ウィリアムズ症候群をご存知でしょうか。あまり聞いた事のない病名ですが、外見や性格などに様々な特徴を示す遺伝子の病気です。
先天性の病気を持っている事が多く、さらにその性質から、トラブルを引き起こしてしまったり、巻き込まれてしまう事が多いといわれています。正しい知識を持って、適切な対処ができるよう、病気について・患者さんの特徴についてまとめました。
ウィリアムズ症候群とは
ウィリアムズ症候群は、1961年にJ.C.P.ウィリアムズ医師により報告された病気です。「7番染色体長腕の微細欠失症候群」を指しており、7番目の染色体上で25個の遺伝子の欠損が起きている状態です。精子や卵細胞ができる際にランダムに起こるもので、子宮内の発達遅延を伴う成長障害や、精神の発達が遅れているといった症状が起こります。
頻度は2万人に1人〜7500人に1人と幅のある報告がなされています。難病指定されており、根本的な治療法がなく、生涯継続する病気です。また、生涯を通し医療的、社会的な介入が必要です。
病気そのものは遺伝ではなく遺伝子に起因します。少し分かりづらいですが、親から子への遺伝ではなく、染色体など遺伝子の問題によって起こるという事です。ただし、ウィリアムズ症候群の患者さんの持つ遺伝子の欠損は遺伝してしまうので、ウィリアムズ症候群の患者さんのお子さんが同様の病気を発症する可能性は高いといえます。一方で兄弟姉妹共に患者となった例は報告されていません。
ウィリアムズ症候群の症状や特徴
代表的とされる症状は以下の通りです。
妖精様顔貌
最も目に見えやすい特徴の一つが「妖精様顔貌」と呼ばれる特徴です。
内側の眉毛が太く、まぶたが腫れぼったい・鼻根部の陥没・星状虹彩・などがこれにあたります。中には噛み合わせの異常や歯の異常が見られる場合もあります。
心臓等の疾患
生まれつき心臓に疾患がある事が多く、心臓にある大動脈の弁口が狭い「大動脈弁上狭窄」、右心室の流出路から肺動脈までの間でどこかに狭い部分のある「末梢性肺動脈狭窄」が見られる事があります。
また、心臓以外では、冠動脈が狭くなる「冠動脈狭窄」や、腎臓の脈が狭くなる「腎動脈狭窄」が合併症として現れる事があります。
高カルシウム血症
乳幼児の時に、血液中のカルシウムの値が高くなる「高カルシウム血症」を起こす場合があります。
血液中に供給されたカルシウムをうまく吸収する事ができないため起こる症状で、脳の機能障害の原因になる場合や、腎臓への負担となる場合があります。
性格
社会生活を送る上で考慮すべき特徴が、性格面についてです。ウィリアムズ症候群の患者さんの場合、非常に社交的で多弁な性格を示すという特徴があります(喋り始めるのは遅めですが、一度言葉が出ると発達すると言われています)。
IQが低いという症状の出る他の病気の患者さんと比較して、語彙が豊富でコミュニケーション能力が高く、非常に人懐っこく人を怖がらない傾向があるため、誰とでもすぐに友達になれると言われています。特に自分よりも年長者への親近感を持っています。しかし、人見知りをせず警戒心がないという点は時として危険な場合もあります。
空間の認知
空間をみて状態を知る・平面の地図から立体をイメージするというような視空間の認知に障害が見られます。線をなぞる事はできるが模写が難しい・書けないひらがなや感じがあるといった障害を示します。
その一方で顔の認識能力は高く、人を見分ける事ができます。
聴覚の過敏
雷の音などに特定の音に対して過敏に反応する場合があります。耳の問題ではなく、情報を処理する脳の問題で起こる反応です。また、この病気を発症していない人と比べたテストでは平均して20db程音量の低い段階から不快感を示したという実験結果が報告されています。
一方で、ウィリアムズ症候群患者の音楽処理方法が通常の人とは異なるという研究があり、音楽に関して才能がある場合や、音楽への高い関心を示す事があるとされています。
判断できるかどうか
ウィリアムズ症候群は珍しい病気であり、医師でも実際の患者さんを見た事がない方はたくさんいます。そのため診断が難しく、病気自体について知識のない医師の場合、大した事はないのでは?と判断してしまう事もかつてはあったようです。
簡単に判断をすべき事項ではありませんが、参考までに乳幼児に以下の症状がある場合にウィリアムズ症候群が疑われるとされています。
- 特徴的な容貌
- 心雑音
- カルシウム濃度の高さ・それに関連した摂食障害
- 特定の音に対する感受性
- 運動、発語の遅れ
また、以下の特徴を持つ事があるとされています。
- 掌が上に向けられない
- 関節や背骨が曲がっている
- 若白髪
ウィリアムズ症候群が疑われる場合、小児科や専門の遺伝診療科で診断を受ける事ができます。より詳細な検査の段階になった場合には、小児系の内科・外科や心臓・泌尿器科などと連携して検査や治療を行う事のできる病院もあります。
生活の中で気をつけるべき事
ウィリアムズ症候群の方は、生涯的に社会的・医療的なフォローが必要であるとされています。周りがどのような事ができるのか知識を得ておきましょう。
社会生活
特に子供の時期には、非常に活発で、やや多動傾向といえるほどでもあります。大人になるにつれてだんだんと落ち着いて静かになる人が多いようですが、不安感を抱きやすい傾向にあります。
基本的に「人が好き」であるといわれていますが、騒がしい程の空間や、秩序の無い場所は適していません。また、指示をしてくれるリーダーを必要としています。
言語、音楽に対しての認識や感覚は優れていますが、平衡感覚や視空間認知障害がある場合があり、階段の上り下りを苦手とする場合があります。
体調面
ウィリアムズ症候群の患者さんにとってより大きな問題は、性格によるものよりも身体的な症状であるといえるでしょう。
前述の通り心臓の病気を併発しやすく、血管の狭窄が起こる場合があります。特に大動脈弁狭窄症は進行性で、突然死の可能性もある大変重い病気のため、急ぎの治療が必要となります。
加齢に伴い高血圧を起こす人が多くなります。同時に慢性便秘、胆石などの消化器の症状や、尿路感染症を併発する場合もあります。
さらに、ウィリアムズ症候群の患者さんの場合麻酔や手術が大きなリスクとなる場合があります。そのため、医療機関でのこまめなチェックと早めの対処が重要となります。治療を行う際は専門性の高い病院を選択するべきでしょう。
まとめ
現状ではウィリアムズ症候群を完治する方法はなく、症状が出てしまった場合その対処を行い、生活を維持するという方法が取られています。健康状態が悪化しやすいため、常に気を配り医師のチェックを受ける事が不可欠です。
また、日常生活においてはその性格(一般的な感覚から見ると「お人よし」に見える事もあるようです)から危険な目に合わないよう、周りがフォローしましょう。特に小さいうちは、知らない人を怖がらず付いて行ってしまったり家に入れてしまうといった危険性があります。
ウィリアムズ症候群はまだ一般的に知られている病気ではありませんが、重大な合併症の恐れがある事や、得意とする点と不得意とする点がある事など、周りがその特徴を理解し、サポートする事が大切といえるでしょう。また、早めに診断を受ける事でサポートする側も準備が出来るようになるので、気になる事があったら医療機関を受診しましょう。
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