味噌汁やサラダ、煮物やグラタンなど、幅広い料理に使えるじゃがいもは、値段も手ごろで身近な食材です。あまり意識されませんが、実は栄養もたっぷりと含まれています。
じゃがいもに含まれる栄養素から、種類や旬、おいしくて体にいい食べ方までを一挙にご紹介します。手ごろで優秀なじゃがいもをもっと活用して、ヘルシーな食生活を目指しましょう!
じゃがいもに含まれる栄養
じゃがいもはナス科の植物で、地下茎の先端が大きく膨らんだ部分をじゃがいもとして食用に利用します。主な成分は炭水化物ですが、ビタミン類、ミネラル、食物繊維も多く含まれています。
中くらいの大きさのじゃがいもひとつの重さは100g前後。大きいものは150~200g程度です。大きなじゃがいも約1/2個100g中に含まれる主な栄養は以下の通りです。
- ビタミンC 35mg
- ビタミンB1 0.09mg
- カリウム 410mg
- 食物繊維 1.3g
じゃがいもは栄養を摂りやすい食材です
じゃがいも100gに含まれる栄養素は、必ずしも非常に多いものではありませんが、一度に食べられる量や食事に使う頻度などを考えると、じゃがいもからビタミンやミネラルなどの栄養を摂る効率が非常に高いことがわかります。
それぞれの栄養素が多く含まれているイメージの強い食材の含有量と比べてみましょう。
たとえば、レモンには多くのビタミンCが含まれていますが、レモンが好きな人でも生のレモン100gを食べる機会はあまり多いとは言えません。また、たらこはナイアシンの含有量がとても多いものですが、たらこを100gも食べ続ければ、塩分の摂りすぎで高血圧などの病気になる可能性もあります。
その点、じゃがいもの場合、たとえば普通のポテトサラダ1人前に含まれるじゃがいもは約100g。1品で簡単に栄養が摂取できます。
- じゃがいも その他の食材
- ビタミンC 35mg レモン 100mg
- ビタミンB1 0.09mg 小麦胚芽 1.82mg
- カリウム 410mg キウイ 290mg
- 食物繊維 1.3g 生しいたけ 3.5g
じゃがいもに含まれる栄養素が、私たちの体の中でどのように働くのかを、具体的に見ていきましょう。
熱で壊れにくい! じゃがいもビタミンCで元気でキレイ!
ビタミンCは柑橘類などの果物、野菜全般にも多く含まれていますが、加熱によって破壊されやすいのが性質です。しかし、じゃがいもに含まれるビタミンCは、でんぷんに守られているので加熱によって破壊されにくいという特徴があります。
美容のためのビタミンとして有名なビタミンCは、なんといっても強い抗酸化作用が特徴。人間は常に酸素を吸って生きていますが、体に入った酸素のうち何パーセントかは、活性酸素に変化します。活性酸素は体内に侵入したウイルスなどを攻撃してするために必要なものですが、ストレスや喫煙などで増えすぎると健康な細胞を攻撃し、病気や老化の原因になります。ビタミンCは、この活性酸素を除去してくれる大切なビタミン。
皮膚や血管の老化を防ぎ、免疫力を高めてくれるので、キレイで元気にいるためには、ビタミンCを十分に摂取することが大切です。さらに、ビタミンCは、コラーゲンの生成を助け、皮膚に張りをもたせ、柔軟な血管や筋肉を保ってくれます。
ビタミンB1は疲労回復に不可欠!
疲労の回復を助けるビタミンとして有名で、豚肉やうなぎに多く含まれています。夏バテ予防に、土用の丑の日にうなぎを食べる習慣があるのは、昔からこの疲労回復効果が経験的に知られていたからといわれています。
日本人は米を主食にしており、米は体内で糖質に分解されます。ビタミンB1は、糖質の代謝にかかわり、糖質からエネルギーを生産する手助けをします。ですから、ビタミンB1が不足すると、エネルギーの生産が行われず、疲れやすい、だるいなどの症状が出ます。さらに不足すると脚気になります。
また、吹き出物などが出たときにビタミンB1のサプリなどを摂るとよいのは、皮膚や粘膜を守る働きがあるからです。
日常的にじゃがいもを食べることで、ビタミンB1の不足を補えます。
カリウムは塩分の排出役 成人病やむくみ予防に
カリウムはミネラルの一種で、いろいろな食品に含まれますが、じゃがいもはなんといってもカリウムが豊富なのが特徴です。
人間の体液は、常に一定の水分バランスに保たれていますが、濃い味つけのものを食べて体内のナトリウム量が多くなると、カリウムがそれを排出することで、血圧を正常に保っています。高血圧や動脈硬化の予防のためにも欠かせない栄養素です。
また、むくみ予防や改善にも効果があります。しかし、排出されるナトリウムと同じ量のカリウムも同時に失われるため、いつも食事から摂り続けなければなりません。
食物繊維
口から食べた食べ物のうち、人間の体の中で消化できないもののをまとめて食物繊維と呼びます。食物繊維は、腸内の老廃物を吸着して排便を促す効果があり腸内の環境を整えます。
じゃがいもには豊富な食物繊維が含まれており、果物と比較した場合、マンゴーやりんごと同じくらいの食物繊維を摂ることが出来ます。
食物繊維は、大きく分けて水に溶けやすい水溶性と、水に溶けない不溶性の2つの種類がありますが、りんごの食物繊維には両方がバランスよく含まれるのが特徴です。
果物の食物繊維などが代表の水溶性食物繊維は、胃の中で水分を吸収するので満腹感が得やすく、糖質の吸収を抑えて血糖値の上昇を緩やかにする効果があります。
一方でごぼうなどの野菜に含まれる不溶性食物繊維は、腸で水分を吸収して排便を促し、便の滞留時間を短くする効果があります。
じゃがいもの芽には要注意!
すぐにじゃがいもを食べずに放っておくと、じゃがいもの皮から芽が出てくることがあります。この芽や芽の根元にはソラニンとチャコニンという神経毒が含まれており、食べると頭痛や嘔吐、下痢、めまいなどの中毒症状を起こすことがあります。
芽が出てしまったじゃがいもは芽とその根元の周囲を大きく切り取ってから使いましょう。家庭菜園などで収穫した小さくて未成熟なじゃがいもや、日光にさらされて緑っぽく変色したじゃがいもにも、ソラニンやチャコニンが含まれていることがあるので、注意が必要です。
じゃがいもの栄養の効果的な食べ方
じゃがいもの栄養をたっぷりと摂るためには、加熱による栄養素の損失を出来るだけ防ぐのが大切です。
ビタミンCはじゃがいものでんぷんに守られているため、ほうれん草などよりもゆでた時に失われる量は少ないのですが、カリウムは、熱や水に弱く調理で失われやすく、ゆでた場合の損失は約30%といわれます。ビタミンB1も水に溶けやすい性質がありますが、加熱による損失はビタミンCに比べると少ないといわれます。
そこでおすすめなのが、ゆで汁ごと食べる調理法。みそ汁はもちろん、ヴィシソワーズや野菜スープなどは週に何度かは食べたい料理です。ポトフやおでん、肉じゃがなどを作るときは汁も残さず食べられるよう、薄めの味つけを心がけましょう。
また、ゆでる場合は、皮をむかずにきれいに洗ってからゆでると、失われるビタミンCやカリウムは、より少なくてすみます。皮つきのままゆでると風味も残るので、じゃがいものおいしさが引き立ちます。
同じく皮つきのまま蒸すか電子レンジで加熱するのもおすすめです。マッシュポテトやコロッケ、ポテトサラダなどを作るときなどは、ひと手間かかりますが、皮つきのまま加熱しましょう。
じゃがいもの旬と種類
1年中手に入るじゃがいもですが、実は旬は春と秋の年2回。中でも春に採れるじゃがいもは新じゃがとして流通されます。新じゃがは、キタアカリという品種などが小さいうちに収穫されたもので、小さくて皮が薄いのが特徴です。
じゃがいもは世界中で栽培され、数千種類の品種があるといわれています。日本で栽培されているのは、そのうちほんの数十種類ですが、私たちがスーパーなどで目にするもの以外にも、実は多くの品種が栽培されています。
ポテトチップなどスナックの材料や片栗粉の原料となるものまで、用途はさまざま。代表的なじゃがいもの特徴と適した料理法をご紹介します。
男爵
男爵は、丸く、芽が生える部分がへこんでいてゴツゴツとした形が特徴です。
粉っぽくて加熱するとホクホクとした食感になるので、粉ふきいもやコロッケ、ポテトサラダにぴったりです。
メークイン
細長い形で、表面がツルッとしているのが特徴です。加熱しても荷崩れしにくいので、カレーやポトフなどの煮込み料理に使われます。
キタアカリ
形は男爵に似ていますが、黄色っぽい色が特徴です。サラダやコロッケなど、男爵と同じように幅広く使えます。
インカのめざめ
アンデス地方が原産のじゃがいもで、日本でも目にすることが多くなってきました。栗やナッツのような甘味と風味があり、ねっとりとした食感と濃い黄色が特徴で、お菓子などに利用されることもあります。
おいしいじゃがいもの選び方と保存方法
芽が出ておらず、しっかりと身が詰まった固いものを選びましょう。しなびて皮にシワが出来ていたり、未成熟で緑っぽいものや緑色に変色したものは避けます。新じゃがは、皮が薄く、はがれそうなくらいの物が新しい証拠です。
保存は必ずしも冷蔵庫に入れる必要はありません。日光に当たると神経毒のソラニンとチャコニンが増えるので、暗くて風通しのよい場所で保存します。
まとめ
食卓でおなじみのじゃがいもですが、含まれる栄養はとても優秀。調理による栄養素の損失も少ないので扱いやすく、さまざまな料理に使えるので、ヘルシーな食生活に真っ先に取り入れたい食品です。
ただし、加熱のときは「皮つきのまま」が、さらに上手に栄養を摂取する大切なポイント。皮つきで加熱してから、料理によって皮をむくなどするのがおすすめです。
また、じゃがいもの芽には毒性があるので、芽にはくれぐれも注意をしましょう。