「最近、低い音がよく聞き取れない・・・」とか「最近、低音の耳鳴りがしているような気がして・・・」なんて症状を抱えている方はいらっしゃいませんか?
もしかすると、「ただの耳鳴りだから」などと思って、気にかけていないことはありませんか?そんな方は、実は低音障害型感音難聴かもしれません。
今日は、そんな症状を抱えている方のために、低音障害型感音難聴についてお話ししたいと思います。
低音障害型感音難聴とは?
難聴とは
低音障害型感音難聴についてお話しする前に、まずは難聴についてお話ししましょう。
そもそも、難聴とは一体どのような症状でしょうか?まずは、辞書でその定義を確認してみましょう。
難聴
聴力の低下した状態。伝音性難聴・感音性難聴・混合性難聴に大別する。伝音性難聴は外耳から中耳までの障害(耳垢栓塞)、外耳道閉鎖、鼓膜穿孔によるもので、感音性難聴は蝸牛(かぎゅう)から中枢までの障害により、部位または原因によって内耳性、耳神経性、脳中枢性、または老人性、職業性、薬剤性難聴などと呼ぶ。難聴の高度のものを聾(ろう)という。原因に応じた治療が必要で、両側性で乳幼児期に発症したものはその程度に応じた言語障害をもたらす。
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定義をまとめると、難聴とは音を感知する能力が低下した状態で、伝音性、感音性、混合性の3種類があり、伝音性は外耳から中耳、感音性は内耳の異常によるものとされています。
幼児期に発症すると、言語障害を引き起こす可能性もあるようですね。
低音障害型感音難聴とは
低音障害型感音難聴は、その中でも、内耳の蝸牛に原因がある感音性の難聴と考えられています。特に、低い音を聞き取りづらくなるようになり、耳にくぐもった音が聞こえるようになります。
この病気は、現代医学をもってしても、未だきちんと解明されてはおらず、原因や症状、定義など議論の余地がある病気でもあります。類似した病気に、突発性難聴やメニエール病があり、その区分が未だ明確ではないのです。
突発性難聴とは
突発性難聴とは、低音障害型感音難聴とは異なり、低音に限らず、高い周波数でも聞こえにくくなります。突然発症することがこの病名の由来ですが、再発することはないと定義されています。
ただ、残念ながら、この定義もまだ定かではなく、ときに再発する場合もあり、定義に反していることもあります。詳しくは、突発性難聴は入院が必要?症状や治療方法を紹介!を参考にしてください!
メニエール病とは
最後にメニエール病の定義を辞書で確認しておきましょう。
メニエール病
発作的なめまいが、耳鳴り、難聴などの耳症状と合併して起こる病気。1861年フランスの耳鼻科医P.メニエールが内耳出血による病気として発見したのでこの名がある。
その後、出血以外の各種内耳障害、中枢神経の炎症、腫瘍などでも同様の症状が起こることが知られ、メニエール症候群と名づけられた。めまいは数分から数時間続き、冷汗、嘔吐などを伴う。耳鳴り、難聴は後遺することが多く、発作が反復し高度の難聴をきたすこともある。発作には安静を第一とし、専門医の治療を要する。
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つまり、メニエール病とは、耳鳴りや難聴だけではなく、めまいや冷汗、嘔吐なども伴う病気なんですね。詳しくは、メニエール病の完治の期間は?原因や治療方法についてを読んでおきましょう。
このように、一言で難聴と言ってもさまざまな症状がありますので、低音障害型感音難聴は、現代の医学でも解明しきれていない病気なんですね。
それでは、次章で、そんな低音障害型感音難聴の原因についてお話ししていきましょう。
低音難聴の原因
低音障害型感音難聴の原因は、前述のようにまだはっきりとは解明されてはいませんが、ストレスや過労、睡眠不足が指摘されています。まだ、医学界でも議論の余地のあるテーマですので断言はできませんが、これは自律神経系の疾患ではないかとされています。
この原因ではないかとされている自律神経系について少しお話ししましょう。
耳は、外耳、中耳、内耳からできており、内耳は聴覚をつかさどる蝸牛(かぎゅう)と平衡感覚をつかさどる前庭からなっています。蝸牛、前庭ともに、リンパ液という液体で満たされていますが、自律神経の調整機能により、毛細血管を介して血液の水分量を調節して一定量を保っています。
自律神経の機能の一つに、血管収縮機能があり、この機能によって血管を収縮することによって、蝸牛の中にあるリンパ液を一定の量に保っているんですね。蝸牛で、リンパ液が一定量保持されていることによって、蝸牛の機能が正常に機能し、音を正確に把握する一助となっています。
ところが、何らかの原因により、自律神経系に異常をきたして自律神経機能が低下すると、この血管収縮機能がうまく機能しなくなります。すなわち、自律神経のバランスが崩れると、血管が収縮しすぎてリンパ液を適切に排出できなくなり、蝸牛にリンパ液が多く滞留することとなります。
その結果、蝸牛内の水圧が上がりすぎて蝸牛の聴覚に関する機能に異常をきたしてしまうのです。すると、低い周波数の音を感じる神経が正常に機能することができなくなり、結果的に低音の聴力が局限的に低下してしまうということになります。
また、一説によると、蝸牛のリンパ液の水圧をうまく調節できなくなると、低音が聞き取りにくくなり、前庭を含む内耳全体のリンパ液の水圧をうまくコントロールできなくなると、メニエール病となるとされている場合もあります。
前述のとおり、前庭は平衡感覚をつかさどる器官であるので、前庭に異常をきたすと、うまく平衡感覚が取れなくなり、その結果回転性のめまいなどを発症してしまうという説です。
いずれにしても、現時点ではまだ定説とはなっていないため、医学界で論争を呼んでいる低音障害型感音難聴ですが、上記の説が有力とされています。
低音難聴の症状
それでは、低音障害型感音難聴の症状についてご紹介しましょう。
- 低音が聞き取りにくい
- 低音の耳鳴りがする
- 耳が詰まった感覚がする
- 音がゆがんで聞こえる
低音が聞き取りにくい
低音障害型感音難聴の症状は、その名の通り、低音が聞き取りにくくなります。突発型難聴が、音の周波数に関係なく、高音も低音も聞き取りにくいのに対して、低音障害型感音難聴は低音のみが聞き取りにくいのです。
低音の耳鳴りがする
低音障害型感音難聴では、低音の耳鳴りがします。
ここで、耳鳴りを経験されたことのない方、はっきりとはイメージできない方のために耳鳴りについて辞書で定義を確認しておきましょう。
耳鳴り
じめい(耳鳴)とも。外界に音源が存在しないのに音が聞こえる症状。精神分裂病で音や声がはっきり聞こえる幻聴と異なり、一般に難聴に伴う症状で、特にその初期症状として重要。中耳など伝音器の障害による時は断裂的で低調、内耳や視神経など感音器の障害によるときは持続的で高調のことが多い。中耳炎、内耳炎、メニエール病などの耳疾患のほか、心臓・血管の疾患、糖尿病やホルモンの異常などの全身疾患、婦人科疾患、萎縮腎などで認められる。
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つまり、実際には音はしていないのに、音が聞こえる症状ですね。精神分裂症などによる幻聴とは異なり、はっきりと聞こえるのではなく、かすかに、わずかに音が聞こえてくる症状です。
耳が詰まった感覚がする
耳に閉塞感があり、声が少し反響するように聞こえます。あたかも、耳の中に水が入ったかのような感覚です。プールで水泳をして、耳に水が入ってしまった時を想像してみてください。耳に水が入ったときは音が反響して聞こえてきますよね?そんな感覚です。
音がゆがんで聞こえる
音がゆがんで聞こえるのですが、これは具体的にイメージするのは難しいかもしれませんね。
音が歪むというのは、通常の音声ではなく、音のそのものが正常な音のままではなく、歪んで聞こえるんですね。
ギターのエフェクターという装置に、ディストーションという人工的に音を歪ませる装置がありますが、その音声効果のような音の聞こえ方がします。
低音難聴の治療法
低音障害型感音難聴では、早期治療が大切だと言われています。早期に治療を開始すればするほど、治癒する確率も高くなるというデータがあります。
その反面、治療の開始が遅れると、病気が長引く、あるいは再発する可能性が高くなります。自覚症状を感じた場合には、まず耳鼻科に行って医師に診察してもらうことが最も重要です。低音障害型感音難聴の治療は、主に薬物投与による内科的療法がほとんどです。
それでは、低音障害型感音難聴の治療で投与する薬についてお話ししましょう。
- ステロイド
- 循環改善剤
- 利尿作用剤
- 精神安定剤
ステロイド
ステロイド核、すなわちシクロペンタノパーヒドロフェナントレン核をもつ化合物の総称です。ステリ、胆汁酸、性ホルモン、副腎皮質ホルモン、一部のサポニン類等きわめて重要な生理作用や特殊な薬理作用をもつものが多いのが特徴です。
このステロイド投与は、低音障害型感音難聴治療の基本となります。
循環改善剤
循環改善剤を投与して、リンパ液の循環を良くするようにします。
内耳の蝸牛にたまりすぎたリンパ液が、蝸牛の聴覚機能に対して悪影響を及ぼしていると考えられているので、この循環改善剤を投与することによって、リンパ液の循環が良くなり、蝸牛に溜まっているリンパ液の排出を促す作用があります。
利尿作用剤
ときに、利尿作用のある薬剤を投与することもあります。これも、循環改善剤と同じく、内耳に溜まったリンパ液などの体液を体外に排出することを促すことにより、内耳の中の水圧を下げて蝸牛の聴覚機能を改善する役割があります。
精神安定剤
また、低音障害型感音難聴の治療では精神安定剤を処方、投与する場合もあります。これは、前述した自律神経の血管の収縮機能を正常に回復する事を目的としています。自律神経の血管収縮機能がうまく作用しないために、内耳からリンパ液がきちんと排出されていない症状を改善するためです。
このように、低音障害型感音難聴の治療では、内耳に滞留したリンパ液を排出するための薬剤投与が主としておこなわれています。いずれにしても、医師の指示をきちんと守って、薬剤の服用を続けて根気よく低音障害型感音難聴の治療と向き合う必要があります。
どの薬剤が患者さんに適しているかは、その患者さんによって異なります。
医師も手探りで薬剤を処方しているので、上記のとおり、医師の指示を守って薬剤の内服を続けましょう。
おわりに
最後に、繰り返しになりますが、低音障害型感音難聴は内耳にある蝸牛内のリンパ液に原因があるのでは、とされています。
では、低音障害型感音難聴にはどのような対応が必要なのでしょうか?
低音障害型感音難聴には、基本的な生活習慣が最も重要な予防となります。
以下のことを心がけましょう。
- 十分な睡眠をとる
- バランスの良い食生活を
- 適切な運動
十分な睡眠をとることは、自律神経の回復を促します。
人は、昼間活動して自律神経を使い、夜には睡眠をとって、自律神経を休めて副交感神経が昼間酷使した身体機能の回復を図っています。規則正しい十分な睡眠は、疲弊した自律神経の回復を高めるので、低音障害型感音難聴にも良いとされています。
また、バランスの良い食生活は、日常生活の基本です。
耳とは無縁と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、人の身体には、炭水化物や脂肪、ビタミン等さまざまな栄養分が必要なのです。したがって、不規則な偏食は、身体に悪い影響を及ぼす結果となります。
炭水化物や肉類だけではなく、野菜や魚類、乳製品などを摂取してビタミンや鉄分、カルシウムなど栄養バランスの良い食事を摂取することが、低音障害型感音難聴にも効果的です。
さらに、適切な運動は身体に対して適度に活動する機会を提供してくれます。
体力に自信のない方は、近所の公園を散歩するウォーキングでも構いません。もちろん、体力に自信のある方、身体を鍛えたい方はスポーツジムなどに通って、ランニングやエクササイズ、筋力トレーニング、水泳なども良いでしょう。
身体を動かすことによって、停滞していた身体内の活動がアクティブとなります。この運動が、夜の適切な睡眠やバランスの良い食生活をもたらしてくれる一助となるのです。
「面倒くさい」
などと一笑に付すことなく、自分にできることを一つ一つ積み重ねていきましょう。
それが「健康への道」でもあるのです。
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