耳のエレベーターがきちんと作動できるように協力しましょう。
誤った耳掃除からくるトラブル
耳垢栓塞、聞きなれない言葉だと思います。じこうせんそく、と読みます。栓が塞がる、という意味ですが、この栓とは耳垢です。大きな綿棒などで押し込んだ古い耳垢が固まり、やがてサザエの蓋のようにぴったりと耳の奥を塗り固めてしまいます。こうなると自力で取ることは不可能になります。しかし自分でその状態を見ることができないので事態の深刻さに気づくのはもっと後になります。
まず、聴力が落ちます。片方だけ大きな綿棒で掃除することはありませんから両耳の聴力がジワジワ落ちます。急に聴力が落ちるわけではないので異常に気づくのが遅れますが、やがて耳鳴りも発生します。頭痛、めまい、肩こり、のぼせと全身症状にふくらんでいきます。耳に異物感や痛みになって耳鼻科に行くまで耳に原因があるとは分からないものです。
この症状は成人の5%、高齢者になればなるほど多いと言われています。取り除く処置にも時間がかかります。固まった耳垢をふやかして取り、またふやかして取るのですが、この薬は痛いのです。一気に取ると耳の中の内圧が急変してめまいを起こすこともあります。様子を観ながら慎重に取らなくてななりません。
耳垢タイプ別・使用グッズ
ベタベタした湿性耳垢は約4割、カサカサした乾性耳垢は6割といわれています。対応は全く違います。
ベタベタ2タイプ
あめ耳垢タイプは皮脂腺からの脂肪分が耳垢に混じり、べっこう飴というか琥珀色の松やにのようなネチネチした耳垢です。耳かきには引っかからず綿棒では付着するだけでスッキリ取れません。金属製の円盤状耳かきやワイヤー式耳かきが有効です。粘着性が高いので耳の中の炎症部に張り付くと取る処置には大きな苦痛を伴います。
パイシートタイプはあめ耳ほどではないものの脂っぽい性質は同じです。粘着性はあまりなくパイシートを裂いたようにバサバサしています。このタイプも用いる耳掃除グッズはあめ耳と同じです。
ちょっと引っかかるとズルズル出てきそうですが、途切れるので一般的なスプーン型耳かきは使えません。ワイヤー式の耳かきならバサバサ途切れながらもしっかりからめ取れます。
カサカサ2タイプ
粉タイプは細かく乾燥して一番、とりにくい耳垢です。しかし耳のエレベーターで運びやすいので外耳の入り口まで何もせずに待ちましょう。月に2~3回、ベビー用綿棒、粘着綿棒、耳かきで溜まった耳垢を外に出しましょう。耳を下にして掃除するとパラパラ下に落ちます。
抜け殻タイプは脱皮したような薄い耳垢です。粉とちがって薄い形があります。大きいからといって見つけた人がピンセットでつまんでも裂けます。これは耳かきで取った後、粘着綿棒をそっと当てましょう。これですっきりするはずです。
まとめ
いかがでしょう?まさか耳が自分で掃除しているとご存知ない方が多かったのではないでしょうか。こんなにも多彩な機能が充実していることに驚かれたと思います。
この仕組みと自分の耳垢の個性がベタベタ系なのかカサカサ系なのかを知って正しい耳掃除をするのが健康を保つコツです。ご自分に合った耳かきグッズは時々、消毒してください。
そして同じ耳垢のタイプでも他人に貸したり借りたりは止めましょう。感染する恐れがあるからです。耳がずっと元気に働けるよう正しいケアを見に付けましょう。
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