激しい腹痛とともに、下痢や嘔吐を伴うノロウイルス。とくに12月~1月に流行のピークを迎えますが、春や夏も、感染がゼロになるというわけではありません。
また、非常に強い感染力を持っているため、感染した場合には、周りの人との接触に細心の注意を払う必要があります。症状が治まってからも、人に感染する可能性があるので、登校・出勤のタイミングを見定めるのも、容易ではありません。
そこで、ここでは、ノロウイルスの潜伏期間や感染経路を改めて確認し、学校や会社をどのくらい休む必要があるのかに加え、二次感染を防ぐための対策法をご紹介いたします。
ノロウイルス感染から治癒まで
ノロウイルスは、様々な遺伝子型が存在し、数年に一度、新型のウイルスが生まれるため、一度感染したからといって、私たちに耐性がつくわけではありません。実際に2015年から2016年シーズンには、新型ノロウイルスも発見されているため、油断は禁物です。
さて、ではノロウイルスが私たちの体内に侵入したら、どのように猛威を奮っていくのか──まずは、感染後の発症から治癒までの経過について、見ていきましょう。
潜伏期間から治癒まで
ノロウイルスに感染すると、1日~2日と、比較的短い潜伏期間を経て発症します。非常に強い感染力を持ち、増殖するスピードも早いため、100個以下の少量のウイルスであっても、十分に人体に感染する力を持っています。
症状としては、腹痛・下痢・嘔吐・発熱、人によっては筋肉痛を伴う場合もあり、体力も消耗します。現段階では、ノロウイルスに効果のある薬は見つかっていないため、体内からウイルスが排出されるまで、安静にしておくしか治療法はありません。
嘔吐や下痢を伴うため、脱水症状が起きやすいので、こまめに水分補給をし、あまりにも症状がひどい場合には、病院で点滴などの対処をしてもらう必要があります。
しかし、不幸中の幸いか、短期に集中して発症するため、ズルズルと長く症状が出るわけではなく、1日~3日程度で症状は治まります。後遺症もとくにありませんが、体力・免疫力ともに低下しているため、別型のノロウイルスに再感染しないよう、注意が必要です。
二次感染の可能性がある期間
ノロウイルスが人から人へ感染する可能性のある期間は、潜伏期間から始まっています。症状を発症していなくても、体内にウイルスが侵入した時点で、十分に二次感染の可能性は考えられます。
体内にウイルスが侵入し、症状が発症してから、1週間程度は二次感染の可能性が非常に高く、とくに発症から3日間は、最も感染力が高いと言われているため、十分な注意が必要です。
また、下痢や嘔吐などの症状が治まったあとも、ウイルスは体内に残っており、便から排出されています。そのため、症状が治まっても1週間前後は、二次感染の可能性があると考えておいておいでしょう。
ノロウイルス感染後の出勤について
二次感染の恐れがあるウイルスに感染して、もっとも困るのが、学校や会社をどの程度休まなければならないのか、という点ではないでしょうか?上の項目でもご紹介したように、症状が治まったと思って、登校・出勤したら、人に移してしまった、なんてことがあっては大変です。
感染後の登校・出勤は、いつ頃が良いとされるのか、早速見ていきましょう。
いつから登校・出勤しても良いのか?
実は、ノロウイルスは、インフルエンザウイルス等とは異なり、出席・出勤停止期間が定められていません。学校や会社によっては、独自の基準が定められている場合もありますので、まずは、そちらを確認しましょう。
とくにそのような基準がない場合は、医師からウイルスが完全に排出されたことを確認し、出席・出勤停止解除が出されるタイミングに従うのがベストです。
少なくとも、発症後1週間~10日前後の、強い感染力を持つウイルスが体内にある間は、欠席・欠勤を余儀なくされるでしょう。
しかし、会社勤めの場合は、そこまで長く休みを取れるところも少なく、日常生活に問題がなければ出社しても良いとされているところが殆どなのだとか…。現実的には仕方のないことですが、その際には細心の注意を払って、二次感染防止に努めたいものです。
大勢の人を巻き込む恐れがありますので、責任を持って慎重に判断することが重要です。
診断書は必要?
会社の就業規則によっては、診断書の提出が必要ない場合もあるようですが、ノロウイルスに感染した場合、少なくとも1週間は病欠という形になるので、診断書を提出したほうが良いかもしれません。
しかし、診断書を書いてもらうのには、約3000円~10000円(医療機関によって異なる)の費用がかかります。さらに、これに加えて、ウイルスが体内から消滅したかを判断するための検査も必要になるのですが、これらの検査は保険適用外のため、簡易検査の場合は数千円、精密検査の場合には約20000円かかると言われています。
診断書を書いてもらう費用と合わせると、場合によっては30000円以上かかることもあります。高額な出費になりますが、仕事へ復帰するためには必要なお金です。まずは、勤め先に、診断書の提出が必要かどうか、確認してみましょう。
ノロウイルスの二次感染を防ごう!
最初にノロウイルスに感染するのは、ウイルスに汚染されている牡蠣などの二枚貝を、十分に加熱調理された状態ではないまま食べた場合や、きちんと消毒されていない井戸水や水道水を飲んだことにより感染します。
そこから、2パターンの感染経路をとおり、人から人へ、二次感染するのです。
ここでは、ノロウイルスの感染経路を改めて確認し、やむを得ず、早めに登校・出勤することになったときのための、二次感染対策法をご紹介いたします。
二次感染経路その①<接触→経口感染>
ノロウイルスに汚染された手や、ドアノブ、あるいは衣服などに接触し(=接触感染)、接触した手指で食べ物を食べるなどして、最終的には口にウイルスが入る(=経口感染)ことで、新たに感染者が増えるケースが、このタイプの感染経路です。
ノロウイルスは、アルコール消毒液では、耐性を持っているため、消毒の効果を期待できません。ノロウイルスを予防するには、次亜塩素酸水を使用するのが効果的です。
インターネットサイトや、ドラッグストアでも、次亜塩素酸水を希釈したスプレーなどを購入できるので、それらを使用しましょう。食品添加物としても利用されているので、比較的安心して使えます。
症状が治まってすぐに登校・出勤しなければいけない場合には、このような除菌スプレーを持参し、こまめに手を除菌することを心がけると、二次感染のリスクを大幅に軽減できます。
また、基本的な手洗いも忘れずに行いましょう。爪の中や、指の間、手首、可能であれば肘までしっかりと洗うことができるとベストです。そして、泡立てた石鹸は、流水でしっかりと濯ぐこともポイントです。
濯いだ手を拭く際には、多少もったいない気もしますが、ペーパータオルを使用すると、ハンカチを使うよりも、清潔に保てます。
二次感染経路その②<飛沫→経口感染>
風邪やインフルエンザなどの「飛沫感染」と、ノロウイルスの「飛沫感染」は、多少異なります。ノロウイルスの飛沫感染は、感染している人の吐瀉物や排泄物が床などに飛び散る際、1~2mm程度のウイルスを含んだ水滴が飛散し、それらを吸い込むことによって感染するケースを示します。
このほかにも、吐瀉物や排泄物を、きちんと処理できていない場合にも飛沫感染する可能性があります。乾燥した吐瀉物・排泄物からウイルスを含んだ有機物が、ほこりと一緒に空気中に舞い上がり、そこを通った人がそのほこりを吸い込むこと(=経口感染)でも感染します。
また、ウイルスを含んだ有機物が衣服等に付着すると(=飛沫感染)、その衣服を触った手で食べ物を食べ、最終的にウイルスが口に入る(経口感染)ことによって感染する場合もあります。
これらを防ぐためには、まず、トイレを使用した後には、先に述べた次亜塩素酸水を含むノロウイルス専用の除菌スプレーで、便器や床を消毒するなど、徹底した除菌・殺菌が必要です。
早めに登校・出勤しなければならない場合には、症状が出ていたときに着ていた衣類、タオル、ハンカチなどは必ず洗濯し、消毒したものを身に付けるようにしましょう。
消毒スプレーを持ち歩き、勤務先などでトイレを使用する場合は、使用後に除菌して退室するのも、マナーの一つです。
二次感染を防ぐ、基本的な心がけ
新たな感染者を増やさないようにするには、ノロウイルスに感染した人の心がけが大切です。上でご紹介したように、【入念な手洗い】【吐瀉物や排泄物の丁寧な処理】は、基本中の基本と言えるでしょう。
できれば、周囲の人にも、自分がノロウイルスに感染したことを伝え、手洗いをこまめにしてもらうよう伝えることができれば、さらに二次感染のリスクを軽減できます。
また、ノロウイルスは、くしゃみや咳などによる二次感染はしないと言われていますが、症状が治まってすぐに登校・出勤する場合には、マナーとして、マスクを着用すると、周囲の人も安心できるかもしれません。とにかく、身の回りを清潔にすることを一番に心がけましょう。
症状が出ているときに登校・出勤するのは、もってのほかです。集団感染を防ぐためにも、責任を持って休養し、医師の判断のもとで復帰する時期を見極めましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ノロウイルスは、感染力が強いだけではなく、症状そのものも、非常につらい感染症で、小さな子供や高齢者に感染すると、重症化する場合もあります。
感染拡大を防ぐには、まず、感染した人が、二次感染を防ぐ意識をしっかりと持つことが大切です。
とくに、症状が治まってしまうと、そのような意識が緩みがちです。しかし、自分の体調が良くなってもまだ、ほかの人に移してしまう可能性があるということを自覚しておきましょう。