肺塞栓症の症状とは?原因や治療方法も知っておこう!

肺塞栓症(はいそくせんしょう)と言う病気を聞いた事があるでしょうか。肺塞栓症は血管の中にできた固形物(血の塊など)が肺の動脈の中で詰まってしまい、突然死を引き起こす事もある恐ろしい病気です。

テレビなどで取り上げられる事も多い肺塞栓症は別名「エコノミークラス症候群」とも呼ばれ、被災地での車中泊の際多発した事でも問題となりました。今回はそんな肺塞栓症についてご紹介します。

肺塞栓症とはどんな病気か

肺塞栓症

先程も述べたように、血の塊(血栓)が肺動脈に詰まってしまう病気です。この血栓は主に脚の静脈内で発生し、血液の流れに乗って心臓を経由した後に肺動脈に達します。

その時に血栓が血管内で詰まってしまう事があり、その詰まった範囲が広い場合には死に至る事もあります。

血栓ができる原因

原因

血管を詰まらせる血栓は何が原因で発生するのでしょうか。

静脈の損傷

血管の内側は血管内皮によって覆われています。何らかの原因でこの血管内皮が損傷していると、その部分で血液が固まり血栓ができやすくなります。

長期的な点滴や輸血、骨折した際に血管が損傷する事が多いようです。

体質

生まれつきの体質で血栓ができやすい人がいるようです。特発性血栓症と呼ばれるもので、20代以降で発症する事が多く、入院などによる長期間の臥床などの際に血栓ができやすくなります。

血流の悪化

長期間の臥床や座った状態での長時間の移動、ケガなどの負傷で脚を動かせない状態にある時などには筋肉の収縮が行われず、心臓へ血液を送る機能が低下し血液の流れが悪化します。通常は何らかの疾患やケガにより、長期間脚を動かせない場合に血栓ができやすくなりますが、稀に車や飛行機、電車などでの移動の際にも血流の悪化が起こり血栓ができる事があるそうです。

また女性の場合、妊娠中や卵巣の腫瘍などによっても腹部の静脈が圧迫され、血流悪化に繋がることがあると言われています。

肺塞栓症の症状

症状

肺血栓症になると現れる主な症状をご紹介します。

息苦しさ

肺塞栓症の代表的な症状の一つです。肺動脈が詰まる事で血液中の酸素濃度が低下すると、心臓が身体へ必要な酸素を送り出そうとするために脈拍も増加します。

一方で肺は多くの酸素を取り込もうとするため、呼吸の回数も増えて息苦しさを感じるようになり、普段ではなんともなかった階段や坂でも息切れを起こすようになります。

胸痛

息を吸った時に、胸に鋭い痛みを感じる事があります。肺動脈が詰まっている事で、肺動脈内部の圧力が上昇したり、心臓を取り巻く冠動脈への血液が減少する事などにより痛みが生じるとされています。痛みの他、圧迫感や不快感といった症状が現れる事もあるようです。

失神

血管が詰まり、心臓からの血流が減少する事による血圧低下や神経反射によって、失神やショックを起こし意識を失う事があります。症状が重たい場合は突然死に繋がる可能性もある危険な症状です。

脚の腫れ

肺塞栓症の原因である血栓は主に脚の静脈で発生していると言われています。

脚に血栓ができる疾患を「深部静脈血栓症」と言うのですが、この深部静脈血栓症の症状である脚の腫れや痛みなどの症状が、肺塞栓症の患者にも多く見られるようです。脚の腫れは他の病気にも見られる症状ですが、腫れが片足に現れている場合は深部静脈血栓症の可能性が高く、肺塞栓症に繋がりやすいと言われています。

他にも、顔面蒼白、冷や汗、血痰、発熱などの症状が現れる事もあります。

肺塞栓症の検査

検査

医師は患者の症状の他、手術暦や長期の臥床、遺伝や体質から肺塞栓症の診断を行います。肺塞栓症は深部静脈血栓症などの前兆が見られれば診断は比較的容易となるそうですが、症状が現れず目立った特徴が無い事が多い病気です。

また、胸部X線による血管影の変化や心電図検査での異常などから判断する事も困難であり、肺塞栓症は診断の難しい病気の一つとされています。

検査方法

まずは血液検査を行います。血液検査でDダイマーの値を確認し(血液中に血栓があると高い数値を示します)、異常値である時や肺塞栓症の疑いが高い場合には、更に精密検査が実施されます。

CT検査

造影剤を注入し、肺に達した後スキャナーで血管の画像を構成して血栓の有無を確認します。肺塞栓症の画像検査で多く使用される方法で、検査時間も短く大きな血栓の場合には正確な結果を得られる事が特徴です。

肺血流スキャン

少量の放射性物質を静脈内に注入し、肺への血流の供給状態を確認します。血栓がある場合や肺気腫などの病気がある場合、血流の減少が起こり異常となって現れます。検査時間が長い事や肺塞栓症以外の病気も反映されると言う特徴があります。

また、一般的に肺換気スキャンと言う検査も同時に実施されるようです。特殊なガスを吸い込みスキャナで酸素の取り込み状態を確認します。この二つの検査結果を比較する事で肺塞栓症かどうかの判断をする事が可能です。

肺塞栓症の治療

治療

肺血栓症の治療は重症度や他の疾患、実施する医療機関などにより方法が異なります。

抗凝固療法

血液が固まりにくくするヘパリンなどの薬を用いて、血栓の予防や拡大の防止を行います。ヘパリンは静脈から注入し、短時間(24時間)以内に効果が現れるよう量を調整します。

他にワルファリンと呼ばれる坑凝固薬を使用する事もあります。ワルファリンは経口により取り入れ、長期間の使用が可能となっています。効果が現れるまでに時間がかかってしまうデメリットがありますので、治療開始の数日間はヘパリンと併用で使用する事があります。

抗凝固療法は血栓の原因によって治療期間が異なります。静脈の損傷などによる一時的な要因の場合は約2~3ヶ月、長期の臥床などの場合は数ヶ月~半年程度と言われていますが、何度も再発を繰り返すような遺伝的要因が強い場合には生涯にわたり治療を続ける必要があります。

血栓溶解療法

発生した血栓を分解して溶かす方法です。ストレプトキナーゼや組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)などの薬が用いられ、肺塞栓症が命に関わるほど重篤な場合に実施されます。妊娠中や脳卒中患者、手術後間もない場合や出血しやすい人などには使用できないという注意点があります。

手術による血栓の除去

症状が重い場合、医療機関によっては手術による治療が行われます。主にカテーテルと呼ばれる細い管を肺動脈に挿入して、血栓を除去する方法が用いられます。

血栓を除去する方法

カテーテルによる血栓の除去はいくつかの方法がりますのでご紹介します。

血栓の吸引

血管内の血栓を直接吸い取る方法があります。この方法で血栓を吸引できれば症状が大きく改善し、効果が大きい方法とされています。

血栓の破壊

血栓を破壊してしまう方法で、破壊された血栓の表面積を増やす事で、血栓を溶かす薬の効き目を大きくする効果が期待できます。

血栓内への薬物投与

血管内に挿入したカテーテルの先端から薬剤を圧力をかけて吹き付ける事で、点滴による投与よりも高い効果が期待できるとされています。

外科手術

肺塞栓症が重篤であるか、何らかの理由で薬物の投与やカテーテルによる治療が行えない場合には外科手術により血栓を取り除く治療が行われる事があります。

肺塞栓症の予防

予防

肺塞栓症を起こさないための予防法をご紹介します。基本的には肺塞栓症の原因となる血栓の発生を予防します。

日常生活での予防

特に体質的に血栓ができやすい人は、普段から血栓が発生しないような行動を心掛ける事が重要です。積極的に身体を動かすようにし、乗り物による長時間の移動などでは2時間に一回程度歩き回るようにすると良いでしょう。

こうする事で脚のポンプ機能を働かせ血流を改善し血栓の発生を予防します。また定期的な水分の補給や、深呼吸なども効果があるとされています。

物理的な予防

弾性ストッキングや弾性包帯により脚を圧迫し続ける事で、静脈のよどみを減少させて血流の改善を行います。自身の使用目的にあった圧力やサイズのものを、担当医がしっかり考慮し選ぶ必要があります。

また、病状や他の病気などで、立ち上がったり歩き回る事が難しい場合、脚に巻いたゴムチューブに機械で間欠的に空気を送り込み、周期的に圧迫させて血流の改善を行う方法があります。ですが既に深部静脈血栓ができている場合、その血栓がはがれ、血流に乗って流れてしまう事で、肺塞栓症の原因となる恐れがありますので注意が必要です。

手術での予防

下大静脈フィルターと言う器具を使い、深部静脈血栓が剥がれ肺へ流れてきた血栓を捕らえ、肺塞栓症を防ぐ方法です。下大静脈フィルターには永久留置型と非永久留置型の二種類があり、日本では深部静脈血栓の再発防止の観点から、非永久留置型が勧められているようです。

まとめ

肺塞栓症について簡潔にポイントをまとめました。

  • 肺塞栓症は肺動脈に血栓が詰まり、場合によっては死に至る病です。
  • 移動中などに急に発症したものはエコノミー症候群とも呼ばれ、テレビなどで度々取り上られています。
  • 脚にできる深部静脈血栓や血栓ができやすい体質が主な原因とされています。
  • 血管や肺の状態を確認する方法により、肺塞栓症の検査が行われますが診断は難しい病気とされています。
  • 主に薬や手術によって血栓を除去する治療が行われます。
  • 脚のマッサージなど、血流の改善により血栓の予防を行います。

【最後に】

肺塞栓症は移動中や車中泊などの際に突如発症する事もあり、身近に潜む病気の一つと言えるでしょう。

ですが、検査での発見が難しい他、場合によっては死に至る厄介な病気でもあります。特に血栓ができやすい体質の人は、日頃から予防を心掛けた行動をして発祥のリスクを減らす事が大切です。

  
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