タバコが肺に与える影響とは?有害物質や引き起こされる病気を知ろう!

最近、タバコを吸う人への風当たりが強いですよね。レストランでも新幹線でも飛行機でも、禁煙が当り前になっています。会社でも全面禁煙が増えています。

タバコ愛好家はつらい思いをしています。家庭でも吸えません。会社では、喫煙ルームがあれば幸運で、多くの人達が屋上や非常階段などでこっそり吸っています。

タバコは本当に肺に悪いのでしょうか?「肺癌とタバコは無関係」という説もあります。

タバコには有害物質が多量に含まれています。タバコに火をつけた時に発生する煙には、ダイオキシンやヒ素など有害化学物質が200種類、発癌物質が60種類も含まれています。やはり、タバコは肺に悪影響を与えます。それも、タバコを吸う人の周囲にいる人々の肺にも害を与えます。「タバコは百害あって一利なし」なのです。

タバコが肺に与える悪影響、肺癌との関係について、くわしくお伝えします。

タバコは有害物質か?

skull-and-crossbones-1418827_960_720有害なタバコ

タバコには、多くの有害物質が含まれています。原料となるタバコの葉は、ナス科の植物ですが、この葉自体に有害成分があります。タバコに火をつけた時に発生する煙にも、多くの有害化学物質が含まれているのです。

[タバコの有害成分]

タバコの煙は、約4000種類の化学物質で構成されています。その約4000種類の化学物質のうち、約200種類がダイオキシンやヒ素、ニコチンなどの有害物質です。また、ベンツピレンやニトロアミンのような発癌物質が約60種類も含まれています。

タバコの有害成分の代表が、ニコチン・タール・一酸化炭素です。これを、タバコの3大有害物質といいます。

ニコチン

ニコチンはかなり強い神経毒で、人間の致死量は30~60㎎、タバコ3~4本に含まれる量です。タバコの水溶液は害虫退治に効果があります。でも、あまりにも毒性が強いので、害虫駆除にタバコの水溶液を使用することは、法律で禁止されています。

アメリカの推理作家エラリー・クイーンの作品「Xの悲劇」は、ニコチンを使った殺人事件です。ニコチンタールを塗った針で手を傷つけただけで、大の男が死んでしまいます。

ただし、タバコを吸った時に摂取するニコチンは1本3~4㎎です。

ニコチンは神経毒なので、依存性が強いのです。タバコを吸うと、煙となってニコチンが肺から血液中に入り、脳に行きます。脳にある「ニコチン受容体」とニコチンが結びつくと、快感が生じます。ドーパミンという快感ホルモンの分泌を促し、さらに快感が増します。脳は快感を持続させるために、ニコチンを欲しがるようになります。喫煙をくり返すと、脳はますますニコチンを求めるようになり、ニコチン依存症になってしまいます。

タール

タールは、タバコの葉が熱で分解されて生じるベタベタした粘着物質です。タバコを吸った時、フィルターが茶色くなるのはタールのせいです。

タールには200種類もの有毒物質や発癌物質が含まれています。タールは粘着物質なので、ニコチンのように血液中に入ることはありませんが、細胞に付着して残存し続けます。肺に付着すると、なかなか取れません。禁煙した後も残り続け、長期間、悪影響を与えます。

一酸化炭素

タバコは不完全燃焼を起こして一酸化炭素を発生させます。

呼吸により取り入れた酸素は、血液中のヘモグロビン(赤血球中の血色素)と結びついて全身に運ばれます。一酸化炭素は血液中に入ると、酸素の200倍の速さでヘモグロビンと結びつきます。タバコを吸うと、肺で一酸化炭素が血液に吸収され、ヘモグロビンと結合してしまうので、酸素がヘモグロビンと結びつくことが難しくなります。酸素が全身に運ばれなくなり、身体のあちこちが酸欠状態になります。

一酸化炭素中毒になると、激しい頭痛・吐き気・嘔吐・意識障害・肺水腫・脳浮腫が発症し、最悪では、昏睡状態や死に至ります。

タバコの一酸化炭素で酸素不足になると、運動能力や脳の働きが低下し、動脈硬化や心筋梗塞の危険性が高くなります。

その他・・・シアン化水素

3大有害物質の他にも、多くの有害物質が含まれていますが、中でも気になるのがシアン化水素です。シアン化物(シアン化合物)といえば、シアン化ナトリウム・シアン化カリウムなどのように人体に有害な物質で、少量でも死に至ることがあります。

シアン化水素は酸化酵素の働きを低下させ、組織呼吸を妨げます。

[タバコは副流煙の方が有害]

タバコは、吸っている本人だけでなく、その周囲の人々にも有害物質を吸入させてしまいます。「分煙」では十分害を防げないので、「全面禁煙」にするのも無理はありません。

タバコの煙には「主流煙」と「副流煙」があります。

「主流煙」とはタバコを吸っている人が吸い込む煙です。「副流煙」とは、火のついたタバコの先から立ち上る煙です。タバコを手に持っている時も、タバコを灰皿に置いている時も、タバコがくすぶっている時も、吸っている人の周囲の空気には副流煙が漂っています。

副流煙には、主流煙より有毒物質が多く含まれています。副流煙に含まれるニコチンは主流煙の2.8倍、タールは3.4倍、一酸化炭素は4.7倍です。

しかも、喫煙者の周囲の人々は、副流煙の他に喫煙者の吐き出すタバコの煙(呼出煙)まで吸い込むことになります。

自分はタバコを吸わないのに、タバコを吸っている人と一緒の空間にいるだけで、より多量にタバコの有害物質を吸入してしまうのです。これを「間接喫煙」「受動喫煙」「二次喫煙」といいます。

タバコは肺に悪影響を与えるのか?

man-1519667_960_720タバコの煙

タバコに有害物質が含まれていることは、事実です。その有害物質の含まれる煙が、まず到達するのが気管・気管支・肺です。有害物質は肺で血液中に吸収されて、全身に運ばれます。

[タバコは肺を破壊して呼吸不全を引き起こす]

タバコの有害物質は全身に悪影響を及ぼしますが、気管・肺胞など呼吸器系器官は、直接有害物質にさらされるので、害を受けやすいと言えます。

吸い込んだ酸素は気管を通り、肺に送られます。気管は気管支に分かれ肺に入り、さらに細く枝分かれして、先端が肺胞となります。肺胞で、酸素が血液中に取り込まれ、二酸化炭素が血液中から排出されて、交換が行われます。二酸化炭素は気管を通り、吐き出されます。

タバコの煙も気管・気管支を通り肺胞に届きます。タバコに含まれる有害物質が気管や気管支、肺胞に炎症を起こし、咳や痰が出るようになります。喫煙を続けると、炎症が慢性化してさまざまな障害を引き起こし、最終的には肺胞が破壊されて、肺が空洞化します。

肺には2つの機能があります。1つは酸素と二酸化炭素の交換をする呼吸機能、もう1つは代謝・免疫機能です。タバコは、この2つの機能を低下させます。呼吸機能が低下すれば、呼吸不全を引き起こし、全身が酸欠状態になります。代謝・免疫機能が低下すれば、老化を早め、感染症にかかりやすくなり、癌が発生しやすくなります。

[タバコによって引き起こされる肺の病気]

タバコによって、いろいろな肺の病気が引き起こされます。これには、タバコが直接引き起こす病気と、タバコによって悪化する病気があります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

最近注目されている病気です。患者さんの90%が喫煙習慣があるので「タバコ病」と呼ばれます。タバコによって、慢性気管支炎と肺気腫がいっしょに起きることが多いので、まとめて慢性閉塞性肺疾患(COPD)というようになりました。

慢性気管支炎とは、肺結核など明らかな疾患がないのに、気管支に炎症が起きて、慢性的に咳と痰が出る病気です。気管支の粘膜には杯細胞という細胞があり、この細胞の中に気管支腺が開いています。空気を吸うと、いろいろな異物がいっしょに入ってくるので、気管支腺は粘液などを分泌して異物をとらえ、喉の奥に押し出します。これが痰です。

タバコを吸う習慣があると、有害物から呼吸器を護るために、杯細胞と気管支腺が増えます。そのため、痰や咳が多くなります。

肺気腫とは、肺胞の壁が壊れて肺胞がくっつき、肺胞数が減るために酸素と二酸化炭素の交換が十分行われなくなる病気です。

タバコを吸う習慣があると、その有害物から呼吸器を護るために、細胞の活動が活発化して、タンパク質分解酵素が多量に分泌されます。多量のタンパク質分解酵素は肺胞の壁を破壊します。肺胞はたがいにくっついて大きくなりますが、数が減り、酸素を吸収して、二酸化炭素を排出することが十分にできなくなります。呼吸困難・呼吸不全を引き起こします。

COPDの治療法は、禁煙がベストです。ただし、禁煙しても、すぐに症状は改善しません。タールは細胞に付着してなかなかとれないので、禁煙後も悪影響が続くのです。

気管支喘息

気管支喘息は、タバコが直接原因となって発症する病気ではありません。タバコが誘因となったり、症状を悪化させたりする病気の1つです。

タバコに含まれる有害物質、ニコチンやタールなどが気管・気管支の粘膜に炎症を起こすので、喘息の発作が誘発されます。

また、タバコを吸う習慣があると、喘息の治療薬である吸入ステロイド薬の効き目が小さくなります。そのため、喘息発作がなかなか収まらなくなります。

呼吸器感染症・・・肺炎

これもタバコが間接的に悪影響を与える病気の1つです。

空気といっしょに細菌やウィルスが吸い込まれます。吸い込まれた細菌やウィルスを排除するために、気道には繊毛があります。気道とは、鼻腔・口腔・喉頭・気管・気管支などの空気の通り道です。気道の繊毛が、細菌やウィルスを肺から喉に送り出して、感染を防ぎます。

タバコを吸う習慣があると、有害物質のために繊毛の働きが悪くなります。そのため、細菌やウィルスを排除することができず、肺炎などの呼吸器感染を発症します。

また、肺には代謝・免疫機能がありますが、タバコを吸う習慣があると、免疫機能が低下するので、細菌やウィルスに抵抗できなくなるのです。免疫機能が高いと、白血球の仲間が細菌やウィルスを破壊・排除してしまいます。

自然気胸(肺気胸)

自然気胸とは、肺に穴が開いて空気が胸腔にもれる病気です。もれた空気は胸腔にたまり、肺を圧迫して小さくするので呼吸困難になります。胸に痛みが生じ、息切れがしたり、息苦しくなったりします。外傷などはっきりした原因がありません。「肺気胸」とも呼ばれます。

自然気胸は、瘦せ型で背の高い若い男性に発症しやすいと言われます。自然気胸の患者さんの70%に喫煙習慣があるため、タバコと関係があると考えられています。「自然気胸の原因の1つはタバコである」と言う医者もいます。

自然気胸は、穴が自然にふさがることもありますが、ふさがらない時は、手術で穴を閉じます。再発することが少なくありません。タバコの有害物質は肺に負担をかけるので、再発防止のために、禁煙を勧める医者が多いようです。

[タバコの害は受動喫煙の人にも及ぶ]

「タバコを吸う習慣のある人」とは、喫煙者・タバコ愛好家だけではありません。自分ではタバコを吸わなくても、喫煙している人と一緒にいることが多く、タバコの煙を間接的に吸い込む人も「タバコを吸う習慣のある人」になってしまいます。むしろ、受動喫煙・間接喫煙の方が、タバコの有害物質の悪影響を強く受けます。

喘息や気胸のある人、風邪をひいて気道に炎症を起こしている人は、喫煙者とは同席しない方が無難です。禁煙席・禁煙室をオススメします。分煙席などは、少しも効果がありません。

特に乳幼児や小児が受動喫煙で受ける害・悪影響はかなり大きいものです。胎児に悪影響が及ぶことは言うまでもありません。受動喫煙をする乳幼児・小児は、肺機能が低下し、肺感染症や気管支炎にかかりやすくなります。小児喘息が悪化します。脳の働きも低下します。

タバコが有害というのはウソだ!・・・という人もいる?

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最近では、「タバコは有害ではない」という説もあるようです。特に、「タバコと肺癌は無関係だ」という人が増えています。

[喫煙者が減っているのに、肺癌患者が増えている!!!]

「タバコは悪くない」と主張する人達の最大の根拠となるのが、「喫煙者が減っているのに、肺癌患者が増えている」という統計です。

喫煙率は1966年の83.7%をピークにして下がり始め、2011年には33.7%になっています。ところが、肺癌死亡者数は、1958年に2,919人でしたが、2010年には50,395人と、10倍以上に増えています。これでは、「タバコと肺癌は無関係だ」と言われても、仕方がないですね。

でも、癌細胞は、加齢とともに発生しやすくなります。癌細胞は1日約5,000個発生しますが、免疫機能を担う白血球の仲間によって破壊・排除され、増殖して癌になることはないのです。加齢などにより免疫機能が低下すると、癌細胞を排除しきれず、増殖して癌になります。ですから、高齢者が増えれば、当然癌患者や癌死亡者も増えるのです。

日本の高齢化ということを考えて調整すると、1996年をピークとして肺癌死亡者は減少していきます。喫煙率のピークと30年の差があるのは、タバコを吸ったから、すぐに癌が発生するというものではないからです。癌発生の仕組みは複雑で、いろいろな因子が絡み合っています。また、タバコの有害物質の影響が出るまでにも、時間がかかります。そのために、30年程度のタイムラグがあって当然なのです。

肺癌発生率を見ると、喫煙者は0.1%、喫煙しない人は0.02%で、5倍になっています。ただ、肺癌の発生原因は他にもいろいろあり、タバコだけが原因ではありません。

また、「江戸時代はタバコを吸う人が今より多かったのに、肺癌で死ぬ人は少なかった」という人もいますが、江戸時代の平均寿命は50~60歳で、癌になる前に肺結核や脳卒中(脳梗塞・脳出血など)で亡くなってしまったためです。

[禁煙のストレスの方がタバコより悪い?]

「タバコは悪くない」という人は、「禁煙するストレスの方が、タバコよりも身体に悪影響を及ぼす」と言います。確かにストレスは自律神経系の働きを低下させたりして、いろいろな疾患や障害を引き起こす誘因となります。

「タバコをやめると、食事の量が増えて太る」とか「イライラして人間関係がうまくいかなくなる」とか、禁煙による悪影響は確かにあります。でも、禁煙によるストレスや、ストレスから生じる悪影響は、禁煙外来などでお医者さんと相談すれば、対処の方法があります。

禁煙によるストレスは、喫煙以外の方法で解消することができます。

[タバコを吸う人の肺は真っ黒]

喫煙習慣のある人・タバコ愛好者の肺の映像は、ドス黒くて、全体にただれているような感じです。タールがベッタリこびりついているのが、はっきり見えます。タバコを吸わない人の肺は鮮やかな色で、汚れていません。両者の肺の映像を見ただけで、「タバコは肺に悪影響を与えない」とは言えなくなります。

しかも、肺にこびりついている黒い汚れは、1年や2年の禁煙ではなくなりません。肺がタバコを吸わない人と同じ程度のリスクを抱えるまでに回復するには、少なくとも10年はかかります。そして、その間も、ニコチンやタールの有害物質は悪影響を与え続けます。もちろん、時間経過とともに悪影響は減少していきます。

まとめ

タバコに関係する病気は肺癌だけではありません。慢性閉塞性肺疾患(COPD)などで呼吸機能が低下すると、呼吸困難・呼吸不全になります。

人を殺せるほどの神経毒や発癌物質を日常的に吸い込んでいれば、肺に悪影響がないはずがありません。しかも、タバコの悪影響は、喫煙者本人だけにあるのではなく、喫煙者と一緒にいる周囲の人々にもあります。むしろ、周囲の人々の方がより強い害を受けるのです。

タバコは肺だけでなく、動脈硬化や心筋梗塞、肝臓癌や膵臓癌等さまざまな癌を発症させたり、肌の老化を促進したり、酸欠状態にしたり、身体全体に悪影響を及ぼします。「タバコを吸うたびに、6分間ずつ寿命が縮まる」とも言われます。

タバコを吸う人も、喫煙者の周囲にいるタバコを吸わない人も、タバコには注意したいものですね。

  
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