なぜだか分からないけど、イライラしたり、気持ちが落ち着かずに焦り(あせり)のようなものを感じてしまうことはありませんか?このようなイライラや焦りといった感情を焦燥感(しょうそうかん)と言います。
この焦燥感という感情は、誰もが日常生活の中で必ず経験すると思います。しかしながら、あまりにも頻繁に焦燥感が現れるような場合には、自律神経の乱れが生じている可能性があります。また、頻繁に焦燥感が生じる場合は、何らかの精神疾患を患っている可能性もあるかもしれません。
そこで今回は、焦燥感という感情に焦点を当てて、焦燥感を感じる原因、焦燥感を生じる病気、焦燥感に対する対処方法などについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
焦燥感とは?
そもそも焦燥感とは、どのような感情のことなのでしょうか?焦燥感を感じる原因などに言及する前に、まずは「焦燥感」の意味や焦燥感という感情について理解しておく必要があります。
そこで、焦燥感の意味や焦燥感という感情について、ご紹介したいと思います。
焦燥感の意味
焦燥感とは、気持ちが落ち着かずに焦ったり、イライラとする不快な感情・感覚のことです。
焦燥感の背景には、多くの場合で何かに対する不安感や恐怖感が生じています。そして、その不安が存在することによって、気持ちが落ち着かずに焦りやイライラ感が生じるのです。つまり、何らかの不安感・恐怖感が生まれることにより、じっとしていることができずにイライラ・ジリジリ・ソワソワとするわけです。
焦燥感は誰もが有する感情の一つ
感情と一口に言っても、人が感じて抱く感情には様々な種類が存在します。いわゆる喜怒哀楽だけでなく、安心・期待・感謝・幸福感・満足・親近感といった心地よい感情もあれば、不安・恐怖・苦しみ・嫌悪感・憎しみといった不快な感情も存在します。このような様々な感情の一つとして、焦燥感という感情が存在します。
焦燥感は前述のように不安感や恐怖感という感情と深くリンクしています。人間は自分が理解できないものや全貌が分からないものに対しては不安や恐怖を感じるようにできており、不安や恐怖を感じることによって身を守ることができています。そして、不安感や恐怖感に襲われると、人間は気持ちが落ち着きませんので焦燥感という感情・感覚が現れてくるのです。
ですから、焦燥感という感情・感覚は、基本的に人間なら誰しもが有する感情・感覚の一つと言うことができるでしょう。
焦燥感を感じる原因
このように焦燥感とは、人間ならば誰もが有する基本的な感情の一つと言えます。それでは、この焦燥感という感情は、どのようにして生じるのでしょうか?
そこで、焦燥感という感情・気持ちが生じる原因について、ご紹介したいと思います。
焦燥感の原因は不安や恐怖
人間が焦燥感を感じる原因は、不安感や恐怖感といった感情が芽生えることだと言えるでしょう。
不安感とは、将来や未来について先を見通すことができなかったり、現在の好ましくない状況に至った要因が不明であることによって、良くないことが起きるのではないかと心配になる感情・感覚のことです。また、現在の好ましくない状況に至った要因が判明したとしても、要因が判明したことによって不安感は恐怖感へと変化します。
このように不安感や恐怖感が生じると気持ちが落ち着かなくなり、不安や恐怖から逃れたくても逃れられないことによって、焦りやイライラ感が生じるのです。
焦燥感を引き起こす具体的な原因・きっかけ
このように焦燥感の背景には、何らかの不安感や恐怖感が存在しています。そして、何らかの不安感や恐怖感を引き起こす具体的な原因は、非常に多岐にわたります。例えば、次のような具体例が挙げられます。
- 仕事のプレッシャー、仕事の忙しさ、仕事の不調。
- 思うようにならない人間関係や恋愛関係。
- 自分や家族の将来が見通せないこと。
- 環境の変化(引っ越し・転勤・転職など)。
- 自分のライバルの成功。
仕事のプレッシャー
例えば、仕事に関して不安感や恐怖感を感じる場面として、仕事に対する責任感から成果を出さなければならないと過度にプレッシャーを感じたり、仕事が集中する忙しさや自分自身の不調で仕事の進捗が思うように進まない場合などが挙げられます。この場合、取引先に迷惑をかけてしまうかもしれない、仕事が納期に間に合わないかもしれないといった不安や恐怖から、焦燥感が生じてしまいます。
思うようにならない人間関係
自分の思い通りに進まない人間関係でも、焦燥感が引き起こされることがあります。恋愛関係の場合などは、相手を好む思いの一方で、なかなか自分の思い描くような理想の形にはならず、相手に嫌われているのかもしれないといった不安から焦燥感が生まれ、気分が落ち着きません。
将来が見通せない時
自分や家族の将来や人生の先行きが見通せず不透明な場合には、どうしても漠然とした不安感に襲われてしまいます。このような時には、自分が何をすれば希望を見出せるのかもわからず、不安を抜け出すためにも何かをしなければという焦燥感だけが募ります。
環境の変化
自分が置かれている環境が変化すると、自分が知らないことや分からないことが増えるので、不安に襲われて焦燥感が生まれます。引っ越しで住む場所が変われば隣人関係など心配なことが増えますし、転勤や転職で仕事内容が変われば自分の能力や新たな人間関係などに不安が生じることもあるでしょう。このような心配や不安から、焦燥感が生じることもあるのです。
ライバルの成功
競争意欲に溢れる人は、他人であるライバルが自分よりも良い結果や成功を手にすると、自分だけが置いていかれる、あるいは自分の不甲斐なさから不安や恐怖を感じて焦燥感に駆られることもあります。
焦燥感を感じやすい人
焦燥感を感じやすい人とは、ちょっとしたことでも不安を抱いてしまう人だと言えます。つまり、ネガティブな考え方をする傾向がある人は、焦燥感を感じやすい人である可能性が高いのです。
人にはそれぞれ個性があり、物事の捉え方や考え方も異なります。周りの人が大して気にしないようなことでも不安に感じてしまう心配性の人もいます。
ですから、このような心配性や不安を抱きやすいネガティブ思考の人は、前述のような環境の変化や仕事のプレッシャーなどをきっかけに不安や恐怖を抱きやすく、その結果として焦燥感をも感じやすいのです。
焦燥感を感じる病気
このように焦燥感を感じる原因は、主に不安感や恐怖感を感じることだと言えます。この焦燥感という感情は、誰もが日常生活の中で必ず経験するでしょう。しかしながら、あまりにも頻繁に焦燥感が現れるような場合には、何らかの病気である可能性も否定できません。そこで、焦燥感という感情が症状として現れる病気について、ご紹介したいと思います。
自律神経失調症
自律神経失調症とは、自律神経のバランスが乱れることが原因となって、カラダに現れる様々な不調や症状の総称です。
自律神経失調症では、めまい・冷や汗・動悸・息切れ・吐き気・頭痛・過呼吸・不眠症・腹痛といった身体的な不調や症状の他に、精神面でも情緒不安定・焦燥感・不安感・被害妄想といった症状が現れます。
それゆえ、頻繁に焦燥感が現れたり、強い焦燥感や不安感に襲われる場合には、自律神経失調症である可能性があるのです。
自律神経とは?
自律神経とは、交感神経と副交感神経によって構成される神経系のことです。自律神経は、心臓や血管などの循環器、肺などの呼吸器、胃や腸などの消化器など生命維持に必要不可欠な臓器を、人間の意思とは無関係に交感神経と副交感神経を相互に交代させながら24時間365日コントロールし続けます。このような自律神経は、主に覚醒や興奮している時にアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌を通じて交感神経が働き、逆に睡眠やリラックス時には副交感神経が働きます。
そして、自律神経のバランスの乱れとは、交感神経と副交感神経がそれぞれ働くべき時に上手く機能しないことを言います。例えば、覚醒しているときに副交感神経が過剰に働いて無気力となったり、睡眠すべき時に交感神経が優位となって眠れなかったりと、交感神経と副交感神経が上手く切り替わらない状態を自律神経の乱れと言うのです。
自律神経が乱れる原因
自律神経が乱れる原因は様々ですが、最も大きな要因として挙げられるのがストレスです。疲労などの身体的ストレスだけでなく、精神的なストレスも自律神経のバランスを乱す原因となります。
また、薬物の摂取・アルコールの過剰摂取・喫煙・睡眠不足などといった生活習慣の乱れが、自律神経のバランスを崩す原因になります。
さらに、女性の場合には、女性ホルモンのホルモンバランスが崩れると、自律神経のバランスも乱れることが分かっています。そのため、女性ホルモンの一つであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が減少する更年期に現れる更年期障害では、自律神経失調症の症状が多く現れます。
うつ病
うつ病とは、気分障害のうちの一つで、気分が落ち込んで意欲や物事への興味が低下する抑うつ気分や、焦燥感・不安感・不眠・食欲減退といった症状が現れる精神障害です。
うつ病では、1日のうちの大部分で抑うつ気分が現れ、そのような日がほぼ毎日繰り返されます。このような抑うつ気分と併せて、焦燥感や不安感といった精神状態と不眠などの睡眠障害から思考力や集中力の低下・食欲減退などの症状が見られ、心身ともに疲弊していきます。そして、このような状況を放置していると、心身の疲弊から自殺願望が反復的に生じる危険性があるとされています。
うつ病の原因
うつ病の原因や発症メカニズムについては、今のところ明確に解明されていません。ただし、うつ病になると脳神経での神経伝達物質の働きが低下することが判明しています。
そして、うつ病の原因については様々な仮説が提起されており、遺伝的要因、子供の時の心的外傷など心理学的要因、入学・就職・退職・結婚・育児などの環境変化、ストレス、脳障害などによる神経損傷、薬剤やアルコールの影響などの関係が疑われています。
不安障害
不安障害とは、物事に対して過剰に心配や不安を覚えてしまう精神障害のことです。不安障害には、社会不安障害・パニック障害・全般性不安障害・恐怖症(高所恐怖症など)などが含まれます。
いずれも強い不安感や恐怖感を生じるため、必然的に焦燥感も症状として現れます。このような精神症状とは別に発汗・動悸・頭痛などの身体症状も現れます。
ちなみに、不安障害はうつ病と併発するケースが多いとされています。
不安障害の原因
不安障害の原因についても、うつ病の場合と同様に未だ解明されていません。心理的要因・ストレス・環境変化など様々な仮説が提起されていますが、セロトニンという神経伝達物質による脳機能の異常が不安障害の招いているとする見解が近年有力となっているようです。
適応障害
適応障害とは、何らかの明確なストレスが原因となって、激しい苦痛・不安感・焦燥感・抑うつ気分といった情緒的な障害が現れる精神障害のことです。
そして、このような情緒的障害から、無断欠席や過剰飲酒など社会的ルールに反するような行動を見せることがあります。
適応障害は、原因となるストレスを取り除けば、基本的に解消される場合がほとんどです。
焦燥感に対する対処方法
このように焦燥感を生じる原因は主に不安感や恐怖感であり、焦燥感が強く頻繁に現れる場合には病気の可能性もあることが、ご理解いただけたと思います。
それでは、焦燥感が現れた場合には、どのように対処すれば良いのでしょうか?そこで、焦燥感に対する対処法や対策法について、ご紹介したいと思います。
不安を受け入れる
焦燥感の原因となる不安や恐怖といった感情は、人間であれば誰もが有する感情であって、不安や恐怖から逃れることはできません。ですから、不安や恐怖は感じるのが普通のことで、上手に付き合っていかなければならないのです。
不安や恐怖を受け入れて上手に付き合っていくための方法として、自分が何に対して不安や恐怖を感じているのか、言葉にして紙に書き出して整理してみると良いでしょう。不安や恐怖は原因や理由がわからないからこそ恐れてしまうわけですから、不安や恐怖の原因について冷静に分析してみるのです。
また、親しい人に自分の不安感や恐怖感について話すのも、不安や恐怖と上手く付き合う方法の一つです。不安などを話して吐き出すことと、親しい人に理解してもらえるという安心感を得られることに加えて、客観的な見地から自分には思いも及ばなかった解決策やアドバイスを得られることもあるかもしれません。
このようにして不安や恐怖を受け入れて向き合ってみることが、焦燥感に対する対処法でもあるのです。
自律神経を整える
自律神経のバランスの乱れによる焦燥感の改善策としては、自律神経のバランスを整えることに尽きます。
自律神経を整えるためには、日常の生活習慣を改めて規則正しい生活をすることが大切です。十分で質の良い睡眠をとり、適度な運動をするほかに、バランスの良い食事も心掛けましょう。ビタミンB群やビタミンC、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル類はイライラ感の解消に効果があると言われていますから、偏りのない食事がポイントです。
また、飲酒や喫煙をしている方は、そちらも控えたほうが良いでしょう。さらに、ストレスが溜まると自律神経が乱れるので、自分なりのストレス解消法を見つけておくべきです。ストレスの解消には、リラックスした休息とお風呂への入浴も効果が期待できます。整体院やマッサージ店などで施術を受けても良いでしょう。
おかしいと思ったら病院を受診する
自律神経を整えて、自分なりに不安や恐怖と向き合ってみても、焦燥感が消えない場合は病院を受診しましょう。適応障害の場合は、原因となっているストレスを取り除けば回復することもありますが、焦燥感が症状として現れる自律神経失調症・うつ病・不安障害は放っておいて悪化することはあっても良くなることはありません。ですから、焦燥感を強く感じたり、頻繁に感じたりしておかしいと思った場合は、早期に病院を受診すべきでしょう。
受診すべき診療科は、更年期障害の疑いがある中高年の女性は一旦婦人科を受診してみても良いと思いますが、基本的には精神科や心療内科を受診すべきです。また、自律神経失調症専門の自律神経失調症外来を設置している病院もありますので、インターネットなどで調べてみると良いかもしれません。
病院での治療内容
自律神経失調症の治療は、カウンセリングなどの心理療法や生活習慣の見直しに加えて、症状に応じて抗不安薬や抗うつ薬などを投薬する薬物療法が行われます。女性の更年期障害の場合には、女性ホルモン剤の投薬が行われることもあります。
うつ病や不安障害の場合は、認知行動療法に代表される心理療法と抗不安薬・抗うつ薬を用いる薬物療法の二つを、患者の症状に合わせて組み合わせながら治療を行います。いずれにしても、専門家の医師に治療方針に従うことが大切で、治療途中で自己判断で治療を止めてしまうことは避けなければなりません。
まとめ
いかがでしょうか?焦燥感を感じる原因、焦燥感を生じる病気、焦燥感に対する対処方法などについて、ご理解いただけたでしょうか?
たしかに、焦燥感という感情は、誰もが日常生活の中で必ず経験する、ありふれた感情の一つにすぎないと思うかもしれません。しかしながら、あまりにも強い焦燥感を感じたり、頻繁に焦燥感が現れるような場合には、自律神経失調症や精神障害(うつ病・不安障害・適応障害)を患っている可能性もあるのです。
ですから、なぜだか分からないけど、イライラしたり、気持ちが落ち着かずに焦りといった焦燥感を感じた場合で、自分がおかしいかもしれないと思った時は早期に病院を受診することが肝要です。
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