脳は生きて行くにあたって非常に重要な器官です。幾ら他が健康でも、脳が使えなければ何もできない事はよく知られており、そんな脳に腫瘍が出来たら…聞いただけで恐ろしい事です。
脳腫瘍と聞くととにかく大変な不治の病と思ってしまいますが、実は完治が可能な場合も多い病気です。さらに早期発見できれば手術をせずに治す事も可能です。健康な部分に負担を掛けない治療をする事で、治療後の生活の質は大きく変わってきます。
出来るだけ早期に病気を発見するため、脳腫瘍に掛かっている場合にどのような初期症状が出るのかまとめました。疑わしい症状が出たらすぐに病院で診断や治療を受けて下さい。
脳腫瘍とは
脳腫瘍は、頭蓋骨の中に発生する腫瘍の事です。細胞のタイプや性質により様々な種類に分類されますが、大きく分けると、脳以外の部位にできた腫瘍が転移したものである転移性腫瘍と、脳を構成する細胞が元に成っている原発性脳腫瘍です。
さらに、原発性脳腫瘍は(1)脳の神経細胞を養う細胞が元となってできるもの(神経膠腫)と、(2)それ以外の細胞が元になってできる腫瘍に分かれます。
脳腫瘍が出来る部位は、脳全体に渡ります。腫瘍が出来る部位による分類は以下野通りです。
- 神経膠腫:大脳にできるもので、原発性腫瘍の三割がこれにあたる。
- 髄膜種:脳を包む髄膜に腫瘍ができて大脳を圧迫する
- 神経鞘腫:神経を取り巻く鞘に腫瘍ができるもの。良性の場合がほとんど。
- 下垂体腺腫:ホルモンを分泌する器官である下垂体にできる腫瘍。良性の場合がほとんど。
- 髄芽腫瘍:小脳に発性する腫瘍。子供の発症が多く、悪性度が高い。
- 聴神経腫瘍:聴神経にできる腫瘍。良性の場合がほとんど。
脳腫瘍の症状の進行
脳腫瘍の症状は、腫瘍によって頭蓋骨内の圧力が高まる事で起こるか腫瘍の場所によって神経の機能で障害が起こるものの2種類に分かれます。
頭蓋内圧亢進症状
脳は頭蓋骨に囲まれた閉鎖空間なので、この中に腫瘍ができると頭蓋骨の中が混雑して圧力が高くなります。これによって頭痛や吐き気、意識障害が起こります。
局所症状
腫瘍の場所によって起こる症状です。脳の中には神経がたくさんあり、場所によって運動や感覚など担っている機能が決まっています。そのため、どこかに腫瘍ができるとその部分の機能が障害を受け、対応する行動や感覚に支障が出ます。
運動の障害や意思疎通、言葉の障害がこれにあたります。
脳腫瘍の初期症状
治る場合も多くありますが、やはり重要な神経の集まっている脳で起こる病気という事でできるだけ早期の発見や治療が大切です。
脳腫瘍が疑われる初期症状には以下のものがあります。
脳圧が高くなって起こる症状
・慢性的な頭痛
初期の脳腫瘍で2割程度、進行すると7割程度で頭痛が見られます。頭蓋骨の内圧は起床時にやや高い傾向があるため、脳に異常が起きた場合には起床時に最も強い頭痛が起こります。時間が経つにつれてやや改善する傾向があります。起床時に症状が大きく、何日も続くのが特徴です。
・吐き気や嘔吐
頭痛と吐き気は脳の異常によって起こりやすい症状です。吐き気を感じないのに突然嘔吐する噴出性嘔吐を起こす事もあります。
局所症状として現れるもの
・視神経の異常
脳の一部の機能が阻害され、視野の一部が欠けるような症状が出る事があります。視野の欠けが起こる病気としてもちろん眼の病気や自律神経失調症も疑われますが、実は脳に問題がある場合があるので合わせて注意が必要です。
脳腫瘍による視神経の異常の特徴としては、元気な状態なのに視野が欠けている場合や急激な視力の低下(2~3ヶ月で検査の一番上のものが見えなくなってしまう程度)があります。
・言葉の異常
脳には言葉を受け持つ言語領域という部分があります。この部分で障害が起こると言葉に影響が出ます。多くの人は左脳に言語領域を持っています。
脳の前側で障害が起こると、聞いて理解はできるが話し方がぎこちなくなる「運動性失語(ブローカ失語)」という症状が起こり、逆に脳の後ろ側で障害が起こると、話はスムーズでなめらかに話す事ができるが、言い間違いが多くなり聞いた言葉の理解が困難になる「感覚性失語(ウェルニッケ失語)」という症状が起きます。
脳の異常だけでなく、精神的な疾患により起こる事もあります。
・構音障害
上記に近いものですが、しゃべる事に影響が出るものを構音障害と言います。延髄や小脳の腫瘍によりこの症状が起こります。鼻にかかった不明瞭な発音が特徴で、飲み込む運動にも影響が出る事があります。
・聴覚障害
脳腫瘍が聴覚視神経で起こると、聴覚の障害や耳鳴りが起こります。聴神経腫瘍は良性で非常にゆっくりと進行するのが特徴なので、聴覚の症状もゆるやかに起こります。
腫瘍のある片耳の聴力が低下し、めまいの発作が起こる事があります。
・その他
その他、腫瘍の場所によってはしびれや手足のまひが出る事があります。また、てんかん発作が起きる事があります。
初期症状が見られた時の対処方法
上記のような初期症状が見られたら、すぐに医療機関で診察を受けましょう。CT検査やMRI検査を受ける事で腫瘍はすぐに見つける事ができます。
一般的な治療としては、外科的摘出(手術)・放射線治療・抗がん剤による科学治療の3つが基本となります。
- ・外科的摘出:多くの良性腫瘍で行われる治療です。場所によっては全てを摘出する事が不可能な場合もあります。
- ・放射線治療:悪性の場合や、再発を繰り返す場合に多く行われる治療です。腫瘍だけに放射線を当てます。直径が3cmを超える腫瘍には適用できません。
- ・化学療法:他と併用して行われます。効かないタイプの脳腫瘍もあるので、正確な診断が大切です。
脳は丸ごと切除する事のできない器官なので完治は難しいように思えますが、近年では医療技術が進み、放射線などで治療を行う事も可能です。3Dで腫瘍の場所を把握してピンポイントで腫瘍に放射線を当てる事ができるので、健康な部分への影響は最低限で済みます。
脳腫瘍は悪性のもの程進行が早く、場所や種類によっては命に大きく関わる病気です。少しでも早い治療を受ける事が何よりも大切な対策と言えます。
また、転移性で脳に腫瘍ができている場合は、そちらの治療も必要となります。
脳腫瘍の予防方法
脳腫瘍は遺伝子の変異が原因とされており、的確な予防方法があるものではありません。しかし、生活の見直しにより腫瘍の進行を遅くする事が可能です。
対処法として考えられるものは以下の通りです。
- 喫煙の習慣を改める
- 腸に負担となる高タンパク、脂っこいものを食べ過ぎない
- ストレスを溜めない
- 携帯、パソコンを長時間見ないようにする
(ブルーライトが睡眠リズムを狂わせるという説に加え、まだはっきりとは解明されていないようですが電磁波が身体に悪いという研究が進められています。)
まとめ
脳腫瘍は頭蓋骨の内部にできてしまうものなので、がんそのものの良性・悪性に関わらず頭蓋骨の中でぎゅうぎゅうになってしまい、脳に様々な障害を及ぼします。命に関わる病気というイメージが強いですが、現在は適切な治療を行う事で完治する例も非常に多く報告されています。中には手術を必要としない場合もあるという事で、腫瘍が大きくなる前に対策をすればする程よいといえます。
様々な初期症状は一見疲れによるものに見えますが、脳で異常が起きているサインかもしれません。自分の体調に気を配り、健康維持や病気の早期発見に努めましょう。
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