HIV(エイズウイルス)の初期症状は風邪と間違われて見逃しやすく潜伏期間中は一見健康に見えます。初期症状は風邪やインフルエンザに似ており感染してから2~3週間かかるため、お医者さんでもHIVだと見抜けないこともあります。
症状はほとんど風邪と一緒で他の病気でも起こり得る症状なうえ一過性で治まってしまうため、HIV検査をしないと発見が極めて困難です。
会社の健康診断ではHIVの検査はしません!自分で検査を申し込む必要があります。初期症状を見逃すと、5~10年の潜伏期間に突入しその間は健康に見えます。しかしその間にどんどん免疫が壊され、致死の病にかかるリスクが上がります。
しかし、HIVはかつて不治の病でしたが早期発見で治療が可能になっています。
エイズ、HIVとは
エイズとはHIVというウイルスによる疾患です。HIVはヒト免疫不全ウイルスとも呼ばれ、Tリンパ球、マクロファージ(CD4陽性細胞)など免疫にかかわる細胞を攻撃します。感染後治療せずにいると免疫力が徐々に低下し、治療せずに放置すると最終的に全く免疫力がなくなります。
免疫力がなくなるとあらゆる病気に対抗できなくなり、死に至る合併症も引き起こします。このとき免疫力がある健康な人は普通発症しない病気を発症したときに「エイズ」と呼ばれます。HIVとはウイルスの名称です。エイズを発症するまでの病状を「急性HIV感染症」と呼びます。
かつて不治の病といわれていましたが、現在は早期発見による投薬による治療が可能となっています。しかしエイズを発症してからの救命、長期生存は可能なものの、免疫力が低いので重大な病気の合併症を起こすことで命の危険があります。早期発見することが大切です。
症状の重い1型と、比較的弱い2型のウイルスがあり、日本で見られるHIVのほとんどは1型です。一部の海外への旅行や出張でまれに2型を発症する人もいます。
HIV感染症の初期症状
HIVに感染してもすぐには症状がでません。最初に症状がでるのがHIVに感染してから2週目~6週目ごろに症状が現れます。HIV特有の特徴はリンパに関係した部分の異常、帯状発疹、他に免疫が下がった状態で他の病気にかかり、特に性器の出血や炎症などの異常が見られることがあります。
しかし全ての症状がでるとも限らず、出ても風邪やインフルエンザに似た症状なので、医者に診てもらってもHIV感染だと判断できないこともあります。
症状は以下の通りです。
- 発熱96%
- リンパ腺の腫れ74%
- のどの痛み70%
- 発疹70%
- 全身筋肉痛、全身倦怠感54%
- 下痢32%
- 頭痛32%
- 吐き気27%
- 肝脾の腫れ14%
- 体重減少13%
- 口腔カンジダ症12%
- 神経症状12%
どれもHIVでなくても発症しますので、症状だけでHIVと判断するのは難しいです。これらの症状はエイズを発症する前になくなることがありますが、症状がでない間もHIVウイルスは増殖し、免疫を徐々に低下させます。
HIV感染の疑いがある場合にこのような症状がでた場合はHIV検査を受けることが大切です。保健所で匿名、無料で検査が受けられるほか、自分で検査キットを買うこともできます。
ただし症状が出始めた段階では抗体検査で陰性になる場合があります。
HIV無症候期
HIV初期症状が過ぎた時期、エイズを発症する前の段階です。この段階では検査で抗体が発見されます。症状はありませんが免疫力がどんどん落ちていきます。
免疫力が低下してくるので、結核や帯状発疹など免疫力が低下したときにかかる病気を患うことがあります。治療せずに放置すると1年~10年の期間、長い人では20年でエイズの症状に移行し、命の危険があります。
HIV検査方法
保健所で匿名で無料で受けることができますが、日本では病院で見つかるケースが多く50%ほどの人が病院でHIVを発見します。保健所で病気を発見した人は30%ほどです。病院だとHIV抗体検査 3000円~7000円程度、NAT検査15000円程度かかります。病院の場合、健康保険は「何となく不安」という理由だと使えないので実費です。
検査方法をまとめるとこうです。
- 保健所で検査する
- 病院で検査する
- 検査キットを自己購入し匿名で郵送して結果を確認する
感染時期によって検査で結果がでない?
検査の種類によっては、感染時期が早いと陰性と診断されることがあります。
HIV検査の種類は複数あり、時期によって結果が異なる場合があるため、保健所や医療機関では再検査や、結果保留という診断を下す場合があります。それぞれの検査の特徴を知っていれば、陰性・陽性判定の意味に一喜一憂せずに済みます。
またHIV感染からエイズ発症には1年~10年以上の潜伏期間、HIV無症候期がありますが、2011年の独立行政法人 国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター(ACC)からの報告ではHIV感染からエイズ発症までの期間が短くなってきているといわれています。より早期の発見が大切です。
HIV抗体検査
HIVに対抗する抗体がつくられているかどうかを調べる検査です。初期症状の風邪のような症状や発疹が治まった後に抗体ができます。時期でいえば、感染した時期(性行為や輸血など感染しかねない行為をした時期)から約1カ月後くらい、初期症状(風邪に似た症状や発疹)がでて約2、3週後くらいから抗体が見られるようになります。
検査結果は約20~30分ですが、1週間後に通知するタイプの病院もあります。医療機関の場合7000円かかります。
また1カ月の後の検査で陰性だとしても、3カ月後にまた検査を受けることをお奨めされます。「ならなら3カ月後に一度に受ければいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、早く見つかるに越したことはありません。
保健所で見てもらえばタダですし、検査してもらいましょう。
核酸増幅検査(NAT検査)
NATとはウイルスの遺伝子のことです。HIV自体が増殖してきた段階で検査できるため抗体ができるより早く検査が可能です。感染した後から12日後くらいで検査が可能です。
ただし陰性の診断がでても感染しているのに結果がでない場合があります。結果がはっきりしやすい抗体検査を3か月後に受けることを奨められます。
検査通知は3~5日後になるようです。医療機関の場合、費用は1万円~2万円ほどするようです。
郵送検査キット
診察を受ける暇がない人や、保健所や医療機関の人と顔を合わせたくない人に人気です。
自宅で自分で検査キットを使い、郵送で結果を診断してもらえます。このとき自分の住所や名前は書かなくてもよく、IDだけを記入しますのでプライバシーが守られます。
検査する施設は法的にHIVの検査ができる条件が整っている「登録衛生検査所」で行い、その後ネットで検査結果を告知してくれます。(他の性病も検査してくれるキットもあります。)
なお、郵送せずにすべて自分で診断するキットも海外では販売されています。しかし、日本ではこの試薬は薬事承認を受けていません。海外から購入することもできるようですが、偽物が出回った例があります。誤診をすると、自分だけではなく他人にも迷惑がかかるので保健所や日本で認定された郵送検査キットを使うことをお奨めします。
HIVスクリーニング検査
HIVに関わる疑わしい要素全てを確認し、可能性があるかどうかを調べる検査です。この検査で陽性になってもHiV感染が確定するわけではありません。判定保留として次のステップに進みます。次の確認検査で陽性がでたらHIVに感染していたことがわかります。
検査の絞り込みをするための探りを入れる最初に行う検査です。
HIVはどのように感染するのか?
症状で見抜けないのであれば、自分でHIVに感染する機会があるかどうかが問題になります。
性病のイメージが強いHIVですが、薬害感染、注射器の不正な使用、母子感染によって感染することもあるため性行為をした人だけがHIVになるとは限りません。自分ではHIVの疑いはないと思っている人も、初期症状や免疫力が落ちて帯状発疹や結核など免疫低下に関係する病気にかかりやすくなっている場合、検査を受けるといいでしょう。
しかしHIVは空気や水に大変弱いウイルスで、動物や人間の体内や血中ぐらいでしか生きられません。そのため、皮膚の接触感染、空気感染はしません。また蚊の中でHIVは繁殖しないため、蚊による感染もしません。
感染が起こるのは、口内、陰部、尿路、肛門、傷口、皮膚の炎症部分など粘膜が露呈している部分に粘膜・粘液、血液、精液、膣液、母乳が接触することです。
感染者の尿、大便、汗、涙、唾液、タンは感染リスクがないと言っていいほどウイルスの濃度が低いので普通に生活が可能です。
ただし、出血したときは注意しなければなりません。軽い出血をした後のカミソリ、歯ブラシを空気や水に触れないうちに連続で他人と共用して使う、ということはまずないと思いますが、念のため、歯ブラシやかみそりは共用しないようにしましょう。
同性感性的接触
2011年の調査では日本で最も多い感染原因が、男性同士の性的接触で50%以上が同性間の性的接触が原因です。
性器と性器、腸内と性器の接触だけではなく、口内と口内、口内と性器の接触でも感染の危険があります。皮膚と性器の接触は問題ありませんが、皮膚に傷があると同様に感染リスクがあります。
肛門はそれでなくても雑菌が多いので、炎症も起こりやすく、炎症が起これば感染のリスクが高くなってしまうのです。
唾液による感染はバケツ5杯ぐらいの大量の唾液を一度に飲むくらいしないと感染しないほどHIVの濃度が低いので、キスでの感染はほぼないと言っていいです。ただし、口内で出血している場合にディープキスをする場合はこの限りではありません。
また割合は少ないものの女性同士でも感染のリスクはあります。
異性間性的接触
HIV感染は性病のイメージが強いだけあって性行為による感染が多いです。コンドームを付ければ感染リスクを下げることができますが、絶対ではありません。
また性器だけが感染ルートではありません。挿入だけコンドームを付けるけど、口で性器を加えるときはコンドームはしないというケースも感染リスクがあります。
精液を口に含めば感染のリスクがありますし、男性器の先端は傷がつきやすく膣液などで感染しやすいです。同性間の性行為同様、肛門に性器を挿入するのは危険です。
血液による感染
主にドラッグ、麻薬の回し打ちによる感染が増えている他、安全性が確保できていない輸血、またHIVに感染した血液を使った血液製剤によって感染するリスクがあります。HIV感染者からの輸血によるリスクは95%です。セックスのリスクが0.1未満のリスクだとするとかなり高いです。
なお、HIV患者が出血したときに傷口に血液が入る場合のリスクについては、HIVよりHBV、HCVのほうが感染リスクが高いので、特別HIV患者の出血だけに着目して回避したところで意味がないという意見もあります。
これはどちらかというと、自己で出血しかねない仕事で感染者差別がないように理解してもらう意図と、特別血液に触れて手術する機会の多い外科医に向けた注意勧告のきらいが強いように思います。実際輸血に比べたら0.1%以下のリスクです。
セックスの場合回数が多いので数%でも危険視されますが、外科医でもなければそう他人の血液が生傷に刷り込まれるようなことが起こる確率は低いのでこういった扱いになっていると思われます。
母子感染
感染リスクは対策なしでは30%ですが、対策ありでは1%までリスクを抑えられます。
対策とは帝王切開、HAART(多剤併用療法)、人工授乳です。
陣痛が始まると血液が流れるため、このとき感染の恐れがでてくるので帝王切開します。帝王切開することで軽減するリスクは8割になります。
HAARTは投薬治療です。HIVウイルスの絶対数を減らします。副作用が強く、下痢や吐き気を催すほか、イライラするなど気分も変わります。
母乳が感染源になるので授乳を控えます。母乳に関しては「HIVでも授乳のほうがいい!」と書かれていますが、それは発展途上国向けのアナウンスです。
発展途上国では粉ミルクや粉ミルクを溶かす清潔な水が手に入りずらいので、HIV感染ガイドラインに「母乳で感染します」と書くと、母乳を飲ませられないことによる違った問題で幼児に危険があるので、「HIVでも母乳を与えてください」とアナウンスせざるを得ない状況にあるためです。
先進国での治療は人口授乳ということになっています。
6カ月完全に母乳だけで育てられる場合は、母乳によるHIV感染リスクは低いと研究されていますが、母乳を完全に断つことができればそのほうが良いのです。
粉ミルクの中でも、様々な養分が入っているフォローアップミルクがおすすめです。亜鉛などが含まれていない粉ミルクもあるので、母乳を一切飲ませられない場合は栄養の不足や偏りに注意が必要です。
海外旅行
HIVに限らず普段と違う環境では思いがけない疾患にかかることもあります。南アフリカが最も感染者の多い国です。続いて東南アジア、北アメリカ、南アメリカと続きます。
東南アジア地域の風俗ではコンドームをつけないことが多いため、新たな感染者が増えているようです。またインドなどで薬物による感染も見られます。
まとめ
HIVは早期発見で治療が可能な病です。
しかしエイズを発症するほど放置してしまうと命の危険があります。
HIVの早期発見をしようとしてもその初期症状は風邪やその他の軽度の病気に酷似しているので、素人はおろか、医者ですら判断が難しいので、自主的にHIV検査をしない限りほぼ見つかりません。
HIVの検査はプライバシーの問題で「本人の同意」がない限り勝手に受けさせてはならない決まりになっています。そのため会社の健康診断で血液検査をしてもHIVについての検査はされません。自分でHIV検査を頼まねばなりません。
HIV検査をするには3つの方法があり、保健所、病院、検査キット購入です。
保健所は無料で検査可能でおすすめです。
病院はすすんで診てもらうというよりは、妊娠や他の病気の治療のついでにHIVが発覚する場所である場合が多いようですが、お金を払えば診察してもらえます。感染の不安がある程度では保険適用外になる場合も多いです。診察料は含んでいませんが、検査自体は3000~2万円ほどの額になるようです。
郵送自己検査キットは時間がないときやなるべく誰かと対面したくないときには便利です。ただし、すべて自宅で検査できる検査キットはおすすめしません。海外購入が可能ですが、粗悪品があるためです。
日本で認定されている安全な郵送自己検査キットを使用しましょう。
感染するような可能性があるときは初期症状を確認し、自己判断によらず検査を受けましょう。
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