日本脳炎の予防接種について!副作用や注意点はなに?症状や治療方法も知っておこう!

昔に比べて、私たちの平均寿命は随分と延びました。18世紀頃では、30代半ばだった平均寿命は、日本国内で言うと、その2倍以上にもなる、83.7歳にまで延びています。

これには、生活環境や、食環境のみならず、医療技術の進歩も、大きく関わっているのではないでしょうか。医療が進むにつれ、あらゆる病気の治療や予防が可能になりました。

その予防策の一つとして知られているのが、「予防接種」です。お子様をお持ちの方ならば、ご存知かもしれませんが、生後1ヶ月半~2ヶ月から、ロタウイルスなどの予防接種を受けることができます。そしてその後も、四種混合やBCGなど、その種類にはいろいろなものがあります。

なかでも、必ず受けておきたい予防接種の一つとも言えるのが、日本脳炎の予防接種です。日本脳炎は、国内での罹患率は高くはないものの、もしも感染して発症すれば、死に至る可能性もある恐ろしい病気です。

しかし一方、予防接種による副作用の心配をされる方もいらっしゃることでしょう。

そこで、ここでは、日本脳炎の予防接種について、受ける時期や副作用などを詳しくご紹介いたします。

日本脳炎とは?

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日本脳炎は、世界中に蔓延している感染症の一つで、年間約3万~4万人もの発症例があります。また、毎年、東南アジアなどを中心に、3万5000人~5万人の死亡者がいるとも推定されている病気です。

1966年、国内で発症者が2000人を超えたのをピークに、現在では予防接種の効果もあり、約10名以下に減少しています。しかし、小児の発症例もあり、感染および発症する確率はゼロではありません。

日本脳炎ウイルスとは?

日本脳炎ウイルスとは、フラビウイルス科に属するウイルスで、ブタをはじめとする動物の体内で繁殖します。それらの動物を「コダカアカイエカ」などの蚊が刺して、人を刺すことによって感染します。

人から人へ感染することはなく、また、日本脳炎に感染した人を刺した蚊が、別の人を刺すことでも感染することはないと言われています。

現在では発症数は少なくなったものの、10代~40代、とくに若い世代の発症例も数件見られていることは確かなのです。厚生労働省が毎年行っている、日本脳炎ウイルスの蔓延状況を調べる調査によると、毎年必ず、日本脳炎ウイルスに感染した蚊が発生していることが判明しています。

日本脳炎の症状について

日本脳炎ウイルスの潜伏期間は、約6日~16日と言われ、病型にも「髄膜脳炎型」と「脊髄炎型」があります。典型的な症状としては、

  • 数日間に渡る38℃~40℃の高熱
  • 頭痛
  • 悪心・嘔吐
  • 下痢・腹痛
  • めまい

などがあげられます。とくに小児が発症した場合には、下痢や腹痛を伴うケースが多いようです。しかし、症状はこれだけではありません。このような典型的な症状に加え、

  • 僅かな光でも眩しく感じる(光線過敏)
  • 意識が朦朧とする、意識を失う(意識障害)
  • 無表情になる(仮面様顔貌)
  • 筋肉が硬直する(筋硬直)
  • 手足が思うように動かなくなる(運動麻痺)

といった、神経系障害や感覚障害を引き起こすこともあるのです。また、小児が感染した場合には、このほかに、痙攣発作も代表的な症状としてあげられます。

しかし、感染した人が必ずこのような症状があるのかと言うと、そうではなく、およそ100分の1~1000分の1の確率で発症すると考えられています。

日本脳炎を発症した疑いがある場合には、血液検査や脳波、脳髄液などを調べて、感染の有無を検査する必要があります。

日本脳炎の治療

日本脳炎の死亡率は約20%~40%と非常に高く、一命を取り留めた場合においても、約45%~70%の確率で後遺症が残ると言われています。

とくに、体力・免疫力のない小児は、死亡は免れても、筋硬直や手足の震えといった運動障害や麻痺、場合によっては、精神障害といった重度の後遺症が現れるようでです。

ウイルスに感染して、症状が現れた時点で、すでに脳細胞はウイルスによって破壊された状態にあります。一度破壊された脳細胞を再生させることは、現代の医学では困難であり、日本脳炎に特化した薬剤や治療法は、現在のところ存在しません。

ステロイド療法などで、症状を一時的に改善することはできても、このような対処療法で、破壊された脳細胞を元に戻すことはできないのです。昔に比べて、発症率や死亡率は低下しているものの、全治した確率は以前と比べてほとんど変わっていないことを見ても、この病気の恐ろしさがわかるのではないでしょうか。

このような事態を招かないためにも、予防接種は非常に重要なのです。

日本脳炎の予防接種について

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子供たちの健康を守るためにも、予防接種はとても効果的な予防策であると言えます。予防接種を受けることで、日本脳炎にかかる確率を75%~95%も低減させることが可能です。

ここでは、日本脳炎の予防接種で使用されるワクチンについての詳細や、予防接種を受ける時期や回数などについて、ご紹介いたします。

日本脳炎ワクチンについて

日本脳炎の予防接種で使用されているワクチンは、前途したように罹患リスクを低減させる効果のある、不活化ワクチンです。

現在、国内で使用されているのは、「乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン」というものですが、まずはこのワクチンについて簡単にご説明します。

これは、日本脳炎ウイルスを、アフリカミドリザルの腎臓上皮細胞から作られた、「Vero細胞」と呼ばれる細胞株で増殖させたものを採取して、感染性をなくすためにホルマリンによって不活化し、製造されたものです。

この乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンは、以前は第一期の予防接種でしか使用されていませんでしたが、平成22年以降、第二期の予防接種にも使用されるようになりました。

そのため、以前使用されていたワクチンに関しては、流通が廃止され、用いられることはありません。

日本脳炎ワクチンの種類

乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンには、「ジェービックV」と「エンセバック皮下注用」との2種類があり、大差はないものの、若干違いが見られるところもあるようです。

まず、「抗原量(不活化ウイルスの含有量)」が異なります。ジェービックVが5μg/mlなのに対し、エンセバックは8μg/mlと多めです。しかし、この含有量の差は獲得抗体価にはほぼ影響を与えることはないと言われています。

ただ、接種後の局所反応は、エンセバックの方が抗原蛋白量が多いため、赤くなるなどのアレルギー反応は出やすいようです。

この二つは、発売された時期も2年ほど違いがあり、「新しく発売されていること」、「使用数が多いこと」などを見ても、安全性は、どちらかというとジェービックVの方が高いと言えるかもしれません。

日本脳炎の予防接種スケジュール

日本脳炎の予防接種は、無料で受けることができます。接種する時期としては、第一期と第二期に分かれており、それぞれの時期に決められた回数があります。

<第一期>

日本脳炎のワクチンは、生後6ヶ月から受けることが可能ですが、現在はほとんどの地域で3歳からの接種となっているようです。3歳~4歳の間に、合計で3回の予防接種を定期的に受けます。2回目以降の接種時期については以下のとおりです。

  • 2回目:1回目の予防接種から1~4週間後
  • 3回目:2回目の予防接種から1年後

<第二期>

第一期の予防接種で、基礎免疫をつけた後、第二期の予防接種を受けます。

  • 4回目:9~12歳の間に1回接種

20歳までは予防接種を受けることができるので、日本脳炎の予防接種を受けた覚えのない人は、母子手帳で確認しておくと良いでしょう。

また、おたふくかぜや、水疱瘡の予防接種も同時に受けることができるので、小さなお子様をお持ちの方で、これから予防接種を受けるという方は、それらも合わせてスケジュールを立てておくことをおすすめします。

日本脳炎の予防接種による副作用

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実は、日本脳炎の予防接種による副作用は、一時、大きな話題となりました。予防接種後にADEM(急性散在性脳脊髄炎)の発症が問題になり、平成17年から平成21年までの間、国は予防接種の推奨を行いませんでした。

その後、上項目でもご紹介したような新たなワクチンが開発され、現在では通常通り行われています。

日本脳炎に感染・発症するリスクを考えれば、副作用についてそこまで神経質になる必要はありませんが、それでも、予防接種を受ける以上、副作用があるということを私たち自身が、十分に理解しておく必要があります。

日本脳炎の予防接種による副作用

生後6ヶ月~7歳半までの小児で、予防接種を受けることによって、以下のような副作用が生じたという報告があります。

  • 発熱
  • 鼻水
  • 注射部位の晴れ、紅斑

この他にも、希な副作用として、

  • ショック、アナフィラキシー様症状
  • 脳症
  • 痙攣
  • 急性血小板減少性紫斑病
  • ADEM(急性散在性脳脊髄炎)

といった重度の副作用が現れることがあります。厚生労働省では、予防接種による副作用について、定期的に審議しているようですので、安全性が気になる方は、こまめにオフィシャルサイトなどを見てみるのも良いかもしれません。

問題になったADEM(急性散在性脳脊髄炎)とは?

ADEMとは、ウイルス感染や、予防接種などが原因で引き起こる、アレルギー性の脳疾患です。静脈の周囲に炎症が起きたり、脳や脊髄の白質と呼ばれるところに、神経線維の髄鞘に病変がいくつも形成される深刻な病気です。

予防接種が引き金となってこのような病気になった場合、接種翌日から1~2週間後に、

  • 発熱
  • 頭が重たく感じる
  • 全身の倦怠感
  • 嘔吐

などの症状が現れ始めます。さらにその1~2日後には、

  • 頭痛
  • 不眠
  • 大声をあげて暴れるなどの不穏状態
  • 全身痙攣
  • 意識障害
  • 視界の横半分が見えなくなる(同名性半盲)
  • 言語障害
  • 運動失調
  • 歩行障害
  • しびれ
  • 排泄困難

といった神経症状に悪化し、小脳や脊髄に障害を引き起こします。治療には絶対安静を要しますが、副腎皮質ホルモンなどの薬物治療で数週間後には回復すると言われています。しかし、最悪の場合には、そのまま死に至ることもあるのです。

新しく開発されたワクチンは、以前に比べて副作用が出にくいと言われていますが、ワクチンが開発された後の平成24年にも、予防接種後に、急性脳症で死亡した例があり、問題になっていることも事実です。

直接的な因果関係が明らかになっていないものの、予防接種を受ける際には、副作用の可能性を十分に危惧したうえで、検討する必要があるようです。

平成17年~平成22年までに予防接種を受けるはずだった方へ

副作用が問題となり、予防接種の推奨が行われなかった平成17年~平成22年の間に、日本脳炎の予防接種を受けるはずだった人は、まだ接種していない可能性があります。

先にもご紹介したように、予防接種は20歳まで受けることができますので、希望する場合には、住んでいる地域の自治体や病院などで相談してみましょう。

日本脳炎の予防接種を受ける際の注意点

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より安全に予防接種を受けるためにも、事前準備と経過観察が大切です。ここでは、予防接種を受ける前と、受けた後に分けて、それぞれの注意点について、ご紹介いたします。

予防接種を受ける前の注意点

<身体を清潔にしておく>

予防接種を受ける前日は、お風呂やシャワーで身体を清潔にしておくことが大切です。小さなお子様の場合にはとくに、親御さんが丁寧に身体を洗ってあげることを心がけてください。

<体温測定>

予防接種当日は、家を出る前に必ず体温測定をして、記録しておきましょう。接種会場でも体温測定を行います。体温測定のほかにも、お子様の体調に変わりはないかなど、接種する前の体調についても、よく観察しておきましょう。

<持ち物>

日本脳炎の予防接種の予診票や母子手帳など、必要な書類は事前に確認し、忘れずに持参してください。

<予防接種を受けてはいけない場合>

以下のような場合には、予防接種を受けることができません。

  • 37.5℃以上の発熱がある場合
  • 重症の急性疾患で、薬を服用する必要がある場合
  • 日本脳炎の予防接種で使用する予防液で、アナフィラキシーショックを起こしたことがある場合

以上の項目に当てはまらない場合でも、担当医によって予防接種が不可能だと判断されることもあります。

また、以下に当てはまる場合には、あらかじめ行きつけの医師に診断書、または意見書を書いてもらってから、予防接種を受けるようにしてください。

  • 心臓病、腎臓病、肝臓病などの持病や発育障害などで治療中の場合
  • 何らかの予防接種で、接種後2日以内にアレルギー症状が見られた場合
  • 過去に痙攣や引きつけをおこしたことがある小児
  • 免疫不全と診断されている小児、および、先天性免疫不全の近親者がいる場合
  • 何らかのアレルギーがある場合

予防接種を受けた後の注意点

<経過観察>

予防接種後、最低30分はすぐに医師と連絡がとれる状態にし、お子様の様子に異変がないかを十分に観察してください。万が一、発熱、痙攣、頭痛、発疹などの異変があった場合には、直ちに医師に連絡し、早急に診察を受けてください。

また、接種後1週間は、副作用が現れないかの経過観察をするようにしてください。

<清潔に保つ>

入浴はしても問題ありませんが、注射部位を強くこすらないように、身体を洗う際には十分に注意しましょう。

<安静にする>

予防接種当日は、激しい運動は避けて、安静に過ごしてください。とくに、小さなお子様の場合は、注射が終わったからといって、はしゃぎ過ぎないように、親御さんがしっかりと見ておくことが大切です。

以上のような点に注意しておきましょう。また、ほかの予防接種を受ける場合には、1週間ほど間隔を開けるようにしてください。

予防接種(ワクチン)の働き

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それでは最後に、ワクチンが身体にどのように働きかけているのか、なぜ予防接種が必要なのか、ということを見ておきましょう。

予防接種(ワクチン)の働き

たとえば、はしかなどの病気にかかる(自然感染した場合)と、もう同じ病気にはならないことは、ご存知のとおりです。これは、体内で病原菌に対する免疫ができるためです。これと同様に、数回に分けて予防接種でワクチンを体内に入れることで、少しずつ免疫をつくることができるのです。

しかし、同じように病気を発症させるわけではなく、コントロール可能な、安全な状態で行うので心配はいりません。

乳幼児期は、まだ免疫が十分に発達していないため、病原菌に容易に自然感染してしまいます。それらの感染症は、命に関わるものも多々あるのです。ワクチンを接種することで、これらを事前に防ぎ、安全に免疫をつくって、病原菌を跳ね除ける元気な身体作りをサポートすることができます。

予防接種の必要性

自分が病気にかからないだけではなく、予防接種を受けておくことで、万が一病気になっても症状が軽く済むというのも、予防接種を受けるメリットの一つです。

また、日本脳炎の場合は、人から人へ感染することはありませんが、そのほかの感染症の予防接種においては、二次感染を防ぐという大きな役割も果たしています。

また、現在、抗生物質の乱用によって、薬の耐性菌が増加し、薬の効果が発揮されないという問題も起きています。予防接種は、病気を防ぐだけではなく、耐性菌の増加にこれ以上拍車をかけないためにも、大切な存在であるということが言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。重大な副作用の実態を見て、多くの親御さんが、予防接種の是非について意見を交換しているようです。しかし、現在ここまで日本脳炎の罹患率が減少したのは、やはり、予防接種の効果なのではないでしょうか。

医師たちは、予防接種を受けて副作用が出るリスクと、日本脳炎で重症化するリスクでは、後者の方が高いと述べています。

身体にとって、お子様にとって、家族にとって、どちらが良いのかを改めて考える、良い機会なのではないでしょうか。

  
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