腸閉塞の初期症状を知ろう!種類や原因、合併症を知ろう!予防法や治療法を知ろう!

大腸や小腸の一部が、何らかの原因によって閉塞してしまった状態を「腸閉塞」、医療用語では「イレウス」と呼びます。突然お腹がパンパンに張って、激痛が襲います。痛みが強いので何もせずに我慢する方はほとんどいないと思いますが、放っておくと死亡することもある危険な病気なのです。

「腸閉塞」とはいったいどんな病気なの?

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「腸閉塞、以下イレウス」とは、腸の中で食べ物や便が詰まってしまい、その部分から肛門側へ食物残渣やガスが通過できなくなってしまった状態です。

そのため便やガスなどの排出ができずにお腹が膨張し、吐き気や痛みを引き起こします。大人も子供も、男性も女性も関係なく発症する病気です。

イレウスに特徴的な初期症状

イレウスは腸が詰まった瞬間に突然発症するのが特徴です。

前触れもなく激しい腹痛・おう吐・吐き気があらわれて、急激にお腹が膨れ上がります。腹痛はキリキリとした強い痛みで、しばらくすると弱まります。この間欠的な痛みは「疝痛発作」と呼ばれるイレウスに特徴的なもので、約20分間隔で起こります。まだ上手に病状を説明することのできない乳幼児においては、20分間隔で不機嫌になったり泣き出したりしたらイレウスを疑ってください。

腸管が詰まり、それに繋がっている胃や食道などの圧力が上昇して内容物が逆流して、おう吐します。初期のおう吐物は、胃液(透明から白色で酸っぱい)や胆汁(黄色で苦い)ですが、症状が進行していくと腸の内容物が逆流してきます。病状が進行している場合のおう吐物は茶色っぽく便臭がある特徴的なもので、「吐糞症」と呼ばれます。

胃や腸の内容物を吐ききってしまうと、一時的に腹痛や吐き気が軽くなります。しかし、閉塞状態が改善された訳ではないので、医師の診断を受ける必要があります。自己判断せずに、速やかに診察を受けてください。

イレウスの種類

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イレウスにはその特徴によって大きく2つに分けられます。腸が原因となる「機械性イレウス」と腸には原因がなく他の要素によって腸に影響が出る「機能性イレウス」です。

機械性と機能性の中にもさらに詳細な分類がありますので、詳しく見ていきましょう。

機械性イレウス

腸そのものが原因となり、狭窄したり閉塞したりする「イレウス」を「機械性イレウス」と呼びます。

「機械性イレウス」は、”異物”を主な原因とする「単純性イレウス」、手術後に起きやすい癒着による「術後イレウス」、血行障害を起こしている「絞扼性(複雑性)イレウス」に分類されます。

単純性イレウス(閉塞性イレウス)

腸が血行障害を起こしておらず、原因となる何かしらの「異物」によって腸がふさがれている状態です。

この「異物」の原因として、腫瘍・寄生虫・胆石・宿便・誤飲(おもちゃ、クレヨンなど食品以外の物を飲み込んでしまうこと、子どもで起こりやすい)などがあげられます。

術後イレウス

開腹手術を行った際に、腸と腸や腸と腹壁などが接触することで癒着(本来は離れていなければいけない組織や臓器がくっついてしまうこと)がおきます。腸が癒着することによって通り道が塞がれることで閉塞します。

また腸管内には多くの細菌がいるため、開腹手術自体は成功しても、開腹した部分から細菌感染することによって腸が炎症を起こし、癒着してしまうこともあります。

絞扼性(こうやくせい)・複雑性イレウス

単純性イレウスと区別するために複雑性イレウスと呼ばれることもありますが、通常は絞扼性イレウスと呼ばれます。腸は7~8mあり、人体でも長い臓器です。

そのため、何かの拍子に捻じれてしまうことがあります(腸軸捻転)。捻じれた部分が閉塞することによってイレウスとなります。腸が捻じれることで血管も捻じれるため、血流がほとんど止まってしまうことがあります。血流が止まってしまった先の部分へは栄養と酸素が行きわたらずに壊死してしまうため、緊急的な外科処置が必要になります。

捻じれる原因として多いのは、中高年以降では鼠蹊ヘルニア(鼠径部:太ももの付け根の部分、ヘルニア:腸が筋膜の間から皮膚の下に出てくる症状)、別名「脱腸」です。中高年以降に多くなってくるのは、筋力の衰えによって筋膜がゆるくなり、腸が出てきやすくなるためです。

逆に乳幼児では、腸重積(腸の一部が重なりあってしまい、腸の中に腸がはまり込んでしまった状態)が原因となることが多くなります。原因は不明ですが、腸重積の80%以上は2歳以下で発症し、男児に多く再発しないことも特徴です。2歳以上の子どもが腸重積を発症する場合には、隠れている他の病気からの影響である可能性が高いので注意が必要です。

異物や癒着が原因となるイレウスから、血流が阻害される「絞扼性イレウス」へと移行することもありますので、注意が必要です。

絞扼性イレウスに特徴的な症状

腸管が捻じれて締め付けられることによって、痛みが持続することが他のイレウスと異なります。血流が阻害されることによって顔面蒼白となり、冷や汗や寒気を感じることもあります。症状が進行してくると、脈が弱くなり・呼吸も浅くなりショック状態(血圧の急激な低下によって、生命の維持が困難になる状態)となります。ショック状態を回復するためには阻害されている腸管の血流を速やかに回復させる必要があり、そのためには開腹手術が必要となります。

血流障害の影響によって、腸管壁が壊死したり穿孔することもあります。そうすると腹腔内に腸の内容物がばらまかれる事になり、腹膜炎となります。腹膜炎を原因として、細菌が血流にのって全身に運ばれると敗血症となり、重篤な状態になります。

腸重積に特徴的な症状

2歳以下の乳幼児に起こりやすい腸重積も、血流が阻害されるため区分上は絞扼性イレウスに分類されることが多いようです。前述の疝痛発作によって、だいたい20分間隔で痛みが襲います。乳幼児が20分間隔で機嫌が悪くなったり、泣き出しする場合には腸重積が疑われます。

既に血流が阻害されている場合には、泣いていない状態でも顔色が悪く、ぐったりとしています。また、おう吐やトマトを潰したような赤黒い水様便が出ることがあります。

乳幼児なので、周りにいる大人が気付かないと生命に関わります。おう吐・トマト状の血便・20分間隔で泣き出す、この3つの症状があったら迷わずに救急車を呼ぶか最寄りの医療機関で診察を受けてください。

腸が詰まる原因のほとんどは、腸の一部が何らかの理由で狭窄する(狭くなる)ことです。その狭窄部分部分に食べ物や便が引っかかってしまうことによって閉塞が起きます。閉塞が起きる原因によって「機械性イレウス」と「機能性イレウス」に分類することができます。

機能性イレウス

腸そのものには異常がないのに、腸管を支配する神経系の異常によって腸の運動機能に障害が起こります。

腸の蠕動運動が止まってしまい、腸内容物が滞留してしまう「麻痺性イレウス」と腸が痙攣してしまうことで蠕動運動が上手く働かなくなる「痙攣性イレウス」に分けることができます。

麻痺性イレウス

麻痺性イレウスの原因は、神経系が原因となります。自律神経と腸は密接に関係していて、神経系に異常が発生すると、まずは便秘になり易くなります。重症化してくると、蠕動運動が止まってしまいイレウスとなります。このようにイレウスの中でも比較的軽症で、症状も徐々にあらわれることが多いので、便秘と勘違いしたまま重症化してしまうケースもあります。

この神経系に影響を与える主な病気としては、腹膜炎(臓器を覆っている腹膜が、細菌感染して炎症を起こす病気)・腹腔内への出血(内臓の多くが収納されている横隔膜下の空間へ何かしらの臓器から漏れ出した血液が滞留して、様々な症状を引き起こします)・電解質異常などがあります。

それ以外にも精神的なショックや強いストレス、薬剤の副作用(鼻炎薬・免疫抑制剤・向精神薬・麻薬系鎮痛薬・糖尿病治療薬など)が考えられます。

痙攣性イレウス

麻痺性イレウスとは逆に、一部の腸管の蠕動運動が異常に亢進することで起こります。

ヒステリー(通常とは明らかに異なる興奮状態になり、感情のコントロールを失った状態)・鉛中毒(現在の日本では、生活用品に鉛は含まれていません)・虫垂炎(盲腸)・結石症(尿管結石や胆嚢結石など)などによって発症することが知られています。

痙攣性イレウスには必ず原因となる疾患なり症状があり、原因を取り除くことによって腸管の機能は回復します。

イレウスになる原因は?

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イレウスになる原因としては、生まれつき腸に異常がある「先天性異常」と病気を原因とする「後天性イレウス」があります。

病気を原因とするケースは既に述べたとおりですので、ここでは、「先天性異常」の場合について詳しくみていきましょう。

先天性異常

生まれつき腸に異常がある場合においても、前述のように機械的閉塞と機能性閉塞に分けられます。

現在の医学では、先天性奇形も先天性疾患も出生前に診断されるケースが増えてきていますので、新たな命が助かる割合は高くなってきました。

機械的閉塞

先天性十二指腸閉鎖もしくは狭窄、先天性小腸閉鎖もしくは狭窄、先天性食道閉鎖、直腸・肛門の形成異常の4つが主たる原因となります。

これらの奇形がある場合には、生後すぐにイレウスとなります。一方、先天性異常ではない場合には、ミルクを飲み始めてしばらくしてから発症することが多くなります。

機能的閉塞

腸管はしっかりと形成されているのに、腸が正常に機能しない代表的な病気が「ヒルシュスプルング病」です。

腸管の蠕動運動を司る神経叢の先天的に欠如による蠕動運動の低下によって発症します。他の先天性疾患と合併していることが多く、単独であらわれることは少ないとされています。基本的には、乳幼児期に根治治療が可能です。

ただし、腸管の機能が100%ではないため、胃腸炎や便秘などとは一生付き合っていく必要があります。

物理的に腸が動きやすい

腸が後腹膜にしっかりと固定されていないため、正常な位置よりも下に落ちてしまっている状態の「落下腸」や、正常な位置からねじれてしまっている「ねじれ腸」などがあります。

このような生まれつき腸が動きやすい方は、激しい運動や腸に大きなストレスを与えることによって簡単にイレウスになってしまいます。一般の方よりも注意が必要です。

イレウスによる合併症

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イレウスを原因とする合併症(1つの病気が別の病気を発症する原因となってしまうこと)にも注意が必要です。

そもそもイレウスは合併症を発症しやすい病気として知られています。

敗血症

生命に関わる重篤な症状ですので、しっかりと覚えておいてください。イレウスによって、腸が穿孔したり腹膜炎を起こすことがあります。

そこから細菌が体内に侵入して、増殖することで制御不能な全身症状を引き起こします。様々な臓器が侵されることで多臓器不全になり、免疫機能、血液凝固機能などの生命維持にかかせない機能が正常に働かなくなります。単純イレウスのような予後が比較的良好な疾患からでも敗血症になることもあるため、異常を感じたら早めに受診することをお勧めします。

細菌の増殖を抑えるためには、抗生物質を投与します。抗生物質によって死滅した細菌の中には、菌体内に毒素を持つもの(内毒素、エンドトキシン)がいます。このエンドトキシンは非常に活性の高い毒素で、白血球やマクロファージなどと免疫反応を引き起こし、体内の免疫機能をガタガタにしてしまい、最終的には「エンドトキシンショック」という状態となり死に至ります。

余談ですが、このエンドトキシンはグラム陰性菌の細胞壁に含まれていて、積極的には放出されません。菌体が破壊されることによって放出されるタイプの毒素です。

詳しくは、敗血症は死亡率が高いので注意!症状や治療法について!を参考にしてください。

肺炎

腸内容物がおう吐によって逆流することで、本来無菌である臓器が汚染されることがあります。食道から気管におう吐物が入り込むことで、細菌性の気管支炎や肺炎に繋がります。

イレウスによって逆流する内容物は、腸の肛門側に近いものまで上がってくることもあります。すでに細菌が繁殖してしまっていたりしていて、体内のあちこちで炎症を起こすこともあります。

イレウスの治療

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イレウスの中で、緊急手術が必要になるのは絞扼性イレウスのみです。他のイレウスは、胃腸を休ませるために、食事や飲水を制限しながら、輸液などで十分な栄養を与えて様子を見ながら回復を待ちます。それでも症状の改善が見られなかった場合にのみ積極的な治療が開始されます。

絞扼性イレウスの場合、血流の回復が早ければ早いほど術後の回復も早く、生存率も高くなります。「イレウスは判断に迷ったら開腹手術」というのが鉄則です。

しかし、夜間や土日などの専門医が不在の場合には、判断がつかずに様子見をしているうちに重症化するケースが多数報告されています。自らの身を守るためにも、医師に物申す勇気が必要な時代になってきているのかもしれません。

医療用チューブによる治療

鼻から(場合によっては口から)「イレウス管」と呼ばれる吸引用のチューブを挿入して、閉塞部に詰まっている腸の内容物を吸引します。

腸の上部に閉塞がある場合には、「イレウス管」よりも長さが短い「胃管」を用います。外科手術と異なり身体への負担が少ないので、体力のない子どもや寝たきりの高齢者などにも適用することが可能です。

挿入されたチューブは、症状の経過を確認しながら最大2週間程度まで留置されることがあります。不快感が強く、自己抜去してしまうケースがありますので、チューブの固定と治療に前向きに取り組む支援が必要です。

手術による治療

手術が適用される場合、緊急性が高い「絞扼性イレウス」がほとんどです。血流が阻害されている腸管の絞扼部位を解除して、血流が再開するかどうかを確認します。

血流が再開されない場合には、その部分を切除して正常な腸管同士を吻合します。

イレウスの予防

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腸が健康であれば、まず機能が阻害されることはありません。日常生活から、腸に負担となる、過大なストレス・暴飲暴食・大量のアルコール摂取などを避けることが重要です。

ただし、どんなに気を付けていても起こる時には起こります。特に腹部の開腹手術を受けた方は、程度の差はあっても癒着を起こしていると考えられます。消化のよい食事や、便秘になったら速やかに薬剤で便通を確保するなどの対応を心がけてください。

重度の便秘からイレウスへと発展するケースも多いので、軽度の便秘のうちから対策を行ってください。便秘についての詳細は、別の記事にて詳しく紹介されていますので、そちらを参照ください。

まとめ

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今回はイレウスについての基本的な情報を紹介いたしました。誰でもがかかる可能性のある病気ですが、血流が阻害される「絞扼性イレウス」の危険性が飛びぬけていて、それ以外は基本的に大事には至らないことが分かっていただけたと思います。

最新の研究では、「腸」が人体の健康に関連する重要な働きをしていることが次々と明らかになってきています。暴飲暴食や過度のストレスを控えて、「腸」に優しい生活を送るよう心がけてください。そうすればイレウスを含め、「腸」に関連する致命的な病気を発症する危険性はぐっと下がることでしょう。

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これらを読んでおきましょう。

  
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