皮膚むしり症とは?症状や原因、治療方法を紹介!

「自分の気づかないうちに、手や腕をかきむしっていた・・・」そんな経験をされた方はいらっしゃいませんか?

自分では、「このくせ、いやなんだけど、無意識のうちに手をかきむしってて・・・気づいたら、手が痛くなってた」と、お悩みの方もいらっしゃるかと思います。

その症状、実は「くせ」というよりも、精神的ストレスによる病気なのかもしれません。そんな症状にお悩みの方のために、これから「皮膚むしり症」について、お話ししたいと思います。

皮膚むしり症とは

顔がかゆい

皮膚むしり症とは、自分で自分の皮膚をいじったり、かきむしることをやめることが難しい病気です。スキン・ピッキング(skin-picking)とも呼ばれていますが、強迫症や強迫性障害(Obsessive Complusive Disorderーオブセッシブ・コンパルジブ・ディスオーダー)といった精神疾患を抱えて苦しんでいる患者さんに、よく見られる症状です。

患者さん自身がその症状を治したいと思っていても、なかなかやめられず皮膚を繰り返し掻きむしってしまいます。以前は「癖」とみなされていましたが、現代医学では、精神疾患の症状として治療されています。

「皮膚を繰り返して掻きむしることで、その皮膚が損傷、病変になる」と「皮膚むしり症」と診断されます。実際に、患者さんは、自分の皮膚を掻きむしったり、その掻きむしる行為について考えて、その行為をやめようと苦闘することもあると言われています。

「成人のうち、1.4%の人々がこの皮膚むしり症を経験している」と推定されており、「皮膚むしり症経験者のうち、4分の3以上の患者さんが女性である」という調査結果もあります。

女性にかかる精神的ストレスが原因となって、皮膚を掻きむしってしまうことも少なくないようです。

また、思春期から青年期にかけて発症することが多く、思春期にニキビをつぶすことに端を発することも少なくありません。

皮膚むしり症の症状

顎ニキビ

皮膚むしり症の多くは、顔や腕、手などの健康な皮膚や、皮膚の小さな凹凸部分、またはニキビや吹き出物、固く角質化した皮膚などを掻きむしります。掻きむしる皮膚の部位は、決して同じではなく、全身多岐にわたります。

患者さんは、皮膚むしり症の症状に対して、羞恥心があり、他人にはわからないところで、皮膚を掻きむしる傾向があるようです。

また、以前は「癖」とみなされていた症状は、実のところ「癖」どころか「激痛」を伴うことも珍しくないようです。そして、症状が重くなると、普通の暮らしをすることもままならなくなり、外出することさえできなくなることもあります。

その結果、ときには「会社に行って、仕事をすることができない」あるいは「学校に行くことができない」などといった引きこもりの状態、いわゆる「ニート」の状態に陥ってしまうこともあるようです。

抜毛症と皮膚むしり症の原因

頭皮のかゆみ

抜け毛症と皮膚むしり症の関係について知っておきましょう。

抜毛症と皮膚むしり症

皮膚むしり症は、抜毛症とも関連性があるようです。

抜毛症は、「どうしても、毛髪や体毛を抜きたい!」という衝動が、心のうちに芽生え、現に、みずからの手でついには抜いてしまいます。

つまり、毛髪や体毛を抜く衝動に駆られ、実際に、自分の手で抜いてしまう症状を指します。白髪やムダ毛を処理することとは異なり、自分の健康な毛髪や体毛を、いくどとなく無理やり抜いてしまうので、毛を抜いた傷跡が残ることもよくあります。

アメリカ精神医学会が出版したDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersーダイグノスティック・アンド・スタティスティカル・マニュアル・オブ・メンタル・ディスオーダー)という精神障害の診断と統計マニュアルでは、「繰り返し抜くことで、体毛が喪失してしまった部分がある」ことが、診断基準とされています。

実際、成人のうち、1〜2%の人々がこの病気を有しているとされていますが、中でも、女性の割合が男性の割合の10倍にあたるという驚くべき報告もあります。

特に、思春期に発症する場合が多く、発症平均年齢は11歳とも言われています。

どの部位の毛を抜くのかは、人さまざまですが、頭髪や眉毛など、衣服に覆われていない部位の毛を抜くことも少なくないようです。

皮膚むしり症の原因

不安

患者さんが抱えている精神的不安、時間を持て余した退屈しのぎ、日常生活にかかる緊張感の緩和など、抜毛症や皮膚むしり症の原因は種々多様であり、日頃、患者さんにかかる精神的ストレスが原因であると考えられています。

その精神的ストレスが、「抜毛症」または「皮膚むしり症」といった形で、症状として現れてくるのです。

皮膚むしり症の場合、患者さんが皮膚にかゆみを感じて皮膚を掻きむしると、一種の快感のような満足感を得ることができます。ですが、皮膚を掻きむしった後も、かゆみに襲われます。

そして、ふたたび、皮膚を掻きむしることになるのです。

必ずしも、同じ部位をかき続けるとは限らないのですが、同じ部位をかき続ける場合は、かゆみがなくなるまで皮膚を掻きむしり続けるので、皮膚がはがれて損傷します。

すると、かゆみは解消されるのですが、今度は、痛覚が刺激されて痛みを感じるようになります。損傷した部位の痛みで、皮膚を掻きむしる行為がとまると、その部位を掻きむしる行為は止まります。

ですが、精神的ストレスが重症の場合は、刺激された「痛み」に耐え切れないときもあります。すると、今度は痛む皮膚をさらに痛めつけて、「痛覚」さえをも、麻痺させてしまうこともあります。

皮膚むしり症は強迫症とは異なり、強迫観念はありませんが「掻きむしりたい」という衝動が心のうちに生じ、その衝動がしばらくの時間、継続します。

ときには無意識のうちに、本人の意図するところに関係なく、半ば反射的に皮膚を掻きむしって損傷させてしまうこともあるのです。

この無意識な状態、ここでは「無意識性」としておきますが、この感覚が、皮膚むしり症治療の妨げとなることもあります。

たとえば、読書をしているとき、仕事でパソコンを使用しているとき、音楽を聴いているとき、テレビを観ているときなどに、患者さんの意思とは無関係に、皮膚を掻きむしっていることが多いのです。

俗に言う「ながら」行為ですが、他に何かをしているとき、すなわち、無意識下で皮膚を掻きむってしまい、皮膚を損傷させてしまうのです。

抜毛や皮膚を掻きむしる行為が、繰り返して行われるようになると、自分が気になる毛を見つけて抜くまで、緊張感の高まりを感じる人もいれば、毛を抜いたときの快感や安堵感によって、抜毛や皮膚をかきむしることをやめることができなくなります。

皮膚むしり症の治療

胆石の治療方法

皮膚むしり症は、日本での認知度が低く、患者さんは周囲から誤解を受けることも少なくありません。重症化すると、皮膚が損傷して、たとえ皮膚に病変が現れていても、患者さんが皮膚を掻きむしることをやめるのは、なかなか困難なのです。

したがって、皮膚むしり症の治療には、周囲の理解が不可欠です。

ただ、心療内科でも確固とした治療法が確立されていないために、完治するのは難しいのが現状のようです。

では、現在行われている皮膚むしり症には、どのような治療法があるのでしょうか?皮膚むしり症の治療には、現在、以下のような治療法がとられています。

  1. 認知行動療法(CBT)
  2. 薬物療法

それでは、認知行動療法と薬物療法について、それぞれ、お話ししていきましょう。

認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy)

現在、もっとも一般的に行われている治療法です。

認知心理学の認知行動療法(CBT)を用いた方法で、患者さんに自分の症状に気づいてもらう方法です。つまり、「皮膚を掻きむしる習慣はよくないことである」と、患者ご自身に、認知・知覚してもらうことによって、患者さんが、皮膚を掻きむしらないように意識してもらう治療方法です。

  1. 意識性療法(Awareness Therapy)
  2. 抗反応性療法(Competing Response Therapy)
  3. ソーシャルサポート(Social Support)

意識性療法(Awareness Therapy)

患者さんが、皮膚を掻きむしる行為に気づくことができるようにする治療方法の一つです。

また、患者さん自身に、皮膚を掻きむしろうとするときの気持ちや気分、感覚などに気づいてもらうようにします。

その後、その行為に気づいた結果をノートなどに記録して、文字を使って表現・記録することによって、患者さん自身に自覚してもらう治療方法です。

抗反応性治療(Competing Response Therapy)

拮抗運動という、皮膚を掻きむしりたい衝動に対して、抗う行動をとることができるようにする治療方法です。

たとえば、手のひらを握りしめる、ペンを握る、脇を固く閉じる、などの行動を、数分にわたって続けることによって、皮膚を掻きむしりたくなる衝動に抗います。

この治療法は、周囲の人々に気づかれないことが多く、学校の授業中やデスクワークなどの仕事中にも治療することが可能です。

また、指にサックをはめて、皮膚の損傷を避ける方法もあります。

ソーシャルサポート(Social Support)

意識性療法にしても、抗反応性訓練にしても、家族や周囲の理解、サポートは必要不可欠です。決して、患者さんを否定することなく、応援することが治療の近道となります。

さらなる認知行動療法

認知行動療法では、さらに、(セルフ)アセスメントという自己評価やセルフモニタリング(自己監視)といった治療法で、患者さんご自身が、日常生活のなかで症状が現れやすい状況や時間帯、気分や感情などを把握するところまで踏み込んだ治療方法もあります。

薬物療法

現代医学では、残念ながら、皮膚むしり症の発症原因となっている脳内物質の特定には、まだ至っていないようです。したがって、現時点では、はっきりとした効果のある薬物療法は、まだ確立されていないのです。

一部、効果のある薬剤も存在しているとされている報告もありますが、その薬剤の効能には、まだ疑問符がついているのが現状です。

まとめ

歩く

「ただ、皮膚がかゆくてかいていただけなのに・・・」と、思われていた方も、実は、この症状の原因が、精神的不安やストレスに端を発している場合があることが、おわかりいただけましたでしょうか?

効果的な薬物療法が存在しない現在では、認知行動療法で治療する方法が最善のようです。CBTによる意識性療法(Awareness Therapy)や抗反応性療法(Competing Response Therapy)、ソーシャルサポート(Social Support)といった治療を受ければ、きっと症状は改善されるはずです。

皮膚をかきむしる症状や抜毛症にお心当たりのある方は、「私は、もう治らない・・・」と、あきらめる前に、一度、心療内科の医師に相談してみましょう。

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