年々、患者数が増えている乳がん。最近では、北斗晶さんや小林麻央さんも乳がんだということで、話題になりましたね。
乳がんは、女性に特に多く見られるがんです。女性のシンボルともいえる乳房に発症し、場合によっては切除しなければならない乳がん。
乳房の切除は絶対必要なのでしょうか?そして、北斗晶さんがしたような、脇の神経の摘出と乳がんは、どのような関係があるのでしょう?
今回は、乳がんの基本的な症状とあわせて、手術方法についてもまとめてみました。女性必見です。
癌とは?
まず、乳がんに限らず、癌という病気についてお話しします。
癌発生のメカニズム
人間の体は約60兆の細胞からできています。すごく膨大な数の細胞ですね。
癌細胞というのは、普通の細胞から発生した、異常な細胞であり、癌はその癌細胞の塊のことをいいます。
普通の細胞というのは、体の状態に応じて、増殖したり増殖を抑制したりしますが、癌細胞はただ増え続けるだけです。どんどん増え続けていくため、周囲の組織を圧迫したり、壊したりしていきます。
どうして異常化するの?その原因は
異常化する理由はいろいろありますが、特に代表的な理由を挙げてみましょう。
- 喫煙
- 加齢
- 運動不足
- 野菜不足など悪い食生活
この他にも、紫外線や発癌性物質を体内に取り込んでしまうなどの原因があります。これらの原因などが関係し、細胞の遺伝子情報を傷つけ、細胞を異常化させるのです。
また、これらの原因と関わりがないにもかかわらず、癌が発症する場合もあり、絶対に発症しない、ということはありえない病気です。
乳がんとは?
なんとなく、癌発症のメカニズムはおわかりいただけたでしょうか?では、今回のテーマである、乳がんについて掘り下げていきましょう。
乳がんになる要因
前述の癌の発症要因以外に、乳がん独特の要因があります。見てみましょう。
●生涯月経回数の増加
女性ホルモンにさらされている期間が長いほど、乳がんに罹りやすいといわれています。なので、初潮が早く、閉経が遅い人や、妊娠経験のない女性は罹患しやすいそうです。
●遺伝
通常の癌でも遺伝的要素はありますが、乳がんの場合をお話しします。
気をつけなければいけないのは、三親等以内に乳がん罹患者がいるかどうか。もしいると、自分が乳がんになる可能性は上がります。
たとえば、母親が乳がんの場合は2倍、姉妹が乳がんの場合も同様に2倍、そして、母親と姉妹の両方が乳がんの場合は13倍というデータがあります。
●女性特有疾患の既往歴がある
女性特有疾患とは、たとえば子宮筋腫や卵巣癌など、女性特有の部位、器官に発生する病気です。
実は、そのような病気と乳がんには、明確な関連性はないそうです。ですが、特に、乳がん治療から子宮の病気が発症することが多いようです。
乳がんの治療に使う薬品は、乳がんの予防には大変効果があるようなのですが、子宮への影響は悪いそう。子宮筋腫などがもしあるとすると、肥大化してしまうことがあるようです。
こっちを治したつもりが、あっちが悪く…ということもあり、難しいところなのですね。
乳がんの罹患率など
乳がんは、日本女性の罹る癌の中で、最も罹患率の高い癌です。その罹患率は年々上がってきています。14人に1人が乳がん患者であり、年間6万人以上が乳がんと診断されています。また、死亡数も年々上昇し、乳がんが発症した人の3割が年間に亡くなっています。
乳がんのピークは40代後半から50代前半といわれます。近年では、以前まで見られなかった閉経後の発症も見るようになってきました。食生活の欧米化が原因ではないかと考えられています。
また、稀ですが20代での発症も見られる場合があります。治療法が若年者に向かないので、これといって打てる手がなく、症状が長引きやすいです。
乳がんの種類
まず、非浸潤性と、浸潤性とにわけられます。それぞれ、違いを見てみましょう。
非浸潤性とは
癌細胞が乳管や小葉内にとどまっている状態の癌です。他の組織に転移などしていないので、切除すると再発の可能性が低くなります。
浸潤性とは
癌細胞が他の組織に広がって、増殖する癌です。血液やリンパを介して、他の臓器に転移することもあります。
次は、できる部位ごとに見てみましょう。
●乳管がん
乳管がんは、乳管の中にできた癌のことです。乳管とは、母乳の通り道のこと。乳房全体に張り巡らされています。
非浸潤性のものは、早期に切除してしまえば完治するといわれています。ただし、自覚症状はほぼありません。乳頭から血が出た、乳輪のただれが治らない、などで診察した結果、癌だったということが判明するケースもあるようですが、数は多くないようです。一般的な乳がんのイメージであるシコリもわかりにくいといわれています。
浸潤性の乳管がんの場合は、一般型は3種類にわけられます。特殊型は13種類ありますが、発症の確率は低めです。ここでは、一般型を見ていきましょう。
硬癌
乳管の外側に砂をまいたように発症する癌で特殊型を除くと、最も悪性。乳がんの中の40%を占めます。
乳頭腺管癌
きのこ状に発症します。リンパなどへの転移の確率は低く、予後も良好。乳がんの20%を占めます。
充実腺管癌
管の通り道が不明瞭な、小さな腺管の中身を押し広げるようにして増殖。乳がん全体の20%をしめ、予後の悪性度は中程度です。
●小葉がん
成人女性の乳房は、乳頭を中心にして放射状に乳腺が並んでいます。それぞれの乳腺は、小葉にわかれていて、この小葉にできる癌を小葉がんといいます。
また、乳頭にできる癌をパジェット病といいますが、予後は良好なケースが多いです。
乳がんの検査方法
乳がんの検査は、自分で行うセルフチェックと、病院で検査する方法があります。
●セルフチェックの場合
生理後、4、5日後が適当です。閉経している方は、毎月日を決めて一回行います。
まず、鏡の前に上半身を露出した状態で立ちます。左右の乳房や乳頭に、皮膚のへこみや引きつれ、大きさの変化などがないか確認します。
確認し終えたら、今度は両腕を上げて、同じようにチェックします。
次に、仰向けに寝てチェックをします。あまり高くない枕か、タオルなどを折って腰の下に入れましょう。そして左手を頭の下へ入れます。
右手の指をそろえて伸ばし、左乳房の、乳頭よりも内側の部分にのせます。そして、胸の中央部へ指の腹で柔らかく、しかししっかりと滑らせるように動かして、シコリの有無を確認します。
内側の確認が終わったら、左手を自然な位置に下げ、乳房の外側をチェックします。今度は外から内側に向かって、動きは同じように柔らかく、しっかりと。
右側のチェックも終わったら、今度は脇の下のリンパ節をチェックします。体を起こして、右手の指をそろえてのばし、左脇の下に入れてシコリの有無を指先で確認します。右脇も同様。
最後に左右の乳頭をつまんで、乳をしぼるようにします。血液の分泌がないか確認し、セルフチェックは終了です。
●マンモグラフィー検査
マンモグラフィー検査は、乳房専用のX線検査です。乳がんの早期発見に役立ちます。 特に石灰化(カルシウムの沈着)の発見に強いといわれています。
ただし、乳腺が密な若い人だとしっかり写り込まないので不向きであり、40歳以上の女性に推奨されています。
方法は、乳房を挟みながら圧迫して上下左右からレントゲンを撮影します。そのような方法なので痛みも伴いますが、撮影は一枚につき数秒程度。乳がんの早期発見のため、なんとか頑張りましょう。
検査は二年に一度、可能であれば一年に一度受けることが好ましいです。セルフチェックと併用することで、さらに精度が上がりますので、セルフチェックの癖をつけましょう。
●エコー検査
マンモグラフィーは石灰化の発見に強いということでしたが、エコー検査は小腫瘤の発見に強いです。
マンモグラフィーと違うのは、若年者向けの検査方法であるということ。40歳以下の女性や妊婦さんには、エコー検査がオススメです。
エコー検査では、超音波を用いてシコリが良性か悪性か確認します。最新の機器では、乳腺組織の硬さを画像化することが可能なので、客観的に触診を映像で見ることもできるのです。
場合によっては、エコーとマンモグラフィーの両方の検査をすることもあります。これは、どちらの検査も一長一短であり、検査の精度を上げるためなので、しっかり見てもらい、乳がんの早期発見に繋げましょう。
病状を知る
がんのシコリの大きさや、転移がどの程度進んでいるかを検査で確認します。それを下記の分類に当てはめ、適した手術、治療を行います。
●シコリの大きさで判断する基準
Tis
非浸潤癌、腫瘤のないパジェット病の状態
T0
腫瘤を認めない、触診ではわからない状態
T1
しこりが2cm以下の状態
T2
しこりが2.1~5.1cm以下の状態
T3
しこりが5.1cm以上の状態
T4
a…大きさに関係なく、胸郭(肋骨に囲まれた部位、首から横隔膜まで)に浸潤している状態
b…皮膚病変が生じている状態
c…a、bとも生じている状態
●様々な異常を総合的に観察して分類する(病期ステージ)
0期
非浸潤性がんの状態。まだどこにも転移してなく、とどまっています。
I期
しこりの大きさが2cm以下で、脇の下のリンパ節への転移がない状態。
II期
IIa期
①しこりの大きさが2cm以下で、脇の下のリンパ節への転移がある状態。
②しこりの大きさが2~5cmで、リンパ節への転移がない状態。
①か②のどちらかの状態がIIa期です。
IIb期
しこりの大きさが2~5cmで、脇の下のリンパ節への転移がある状態。
III期…局所進行乳がん
IIIa期
①しこりの大きさが2cm以下で、脇の下のリンパ節への転移があり、更にリンパ節が互いにくっついていたり(癒着)周辺の組織に固定している状態。
②脇の下のリンパ節への転移はなく、胸骨の内側のリンパ節が腫れている状態。
③しこりの大きさが5cm以上で、脇の下か胸骨の内側のリンパ節への転移がある状態。
IIIa期は、①〜③までのいずれかの状態です。
IIIb期…しこりが胸壁にがっちりと固定されている、皮膚にしこりが顔を出している、皮膚が崩れたりむくんだりした状態。しこりの大きさは関係ないです。
炎症性乳がんもこの病期です。
IIIc期
①しこりの大きさに関わらず、脇の下と胸骨の内側のリンパ節への転移がある状態。
②鎖骨の上下にあるリンパ節への転移がある場合。
①か②の状態の場合、IIIc期になります。
IV期
骨や肺、肝臓、脳などの遠隔臓器に転移している状態。血液やリンパの流れに癌細胞が乗ってしまい、起こります。
再発乳がん
乳房のシコリに対する初期治療をしたあと、乳がんが再び出てくることを再発といいます。
通常は他の臓器に出てくることを指し、IV期の乳がんとあわせて転移性乳がんと呼びます。
乳がんの手術方法は?
基本的には外科手術を行います。手術では、乳房にできた癌はもちろん、その周りの正常な組織も切除します。
切る部位は乳房、胸筋、リンパ節。どの程度切除する必要があるかは、癌細胞の広がり方を見て判断します。
手術の種類を、何種類か見てみましょう。
●乳房温存手術
しこりを含めた乳房の一部分を切除する方法です。
病変の範囲や広がりによって乳頭を中心とした扇型に切除するか、あるいは癌の周辺に2cm程度の安全域をとり、円形に切除します。手術後に、放射線治療をして再発を防ぎます。
現在主流となってきている手術法ですが、原則としてしこりが大きかったり、乳腺内に複数のしこりがある場合は適応できません。
●胸筋温存乳房切除術
乳がんの手術では最も一般的な術式です。
乳房と脇の下のリンパ節の切除を行います。場合によっては胸の筋肉の一部も切り離すことがあります。
大胸筋のみ残すペティー法や、大胸筋と小胸筋を残すオーチンクロス法やコダマ法など、やり方がいろいろあります。これは、症状の進行具合や、病院によって異なるようです。
●胸筋合弁乳房切除術(ハルステッド法)
乳房と脇の下のリンパ節だけでなく、乳腺の下にある大胸筋や小胸筋を切除します。
リンパの流れが阻害されるため、後遺症が出やすいといわれています。腕のむくみや、感覚が鈍くなるなどする場合があります。
かつては主流な術式でしたが、現在では癌の転移が胸の筋肉に達している時だけ行われます。
●腋窩リンパ節郭清(えきかりんぱせつかくせい)
乳がんの切除とともに、脇の下のリンパ節を含む脇の下の脂肪組織を切除することを指します。
なぜ必要かというと、乳がんの領域のリンパ節再発の予防のほか、再発の可能性の予測をし、術後に薬物療法が必要かどうかの判断をするために必要なのです。
この手術を行うと、手術した側の腕に運動障害や、肩の痛み、むくみなどが発生する可能性があります。
●センチネルリンパ節生検
まだ研究途上の方法ですが、腋窩リンパ節郭清に関連するので、ご紹介します。
がんの付近に放射線同位元素や色素を注射して、乳がんからこぼれ落ちた癌細胞がリンパ節へ転移していないか調べる方法です。
これにより、転移が認められない場合は腋窩リンパ節郭清の手術を省くことができるようになります。ただし、しっかりした検査をしないと見落としてしまう可能性もあり、技術の向上や設備投資が必要とされています。
その他の治療法
切除手術以外の治療法をご紹介します。
●放射線療法
放射線には癌細胞を死滅させる効果があります。
乳がんの治療で行う場合は、がんを切除したあとに乳房やその領域の再発予防で行う場合と、転移した病巣による症状の緩和に行う場合があります。
●薬物療法
薬物療法は、さらに細かくわけることができます。1つ1つ見てみましょう。
ホルモン療法
内分泌療法ともいいます。
手術でとった癌細胞を検査して、女性ホルモンに影響される癌細胞か見ます。女性ホルモンに影響されやすい乳がんを「ホルモン感受性乳がん」などと呼び、この場合だと、ホルモン療法の効果が期待できます。
使用するのは、抗エストロゲン剤というものです。いままでは、すべての乳がん患者が同じ薬を用いていましたが、薬の種類が増えて、閉経状況に応じて処方されるようになりました。
乳がんの7割は、ホルモン受容体を持っているとされ、女性ホルモンの刺激を受けて増殖するとされています。なので、抗エストロゲン剤を使用して、女性ホルモンとホルモン受容体が結合できないようにするのが目的になります。
副作用は軽めですが、使用する薬剤によって、骨粗鬆症などの発症リスクが上がる場合があります。
抗がん剤治療
乳がんには効果的な治療法です。いろいろな細胞分裂の段階に働きかけて癌細胞を死滅させます。
ただし、抗がん剤は正常な細胞にも作用してしまいます。白血球や血小板の減少、吐き気、食欲低下、脱毛など、重い副作用があります。
●分子標的療法
乳がんの2、3割が持っているといわれるHER2タンパクを狙い撃ちして治療する方法です。
比較的新しい方法で、HER2タンパクを過剰に持っている癌細胞に効果が期待できます。
まとめ
北斗晶さんは、乳がん検診に行っていたそうですが癌が見つからず、自分でシコリに気づいて診察してもらったら癌だったそうです。
他にも検診では見つからなかったのに、あとになって癌が見つかる…ということがあるようで、珍しいことではないようです。
とはいえ、年に一度は乳がん検診に行き、自分でもセルフチェックを行い、不審な点があれば、病院に行くべきだと思います。
年々増えている乳がん患者。あなたもいつなるかわかりません。なるべく早期発見できるよう、自分の身は自分で守っていきましょう!