原発性アルドステロン症と言う病気をご存知ですか?高血圧に関連する、この病気は稀な病気だと思っていましたが、最近は検査などが進んで、可成りの人がこの病気になっている事が分かってきました。
約4300万人もいると言われる日本の高血圧の人の中で、5~20%の人がこの原発性アルドステロン症の病気にかかっている事がわかってきています。
また高血圧を発症してない人の6%の人が、金沢大学のデーターで原発性アルドステロン症の病気を発症していたことが最近わかりました。
塩分を取りすぎる日本人はこの原発性アルドステロン症を発症した時に、どの様な事に注意したら良いのか調べて見ましたので、ご一緒に見ていけたらと思います。
原発性アルドステロン症とは
◆原発性アルドステロン症とは、副腎皮質から出される、ホルモンのアルドステロンが、副腎の腫瘍によって、多量にだされる病気です。アルドステロンはナトリウムを身体の中に溜めて、カリウムを外に尿と共に出す働きをしています。原発性アルドステロン症と言う病気は、このアルドステロンが多量に出てしまい、身体の中にナトリウムを過剰にして、カリウムを減らしてしまうのです。
アルドステロンとは副腎で生産される、ミネラルコルチコイドすなわち副腎で作られる、電解質代謝に関与する鉱質コルチコイドで、副腎皮質ホルモンの一つです。アルドステロンは塩分や水分を、身体の中で調整しているホルモンなのです。
◆今まではとても稀な病気でした。高血圧の人でも解らなかったのですが、検査が進むにつれて高血圧の5~20%の人が、この原発性アルドステロン症に、掛かっている事が最近解ってきました。
◆高血圧の患者さんの中でも、一般的な治療が出来ない、治療抵抗性高血圧症の患者さんでは、25%の人がこの原発性アルドステロン症に掛かっていて、金沢大学のデーターでは、普通の一般の人の、健康診断を試みたところ、6%の人がこの原発性アルドステロン症の、症状の人がいる事がわかりました。推定患者数は200万人から、400万人と言われています。
◆原発性アルドステロン症を、もう少し違う言い方で言うと、副腎皮質ステロイドホルモンの1つの、アルドステロンと言うホルモンが、過剰分泌される事によって起こる病気です。アルドステロンは腎臓に影響を与えて、身体の中にナトリウムと水分を、蓄える為に高血圧となってしまいます。カリウムを尿の中に排泄する働きがあるので、アルドステロンのホルモンが過剰になってくると、血液のカリウムが減少して、筋力低下が起こってきます。
原発性アルドステロン症の原因
原発性アルドステロン症の原因は、何故そのような事になるのかという、根本の原因はまだはっきりとはしていません。病気の原因については副腎皮質の、腫瘍から出されるアルドステロンの、ホルモンが多量に出る事と、過形成によるものと分かっていますが、何故そうなるのかと言う根本原因は分かっていません。
治療が副腎皮質の腫瘍の、片側の副腎に影響をもたらすものと、過形成による両側の副腎に影響をもたらすものかは治療の仕方が違うので、それを見極める事はたいせつです。
副腎皮質の腫瘍による原因
副腎皮質の腫瘍による原因の場合は、片側の副腎に影響を与えて、ここからアルドステロンのホルモンが多量に分泌されます。
過形成による原因
原因が過形成による場合は左右の副腎全体から、アルドステロンのホルモンがでます。
横浜労災病院の原発性アルドステロン症の原因の考え方
横浜労災病院の原発性アルドステロン症の原因の見方は、人間の成り立ちから見るもので、人間の歴史を振り返っています。人間の形成は魚から始まっています。魚から両生類になってそれが何万年かの歴史を経て、進化し二本の足で立つようになります。
人間が魚であった時から
魚で生活していた時は海の中の、0.9%の塩分の中で暮らしていました。しかし二本の足で立つようになり、海から陸で暮らすようになって、塩分のない空気の中で、暮らさなければならなくなりました。
二本の足で人間が生活していくには、血圧を維持しなくてはならなくなり、血圧を維持するために水と塩が必要となりました。
人間が生まれた時から塩を得るためには、塩を口から入れるか、おしっこをしないかどちらかになります。そのためアルドステロンというホルモンは、おしっこに塩を出させない為の、ホルモンとして、身体の中で作られる様になりました。
人間の塩をめぐる戦い
人間は塩がないと、生きてはいけません。昔はその塩を巡って争いが絶えなかったようです。18世紀以降に、塩が自由に生成される様になって、今度は人間は塩分過多になったのです。
人間は塩分が多すぎても、アルドステロンを抑える働きをしますが、原発性アルドステロン症の症状の人は、アルドステロンを過剰分泌しているので、体内の塩分が過剰になっても止まらなく、その為人間の血管をボロボロにしてしまうのです。
原発性アルドステロン症の症状の方でも、塩を身体に取り込まなければ、何も問題はありません。血圧も上がらなければ、臓器も傷がつく事はありません。
原発性アルドステロン症は塩がない処では正常
例えばアフリカなどの塩を、手に入れる事が困難な地域の人々の、原発性アルドステロン症の人は、何の問題もなく生活していけるのです。
昔塩を争っていた時代、原発性アルドステロン症のような、塩がなくても生きて行く事のできるような身体でないと、この時代は生きていけなかった、のではないかと考えられます。
原発性アルドステロン症の症状は、塩がいらない身体なのです。アルドステロンは人間の身体の塩分を保って、血液の中の水分や塩分を、調節して循環する血液の量と、血圧の維持には欠かせない、大切なホルモンなのです。
副腎の身体の中の体細胞が変異する事で、アルドステロン合成酵素が活性化される為、過剰なアルドステロンの分泌がおこり、人間の塩分との闘いの歴史をみると、原発性アルドステロン症の、体質が多くなってきたと考えられます。
原発性アルドステロン症は体質?病気?
◆と言う事は長い人間の歴史の中で、人間が必要とする塩分がなくても、暮らせる体質の人間が増えて、きているのではないかと、言うことになりますね。ですからこの様な体質の人が、塩分のいらない生活環境の中では、何も障害もなく暮らせるわけです。
◆でも今の現在の日本では、塩分を取らないで生活するのは難しいですね。加工品やうどん、パン、スパゲッティ等、すべて米以外は塩分が使われています。また海藻類や、ドレッシング、調味料などは全て塩分が使われています。
塩分無しで食事をすることは、味覚が無くなる事にもなりますから、やはり原発性アルドステロン症は、今の段階では病気として捉えられるのでしょうね。
横浜労災病院の場合は片側と、両側の治療方法は同じですが、その他の病院は治療方法が違いますので、手術をされる方は良く考え、先生と相談して行ってくださいね。
原発性アルドステロン症の症状
◆原発性アルドステロン症の症状で、有名なのが高血圧からくるものです。また低カリウム血症にもなる事もあります。高血圧は血管、脳、心臓、腎臓などの臓器の障害を起こすため、脳梗塞や心筋梗塞等、急に死に直結する病気の、引き金にもなります。
また体液が過剰にアルカリ性に傾く、低カリウム性アルカローシスや、血液中のナトリウムが、異常に高い高ナトリウム血症や、心臓への負担になる循環血液量過剰等が、起こる可能性があります。また発作性脱力感や、感覚異常、一過性麻痺、テタニー、拡張期高血圧等の症状が出る場合もあります。
◆原発性アルドステロン症は、血圧を低下させる、高血圧の薬の降圧薬を飲んでも、病気の症状は治りません。血圧をコントロールするだけでは、病気は治らないのです。この原発性アルドステロン症の病気そのものを治さないと、臓器障害も治す事ができないのです。
また低カリウム血症は、原発性アルドステロン症の、全ての患者に起こるわけではありません。低カリウム血症の筋力低下による、手足の脱力や、疲れやすいなどの症状をもたらします。
幸いの事に原発性アルドステロン症の治療は、手術で完治する可能性が大きいのです。先にも書きましたが、原発性アルドステロン症は、塩分が少ない生活環境では、病気としてではなく体質として捉えられ、何もしなくても健康に暮らせるのです。
ノンディッパー型について
ノンディッパー型の高血圧とは、夜から朝にかけ寝ているうちに血圧が、高くなる病気で心筋梗塞や脳梗塞等、死に直結する症状を引き起こしやすく、心血管系や脳血管系のリスクが最も高い高血圧なのです。
水を多量に飲みすぎたり、尿を多量に出したりする、多飲多尿の症状がでてきます。また筋力の低下や足がつるなどの、筋肉がつる低カリウム血症に伴う、症状もでる事があります。
原発性アルドステロン症の合併症には、代謝異常が起こりやすいです。脂質異常等の高脂血症や、糖尿病などのインシュリンの代謝異常等が、起こりやすくなってきます。
原発性アルドステロン症の検査
血液検査
血液検査では原発性アルドステロン症の血液は、ナトリウムが高値になり、カリウムが低値なります。初診時の血漿アルドステロン濃度をPACと言い、血漿レニン活性をPRAと言います。この値は
PAC(ng/dL)/PRA>20
PAC(ng/dL)/>12かつPRA<1
です。この値は何を現しているのかと言いますと、アルドステロンが多く出ていて、レニンと言う酵素が減少している事を表しています。レニンとは腎臓で作られる、タンパク分解酵素の1つですが、健常者はこれと同じ症状の、アルドステロンが多くでると、レニンが減少する症状が普通なのです。
副腎静脈サンプリング
副腎静脈から直接血液を採取する方法を、副腎静脈サンプリングと言います。大腿の付け根の所から、カテーテルで副腎静脈に刺して、副腎静脈から血液を採取します。
この方法で採決を行うと、アルドステロンが過剰に作られている、箇所が分かってきます。
アルドステロンの検査入院
◆原発性アルドステロン症の検査入院の場合、病気を確定するために、ホルモンに重荷を掛けて負荷させ、身体の反応を見極めます。カプトリル負荷試験はカプトリル50mgを飲んで血圧の状態を見ます。
◆また迅速ACTH負荷試験の様なコルチゾール値を採取して、ACTH製剤のコートロジン0.25mgを静脈に注射して、30~60分後のコルチゾール値を測定する方法などを行います。
◆また原発性アルドステロン症の場合、動脈硬化が進んでいる事が良くあります。ですから動脈硬化の検査には、血圧の脈波から動脈硬化を調べたり、エコーで頸動脈の状態を調べたりして、心肥大していないか確認の検査をします。
◆原発性アルドステロン症では、慢性腎臓病や脳卒中などのリスクが伴うので、頭部のMRIで脳の血管の状態や、腎臓機能のチェックなども入念に行います。
原発性アルドステロン症の治療
原発性アルドステロン症の治療の場合、横浜労災病院の場合は、片側と両側の異常があっても、同じ外科的手術が行われますが、その他の病院では、片側と両側の治療方法が、異なるのが一般的になっています。
原発性アルドステロン症の病変が片方だけの場合
原発性アルドステロン症の治療は、片方が異常をきたしている場合、外科的手術として、腹腔鏡下副腎切除を行います。腹腔鏡下副腎切除で、異常がある病変の部分だけを、切り取り除去します。
ですから副腎をすべて取り除くわけでないので、後遺症も少なく、回復も早くなります。また傷口も小さくて、時間の経過と共に傷口が、基に戻りやすく成っています。
原発性アルドステロン症の病変が両方に有った場合
◆原発性アルドステロン症の治療で、病変が両方にあった場合は、両側に異常があると副腎不全を、起こす可能性が高くなります。ですから手術を行わない施設が殆どで、内科的な治療を行う、医療施設が大半を占めています。
◆横浜労災病院では「超選択的な副腎静脈採血」と言う、特殊な精密な検査ができるのです。これはマイクロアデノーマと言う、ごく小さなマイクロ腫瘍も見つける事ができて、副腎の病変のみを、部分的に切り取る事ができる様になり、両側の病変でも、副腎不全の後遺症なしで完治が容易になりました。
◆しかしまだこの方法を行うところは数が少なく、今の所横浜労災病院のみのようで、今研究がすすめられているので、今後増える可能性はあります。
◆原発性アルドステロン症の人は「スピロノラクトン」と言う、利尿降圧剤と言う薬を飲まないといけませんが、患者が妊婦さんの場合、特に男の子の場合に、影響が出る可能性が大きく、妊娠末期に意識喪失や、痙攣等を起こす事もあります。妊婦さんの場合はこの様に、薬を飲みながらリスクを抱え、出産しなければなりませんので、とても不安になると思います。
ですから手術をしてしまえば、不安もなく子供を産む事だけに専念できるのです。
外科的治療
原発性アルドステロン症の外科的手術の、副腎アルドステロンの手術をした場合、高アルドステロン血症の症状がなくなって、高血圧の症状も改善に向かいます。60~70%の手術をした患者さんは、薬を飲まなくても良く完治しました。
しかし30~40%の患者さんは、血圧が正常に戻りません。過剰摂取などの遺伝子に、起因する生活習慣で、高血圧になっている本能性高血圧や、肥満による影響の様に思われます。
外科的手術をして一時的に、腎機能が低下する事もあります。手術後には手術前に行われていた、減塩や過剰カリウム摂取等の食事の制限は、やらなくて良くなります。
内科的治療
原発性アルドステロンの内科的な治療方法は、降圧薬のCa拮抗薬などを組み合わせて、抗アルドステロン薬の、スピロノラクトンやエプレレノンと言う薬を服用します。降圧薬はαブロッカー等も使用し、手術後ならARBと言う降圧剤も使います。
しかし現在では内科的治療よりも、外科的治療の方が完治する症例が多いので、外科的治療の方が主流になっています。
まとめ
如何でしたでしょうか?原発性アルドステロン症は、高血圧に関連する症状ですが、塩分を必要とする日本人はどうしても、この原発性アルドステロン症の、病気にかかってしまいます。
塩分を必要としないまた3g以下の環境の中では、原発性アルドステロン症は、体質として捉えられるものです。体質として何も治療を施さなくても、健康で暮らす事ができるのです。
しかし塩分が充満している日本の食生活の中で、これは体質として放置していると、危険な病気を引き起こす事になりますので、できるだけ手術をして取り除く事で、原発性アルドステロン症の病気は完全に完治させる事ができます。この様に見てきますと、原発性アルドステロン症の場合は、外科的手術をすることが、一番健康に近づく事のようですね。