ひと昔前までは男の悩みだった「早漏」ですが、現代ではそれよりもやっかいな「遅漏」が恋愛、結婚生活のトラブルになるケースが増えているようです。
なぜそのような事態になっているのか、原因はいったい何なのかを見ていきましょう。
動物の生殖行動
普段は警戒心の強い野生動物でも、無防備になる瞬間がいくつかあります。それは人間も同様で、3大欲求と呼ばれる食欲・睡眠欲・性欲には勝つことはできません。食事中、睡眠中、性行為中は注意力が落ち、天敵に襲われる危険性が高くなります。そこで、動物は様々な進化を遂げました。それは方法を工夫することと、時間を短くすることです。
時間を短くする例では、サルやチンパンジーなどの性行為は3~10秒程度、ゴリラで1分30秒くらいと言われています。一方で長いのは、ニシキヘビやミンクなどで20時間以上も性行為を行うそうです。一般的に、高等動物ほど性行為の時間は短いと言われています。
霊長類以外の動物では、生殖目的以外の性行為が行われることはありません。昆虫類に至っては、生殖器だけ相手の体内に残して身体が引きちぎられたり、メスに食べられてしまうこともあり、命がけの行為だからです。
生殖目的以外で性行為を行う動物
ボノボという(ヒト科チンパンジー属)サルでは、生殖目的以外の性行為及び疑似性行為(オス×オス、メス×メス)が確認されています。コミュニケーションとしての性行為を行っているのは、人間以外ではボノボのみといわれています。ボノボは平和を好むことで知られていて、ケンカを回避するためにそのような行動をとると言われています。
また、人間以外では確認することのできなかった正常位での性行為も確認されています。
なぜボノボだけが他のサルやチンパンジーと異なっているのかは明確には分かっていませんが、チンパンジーよりも上半身が発達していないため、よく直立2足歩行を行います。このことが、ヒトに最も近い行動をする事に関係しているのではないかと言われています。
発情期があるのはメスだけ
通常メスは妊娠の可能性が高く、子どもを出産して育てやすい時期を選んで発情します。そうすることで繁殖の可能性をアップさせているのです。動物のオスは、メスが発情すれば常に性行為できる状態にあります。つまり、1年中発情していると言い換えることができます。
ヒトのオスは性行為もしくは自慰行為をすることで性欲を解消していますが、発情期ではない時期の動物のオスはどうしているのでしょう?
チンパンジー・サルなどの霊長類、鳥類、犬類、サイ、ゾウなどで自慰行為が確認されています。研究者が少ないので、もっと多くの動物のオスが自慰行為をしているのではないかと言われています。
人間の生殖行為
人間の性行為は、生殖を伴わないことで複雑に進化していきました。本来は生存に有利なはずの短い時間での性行為は歓迎されず、長い時間の性行為が求められるようになっていきました。
男性は射精によって満足を得ますが、女性はコミュニケーションを求めるようになっていきました。それではどのようにして性行為は発展していったのでしょう?
コミュニケーションとしての性行為
男性は女性の乳や性器を触れたがります。一方、女性は手や髪の毛などを触れられるのを好む傾向があるようです。男性が直接的であるのに対して、女性は間接的と言えるでしょう。直接的に刺激されるよりも、間接的にコミュニケーションをとる事が求められているようです。
諸説あるのですが、女性が性行為を始めてから気持ちよくなるまでの時間は約20分かかるとされています。これは、望まない性行為を強要された際に、なるべく妊娠しないようにするためだと言われています。男性は、望まない性行為であっても身体的に反応することがほとんどです。現代の男性は、女性を気持ちよくさせるために長時間の性行為が必要になったのです。
間違った長時間挿入信仰
日本人の平均性行為時間は20分と言われています。前戯15分、挿入後5分だそうです。
私もそれくらいではないかと感じますが、若年層はもっと長く挿入していなければならないと考えているようです。それには、手軽にアダルトビデオ(以下、AV)を閲覧できるようになったことが影響しているようです。
AVでは、男優が女優に対して複数の体位変換を行ったり、長時間の挿入が当たり前です。それが普通だと考えてしまい、挿入時間を異常に気にするようになってしまっているようです。
学問的な早漏の基準とは?
1つの物差しとして国際性機能学会が示した”IELT”(Intravaginal Ejaculation Latency Time)「日本語訳: 膣内に挿入後射精までにかかる時間」があります。このIELTで、1分に満たない場合には治療が必要だと言われています。
早漏の原因の多くは心因性とされ、抗うつ剤などの薬物治療が広く行われています。
学問的な遅漏の基準とは?
現在明確な基準はありませんが、3つのうちどれかに当てはまれば遅漏といえます。
- 射精するまでに非常に長い時間が必要
- 射精することができない
- 射精することに痛みが伴う(物理的、精神的に)
ただし、遅漏の男性は性行為の途中で中折れしてしまうケースが多く、勃起不全と混同されてしまうこともあります。今後基準の明確化が必要だと思われます。
病気としての遅漏(射精障害)
正式には膣内射精障害と呼ばれます。自慰では射精することができるのに、性行為中に射精ができません。射精障害の原因は複雑なため、しっかりとした聞き取りにより、社会的背景、精神的背景、生活習慣、性生活習慣などを十分に理解することが重要と言われています。
中でも自慰行為については重要で、間違った自慰行為を行っていることが多くあります。ただ、本人がそれを異常だと思っていないので、そこから治療する必要があります。
刺激を求め過ぎ?
AVの進化
AVはファンタジーなのですが、出演者はスタイル抜群の美女が多く、視覚からの刺激が強いのです。AVばかりを見て自慰行為を行うと、現実の女性との性行為では刺激が不足してしまい射精まで至らないことがあります。
また、特定のジャンル(性的指向)ばかりを好む場合には、通常の性行為がつまらなく感じてしまい、射精に至らなくなります。
自分の好きなAVで、自分の都合で射精できるため、実際の性行為よりも楽ができるのです。だから、視覚からの刺激でしか反応しなくなり、想像力を働かせなくなります。
そうすると、相手のいる現実の性行為を面倒と感じてしまいます。そうしてまた自慰行為へ、といった悪いサイクルが出来上がってしまいます。
間違った自慰行為
”床オナ”と呼ばれるような床や畳に性器をこすりつける自慰行為をやりすぎることによって、固いものによる圧迫で快感を得るようになります。こうなってしまうと、柔らかく湿潤な女性の膣内での射精が困難になります。
日本では靴を脱ぐ文化のため、畳や床に直接接する機会が多くあります。自慰行為に目覚める小学校高学年時代にこの”床オナ”を覚えてしまうと、射精障害になりやすくなります。
長期間射精を行わないとどうなるのでしょう?
射精を行わないことで、身体的な影響はないとされています。精子は毎日作られ精嚢に溜められますが、3~4日経過した古い精子は体内に再吸収されます。性欲が旺盛な男性は夢精によって射精することもありますが、個人差が大きく、長期間射精しなくても夢精をしない男性もいます。
それよりも問題になるのは、人間の身体は使用頻度の低い臓器は機能低下するということです。あまり射精を行わないと、性機能の低下が早まると言われています。
適切な射精頻度とは?
医学的には3日に1回程度が適切だとされています。繰り返しになりますが、精嚢は約3日でいっぱいになります。生殖適齢期の男性であれば、精子を無駄にしないためにも3日に1回程度の射精が目安となります。ただ個人差がありますので、あくまでも目安です。
年を取るに従い人間の身体機能は低下していきます。当然ですが、精子の生成能力も低下してきますので、50~60代であれば週1回くらいが適切でしょう。
リハビリ方法
射精障害はリハビリによって改善することが分かっています。病院にいかずともできますので、射精障害に悩んでいる方は参考にしてください。
1)自慰行為の禁止
最低でも10日間、可能であれば夢精するまで自慰行為を行わずに精神的、身体的にリセットする。これだけでも回復することがあります。
2)想像力の強化
AVを見ないで勃起させるように想像力を働かせます。始めのうちは難しいので、官能小説やグラビアアイドルのイメージDVDなどを使用してもOKです。そのうちに、想像力だけで勃起を維持できるようになれば回復です。
3)弱い刺激で反応するようにする
ゆっくりと時間をかけて自慰行為を行います。強い刺激ですぐに射精していた方は物足りないと思いますが、強い刺激を与えることはやめてください。途中で萎えてしまうこともあるかと思いますが、少しづつ弱い刺激でも射精できるようになります。市販のオナホールを使用することもお勧めです。
まとめ
日本人は、膣内射精障害が他の国よりも多いと言われています。病院で治療を必要とする重症な方は、カルテベースで毎年増え続けているそうですが、治療は困難がつきまといます。なぜなら、射精障害に有効な食品や薬剤はないからです。
射精障害になる最大の理由は、世界で最も進化したAVの存在があります。AVを閲覧するサイトでも、ひとつのジャンルとして「Japan」というカテゴリーがあるくらいです。
射精ができないと、パートナーとの関係性が壊れる可能性が高くなります。パートナーが自分の責任のように感じてしまうことが多いからです。当然ですが、射精ができなければ妊娠することもありません。射精障害による不妊も増えています。
射精障害と共に、独りよがりの性行為も増えています。パートナーがいる方は、パートナーの理解と協力を得てお互いに更なる気持ちよさを目指してください。
現在パートナーがいない方は、過剰で過激な自慰行為を抑えることから始めてみてはいかがでしょうか?