ADHDという障害をご存知でしょうか。これは注意欠陥・多動性障害と言われていて、具体的には、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)という3つの症状が見られる発達障害のことです。
子供の頃から、この3つの症状に悩まされ続けていて、大人になってから気づくという人も多いようです。ADHDの方は普段の日常生活や、社会生活の中でも、度々トラブルを起こしてしまうことから、悩みを抱えてしまい、うつ病が併発ケースも多いようです。
ストラテラとは、主にそんなADHDの方の治療薬として、処方される薬です。服用することで、精神状態を健康に近づけることができ、一般的な社会生活を送れるようになるのですが、人によってはとても強い副作用がでてしまう方もいます。
今回は、ストラテラに関する記事をまとめました。医学的な話もあり、少し難しい言葉もでてきますが、ADHDが思い当たる方は一度目を通していただければと思います。
ADHDとは
そもそも、まずADHDとはどういったものなのでしょうか?医師に診断された人ならば、もちろん自覚できると思いますが、ADHDは気づかずに日常生活を過ごしてしまっていることも多いようです。具体的にどういった症状なのか、見てみましょう。
ADHDの定義
ADHDは英語の名称であるAttention Deficit Hyperactivity Disorderの略称。Attention Deficitが注意欠陥と言う意味で、Hyperactivity Disorderが多動性障害という意味があります。
不注意(注意障害)、過活動(多動性)、衝動性の症状を特徴とする神経発達症、または行動障害と言われています。
一般的には、じっとする必要があるようになる小学校入学前後の時期に、露見されることが多いようです。年齢が上がっていくにつれて、過活動の症状が見られなくなっていくために、子ども特有の症状であると言われていましたが、近年は大人になっても、ADHDの症状が残る可能性があるというように、理解されています。
ADHDの症状
ADHDは不注意、過活動、衝動性の症状があるのですが、具体的にはどのような症状があるのでしょうか?当てはまるものが多い場合は、一度検査をしてみましょう。
不注意の症状
- 簡単に気がそれてしまう。
- 細かいミスをする。
- 約束事など、物事をよく忘れる。
- 一つの作業に集中し続けるのが難しい。
- その作業に楽しみを覚えない場合に、数分で退屈を感じる。
- 時間管理が苦手で、上手くいかない。よく遅刻をしてしまう。
- 片付けるのが苦手
過活動
- じっと座っていることができない。貧乏揺すりをしてしまうなど。
- 絶え間なく喋り続ける。
- 黙って、じっとしているのが難しい。
衝動性
- 結論のない話を喋り続ける。
- ほかの人が話している時に、それを遮って喋ってしまう。
- 自分の話す順番を待つことが出来ない。
- 思ったことをすぐに口にしてしまう。
ストラテラについて
ADHDの治療に使われるストラテラですが、どういった薬なのでしょうか?気になる副作用なども合わせてみてみましょう。
薬効・薬理作用
大脳、脳幹といった中枢神経にはたらきかけて、精神活動を活発にしたり、神経を覚醒させる作用を持つ薬です。
脳の前頭前野部分の神経に存在するトランスポーター(ノルアドレナリントランスポーター)に対して働いて、ノルアドレナリン、ドーパミンが再び取り込まれるのを防ぐことで、神経伝達物質の濃度を上げます。
ADHDの治療にはほかに、「コンサータ」がよく処方されますが、こちらは「中枢神経刺激薬」であるため、副作用や依存性が問題点となっています。コンサータに関しては、別の項にて説明します。
ストラテラは、直接神経に影響を与えず、トランスポーターにだけ結合する「非中枢神経刺激薬」であるため、ADHDの治療に関連しないその他の受容体には、ほとんど作用を与えません。そのため、副作用も比較的少ないと考えられています。
ただし、副作用などのリスクがない反面、即効性はなく、服用を開始してから効き目が現れるまでに、約14日ほどはかかります。安定した効果が現れるまでには、更に一ヶ月から一ヶ月半ほどの期間が必要となります。
副作用
副作用が少ないと言っても、他の中枢神経系の薬に比べて少ないというだけで、やはりストラテラにも、十分に注意が必要な副作用がいくつもあります
主な副作用は、食欲不振、吐き気、腹痛などの胃腸症状です。胃などは、副作用が出やすく、一般的な薬剤でも副作用が現れることが多いですが、ストラテラ服用時には特に顕著に現れます。
頭痛、眠気などの症状もあります。これらは、飲み始めや、薬の服用量を変更した時に起きることが多く、続けている内に軽減されていくこともあるようです。
また、動悸や頻脈、血圧上昇など、循環器系に異常が現れるという方もいます。また、重い副作用として、肝機能の障害もあるようです。肝障害はほか副作用に比べると、あまり見られませんが、皮膚や白目が黄色くなるなど、肝機能の障害が現れたサインがあれば、それを見逃さないようにしなければなりません。肝障害のサインは、だるさ、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみなども該当します。
そして、攻撃的行動、悪い衝動にかられ、精神的に不安定になる場合もあるようです。下記の副作用例を含めて、何らかの症状が現れた場合には、直ちに医師と相談を行い、指示を仰ぎましょう。
副作用の例
食欲不振、吐き気、腹痛、不眠、不安、神経過敏、頭痛、眠気、めまい、嘔吐、便秘、のど・口内の渇き、下痢、動悸、血圧異常、異常発汗、頻尿、だるさ、皮膚粘膜眼症候群、脳動脈炎、脳血管障害(脳梗塞、脳出血等)、狭心症、視力調節障害、剥脱性皮膚炎、悪性症候群、耳鼻いんこう感染症、血液障害、せき、関節痛、発熱、倦怠感、体重減少、イライラ感、しびれ、錯覚感、躁状態、厳格、妄想、攻撃性、排尿困難、勃起不全、味覚異常など。
服用時の注意点
副作用の中には、十分に注意が必要な物があるので、やはり医師としっかりと相談を行うのはもちろん、副作用が現れやすくなる服用量変更時には、特に注意を払う必要があります。
また、副作用の中には、うつ状態になってしまう、というADHDの併発症状と酷似したものもありますので、本人には判断しづらいという場合もあります。なので、服用を始める前には、本人以外の家族もいっしょに薬の効果、症状、副作用等について、医師、薬剤師からよく説明をしてもらい、病気についての理解をしてもらいましょう。
また、ストラテラを飲むときは、原則として、食後の服用に限ります。基本的なことではありますが、副作用を重くしないためにも、重要な点になります。
薬を服用しているという場合は、医師にしっかり伝えておきましょう。
効果がないからといって、服用量を自己判斷で変えてしまうのは厳禁です。ADHDの治療に行われる薬は、副作用等のリスクが非常に高いので、医師の判斷が不可欠になります。
コンサータとは?
ADHDの治療に主に使われる薬には、ストラテラ以外にももう一つ、コンサータという治療薬があります。このコンサータは、ストラテラとはどういう違いがあるのでしょうか?
ストラテラとコンサータの違い
ストラテラとコンサータの大きな違いは以下にあります。
- ストラテラ=非中枢神経刺激薬
- コンサータ=中枢神経刺激薬
ADHDの治療薬として使われるこの二つには、神経伝達物質であるドーパミンの取り込み方を正常に近づけてくれる効果があります。ADHDの原因は神経細胞から放出されたドーパミン等を、過剰に再取り込みしてしまう点が問題なのですが、ストラテラ、コンサータは、トランスポーターという、神経細胞の再取り込み口の働きを抑制するという効果があるのです。
少し難しい単語もありますが、二つの違いのポイントはこのトランスポーターに、どのように作用するのかにあります。
ストラテラは、脳の神経に直接作用せずに、このトランスポーターにのみ作用して、神経伝達物質であるドーパミン等の再取り込みを防ぎます。
対して、コンサータは、脳の神経に直接作用して、トランスポーターの働きを抑制し、ドーパミン等の再取り込みを直接防ぎます。
ストラテラは、非中枢神経刺激薬なので、脳の神経に直接作用しないのに対して、コンサータは中枢神経刺激薬であるため、脳の神経に直接作用するのです。
つまり、コンサータは、ダイレクトに神経に効果を与えるので、中枢神経を直接刺激する作用によって、依存性を生じるというリスクがあるのです。
また、コンサータは用法用量を少しでも間違えれば、副作用・依存性のリスクが発生してしまう可能性が高いため、日本では認定を受けた医師にしか処方が出来ないようになっているようです。
コンサータの利点
副作用や依存性が高いなら、コンサータじゃなくて、ストラテラのほうがいいと思われるかもしれませんが、ストラテラではなく、コンサータを使うことによるメリットもあります。
薬の効果が出るのが早い
中枢神経を直接刺激すると書きましたが、それはリスクばかりではなく、薬の効果がすぐに出てくれるというメリットもあります。
ストラテラの場合は、効果が出るまでに2週間から、一ヶ月ほどの時間を必要としますが、コンサータの場合は即効的な効果が見込め、個人差はありますが、一時間前後ほどで効果が出ます。
効能の違い
コンサータの場合、ストラテラよりも作用の範囲が広くなるために、実際の効き目も異なっています。具体的には以下の様なものです。
コンサータの効果
- 注意力が上がり、集中量が高くなる。不注意が減り、仕事のケアレスミスなどが改善される。
- 気持ちの切り替えをスムーズにしてくれる。
- やる気がどうしてもでない、と言った症状を改善してくれる。
ストラテラの効果
- 複数作業の同時進行がしやすくなる。
- 作業の優先順位を、しっかりと認識することができる。
- 視野が広くなり、周囲に気を配ることができるようになる。
わかりやすく言うと、ストラテラはマルチ的に仕事が行えるようになり、コンサータは一つの仕事に対する集中力をしっかりと高めてくれる、といったイメージです。
つまり、症状によって、どちらが効果的であるかが変わってくるので、コンサータの方が良い、という場合もあるということですね。
薬の相性
これはどのような薬にでも言えることですが、その人の体に合っているかどうかという点があります。医師の診断を受ければ、どちらのほうが患者に合っているのかという結論は出してくれると思います。
しかし、どうしても体に合わないため、体調を崩してしまうという場合もあるのです。ストラテラよりもコンサータのほうが、体にあっていたため、少量の服用で充分で、結果として副作用が少なく済んでいると言ったケースも有り得るため、一概にはどちらの方が良い、とは言えません。
まとめ
今回はADHDの治療薬であるストラテラ、コンサータに関する記事でしたが、如何だったでしょうか。
難しい言葉もあったため、混乱させてしまったかもしれませんが、もし実際に服用することが必要になったと言う場合には、しっかりと薬の効果、副作用などを把握していただいて、自分の体にあった治療薬を選択して貰えればと思います。
この記事が、ADHDの治療中の方の一助になれば幸いです。