皆さんは「沈黙は金(ちんもくはきん)」ということわざを知っていますか?
このことわざは、黙り込む事には価値があるという事を伝える内容なのです。一般的に黙ってしまう人よりも、話し上手な人の方が価値があるように思えます。
一体、沈黙することにどんな価値が見出せるのでしょうか。ここでは「沈黙は金」ということわざについて幅広くご紹介します。
沈黙は金について
人間関係が上手くいっている人は、話すのが上手いだけでなく、聞き上手でもあります。
人間関係を上手に構築するためにも、会話力を伸ばす為にも、知っておきたい言葉が「沈黙は金」です。ここでは、この言葉の意味や由来についご紹介します。
沈黙は金とは?
「沈黙は金」ということわざを辞書で意味を調べてみると・・・
沈黙することには金にも喩えられるほどの価値がある、という意味で用いられる語。
参照:Weblio辞書
よく喋る人は余計な事を口出しして失敗をする可能性があるという事を意味しています。つまりは沈黙の方が雄弁よりも価値があるという事です。この「沈黙は金」という言葉はよく「雄弁は銀」との対で用いられ「沈黙は金、雄弁は銀」と言われています。
「沈黙は金」と使ってしまうと、沈黙する事だけに価値があるように捉えることができますが「沈黙は金、雄弁は銀」とすることで上手く話す事も重要だけれども、沈黙する事はもっと大事だという意味になります。沈黙するだけではダメで喋る事も重要なのです。しかし、喋る時に上手に沈黙できるようになることで、会話力に磨きがかかるのです。
正しい読み方
沈黙は金ということわざについて誤まった読み方をしている人がいます。この言葉は「沈黙は金(きん)」と読みます。しかし多くの人が「沈黙は金(かね)なり」と誤解しているのです。
このような読み方はしませんが、カネと読んでしまう人の場合「時は金(カネ)なり」と混合してしまっている可能性が高いです。
ことわざの由来
この言葉は日本発祥のものではなく西欧文化圏から導入されたコトワザで、各国に似たような格言があります。初出はドイツ語で記載されたスコットランド人のトーマス・カーライルさんの著書である「衣装哲学」でみる事が出来ます。
この方は著述家・言論人として様々な金言がありますが、「沈黙は金、雄弁は銀」という言葉はカーライルさんの言葉ではありません。彼がスイスで見たドイツ語の碑文という事で本の中で登場している為、誰が唱えたかは定かではありません。
英語では「Speech is silver, silence is golden」という名言で伝えられています。欧米諸国でも沈黙である事の重要さを伝えてはいるものの日本とは少し違った要素も含まれています。欧米諸国は基本的に多弁の国であるからこそ、沈黙を忘れてしまう事があります。
その為、よく喋ることも大切だけれども、沈黙すべきタイミングや効果を理解して使う事も大切だと考えているのです。これは、普段お喋りな人に対して言えるような格言でもあり、元々喋らない人に対して沈黙が良いという事を諭しているのではありません。
元々の説
「沈黙は金、雄弁は銀」という言葉は現代では沈黙である事に価値があるような意味を持っていますが、当時この言葉が成立していた時には異なる意味を持っていたと考えられています。
この言葉が成立した時代では金よりも銀の方が価値があると考えられていました。その為、元々は雄弁である方が価値がある事を示した格言であったのです。ヨーロッパの人達は議論できる人が評価されており、議論ができないと仕事にならないと考えられていました。
言葉は時代背景や物の価値の違いによって意味が変化してしまいます。そして、お喋り文化であるヨーロッパ人であるからこそ、時には沈黙が必要という言葉が響くのです。また、日本は昔から金の方が価値が高かった為、この言葉が導入された時には既に現代の意味合いで捉えられていたものと考えられます。
沈黙である事でのメリット
沈黙よりも雄弁の方が勝るのではないかと思っている人も多いと思いますが、沈黙である事でのメリットもあります。沈黙になる事が雄弁よりも勝るのはその時のタイミングや場所で発揮されます。
ここでは、どのような場面でどのようなメリットが発生するのかこちらでご紹介します。
仕事に集中できる
仕事場で沈黙になる事が有利になるのは、仕事の職種にもよります。話す事を仕事にするような職業である営業職や漫才師、コメンテーターなどは除き、その他の職種では沈黙である事によりメリットをもたらします。
お喋りをしながら仕事をしていると、気が散ってしまい仕事に集中できなくなります。一方で黙々と仕事をする事で一つの事に集中でき効率よく仕事をこなす事ができるのです。このように仕事場では寡黙で作業に集中している方が評価されやすくなります。
早く解決できる
会議でずっと沈黙でいる人は会議に出る意味がない為、メリットにはなりません。しかし、タイミングを見ながら沈黙でいる事でメリットになる場合があります。例えば、会議をしている時に議論が全く生まれずに、発表者の言葉で解決する場合があります。
このような場合、沈黙することで争いが生まれずに時間が有効活用できるというメリットが生まれます。会議をしている時に「これはどうした」「あれは何だ」などと色んな事に口出ししていると、時間がかかってしまいます。
会議は多くの人が参加する場でもあるので、多くの人の時間を奪ってしまい、仕事の効率が下がってしまいます。早く解決をしたいと思うのであれば、本質を見極めて黙るところでは黙り、反論しなければいけないところでは反論する事で仕事に利益をもたらす事ができます。
言い訳しない姿勢を見せれる
沈黙を通すことで、言い訳しているように見えなくなります。沈黙することで、言い訳しないで相手の話を理解しようとしているという姿勢を見せることが出来るのです。例えば、何か失敗をしてしまった時には、多くの事を質問されると思います。
そんな質問に返答すると「言い訳するな」と怒鳴られてしまうこともあります。このように注意を受けている時に素直に自分の意見を言うと言い訳をしているように聞こえてしまう場合があります。
上司や年上の人は、目上の人の意見が正しいと自分たちの意見に自信を持っています。その為、年下から何を言われても、言い訳にしか聞こえないのです。こちら側としては言い訳をするつもりはなく、相手を説得しようとしたり、必死に弁明をしているのですが、受け取り手には伝わりません。このような場合は、沈黙を続けて相手の話をよく聞くことで、余計な争いに発展することを避けることができます。言ってもダメな相手には沈黙することで時間のムダがなくなります。
余裕を見せられる
黙っている人は、余裕を持っているように見せる事ができます。 例えば、よく話す人は早口で話したり、様々な話題に触れるため、焦っているような印象を与えます。
また、よく喋る人は、物事を深く考えずに頭に思い浮かんだことをそのまま喋りだしてしまう傾向にあります。その為、後々意見をコロッと変えてしまう事も多くあります。じっくりと考えて出した意見ではないので、説得力にもかけてしまいます。
このような人の場合は話している事も重要な事が少なく、信用も低くなります。黙ることで焦りがなくなり、余裕ができます。考える時間が出来、口数が減ることで言葉に重みを加えることが出来るのです。
余計な事を言わなくなる
沈黙を覚えることで余計な事を言わなくなるというメリットがあります。おしゃべりな人は秘密にして欲しい情報までもついつい喋ってしまいがちです。友達に「内緒にしてね」って話したのに、すぐに周りに伝わってしまった経験をした事がある人もいると思います。
お喋りな人は咄嗟に思いついたことを喋るので、何か共通の話題が出てきた時には思い出した事を喋ってしまいます。このようにして、秘密にするべき事も喋ってしまうのです。友人関係の事だけでなく、社内の機密情報を漏らしてしまったりすることもあります。
取引先の人と話している時に、お互いの会社の情報交換は必要ではありますが、喋りすぎてしまうと信用がおけない人だと思われてしまいます。沈黙ができる人は余計な事を言わなくなり、都合が悪くなる事を避ける事が出来るようになるのです。
聞く力が身に付く
自分が喋らない状況を作ることで、相手に多くの事を喋ってもらえます。そして、相手の意見をたくさん聞くことで聞く力を身につける事ができます。今までは自分の意見と違う事を話された時には反論していた人も、黙って聞いて見ることで相手が何を言いたいのか、望んでいるものは何かが見えてくるようになります。
このように見えてくることで、相手に合わせた返答ができるようになり、結果的に聞く力が身に付くことで、会話力が上がるようになるのです。相手を冷静に分析する事が出来、相手の考え方を十分に理解した上で自分の意見を言える為、議論になったとしても解決策を見つけやすくなります。
言うべきか言わないべきかの見極め方
結局のところ黙っているだけではダメで、きちんと自分の意見を言う事も重要です。
ここでは、どんな状況で相手に意見を言うべきなのか、またどんな状況の時には黙っているべきなのかを見極めるポイントについてご紹介します。
自分にとってプラスに働くかを考える
相手に意見を言う時に、ただ単に自分の思った事を発してしまうと、余計な事を言って相手を傷つけてしまう場合があります。このようなリスクを避ける為には、言葉を発する前にその言葉が自分にとってプラスに働くかを考えることが重要です。
この言葉をわざわざ言うことで、自分にメリットがでてくるかを考えて話すと暴言やいい訳などの言葉が排除されるようになります。そして、結果的に自分にも相手にとってもいい話し合いができるようになります。
相手の立場になって考えてみる
よく「相手の立場になって考えて見なさい」と幼い頃から教育を受けていた人もいるかもしれません。この相手の立場になって物事を見るという事は重要なことで、この力があることで無駄な争いを避ける事が出来ます。
まず黙って相手の話に耳を傾けることで、相手の要求や言いたいことが分かるようになってきます。相手の事を十分に理解した上で、これから発する言葉が相手の為になっているかを考え発するべきか発しないべきかを考えましょう。
言いたい事を明確にする
お喋りな人は喋りながら言いたい事をまとめようとする為、話の論点がずれてしまったり、結局いいたい事が相手に伝わらなかったりします。これにより、余計な時間がかかってしまったり、相手の信用も低くなってしまうのです。
まずは、自分の言いたい事を明確にすることが大事です。黙って自分の意見を頭の中でまとめてみるのです。まとまってから言葉を発することで、相手に自分のいいたい事が伝わるようになります。
黙るべきタイミングについて
見極め方について理解したとしても、お喋りが癖になっている人はどうしても直すのに時間がかかってしまいます。
そのような人の為に、ここでは黙るべきタイミングについてご紹介します。黙るべきタイミングできちんと黙るようにするだけでも相手に与える印象を大きく変えることができます。
質問した後
誰かに質問をしたにも関わらず、その人の答えを待たずに自分の意見を話し始めてしまう人がいます。このような人は、人にアドバイスをしている自分に酔っていたり、自分の意見を主張したいだけなのです。
相手の話を最後まで聞かないと、相手の要望にも答えることができずに、的外れなアドバイスをしてしまったりします。質問をした直後は、相手が話し終わるまでしっかりと待ちましょう。
沈黙が続いた時
沈黙が続いた時に、沈黙が気まずくて何かネタはないかと急いで頭の中を探し出します。そのような時に出てくる話は、余計な事を口にしてしまう場合が多いです。人の噂話であったり、話してはいけない秘密ごとなどを話して話題を盛り上げようとしてしまいます。
不用意な発言をするのであれば、そのまま黙っているようにしましょう。もしくは、自分が喋りだすのではなく、相手に質問して相手に喋ってもらう事も1つの手です。
自慢話をしそうな時
人は自慢話をされるのを嫌がります。相手から質問されて自然な流れで「芸能人の○○とは友達なんだ」などと話す分には問題ありませんが、いきなり聞いてもいないのに友達に芸能人がいると話をする人は自慢話と思われても仕方がありません。
会話というのは流れがあります。時には流れが途切れて新しい話題に移るときもありますが、自分のしたい話だけをするのではなく、相手との会話の状況をみて話すべきことを話すことが重要です。そうでないと会話のキャッチボールが成り立たなくなります。聞かれてもいないのに、自慢話をしてしまいそうな時は黙ってタイミングを見ましょう。
どうでもいい話
「私、昨日こんな夢みてね・・・」と夢の話を詳細に話す人がいます。その夢の話から何か現実世界に発展するような事があれば聞いてられますが、夢の話だけで終わってしまうと、相手にどうでもいい話だと思われてしまいます。
自分がいくら面白いと思ったとしても、相手にはその面白さが伝わらない場合があるのです。相手にとってどうでもいい話はしない、または気付いた時点で早く切り上げるようにしましょう。
他人の助けをする時
自分が中心となるわけではなく、縁の下の力持ちとして他人の為に活躍したいと思っている場合も多くを語らずにいることが重要です。縁の下の力持ちの方が目立ってしまっては、陰の助けにはなりません。陰で支える存在でいたいのであれば、口数もその分だけ減らしていくことが重要です。
おわりに
「沈黙は金」は黙っている事はお喋りよりも価値がある事を意味する用語です。黙っていることでメリットがあるのは、時と場合によります。どんな時に沈黙するべきなのか時を見極める事でメリットを発揮することができるのです。
今回ご紹介した記事で、沈黙の使い方をマスターしてコミュニケーション上達に繋げていきましょう。