下痢は、食中毒やウイルス感染で起きることがあるので、長く続くようなら医者にかかってください。でも、仕事の都合でどうしても病院に行けず、「自宅でなんとかやり過ごしたい!」というときがありますよね。そんなときは、正しい食べ物を、正しく食べてください。下痢のときの「OK食べ物」と「NG食べ物」を紹介します。
下痢のときのOK食べ物
下痢のなり始めは、半日か1日くらい絶食するとよいでしょう。それで少しでも改善したら、胃腸に負担がかからない食べ物を食べましょう。
おかゆ、煮込みうどん、野菜スープ
絶食後の食べ物の原則は、消化によいものです。消化によい食べ物ベスト3は、
①おかゆ
②煮込みうどん
③野菜スープ
です。いずれもレトルト食品として気軽にスーパーで買えますので、下痢になりやすい人は、常備しておくとよいでしょう。
ただ「食べ方」に注意をしてください。これらベスト3は噛まずに飲み込んでしまいがちですが、それはNGです。噛まないと、消化を助ける唾液が分泌されず、かえって消化を悪くしてしまう可能性があるからです。おかゆでも最低でも20回は噛みましょう。
水分とカリウムとナトリウム
下痢は体の水分を大量に排出してしまいます。それで便は水っぽいのに、体はからからに乾いてしまう脱水症状に陥ります。なので、水分補給が必要です。
ただ、水はNGです。水がNGの理由は「NG食材」のところで解説します。
そこでおすすめなのが、スポーツドリンクです。飲みやすさだけでなく、カリウムとナトリウムを補給できるというメリットもあります。下痢をすると、水分と一緒にナトリウムとカリウムが失われてしまうからです。
もし、喉が渇いて大量に飲みたい場合は、スポーツドリンクを水で薄め塩を少々加えた「特殊ドリンク」を作って飲んでください。スポーツドリンクは、意外にカロリーが多いので、そのままをがぶ飲みすることは好ましくありません。
この「特殊ドリンク」は、日本臨床内科医会が発行している「下痢の正しい対処法」で紹介されています。
ジュース
下痢のときにジュースが飲みたくなったら、リンゴジュースとニンジンジュースがおすすめです。生でそのまま食べるのではなく、ジュースにすることがポイントです。これも冷やし過ぎに注意してください。味わいは落ちるかもしれませんが、常温がいいでしょう。
リンゴには整腸作用が期待できます。ニンジンはカリウムを摂ることができます。バナナもOK食材です。
タンパク質
「下痢のときにタンパク質?」と、意外に感じたでしょうか。でも実は、タンパク質は便を固くする効果があるのです。下痢の症状がピークのときは避けた方がいいのですが、「まだ下痢気味だけど、改善しているように感じる」といった段階で、少しずつ摂るようにしてください。
タンパク質が摂れるOK食材の筆頭は、豆腐です。豆腐は、下痢を悪化させる脂質が少ないので、おすすめなのです。もちろん、冷奴はNGです。味噌汁は塩分=ナトリウムが含まれますので、豆腐入りの味噌汁はいい組み合わせです。
卵は「OK」でもあり「NG」でもあります。半熟であればOK食材ですが、ゆで卵や目玉焼きは、逆に下痢を悪化させるかもしれません。調理法がものすごく大事ですので、注意してください。
もう少し症状が改善すると、今度は食欲が出てきます。それでも油断は禁物です。そんなときにおすすめの食材が、白身魚と鶏のササミです。この2つの食材は、タンパク質が摂取でき脂質が少なくボリュームもあり、メリットが多いのです。
下痢のときのNG食べ物
一般の人が「消化が良い」と勘違いしている食材も数多く存在します。また、脂(あぶら)が多いものは、下痢のときは絶対にNGですので気を付けてください。
健康食品
健康なときは、白米より玄米の方が体に良いとされています。またサツマイモやコンニャクは、お通じをよくする食物繊維が多いので、やはり健康食品とされています。ところが、この3つ、つまり、玄米、サツマイモ、コンニャクは、下痢のときはNGです。
玄米は消化に悪く、食物繊維に至っては消化が悪いだけでなく、お通じを良くする作用が下痢を悪化させてしまいます。
肉
ベーコンやソーセージは、下痢のときに絶対に避けたい食材です。絶食をしたり、おかゆや野菜スープで2、3日過ごすと、無性に動物性の脂(あぶら)を摂りたくなりますが、完治するまで我慢しましょう。
果物
キウイやパイナップルはNGです。
飲み物
コーラやサイダーなど、冷たい炭酸飲料は大NGです。コーヒーなどカフェインが含まれているものも避けましょう。いずれも超を刺激してしまうからです。
何も含まれていない水を飲むこともNGです。下痢によって体内の塩分濃度が薄まっているときに、そこにさらに水を追加すると、さらに塩分濃度が低下してしまいます。
スパイス
胃腸を刺激するスパイスはNGです。当然、カレーなど食べないでください。
アルコール
アルコールも胃腸を刺激します。健康な人でも、アルコールを飲み過ぎたばかりに下痢を起こすことがあるくらいです。下痢のときは絶対禁酒です。お酒と下痢については、お酒による下痢の原因を紹介!いったいどういう仕組み?の記事を参考にして下さい。
下痢のウソ?ホント?
下痢に良いと思われていたものが、最近になって下痢を悪化させることが分かった、という事例があります。
下痢止めはNGではない?
下痢は、本来、体の中に入れない方がいいものが入ってしまったときに、それを排出するメカニズムなので、安易に下痢止めを使ってしまうと、体に悪いものが出ていかなくなる、だから、下痢をしているときに下痢止めを使ってはならない――という説があります。
この説は、半分正しく、半分間違っています。
確かに、ウイルスや毒素は、下痢の作用によって早く体の外に出すべきなのですが、下痢の原因が、ウイルスや毒素でない場合もあります。そのような下痢のときに、下痢の症状を早く止めないと、体力を著しく消耗してしまいます。
下痢止めは、使わない方がいいときと、使った方がいいときがある、と覚えておいてください。
ヨーグルトはNGではない?
ヨーグルトには整腸作用があります。下痢という、腸が乱れた状態を整えてくれるので、ヨーグルトは「下痢のときのOK食材」といえます。
しかし、医師は、絶食直後のヨーグルトの摂取はやめた方がいいと言っています。おかゆなどの、そのほかのOK食材が食べられるようになったら、徐々にヨーグルト摂るとよいでしょう。
ただもちろん、普段からヨーグルトなどの乳製品を口にすると下痢になる人にとってはNG食材になります。
それでも治らないときは?
下痢は病気のサイン、と覚えておいてください。絶食やOK食材を食べても症状が改善しないとき、深刻な病気が隠れているかもしれません。
受診のサイン
日本臨床内科医会は、「次の症状があったらすぐに医者にかかってください」と呼びかけています。
- 経験したことがない激しい下痢
- 便に血がまざっている
- 下痢に加えて、吐き気、嘔吐、発熱がある
- 下痢に加えて、腹痛がある
- 同じものを食べた人も下痢になった
- 症状の改善がみられない
- 尿が出ない、口が異常に乾くなど、脱水症状がはなはだしい
下痢を起こす病気
下痢を引き起こす病気の中で、最も重大な病気は大腸がんです。大腸内にがんができると、腸の空間が細くなり、最初は便秘になります。ところがすぐに下痢を引き起こすことが知られています。大腸がんについては、大腸がんの原因とは?運動不足や食生活に要注意!を読んでおきましょう。
腸は非常にデリケートな臓器です。そこで生活の中で強いストレスを感じると、腸に異変が生じます。それを過敏性腸症候群といいます。「快速電車に乗って、次の駅まで30分ある」とか「明日の会議で発表しなければならない」といったときに限って下痢になる人は、過敏性腸症候群が疑われます。過敏性腸症候群については、過敏性腸症候群の症状をチェック!治療方法は?を読んでおきましょう。
食中毒や感染症にかかると下痢を生じますが、この場合、下痢よりも、腹痛や発熱や嘔吐の方が症状としては深刻です。
下痢の薬
下痢は腸が動きすぎる症状ですので、下痢で使われる薬は、腸の動きを抑制したり、腸の動きを正常に戻す作用のあるものが処方されます。
腸の動きを抑制する薬
「ロートエキス」という成分は、神経に作用して腸の動き鎮めます。「ロペラミド(塩酸塩)」は、腸に直接効きます。下痢止めの薬には、これらの成分が含まれています。
ロートエキスには、口の中がからからに乾いたり、おしっこがでにくくなる副作用があります。
腸を正常に戻す薬
「下痢止めといえば」といわれるくらい「正露丸」という薬には昔から日本人に馴染まれています。この薬に含まれている「木(もく)クレイソート」という成分が、腸の動きを和らげるのです。しかも、ただ単に腸を鎮めるだけでなく、弱った腸をサポートする効果もあるのです。
「木」という名称が付いていることから分かるように、この成分は、ブナやマツから抽出されます。天然由来で副作用も少なく、安心できますね。
下痢のメカニズム
最後に下痢がなぜ起きるのか説明しておきましょう。
1%
腸には、1日約9キロ(=リットル)の水が流れます。そのうちの99%、つまり8.9キロの水分は、腸が吸収して細胞に送られたり尿になったりします。つまり、1日の便に含まれる水分は、残りの1%、つまり100グラムに過ぎないのです。
「快便だった!」と感じたときの、絶妙な柔かさと硬さを兼ね備えた便は、この絶妙な水分バランスによってつくられているのです。「絶妙なバランス」とは、言葉を変えると、「壊れやすいバランス」ともいえます。1%より少なくなれば便秘になり、1%より多くなれば下痢が生じてしまうのです。
ぜん動運動
腸の役割は、体の中に入ってきた食材から、栄養と水分を吸い取ることです。栄養と細胞はその後、血液によって全身の数十兆個の細胞に届けられます。腸は自ら動いて、食べ物を肛門に向かって押し進めながら、この「吸い取る」作業を行っているのです。
この「自ら動く」ことや、食べ物を「押し進める」腸の動きを、「ぜん動運動」といいます。つまり、ぜん動が異常にゆっくりだと、腸は吸収し過ぎてしまうのです。水分を吸い過ぎると、便が固くなり、便秘の原因になります。
逆に、ぜん動が激し過ぎると、腸が吸収する前に食材が肛門に届いてしまいます。肛門に届くころには便になっているわけですが、その便は水分たっぷりの下痢便なわけです。
まとめ
「下痢だけ」であれば、トイレに駆け込めば、症状は解決します。それで下痢を軽く考えてしまう人は多いと思います。しかし「下痢だけ」でもビジネスに支障が出たり、子供であれば、下痢による排便の失敗がいじめの原因になることもあります。つまり下痢は、生活の質を大きく左右するのです。
しかも「下痢だけでない」場合は、大きな病気が隠れている可能性があります。その場合、きちんとした医師の診断が必要になります。「下痢の観察」は健康を維持する上でとても大切です。
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