精神障害者手帳について!等級や持つメリット、注意点を知ろう。

「心の病」と呼ばれる精神疾患を患う人は、年々、増加傾向にあります。内閣府の発表では、平成26年度の調査で、人口の2.5%を占める、およそ320万1千人もの人が、何らかの精神疾患を患っているという報告がありました。

ストレスの多い環境や、インターネットの普及によって変化してきたコミュニケーションの在り方、自らの精神状態と向き合うことの難しさなど、私たちの心の健康を崩してしまう原因は多々あります。

身体の不調とは異なり、精神的な不調は、「○○すれば治る」といった明確な方法がないため、長年、精神疾患に苦しめられている人も多いようです。

しかし、そんな人たちが少しでも社会で暮らしやすいようにと交付されている「精神障害者保健福祉手帳」というものがあります。一般的には“精神障害者手帳”と省略して呼ばれているようです。

ここでは、精神障害者保健福祉手帳とはどのようなものなのか、精神障害者と呼ばれる人たちにどのようなメリットがあるのかなどを、ご紹介いたします。

精神障害者保健福祉手帳について

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精神障害者保健福祉手帳は、精神障害を持つ人が、一定の障害状態にあり、社会で暮らしていくには困難を伴うということを認定し、公的に示すものです。

この手帳を持っていることで、福祉サービスや税金の控除など、様々な支援を受けることができるため、精神障害を患っている人にとっては、自立と社会参加の心強いサポートとなります。

精神障害者保健福祉手帳の対象疾患について

精神障害者保健福祉手帳は、以下にあげる精神疾患によって、長年、社会生活に支障が出ている人を、交付の対象としています。

  • 統合失調症
  • うつ病、躁うつ病などの気分障害と呼ばれる疾患
  • てんかん
  • 薬物、アルコールによる急性中毒や、依存性
  • 記憶障害や注意障害、遂行機能障害などの高次脳機能障害
  • 自閉症や学習障害、注意欠乏多動性障害などの発達障害
  • 睡眠障害や異常食障害などの、その他の精神疾患

以上のような疾患が見られて、病院を受診してから6ヶ月以上経過してもなお、改善が見られていないことが、交付の条件となります。

また、精神疾患がなく、知的障害の場合においては、療育手帳制度があるので、対象外となります。しかし、知的障害と精神疾患の、どちらも患っている場合においては、両方の手帳の交付対象となります。

精神障害者保健福祉手帳の等級について

精神障害者保健福祉手帳は、1級~3級の3段階の等級に分けられ、精神疾患の重症度と、疾患による社会生活、および日常生活への支障の度合いによって異なります。

3級が一番疾患の軽いもので、1級に向けて徐々に重症度や社会生活の制限が増えてきます。それぞれの対象となる状態は以下のとおりです。

<3級>

精神疾患を患い、日常生活や社会生活に制限を受ける。あるいは、制限を加えることが必要な場合。

単身でもなんとか生活は送ることができるものの、家族や専門の医師、ヘルパーなどの支援に支えられている人が多く、一見、精神疾患を患っているように見受けられないことが多いのも特徴です。

<2級>

精神疾患を患い、日常生活や社会生活に著しい制限を受ける。あるいは、著しい制限を加えることが必要な場合。

単身での生活はやや困難で、家族や専門の医師、ヘルパーなどの支援を必要とする人が多いのが特徴です。

<1級>

精神疾患を患い、日常生活や社会生活を単身で送ることが困難な場合。

この場合は、意思疎通ができないといったケースもあり、専門医療機関や施設などに入院している人が多いのが特徴です。

精神障害者保健福祉手帳を持つことで受けられる支援

手帳を持つことで受けられる支援には、全国で一律に行われているものと、住んでいる地域や事業者によって行われている支援との、2種類があります。それぞれの支援は以下のとおりです。

<全国一律の支援>

  • NHK受信料の軽減・免除
  • 所得税や住民税の控除
  • 相続税の控除
  • 自動車税や自動車所得税の軽減※1級の場合のみ
  • 経費の対象となる費用は生活福祉資金の貸付が可能になる
  • 障害者雇用の枠で仕事を探すことが可能になる
  • 障害者職場適応訓練を受けられる
  • 障害者年金を受け取れる場合がある  など

<地域・事業者による支援>

  • 鉄道やバス、タクシーなどの運賃が割引になる
  • 携帯電話料金が割引になる
  • 水道料金が割引になる
  • 公共施設の入場料などが割引になる
  • 福祉手当が受けられる場合がある
  • 公営住宅に入居する場合、優先される  など

この他にも受けられる支援はありますが、地域や事業者によって異なりますので、それぞれ確認することをおすすめします。

また、生活介護やケアホームなどの、障害者自立支援法による「障害福祉サービス」や、「自立支援医療」による医療費の軽減など、精神疾患を患っている人であれば、手帳を持っていなくても受けられる支援もあります。

生活保護を受けている場合

精神疾患を患っていて、さらに生活保護を受けているとなると、生活するには、経済的にかなり厳しい状況になることが考えられます。

しかし、精神障害者保健福祉手帳を持っている場合、生活保護を受けると「障害者加算」が計上されます。手帳の等級や地域によっても異なりますが、およそ月1万5千円~2万6千円加算され、ほかの世帯に比べて生活保護費を優遇してもらえます。

精神障害者保健福祉手帳の申請手続きについて

手帳の申請は、自身が住んでいる市町村の福祉事業所などの窓口で行うことができます。手帳は、申請しなければ交付されません。必要だと判断した場合は、以下のものを用意し、担当窓口へ持っていきましょう。

  • 精神保健指定医による診断書、または障害年金などを受けている場合にはその証書などの写し  ※障害年金などを受けている場合には、年金事務所等に確認するための同意書が必要になる場合があります
  • 手帳の申請書 ※申請窓口に置いてあります
  • 顔写真(証明写真) ※1年以内に撮影したもの
  • 印鑑

診断書については、精神保健指定を受けている医師の診断書が必要になりますので、自分が受けている医療機関の担当医が、その範囲内であるかを確認しておきましょう。先にも述べたように初診から6ヶ月以上経過して記載したものが必要です。

また、本人による申請が困難な場合、家族や医療機関の関係者が、本人の代理として申請することも可能です。

申請後、精神保健福祉センターで審査が行われ、約1~2ヶ月ほどで手帳交付についての可否が決まります。

精神障害者保健福祉手帳を持つうえでの注意点

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ここまでご覧いただいたように、精神疾患を患っていても、精神障害者保健福祉手帳を持っていることで、日常生活や社会生活の負担を軽減するための、様々な支援を受けることができます。

精神疾患を患っている場合、どうしてもそれを負い目に感じてしまう人が多く、外に出ることも少なくなりがちですが、このような支援・サービスを積極的に受けて、前向きに精神疾患と向き合い、治療していくことが必要です。

また、精神障害者保健福祉手帳を交付された場合、心に留めておきたい点がいくつかありますので、ここでは、それらを以下にあげてご紹介いたします。

更新手続きを忘れずに

精神障害者保健福祉手帳の有効期間は、交付されてから2年間となっています。2年経過した月の末日を過ぎると、支援を受けることができなくなってしまいますので、更新手続きを忘れずに行いましょう。

有効期限が手帳の表面に記載されているので、自分の期限を確認しておきましょう。また、更新手続きは、有効期限の3ヶ月前から行うことが可能です。

手続きには、

  • 診断書、あるいは障害年金などの年金証書の写し
  • 顔写真(証明写真) ※1年以内に撮影したもの
  • 印鑑
  • それまで使用していた手帳の写し

以上を持参のうえ、市町村の担当窓口へ提出してください。

紛失・破損した場合

万が一、手帳を紛失・破損した場合においては、再交付が可能です。担当窓口で、再交付申請書を記入し、顔写真とともに提出しましょう。また、破損や汚れなどで再交付する場合においては、現在使用している手帳の写しが必要な場合もあります。

マイナンバー制度について

平成28年から、個人を識別するために番号法という法律のもと、個人番号の利用が開始しました。これに伴い、平成28年1月以降の精神障害者保健福祉手帳の申請には、12桁の個人番号(マイナンバー)が必要になります。

これは、新規で申請する場合に限らず、手帳の更新や、障害等級の変更手続き、住居地の変更手続きの際も同様です。

その際に必要な書類は以下のとおりです。

<本人が申請する場合>

  • 個人番号カードや個人番号が記載されている住民票などの、本人の個人番号が確認できる書類
  • 個人番号カードや、運転免許書、パスポートなどの、本人の身元を確認できる書類

<代理人が申請する場合>

  • 任意状や戸籍標本などの、代理権を確認できる書類
  • 代理人の個人番号カードや運転免許書、パスポート等の、代理人の身元を確認できる書類
  • 本人の個人番号カードや写し、本人の個人番号が掲載されている住民票や写しなどの、本人の個人番号が確認できる書類

以上の書類を担当窓口に提出してください。

手帳を交付された後の心のケアも忘れずに

このように、素晴らしい支援を受けられる精神障害者保健福祉手帳ですが、手帳が交付されることにより、本人が「障害者である」という負い目を感じてしまうケースがあります。

このような場合、手帳を晒すことを恐れ、さらに外出が困難になる可能性もあります。単身で、精神疾患と戦っている人は、このような意識に負けず、堂々と支援を受け、一人の人間として社会参加しようという意思を忘れないことが大切です。

また、家族やヘルパーなど、周囲の支えを借りられる場合は、まずは周りの人たちが、この手帳が前向きな「社会参加の証」であるということを認識し、本人に伝えることが必要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。精神疾患は重度の場合はもちろん、軽度の場合においても大変苦しいものです。とくに、周りから見ても精神疾患を持っているように感じられない段階の場合、本人にとっての苦痛は、計り知れないものがあります。

健やかな精神を取り戻すには、本人の努力のみならず、誰かの力を借りることも非常に大切なプロセスになります。誰かに頼る、支えてもらう…そういったことでしか得られない安心感というものがあるのです。

精神障害者保健福祉手帳も、その「力」の一つではないでしょうか。精神疾患で、日常生活や社会生活に苦しんでいる人にとっては、病気と前向きに生きていくための、心強い制度と言えるでしょう。

  
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