風邪かと思って診察を受けたら、副鼻腔炎と診断された・・・。副鼻腔炎って何?治療方法は?自然治癒するの?さまざま疑問が浮かびます。
ここでは副鼻腔炎の症状と治療について説明します。
副鼻腔とは
あまり耳にしたことのない「副鼻腔炎」という言葉。そもそも「副鼻腔」とはどこにあるどんな器官なのでしょうか?「副鼻腔炎」とはどんな状態を指すのでしょうか?
副鼻腔とは
まず、鼻の穴の中のことを「鼻腔」と呼びます。そして副鼻腔とは、この鼻腔の周囲にある骨で囲まれた空洞部分のことをいいます。左右4つ、計8個の空洞部分があります。
副鼻腔は場所によって呼び名があり、目と目の間にある副鼻腔を「篩骨洞(しこつどう)」、その奥にある副鼻腔を「蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)」、目の下にある副鼻腔を「上顎洞(じょうがくどう)」、鼻の上の額にある副鼻腔を「前頭洞(ぜんとうどう)」とそれぞれ呼びます。
副鼻腔の役割
副鼻腔の役割は、顔面に強い力が加わったときの衝撃を和らげたり、声を綺麗に響かせるのに必要な期間だともいわれていますが、本当のところははっきとは解明されていません。
鼻腔や副鼻腔は粘膜で覆われていて、その表面に「線毛」という細い毛が生えています。この線毛は、ホコリや細菌、ウイルスなどの外から入ってくる異物を粘液と一緒に副鼻腔の外へ出してしまうという働きをしています。
副鼻腔炎の種類と原因
副鼻腔炎にはどんな種類があり、原因は何なのでしょうか。
副鼻腔炎の種類
副鼻腔炎は「急性副鼻腔炎」と「慢性副鼻腔炎」、「好酸球性副鼻腔炎」、「副鼻腔真菌症」の4種類があります。それぞれについて説明します。
急性副鼻腔炎
急性副鼻腔炎の原因は主に風邪などによる細菌感染です。ウィルスや細菌が鼻腔に感染して炎症を起こし、その炎症が副鼻腔にまで達したときに副鼻腔炎となります。副鼻腔炎で最も多いのがこの急性副鼻腔炎です。
急性副鼻腔炎の症状は、鼻づまりや頭痛、副鼻腔の痛みなどが起こります。また、通常の風邪よりも濃い黄色の粘性の鼻水が出ます。その鼻水が喉に流れ喉に痛みを生じる後鼻漏を引き起こすこともあります。
急性副鼻腔炎の治療には、抗生剤の処方と排膿治療が行われます。また、軽い副鼻腔炎であれば人の有する免疫力で自然治癒してしまうことも多いです。しかし、副鼻腔炎の治癒にはきちんと耳鼻咽喉科を受診してしっかりと治療してもらうことをお勧めします。なぜなら、急性副鼻腔炎を放置すると次に記述する慢性副鼻腔炎を引き起こすことに繋がるからです。慢性副鼻腔炎になると急性副鼻腔炎より治癒も難しくなり、症状も日常生活に支障をきたすまでになることもあります。
慢性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎の原因は、鼻腔と副鼻腔の間(自然孔)が狭くなり、副鼻腔内の空気の循環が悪くなることです。蓄膿症とも呼ばれます。
慢性副鼻腔炎の症状は、鼻づまりや頭痛、黄色い粘性の鼻水が出る、匂いがわかりにくくなる、倦怠感、後鼻漏などがあります。症状の種類だけを見ると急性副鼻腔炎と大きな違いはなく、急性副鼻腔炎の症状が3か月以上続くと慢性副鼻腔炎と呼ばれるようになると考えても差し支えありません。
しかし重要なのは、急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎では症状は似ていても原因は違っていることです。上述しているように、慢性副鼻腔炎の原因は細菌感染ではありません。慢性副鼻腔炎では治療が長引くことがあり、また症状も頭重感や嗅覚の低下が著しくつらいものとなることがあります。
慢性副鼻腔炎の治療では、抗生剤による薬物療法、鼻吸引による排膿治療以外に、手術に至ることもあるようです。他にも、ネオプライザー療法と呼ばれる治療があります。これは抗菌薬やステロイドなどの薬を霧状にしたものを鼻から吸引し、副鼻腔に直接送り込むというものです。幼児や高齢者でも簡単に行うことができ、薬の使用量も少なくすむ治療法です。
好酸球副鼻腔炎
好酸球副鼻腔炎の原因は、好酸球という白血球の一種が鼻粘膜に集中してしまうことで炎症を起こすことです。好酸球副鼻腔炎は近年増えているといわれている難治性の副鼻腔炎です。喘息との関わりが疑われていますので、喘息の症状を持っている人は好酸球副鼻腔炎にも気を付けるようにしましょう。
好酸球副鼻腔炎の症状は、鼻づまりの他に鼻茸というきのこ状のできものが鼻の中にできることが特徴的です。鼻を穴を除くと鼻茸が見えます。鼻茸により嗅覚が鈍ります。
好酸球副鼻腔炎の治療ではステロイドの服用も行われますが、この鼻茸を切除する手術が施されます。
副鼻腔真菌症
副鼻腔真菌症の原因は、真菌(カビ)の侵入による副鼻腔の炎症です。上顎洞での炎症が起こることが多く、また左右どちらか一方での場合が多いようです。
副鼻腔真菌症の症状では、鼻水(膿性もしくは粘性)が出る、鼻づまり、痛み、鼻からの出血などがみられます。
副鼻腔真菌症の治療は、継続的な排膿治療を繰り返すか、手術が選択されます。
副鼻腔炎と他の病気との関わり
副鼻腔炎の原因となる病気、または副鼻腔炎によって併発される病気が存在します。
副鼻腔炎を起こしやすい病気
気管支喘息
気管支が何らかの原因によって炎症を起こし、腫れや痰が出るなどの症状によって呼吸が困難になる病気です。気管支喘息の中でも、とくにアスピリン喘息(アスピリンやアスピリンに似た非ステロイド抗炎症薬、あるいは風邪薬などが原因となって引き起こされる喘息症状)の患者さんでは慢性副鼻腔炎を併発している人が多いようです。
慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性凡細気管支炎
慢性気管支炎(大気汚染、喫煙、細菌やウィルスなどによって気管支に慢性的な炎症がみられる病気)、気管支拡張症(拡張した気管支がもとに戻らなくなってしまう病気です。
先天性、もしくは細菌・真菌・免疫異常などのさまざまな原因が考えられる)、びまん性凡細気管支炎(気管支が細かく枝分かれして肺胞につながる呼吸細気管支に慢性的な炎症がみわれる病気)はどれも気管支に慢性の炎症が続く病気です。このような状態と慢性副鼻腔炎を併せ持ったものは「副鼻腔気管支症候群」と呼ばれます。
副鼻腔気管支症候群を発症している患者さんでは、免疫力の低下や細菌に対する気道の防御能力が弱くなってしまい、慢性の細菌完成を起こしてしまいます。そのため鼻や気管支の両方にさまざまな症状が起こります。
アレルギー性鼻炎
花粉、ハウスダストやダニなどさまざまな原因物質によって引き起こされる鼻水や鼻づまり、くしゃみなどの症状が出るのがアレルギー性鼻炎です。このアレルギー性鼻炎によって鼻の粘膜が腫れ、副鼻腔と鼻腔をつなぐ自然孔の部分が狭くなってしまうなどにより副鼻腔炎が引き起こされることがあります。
副鼻腔炎が原因となって誘発されやすい病気
中耳炎
耳の中、「中耳」と呼ばれる箇所が細菌に感染し、膿んだり粘膜が腫れたりする病気です。耳と鼻は耳管といく器官でつながっているので、副鼻腔炎の細菌が耳管を経由して中耳まで達しそこで炎症を起こしたり、副鼻腔炎の炎症によって耳管の働きが弱められることが原因で中耳炎を発症したりします。
眼窩内感染症などの目の合併症
副鼻腔は目の近くにあるため、副鼻腔の炎症が目に及んでしまうことがあります。目の合併症が起こると、目が痛んだり涙が止まらなくなったり、目の疲れ、視力障害などの症状が見られます。深刻な疾患に至る場合もあるので、病院を受診し適切な治療を受けましょう。
脳農症、髄膜炎、硬膜下膿瘍などの脳の合併症
まれなケースですが、副鼻腔の炎症が脳に及ぶことも考えられます。脳にまで炎症が達することで、脳農症、髄膜炎、硬膜下膿瘍などが起こり、意識障害や麻痺などの症状が発生します。脳の合併症が発症してしまうと、最悪の場合死に至ることも考えられます。あるいは、重い後遺症が残ることもあります。
副鼻腔炎の自然治癒
副鼻腔炎は鼻づまりなどの軽視しがちな症状のため放置して自然治癒を期待してしまいがちですが、きちんとした治療が必要な病気であることがここまででおわかりになっていただけたでしょうか。
自然治癒する可能性がある副鼻腔炎
自然治癒を期待できる副鼻腔炎は、唯一「急性副鼻腔炎」である場合のみです。急性副鼻腔炎は細菌感染による炎症なので、通常の風邪のように自然治癒する可能性もあります。
しかし、前述の通り急性副鼻腔炎はそのまま慢性副鼻腔炎へとつながりますので、風邪が治っても鼻炎だけが続くときなどは副鼻腔炎を疑い、自然治癒を待たずに病院で治療を受けるのが正解です。
自分で気を付けられること
鼻のかみ方に注意する
鼻を勢いよくかむ癖がある人は、鼻の細菌が耳管を通り抜けて中耳に達してしまい、中耳炎を引き起こす可能性があります。鼻をかむときはゆっくり行うことを心がけましょう。
子どもの風邪に気を付ける
小さな子どもの場合、鼻をうまくかめずにすすってしまうことがあります。また、鼻水が喉の奥へ流れたことによる痰のからんだような咳をしたり、鼻づまりのためのいびきをかいたりするようになることがあります。このような症状は副鼻腔炎のサインと捉え、早めの病院を受診させましょう。
食事に気を付ける
慢性副鼻腔炎には食事療法も有効とされています。糖分の過剰摂取はヒスタミンを体内で生成しやすくさせますが、このヒスタミンは副鼻腔炎の原因になるといわれています。
ヒスタミンにより血液やリンパの流れが悪くなり、結果的に鼻の粘膜の抵抗力が低下し、副鼻腔炎へとつながります。普段の食事で甘い菓子など糖分が多く含まれるものを食べ過ぎないように気を配りましょう。
まとめ
鼻づまりや鼻水が副鼻腔炎の主症状であるためついあなどりがちですが、よく知ると恐い病気であることがわかりました。鼻の調子が悪いときはよく症状を観察し、副鼻腔炎が疑われる場合は自然治癒に任せず、すみやかに病院で診察を受けるようにしましょう。