誰しも唇にできものができたことがあると思います。唇は顔の中心部分にあるため、できものができると目立ってしまいます。外出時はもちろん、ビジネスやデートなどで大事な人と会う予定がある場合には、気持ちも少々ブルーになってしまいますよね。
このように、しばしば私たちを悩ませる唇のできものですが「なぜできたの?」とその原因を聞かれると、明確に答えることは難しいのではないでしょうか?
唇のできものには多様なタイプのものがあります。放っておいても自然に治るものから、受診が必要なものまでさまざまです。中には死に至る怖い病気も含まれているんです。
ここでは唇にできものができる原因とその種類、対処法などをご紹介します。健康的で美しい唇の状態をキープする参考にしてもらえればと思います。
【口唇ヘルペス】
唇にできるヘルペスを口唇(こうしん)ヘルペスといいます。口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスが神経細胞に感染することで発症する皮膚病です。体の抵抗力が低下している時に発症するとされています。
一度感染すると体内にウイルスが潜伏し続け、体調が悪いときなどに症状が出てくることがあります。子どもの時に感染し、数十年経ってから再び発症するケースも珍しくないのです。
口唇ヘルペスの感染経路
感染経路は親子間の接触や飲み物の回し飲み、タオルの共用などさまざまです。
口唇ヘルペスに感染、発症しているのに気づかず、両親や祖父母が子や孫ににほおずりやキスをしたりすると感染してしまいます。親が使った箸やスプーンなどの食器を介して子どもに感染することもあるため、ご飯を食べさせる時などは特に気をつけなければなりません。
また、部活動などでコップやペットボトルの飲料を回し飲みしたりするシーンを頻繁に見かけますが、これもお勧めできません。発症しているメンバーがいれば、感染が広がってしまうことになりかねないからです。感染者が使ったタオルの共用も避けて下さい。
子どもは周囲の人たちの行為を真似したがるものです。なぜ、回し飲みをしない方がいいのか、その理由をご家庭で教えてあげるといいと思います。
ただ、今まで回し飲みしていたのに急にしなくなると、先輩や友人から理由を聞かれることでしょう。間違っても「病気がうつるかもしれないから」とストレートに答えないようにお子さんには言い含めて下さいね。友情にヒビが入ってしまいかねません。
詳しくは、口唇ヘルペスの原因とは?疲労やストレスとの関係についてを参考にしてください。
口唇ヘルペスの症状
始めは皮膚が赤くなり、その後、かゆみや痛みとともに水疱(水ぶくれ)が現れます。発熱のほか、リンパの腫れなどが出るケースもあります。
気をつけないといけないのが水疱が破れた時です。この液体には多くのウイルスが含まれているため、これを触った手で他の部位を擦ったりすると、感染が広がってしまいます。本人だけでなく他の人にもうつりますので気をつけて下さい。手洗い後に市販の手指消毒剤などを使うと安心ですね。
1~2週間ほどでかさぶたになって自然に治っていきます。
口唇ヘルペスの対処法
残念ながら、現在の医学ではウイルスを完全に除去することはできません。
完治させることはできませんが、抗ヘルペス薬を服用することで症状を抑えることは可能です。また、塗り薬を処方されるケースもあります。
水疱が痕となって残ることもありますので、気になる場合は早めに医療機関を受診することをお勧めします。
体の疲れとそれに伴う抵抗力の低下が口唇ヘルペスの大きな発症因子になっています。十分な休養と栄養のある食事、服薬で快方に向かっていくと思います。
【口内炎】
口内炎は唇の裏側を含め、口腔内のあらゆる場所にできるできものです。
主に、白い円形の症状が出る「アフタ性口内炎」と、粘膜が炎症を起こして腫れたり、ただれたり、ひび割れたりする「カタル性口内炎」(紅斑性口内炎)があります。
アフタ性口内炎は触ると激痛が走るほか、飲食時には染みたりします。一方、カタル性口内炎はアフタ性口内炎ほど痛くないのが特徴です。
他の人への感染の恐れもありますので、多く発生する場合は耳鼻咽喉科、皮膚科、口腔内科、内科、歯科、で治療を受ける方がいいでしょう。
口内炎の原因
アフタ性口内炎は、ストレスや睡眠不足、ビタミン不足のほか、口腔内の傷から細菌が侵入することで起きます。アフタとは軽い潰瘍のことですが、跡は残りませんので安心して下さい。
一方、カタル性口内炎は、義歯や犬歯、入れ歯、金冠などが口内の粘膜に刺激を与えることで炎症を起こし、発症します。特に乳幼児はおもちゃなどの異物を口に入れることが多いため、保護者の方は気をつけてあげて下さいね。
ほかにも、虫歯や歯槽膿漏(しそうのうろう)などの口腔内の環境悪化、熱い飲食物による火傷が原因になる場合もあります。
ビタミンが不足しているときなどに、歯を磨かずに寝てしまうと一発で出来てしまうこともあるでしょう。きちんと口内を清潔に保ち栄養の偏りにも注意しましょう。
詳しくは、唇に口内炎が出来る原因は?治し方を知っておこう!を参考にしてください。
口内炎の対処法
アフタ性口内炎、カタル性口内炎の両方に共通する対処法は、口腔内を傷つけないようにすること、清潔にすることです。食後には毎回歯磨きやうがい、低刺激のマウスウォッシュで口の中を清潔にしておきましょう。
ストレスやビタミン不足が原因になっているアフタ性口内炎には、規則正しい生活を心がけることが効果的です。十分な睡眠と栄養を摂ることで、症状は回復していくでしょう。
また、カタル性口内炎を引き起こしているのが義歯や犬歯などであれば、歯科での矯正などの適切な処置が必要です。
口内炎は1~2週間程度で治りますが、それ以上長引く時や多くの数が発症している場合は医療機関を受診した方が安心です。多い人では10個近くの口内炎が出来ることもあるので、食事困難になりさらなる栄養不足を引き起こし、症状が長期化するので専門病院で医師の診断を受けビタミン剤などを処方してもらいましょう。
【口角炎】
口角炎(こうかくえん)は、唇の両端の口角が炎症を起こし、亀裂を起こして割けてしまう症状です。かさぶたができて「ちょっと治ってきたかな?」と思っても、食事などで口を大きく開けてしまうと再び亀裂が入ってしまいます。数日で症状は改善しますが、なかなか治りにくい病気です。
口角炎の原因
疲労やストレス、カンジダという真菌(カビ)などが原因です。また、ビタミンB群の不足なども原因のひとつです。
その他にもリップクリームや口紅などの化粧品でも唇が荒れる原因になることがあります。症状が似ていることからヘルペスとよく間違われますが、口角炎はカンジダ真菌による感染症で原因が異なります。カンジダ菌は肌などに常在するカビの一種で、普段免疫力が高い状態のときには感染により症状を発症しません。しかし、疲労やストレス等が原因で免疫力が下がっている時はこの病気にかかりやすくなります。
口角炎は別名カンジダ性口唇炎とも呼ばれます。
原因については、すぐに治らない口角炎になる5つの原因とは?ストレスや乾燥に注意!を読んでおきましょう。
口角炎の対処法
元々人の体にいるカンジダ菌は、抵抗力が低下しているとき口角炎を引き起こします。体調不良が続くと発症するため、抵抗力が低下しないように規則正しい生活を心がけることが肝心です。
また、ビタミンB群の補給にはレバーや豆類の摂取が効果的です。積極的に摂るといいでしょう。ビタミン剤での対策もいいですが、多くビタミンを摂取しても排出されるだけなので出来るだけ食事によってビタミンを摂り、相乗効果を狙い一緒にビタミンEやビタミンBを単体で摂るのではなくB群をまとめて摂取することで効果は上がります。
食事での対策をして、症状の発症を防ぎましょう。
【口唇がん】
唇にできるできもので一番怖いのががんです。口唇がんはそのほとんどが下唇にできます。唇の外側にしこりやただれがみられたら、その可能性を疑ってみて下さい。できるだけ早く口腔外科などで診てもらうことが重要です。
口唇がんの症状
患部の色は赤や白、黒などさまざまです。放っておくと、しこりは次第に大きくなって腫瘍に変化します。症状は人それぞれですが、腫れや痛み、しびれを感じたりします。
唇のガンの中で最も一般的なのが「扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん」です。これは唇の表面を覆っている薄く平たい細胞ががん化したものです。進行するとがんが皮膚の内部に深化していきますので、早めに処置をする必要があります。転移することは稀ですが、口内に転移することで症状が悪化することもありますので早めの治療が必要になります。
また、「メラノーマ」という皮膚がんの一種が唇にできることがあります。これは皮膚の色素細胞ががん化したもので、最初はほくろのような形状をしています。
しかし、これが急速に大きくなった場合は注意が必要です。生まれつきのほくろではなく、成人してからできたほくろ状のものは大きさの変化に注意を払って下さい。
口唇がんの原因
口唇がんの発症には、紫外線との関係が深いとされています。色白な人の方が皮膚がんを発症しやすい言われているため、色白の方は特に日焼けに注意する必要があります。そのほか、喫煙や過度な飲酒も発症リスクを高めます。
日本人には比較的に発症の少ない病気ではありますが、発症する可能性は50代〜70代の男性によく発生するケースが多くあります。男性と女性の発症の確立は14:1となっており、その発症確立の差は明らかです。
特に発症する場合は特に舌唇に発生する確立が高く8割以上は下唇に発症します。さらに唇の左側に特に症状が現れる確率が高いでしょう。
その癌がほくろの様な皮膚がんであるメラノーマの場合は遺伝や紫外線や刺激によるものの可能性が高くなります。
口唇がんの対処法
外出時には日傘や帽子を使い、唇にはリップクリームを塗るなどして、できるだけ紫外線を浴びないようにして下さい。紫外線は唇に限らずあらゆる皮膚ガンの発症因子になるため、日焼け止めを塗ることもお勧めです。
また、紫外線以外では、タバコと飲酒は控えめにすることが発症リスク抑制につながります。
口唇ガンが発症した場合は、進行具合によって外科療法、放射線療法、化学療法で対処します。目に見える部分のがんですので、早期発見は可能です。異常を感じたら早めに医療機関に相談することが何より肝心です。
【粉瘤】
粉瘤(ふんりゅう)が唇にできる可能性があります。
粉瘤の症状
老廃物が皮膚の内部にたまってできる良性のできものです。何らかの要因で皮膚の下に別の皮膚ができてしまい、袋状になった新たな皮膚の中に老廃物がたまってしまうのです。痛みやかゆみはなく、感染することもありません。ニキビとよく似ているため、間違えることも多いようです。
耳や脇の下などにできることが多いのですが、まれに唇にもできます。それ自体は無害ですが老廃物がたまっているため雑菌が繁殖しやすく、臭いが気になることもあります。
中の老廃物を取り出しても、袋状の皮膚にまた老廃物がたまるため再発してしまいます。臭いがきつくなったり目立ってくるようでしたら、医療機関を受診して下さい。袋ごと切除してもらうと再発しなくなります。
粉瘤の原因
考えられる原因んとしては、外傷がきっかけになって粉瘤が出来る可能性があります。しかし、多くの場合は原因不明で起こるものが多く、未だ詳しい原因はわかっていません。
発生箇所によっては毛根の一部である、毛包上部にある毛漏斗部という部分の皮膚がめくれることで袋状になり、症状を発症するという可能性も考えられています。
しかし、唇にできる場合は毛根がないために、この可能性は考えられません。この場合は唇などに出来た小さい傷が原因になって皮がめくりあがり皮膚の下に入り込むことで袋状の物ができあがりそこに老廃物が溜まり粉瘤が出来るとされています。
その他にも、粉瘤は遺伝や体質的なものとして起きやすい人がいるともいわれています。
粉瘤の対処方法
放置しておいても特に悪いことを引き起こす可能性は高くありあせん。何年も放置している人もいれば、出来てすぐに炎症などの症状を起こしてしまい、すぐに切除する人も居ます。
しかし、放置することで粉瘤は自然治癒するものではありません。放置しておいても症状が良くなることは無いので、痛みが出たり、生活に支障が出るようなら早めに手術によって治療を行ったほうが良いでしょう。
また、粉瘤内部に菌が侵入し炎症を引き起こした場合は非常に強い痛みに襲われます。稀なケースでは粉瘤が長期間の放置の末に癌に変化したという報告もあるので、注意が必要でしょう。
行われる手術は15分ほどで終わる手術で完了します。
【パピローマウイルス】
口に出来る出来物の症状の一つにパピローマウイルスの可能性があります。
パピローマウイルスの症状
白いできものが唇の外側にでき、子どもがしばしば感染します。良性のできもので、かゆみもありません。
口唇粘液嚢胞と呼ばれる気泡が口内に幾つか出来て違和感が生じます。
唇の端の部分に白っぽい出来物が出来ている場合はパピローマウイルスの可能性が高いでしょう。
原因
およそ100種類以上のウィルスが関与していると考えられています。睡眠不足や栄養不足も原因の一つになっています。ホルモンバランスの変化や生活習慣の悪化によってもこの病気が発症することがあります。
対処法
人にうつるので気をつけないといけません。医療機関では液体窒素で患部を凍結させて対処してくれるでしょう。
放置しておいても自然治癒する病気ではないので、皮膚科などの専門病院での診察を行いましょう。