タミフルで異常行動が起きる?副作用や効果について知ろう!

毎年やって来る、インフルエンザ流行の季節。高熱や悪寒、関節痛などのインフルエンザ特有の症状は、子供にとっても、大人にとっても大変つらいものです。

そんなつらい症状を少しでも早く改善できるようにと、医療の発展とともに、現在までに4種類の抗インフルエンザウイルス薬が開発され、実際に使用されています。

そのうちの一つとして、近年、服用による異常行動で話題になっているのが、「タミフル」という薬です。10代の子供が服用した後、転落・飛び降りで亡くなったというニュースは、世間を騒がせました。

しかし、その後、本当にタミフルの服用「のみ」で、異常行動が見られたのかどうか、という検証結果によると、それも違うのではないかという見解も出ているのです。

そこで、ここでは、タミフルの異常行動について、現段階で明らかになっていることを、わかりやすくご紹介いたします。

タミフルについて

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タミフルは、日本国内のみならず、海外でも使用されています。しかし、海外では異常行動が見られた症例は日本に比べて少なく、あまり問題視されていません。なぜ日本人のみに、このような症例が見られるのかは、明確になっていないのです。

不安要素が多い薬のように感じますが、インフルエンザに対して非常に効果的な薬であることもまた、事実です。

まずは、タミフルとは一体どのような薬なのか、見ていきましょう。

効能、メリット

タミフルの主成分となっている「オセルタミビルリン酸塩」は、香辛料として料理で使用する「八角」という植物の「シキミ酸」という成分を採取し、とても複雑な化学反応を繰り返し、合成されたものです。

C型を除く、A型とB型のインフルエンザには効果的ですが、48時間以内に服用しなければ効果が低減すると言われています。インフルエンザの症状がさらに悪化するのを抑制し、早ければ高熱も1~2日で下がり、症状が出る期間を短期に縮めることができます。

さらに、薬を服用しない場合、解熱後もしばらくだるさが続きますが、タミフルを服用すれば、解熱後に倦怠感が残ることもなく、ほぼ通常通りに活動できることも、メリットの一つと言えるでしょう。

副作用

タミフルの治験結果で報告されている副作用としては、腹痛、下痢、嘔吐などです。あれほど話題になっている異常行動に関しては、“発生頻度のわからない副作用”とされており、薬剤添付文書という、より詳しく書かれた説明書に記載されています。服用する場合には、最低2日間は副作用に注意しておく必要があるでしょう。

異常行動に限らず、服用後、身体に何らかの異変が見られた場合は、速やかに病院を受診しましょう。

タミフルと異常行動の因果関係

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さて、それでは、タミフルの服用と、異常行動に関係性はあるのでしょうか?具体的な症例数を見てみると、日本で発売された2001年以降で、2008年までに、異常行動で亡くなった人は8人で、いずれの場合も12歳~17歳の10代であるという特徴があります。

しかし、死亡した人の脳からは、タミフルがほとんど検出されなかったため、脳に対する直接的な影響はないという見解もあり、因果関係の有無が揺れているようです。

タミフルを服用しなくても異常行動は見られる?

タミフルと異常行動の関係性が明確になっていないのは、いくつかの要因があげられます。それは、タミフル服用時に異常行動が出た場合、次の3通りが考えられるためです。

<熱性せんもうによる異常行動>

子供の場合、高熱を出すと幻覚や幻聴、幻視が現れることが原因となって、突然叫び出したり、自分の好きなキャラクターがここにいると言って笑ったりする、異常行動が見られます。

これは薬の服用の有無は関係しておらず、脳の温度が急激に上がることで、脳波が徐波(=てんかんや意識障害のときに見られる脳波)に傾いていることが多く、そこに速波(=覚醒・興奮状態のときに見られる脳波)が混入することが原因だと考えられています。

次にあげる、脳炎や脳症とは関係なく、数分から1時間程度で治まり、後遺症もありません。

<脳炎・脳症による異常行動>

これは、注意しなければならない病気の一つです。脳炎と脳症は異なり、脳が直接インフルエンザウイルスに感染し、炎症を起こした状態を「脳炎」と言い、免疫反応が過剰に働くことで「脳症」が引き起こります。

症状は熱性せんもうと同様の症状が見られますが、熱性せんもうによって起こる異常行動は短時間で治まるのに対し、脳炎や脳症による異常行動は長い時間継続します。とくに脳症の場合は進行が非常に早く、約8割が発熱後、数時間~1日のうちに症状が見られると言われています。

異常行動のほかにも、全身がカタカタと震える熱性けいれんや、まるで寝ぼけているように見える意識障害などがあげられます。場合によっては死に至るケースもあり、一命を取り留めたとしても、後遺症が残ってしまう可能性があるのです。

<タミフル服用による異常行動>

タミフルの副作用として異常行動が出るのは、服用後24時間以内だと言われています。異常行動も、熱性せんもうや脳症などの場合と非常に似ています。

また、異常行動が見られるのは10代の未成年に多いと言われており、身体の大きくなった子供の異常行動には、大人1人では太刀打ちできないこともあるので、夫婦で看病のローテーションを最低2日間は組むといった工夫が必要です。

このように、インフルエンザに感染した際に見られる異常行動には、上記3つの要因があり、症状も酷似していることから、異常行動が熱性せんもう、脳症、タミフルの副作用のうちのどれに当てはまるのかを見分けるのは、とても難しいのです。

それに加え、先に述べた、”死亡した原因がタミフル服用による、異常行動だと考えられていた人の脳内から、タミフルがほぼ検出されなかった”という事例もあるが故に、尚更、因果関係の有無をはっきりさせることが困難になっているのです。

他の薬でも異常行動はある?

抗インフルエンザウイルス薬で、タミフルと同系統の薬として知られているのが「リレンザ」という薬です。

タミフルと同じ「ノイラミニダーゼ阻害薬」で、ウイルスが増殖するのを抑制する働きを持っています。実は、このリレンザという薬にも、服用後に異常行動があるという報告があるのです。しかし、タミフル同様、明確な因果関係は明らかにされていません。

また、かゆみ止めとして多くの人に知られている、抗ヒスタミン剤の副作用による異常行動もあります。これは、薬の成分が脳内で移行しやすく、脳内のヒスタミンを抑制することによって生じるものと考えられています。

多くの薬は脳内の神経に働きかけるものが多いため、このような副作用が見られる可能性は、常にあると心得ておく必要がありそうです。

現段階でのタミフル服用についての見解

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このように、異常行動との関係がどうもはっきりしないのですが、タミフルが販売中止になっているということは、まだありません。明確になっていることと言えば、タミフルを服用した場合においても、服用していない場合においても、異常行動の発生率にさほど大きな差はないという点でしょうか。

それでは、現段階では服用について、国はどのように提示しているのかを見ていきましょう。

10代の未成年の服用禁止

タミフル服用による異常行動が大きく取り上げられたその多くが、10代の未成年であることを受け、2007年3月20日、10代の未成年のタミフル服用は原則として禁止されました。

インフルエンザによる合併症のリスクがある場合に、やむを得ず服用する際には、慎重に経過観察をする必要があるとしています。しかし、10代の人のみに異常行動が見られるという確証はないので、年齢を問わず、タミフル服用時は注意しなければならないと言えるでしょう。

1歳未満の乳児の服用について

実は、異常行動が見られたタミフルですが、乳児にも服用できる薬とされているのです。しかし、実際には乳児の服用経験が十分になかったため、『乳児に対する安全性、および有効性は確立されていない』と添付文書に記載されています。

これは、多くの薬品の添付文書に書かれている一文でもあるので、安全性の指標にするには、やや不安が残ります。タミフル発売元であるロシュ社は、『有益性と危険性を考慮しつつ、慎重に投与すべき』と提示しています。

わかりやすく述べると、「服用における安全性は確立していないものの、持病などがあり、インフルエンザウイルスによって合併症を引き起こし、命の危険がある場合は、慎重に投与する」と解釈できるのではないでしょうか。

妊婦・授乳中の服用について

妊婦や授乳中の場合も、乳児における服用と同様に、安全性は確立されていないことが、添付文書には記載されています。

また、服用中は授乳を中止し、服用終了から2日経過していることを条件に授乳を開始するようにといった記載もあるようです。

ところが、2007年に、米国疾患予防管理センターが発表した、妊婦のタミフル服用における母子の影響について「タミフルを投与した母子ともに副作用の報告はない」と公表し、それらに加え、タミフルが奇形の原因にはならないと、報告しています。

タミフル服用時の注意点

タミフル服用時の注意点は、薬との因果関係の有無に関わらず、異常行動によって命を落とすことがないよう、他の人がきちんと経過観察しておくということです。

とくに、服用後24時間~48時間の間に異常行動が見られるので、この間は患者を1人にしないように注意してください。あくまでも、誤って1度に2回分の量を服用することがないよう気をつけましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。薬は、私たちの健康的な日常生活をサポートしてくれる、大切な存在です。しかし、思わぬ副作用が見られるのも事実です。医療技術が進むにつれ、次々と新薬が開発されていますが、恐ろしいのは、ウイルスたちもそれに対抗してくるという点です。

タミフルは非常に優れた抗インフルエンザ薬として開発されましたが、ウイルスも進化し、タミフルに耐性を持つ、新たなウイルスが出てくる可能性もあるのです。

まるで、いたちごっこのようですが、このループに歯止めをかけられる日は来るのでしょうか。薬とのつき合い方を、改めて見直してみたいものです。

  
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