牡蠣の食あたりの症状とは?潜伏期間や種類、対処法を紹介!

海のミルクと言われる牡蠣、濃厚な味わいに肉厚な舌触りはメインディッシュに相応しい味です。フグほどの猛毒ではないにしても、味と引き換えにする大きなリスクがあります。

初期対応を誤ると重症化してしまうという、恐ろしい牡蠣の食あたりのは3種類あります。原因も全く別物で、感染の有無も違いますから治療も予防も全く違うのです。

ここでは牡蠣の食あたりのタイプ別に分けて、一つ一つを具体的にご説明します。知っていれば避けれるリスクもたくさんあります、ご参考ください。

牡蠣の貝毒食中毒

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貝の種類によって様々な毒の種類があります。毒化する季節や期間も貝の種類によって違いますが、毒化する量は貝の生息する環境によって違うのです。貝毒は牡蠣の食あたりの一つです。

原因と特徴

牡蠣の毒は、牡蠣が生まれ持っている毒ではありません。生後、体内で生産する毒です。海水中の有害プランクトンを捕食した牡蠣が、体内に毒を蓄えてできた毒で、このシステムを「毒化」といいます。

体内で毒化した牡蠣を人間が食べると、この毒にあたって人間が発症します。牡蠣は体内に有毒プランクトンを保有しても、何も問題ありません。見た目、健康な貝とまったく同じです。外見で、色が違うとか発育が悪いとか識別できる特徴があればいいのですが、何も違いがないのです。

外見だけでなく、味も変わりません。見た目で通過し、舌でさえ異常を感知できなくて食べてしまいます。これが食あたりの大きな原因といえましょう。目や味で異常を見つけられなくて胃に送り込んでしまう、これは恐ろしいことです。

念のために、と加熱しても予防になりません。加熱処理が予防にならないことを、しっかり頭に入れておく必要があります。牡蠣フライでも発症する、ということです。

貝毒のリスクを避けるために、有害プランクトンについて理解しておきましょう。水温が上がり始める4~5月頃から発生します。この時期を外すと、リスクは大幅に軽減できます。

産地の環境は、市場に流通したものであればリスクも把握され、管理されていますので問題ないでしょう。危ないのは旅先で、レジャーの素潜りなどに興じて牡蠣や二枚貝を獲った場合です。その場で食べるという暴挙に走ると、安全性は全く保障できません。

特徴として言えるのは、この毒が水溶性で熱に強く、人にうつらない神経毒、ということです。

短い潜伏期間と症状

毒化した牡蠣を食べた後、食あたりの症状が出るのが30分~4時間後です。きわめて早い発症なので、原因の特定には迷いません。

神経性貝毒に分類されています。口の中に突然、灼けつくような灼熱感があり、顔面が紅潮し、動悸がします。けいれんや運動機能の失調などがみられます。

言語障害に呼吸困難、嘔吐、下痢と毒の通過した器官周辺の異常が強く現れてきます。瞳孔散大もみられ、酔っぱらったような状態が続きます。

食べた牡蠣の中にあった毒が少なかったり、毒化した牡蠣を少ししか食べていない場合は、水分を多く摂って安静にしていれば24時間~48時間で落ち着きます。しかし、一気に重篤化し、死亡例さえあるので侮らずに受診しましょう。

以前はかなりの人数が貝毒で死亡していましたが、今の日本では減ってきています。二重、三重の管理体制を敷いて、被害の拡大を防いでいます。国内では牡蠣の産地、流通経路を地方時自体がしっかり管理していますし、輸入牡蠣については国の税関が検査します。

それでも現在、貝毒は日本で一番発症頻度が高いので注意が必要です。

治療法と予防

残念ながら、これといった治療法はまだ確立されていません。血清や解毒剤などの特異療法はないのです。

胃洗浄、点滴、人工呼吸という対症療法しかありません。食べた牡蠣の毒の量や、個数、食べた時の体力、免疫力などによって、どれだけの対処療法が必要になるのかが変わってきます。

治療法はありませんが、対応する方法ならあります。

嘔吐と下痢があれば、決して下痢止め、吐き気止めなどを服用してはいけません。慎重に水分を補給し続け、出るだけ早く出させましょう。解毒はできなくても排毒はできます。大量の体液を使って、上から下から毒素を体外に排泄させることが必要です。

ただし、それには脱水症を引き起こしかねないほどの体液を失います。できるだけ飲み続けなければなりません。それでも一滴の水分も受け付けない、目の下にクマができている、皮膚に張りがはくなっている、唇がぱさついているなどの状況になれば点滴で水分補給しなくてはならないことを肝に銘じておきましょう。

患者から他人に感染する恐れはありませんが、貝毒にかかった方は保健所に伝えましょう。環境的に毒化しますので、その貝を手に入れた経緯、場所などは情報として貴重です。他の方が発症しない予防として、保健所に情報を伝えることが重要です。

牡蠣の細菌食中毒

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牡蠣には様々な細菌が付着していて、人間がそれを適当に食べてしまうと食あたりを起こします。ここでは代表的な細菌による食あたり、腸炎ビブリオについてご説明しましょう。

腸炎ビブリオとは

海水中に生息する細菌で、海中の魚介類を汚染します。その魚介類を生食することで発症する食あたりですが、原因として牡蠣の生食が多く報告されています。

海水に生きるだけあって、耐塩性というより好塩性と言われています。通常は塩分2~7%の海水に生息していて、塩分3~4%の海水を最も好みます。海流で塩分が拡散してしまう遠海よりは岸よりで塩分は濃くなる場所が好きです。牡蠣はその岸よりの海で生息していますので環境的には細菌にとって好条件といえましょう。

塩分が好きなので、塩で消毒という観念が通用しません。塩酸にはさすがに耐えられませんが、浅漬けなどはかえって危ないといえます。逆に塩分のない環境では活動できません。真水には弱いのです。

塩分以外にも要因があります。それは温度で、海水温度も重要な要因です。海水20度以上になると活発に繁殖します。夏場にこの食あたりが増えるのは、そのためです。低温では活動が停止するなどの弱り方を見せますが、低温では細菌は死滅しません。夏場に注意が喚起されるのは、そのためです。

細菌を殺せるのは、高温です。高温の煮沸消毒なら十分に除去できます。

症状は早い人は3時間くらいで身体の変調を訴え、10~24時間後には発症します。腹部上部に差し込むような激痛が走り、下痢、嘔吐、悪感に見舞われます。時に血便が出ます。初期症状が重症から始まり、だんだん沈静化します。

脱水に気を付けながら、抗生剤を投与して2~3日でおさまりますが、普通便に戻るのに2週間はかかります。

気を付けたい二次感染

この細菌は人から人にうつることはありません。ここでいう二次感染とは、保菌の魚介類を調理する時に接触した包丁、まな板から別の食材に細菌は付着することを指します。

よく真水で洗う、煮沸消毒する、などの方法で対応すれば問題ありません。塩素漂白は効果ありますが、昔から言われているような「塩でしめる」というのに殺菌効果はありません。好塩菌だからです。

調理用具、といえば手指も要注意です。実際にオニギリで大量に腸炎ビブリオに感染したケースがありました。よく真水で洗うだけでなく、石鹸でしっかり手を洗うことを強くお勧めします。

保存方法によっても二次感染は生じます。保菌の生牡蠣は5~10度なら細菌活動は弱くなると言われています。ここで注意したいのは、活動が弱くなるだけえ、決して滅菌のなっていないということです。

保菌の生牡蠣を、ぴったり密封せずに冷蔵庫に入れて、他の食材に触れたら感染します。加熱食材ならまだしも、生のまま食べるような食材、たとえばレタスなら、感染したレタスから腸炎ビブリオになります。

できれば、調理器具や冷蔵庫の扉ごと生の魚介類専用に決めて感染経路を増やさないように心掛けたいものです。

牡蠣のウイルス食中毒

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インフルエンザと同じ知名度を持つようになったノロウイルス。これは人からだけでなく患者の便や吐しゃ物から空気感染でもうつります。感染源を拡げない、予防はこれに尽きるでしょう。

ノロウイルスとは

牡蠣を通じて体内に入ったウイルスが、牡蠣を食べてもない人にも感染する、しかも患者を触ってもいない人にまで感染します。この強い感染源になるウイルスを、ノロウイルスと呼んで介護業界では特に警戒します。

河川や下水から人の排泄物に混じって、ノロウイルスが海に流れてきます。その沿岸や海底で牡蠣がノロウイルスごと捕食して牡蠣の体内に蓄積させます。

このノロウイルスは冬に流行しますが、牡蠣の生食の時期と重なるのも偶然とは思えません。突然の嘔吐と下痢に見舞われます。その勢いは強く、吐き出すというより噴き出すといった感じです。38度を超える発熱もあります。血便が出たり、重症化するとショックを起こして意識障害が出たりもしますので、患者には定期的な観察が必要です。

潜在期間は1日~2日、遅くても3日目には発症します。小さなウイルスなのに10~100個で感染させる能力を持っています。しかも接触感染と空気感染ですから治療以上に予防が困難な病気です。

下痢止め、吐き気止めを飲まずに水分補給して脱水予防に努めて、絶食します。そのまま3日くらいで治れば良いのですが、こじれると腸管の一部が腸管腔内に入り込んで腸重積を起こすこともあります。目が離せるものではありません。

加熱と消毒が大事

患者の容態さえ看ていればいいのではなく、予防に徹しないと家族が全員、ノロウイルスになることもよくあります。トイレが1つに複数の患者では悲惨な状況から抜け出すのに苦労します。

このノロウイルスは初期対応が命です。患者が第一回目に吐いたとしたら、すぐに消毒処置して患者を隔離します。そして、吐しゃ物だけでなく、患者が触ったと思われる玄関やトイレのノブ、室灯のスイッチ、てすりにいたるまで塩素漂白剤を薄めたスプレーで拭いていきます。

高齢者施設ではノロセットを一つのバケツに入れて対応できるようにしています。マスク、使い捨て手袋、ビニールのエプロン、塩素漂白剤を薄めたスプレー、新聞紙、ビニール袋などを一式置いています。ご家庭でも冬になれば心がけていただきたいものです。特に妊婦のいらっしゃる家庭では要注意です。

吐しゃ物を発見したら、まず、換気して手袋とマスク、エプロンをして患者を部屋に連れていきます。トイレが複数ある家は患者用と分けてください。吐しゃ物に塩素漂白剤をかけて新聞紙を上からかけて、ティッシュでかけよせ、ビニール袋に入れます。しっかり絞って、戸外に出しましょう。更に床を消毒し、自分の付けていたマスクなどを外してビニール袋に包んで、これまた戸外に捨てます。

生食を避けて、85度以上5分くらいの加熱でノロウイルスは死滅します。特に体調の悪い時はご注意ください。

まとめ

春は貝毒、夏は細菌による食あたり、冬はノロウイルスによる食あたりと、牡蠣にはリスクがいっぱいです。

それでも牡蠣専門店には行列ができるし、高価な贈答品として生牡蠣は喜ばれます。どれだけニュースで牡蠣の食あたりを警告しても、消費に影響ありません。すでに牡蠣は日本の文化に根付いているからに他なりません。

しかし、これだけのリスクがあるのですから、しっかりと対策を立てて安心して楽しんでいただきたいと願っています。

  
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