太ももや膝に何か瘤ができてるなと思ってそのままにしてる人も少なくありませんか?放っておいたら治るだろうとそう考えてる人も多いと思われます。でも、それ命を脅かすものかもしれません。
今回は悪性腫瘍のひとつ、滑膜肉腫について紹介させて頂きます。意外と自分の体調管理に疎かになりがちです。ひょっとしたら時すでに遅しという場合も少なくありません。この記事でそういった意識を少しでも変えて頂ければなと思います。
滑膜肉腫って一体何なのか
滑膜肉腫は太ももや膝関節に発生しやすい軟部組織の悪性腫瘍です。特に若い方に多いのが特徴的で10万人に2人程度発生しているとも言われている極めてまれな悪性腫瘍とも言えます。滑膜肉腫の診断には相当な知識を要するため、とても厄介な病気でもあります。
専門医でないと診断・治療が難しいので、専門の診療科に受診し、適切な治療が必要となります。腫瘍によっては肺に石灰化が伴っている場合見られたりする場合もあります。場合によっては頚部や体幹などにも見られるケースもあり、必ずしも滑膜由来というわけではないという面も持ち合わせています。
悪性腫瘍とは
悪性腫瘍という言葉を初めて聞いたという方にも悪性腫瘍の説明をさせて頂きます。悪性腫瘍は増殖が早く、周囲の組織から他の臓器やリンパ節に転移する腫瘍です。腫瘍細胞の増殖は無限で最後は死に至る極めて厄介な病気です。
ちなみに良性腫瘍というものもありますが、こちらは発生した部位に留まり、死に至ることはない腫瘍です。
悪性腫瘍の中では、胃癌、大腸癌、肺癌、肝癌、乳癌、子宮癌などが高頻度で発症しやすいとも言われています。
悪性腫瘍が発生する原因として、発がん物質や放射線といったものが関わっているとされています。他にも環境なども関係しているとも言われています。
滑膜肉腫の原因とは何なのか
滑膜肉腫の原因として、遺伝子の異常というのが考えられています。特に18番目の染色体の部分で細胞の異常を引き起こしています。
しかし、腫瘍が発生元の細胞は解明されていないとも言われています。そういう部分もあるためか診断が難しい要因とも考えられます。また、滑膜と名前がついていますが、必ずしも滑膜由来ではないというのは大きな特徴とも言えます。
滑膜肉腫の症状について
多くの腫瘍と共通して起きるのは月単位で大きくなる痛みを伴わない瘤です。従来の悪性腫瘍に比べてゆっくりと増大したり、同じ大きさである場合もあります。
中には痛みを伴う例外もあるので様々なケースがあるのが実情です。腫瘍の硬さも柔らかいものから硬いものまでありますが、関節の動きを阻害する程ではないです。病気が進行すると、肺や骨、リンパ節に転移することがあります。
特に肺に転移が見られると、命の危険もあるので、早期発見と早期治療が大事になってくるのです。この辺りは悪性腫瘍に見られる特徴ですが、滑膜肉腫の場合は瘤の大きさが変わらない部分もあるためか発見に遅れるケースも考えられるのです。他にも悪性腫瘍特有の倦怠感も症状として見られます。
転移はどのようにして行われるのか
悪性腫瘍の転移は原発巣からの癌細胞の離脱と浸潤、血管・リンパ管への侵入、脈管内における生存、標的となる臓器での脈管内皮に接着、脈管外へ浸潤、再増殖といったことにより転移が行われるのです。
増殖にはインテグリンやMMPなどのものが関わってくるとも言われています。
滑膜肉腫の検査・診断はどのようにして行われるのか
滑膜肉腫の検査・診断について移ります。滑膜肉腫は発見するのが難しいとも言われているのにどのようにして病巣を発見するのか疑問に感じたも多いと思われます。軟部腫瘍自体、良性腫瘍か悪性腫瘍かの見分けも難しく、診断が遅れたり、再発を繰り返してようやく悪性腫瘍と分かるケースも少なくありません。
それらを踏まえて、滑膜肉腫はどのような検査・診断を行って発見していくのかを説明していきたいと思います。
画像診断を行う
滑膜肉腫を疑う際、単純レントゲン、CT、MRI、PET-CTを行っていくことになります。X線で瘤が薄く写ったり、石灰が見られるというケースも中にはあります。
画像検査を行う目的として、病気がどれだけ広がっているのかというのを知る所にあります。肉腫の大きさや部位を把握するのに有効なのはMRIです。転移の有無や病巣以外の検査でCTを用いたりします。
画像検査の結果は手術をどのようにして行っていくのか、科学療法の経過観察を把握したりするのに用いられているのです。これを踏まえて、病理組織の診断を行っていくことになります。
顕微鏡による腫瘍組織の検査
病巣部から組織を取り出し、顕微鏡で検査していくものです。遺伝子の異常を検査したりします。眼に見えない小さな転移を発見するのに行われたりします。悪性腫瘍自体、細胞分裂のペースが早いため、顕微鏡による主要組織を検査するのは極めて有効な診断になってくると思われます。
血液検査はどうなの?
何か病気を発症した際、血液検査を行うことが多いと思われますが、腫瘍マーカーが無いため、有効とは言い難く、画像診断や顕微鏡で細胞を見ていくことが検査のメインとなっています。こういった部分が滑膜肉腫の診断を難しくしている部分が大きいです。
悪性腫瘍の進行度を把握する
悪性腫瘍の進行度を把握することは予後予測を行う上でも重要になってきます。様々な指標を用いて病期を分類し、予後予測を行っていきます。
よく知られているもののひとつとして、TNM分類という癌の進行度を分類する方法があります。病巣の大きさや周囲の組織の浸潤度を5段階、リンパ節の転移度合いを4段階、遠隔臓器の転移があるかないかというのを見ていくことになります。それらを踏まえて、病期を4段階に分類し、病期が進むにつれて予後が不良となります。またそれに応じて治療も行っていくことになるので、今どの段階にあるかというのは大事になってきます。
滑膜肉腫の場合、ヨーロッパではTrojani分類を用いたりします。アメリカだとNCIの評価方式を用いていたりします。
Trojani分類は腫瘍の分化度、核分裂指数、腫瘍壊死にスコアを与え、悪性度を判定していくスケールになります。
滑膜肉腫の治療について
この項目では、滑膜肉腫の治療にはどのようなことが行われるのかについて紹介していきたいと思います。
滑膜肉腫に気づいたらどうすればいいのか
滑膜肉腫を発症していることに気づいた場合、骨軟部腫瘍専門医のいるがんセンターや大学病院で専門的な治療を行っていく必要が出てきます。
広範切除術
手術により病巣を取り除くことが必要となります。腫瘍とその周囲の正常な組織を一部つけて、切除していくのが広範切除術になります。以前は切断術が行われいましたが、それでは手足を温存することができません。
この広範切除術の場合は手足を温存しつつ切断と同等の治療結果が得られる大変有効な手段でもあるのです。切断を行う症例はありますが、ごく限られた場合に限ってのみ行われるくらいです。この手術を行った後、再発率は10%程度とも言われており、極めて有効な治療法とも言えます。
投薬治療
画像診断で転移が確認されている場合は抗がん剤治療を行っていくことになります。日本でも現在、新薬の開発が行われていたりしています。
癌細胞の数を減少させる目的で行われています。ハイドロクロライドドキソルビシンやイホスファミドといったものが抗がん剤として用いられます。
放射線療法
放射線を当てて、腫瘍の成長を抑える治療法です。肉腫の場合、放射線療法だけでは難しいので、投薬治療や手術を組み合わせて行うことになります。
また、放射線を強く当てればいいというものではなく、強すぎると新たな腫瘍ができる恐れもあるのです。放射線用法を行う場合として、手術ができない症例や手術の補助程度に行われるというのが多いです。
放射線量も全身状態やどこに腫瘍があるのかにより決定される所もあります。局所での再発の可能性を少しでも減らすという狙いもあるので、予防という意味でも用いられているケースがあるということです。
滑膜肉腫の予後ってどうなのか
滑膜肉腫は悪性腫瘍の中でも悪性度が極めて高い腫瘍のひとつです。5年生存率は差があるものの30~70%とも言われています。10年生存率の場合は15~30%とも言われています。
中には再発する場合もあり、10年は外来での経過観察を行う必要もある極めて厄介な悪性腫瘍とも言えます。そういうのを踏まえると、完治という面では現状難しいとも言えるのです。フランスや日本で新薬の開発も進んでおり、それらの結果に期待する部分も大きいです。
肺に転移し、呼吸困難になり死亡するケースが多いとされています。
つまり
滑膜肉腫の治療は広範切除術、抗がん剤による投薬、放射線療法による再発防止など補助の3本柱で行われることになります。患者が手術できる状態かそうでないかによっても治療方針が変わってくるので、進行度を把握してその人に合った治療を行っていかなければならないということです。そういった意味でも予後予測は重要となってくるわけです。
また、治療技術が進んできたため、手足の温存や新薬の開発が進んでいることを踏まえると、より良い治療法に期待してもいいのではないかと思われます。
まとめ
今回、滑膜肉腫について紹介させて頂きました。発見するのがかなり難しい反面、悪性度が極めて高い悪性腫瘍です。場合によっては肺やリンパ節などに転移して重篤になっているというケースも十分あり得ます。
なので、何か瘤ができていると思ったら一度医師に診てもらうのも大事になってきます。医療の進歩により、手足を温存する手術方法も確立されています。早期発見と早期治療、これが自分の健康を守る最大限の努力ではないかと思われます。