胃腸の調子が悪くなったり風邪をひいたりすると口の中に違和感を覚えることがあります。口の中がザラザラしたり、味覚がなくなったり、舌に痛みを感じたことはありませんか。
日頃からよく観察して、病気の早期発見のきっかけにしてください。
舌について
舌は味覚や触覚を感じる器官です。同時に、飲み込む(嚥下えんげ)、噛み砕く(咀嚼そしゃく)、しゃべる(構音こうおん)といった重要な働きをしています。
舌の構造
舌体(前側3分の2)と舌根(後ろ3分の1)からなり、私たちが目にしている部分は舌体といわれる前方部分です。
舌には舌神経、舌下神経があります。舌神経は、触覚、痛覚などの感覚と、味覚の情報を脳に伝えています。舌下神経は、舌の動き、筋肉を司っています。
舌は、口の中と同じ粘膜で覆われています。表面には、舌乳頭という小さな突起がびっしりと密集しています。表面下にある舌腺からは唾液を分泌していて、内部はそのほとんどが筋肉です。
舌に現れる症状
舌に変化があるときは、不調のサインかもしれません。症状からその原因となりそうな疾患を見ておきましょう。
舌が白くなった
食べ過ぎ(特に辛い物や熱い物など)、喫煙、胃腸の疾患などが疑われます。
また、肝臓に異常がある場合や肝臓がんになると舌全体が白くなってくるといわれています。
舌が黒くなった
副腎に異常があると、舌にシミのようなものができることがあります。副腎がんになると下垂体からメラニン色素が発生すると言われています。
舌が赤くなった
赤くなるのは胃のトラブルです。胃の粘膜がなくなり荒れて胃炎を起こしています。
胃は加齢による影響も大きいので、50歳代以上の人は胃炎になることが多いです。赤みが強くなれば、胃がんが疑われます。舌がつるんとしていて赤っぽいと感じるときは、胃炎によって栄養がきちんと吸収されず、貧血を起こしている可能性もあります。
舌が赤と白のまだらになった
白血球に異変がある時に、この様な状態になることがあります。
免疫に疾患があったり、ウイルスや細菌に感染しているかもしれません。ドライマウスになっている場合も、まだら模様があらわれます。
舌の痛みの原因
日常生活のなかで舌が痛いなと感じたときは、次のようなことが疑われます。心当たりがあれば早めに対応・対策して健やかな口内環境を取り戻しましょう。
口の中が汚れている、清潔でない
歯磨きやすすぎが不十分で汚れが溜まったままでいると、細菌が繁殖することがあります。
舌の上で細菌が繁殖し炎症を起こすと、ピリピリした痛みを感じることがあります。朝起きたら食事の前に口をゆすいだり、歯磨きをしたら舌の上も優しく掃除しましょう。
歯の詰め物や義歯などの刺激
昔に治療した虫歯の詰め物や義歯・入れ歯が痛みを引き起こすことがあります。
サイズが合わないまま使っている入れ歯などは注意が必要です。歯列矯正をしているときも同様です。金属アレルギーの可能性もあります。
神経を傷つけてはいけないので、あまり我慢せずに医師に相談しましょう。
やけど、裂傷
熱すぎる食べ物を飲んだり食べたりしてやけどをしたり、無意識に舌を強く噛んでしまったときなども痛みます。舌のやけどについては、舌のやけどを早く治す方法!砂糖や蜂蜜を舐める効果とは?の記事を参考にして下さい!
舌の痛みを伴う疾患
健康な人でも疲れが溜まっていたり、風邪を引いて体力が落ちているときなどはウイルスに感染しやすくなっています。
口内炎などは最も一般的ですが、家庭でケアできるものから病院できちんと処置してもらわなければならないものまであります。
アフタ性口内炎
「口内炎」といえばこのアフタ性口内炎のことをいいます。小さな子供から大人までよくみられる一般的な疾患です。
強い痛みが特徴で、口を動かしたり、食べ物や歯ブラシなどが少し触れただけもズキッと痛みます。何もしなくても自然に治ります。
極端な疲労、ストレス、偏食などが原因と言われていますが、はっきりとしたことはまだ分かっていません。一度治まっても再発することが多いです。口内炎については、口内炎は地味に痛い!舌にできものが出来る原因は!?の記事を読んでみてください!
カンジダ性口内炎
カンジダ菌という真菌(カビ)による感染症です。
急性型は舌に白っぽいブツブツができ、痛みはほとんどありません。慢性型は粘膜が赤っぽくなり、ヒリヒリ、ピリピリといった痛みを伴い、味覚障害が出ることもあります。
免疫力の弱い子どもや、体力が低下している人、唾液量が減少しているとかかりやすいといわれています。再発を繰り返し慢性化すると、治りにくくなります。
手足口病
手足に小さな水泡ができるウイルス感染症です。手の平、足の裏、口内に症状があらわれるのが特徴で水泡には痛みを伴います。乳児や幼児によく見られますが、成人が発症することもあります。
予防方法はありません。発熱やのどの痛みといった風邪のような症状を伴いますので、解熱鎮痛などの対処療法がとられます。手足口病については、手足口病はうつるの?症状や潜伏期間についての記事を参考にして下さい。
舌痛症(ぜっつうしょう)
見た目には普段と変わらないのに、舌にヒリヒリ、ピリピリ、灼熱感のような痛みを感じます。中高年の女性に多く、何かに熱中している時には痛みを感じない、痛みなんてすっかり忘れているといったことが多く、いわゆる心身症の疾患の1つです。
精神的ストレス、ビタミンB12や鉄分などの不足、口の中の乾燥・細菌の繁殖などが原因になると考えられています。治療はまだ確立されていませんが、抗うつ薬などの薬物療法が中心となっています。
舌の痛みの予防法・対処法
舌の痛みの原因によって治し方や対処法は変わってきます。適切な処置をするには病院できちんと検査をしてもらいましょう。
また、発病や再発の予防のためには日頃のセルフケアが最も大切です。発症してしまったとしても軽い症状で済んだり、治りが早くなります。
うがい、歯みがきをして清潔に
細菌を繁殖させないことが一番大切です。歯磨き、うがい、マウスウォッシュを利用して清潔な状態をキープしましょう。電動歯ブラシや舌ブラシなどいろいろな商品があります。歯茎のブラッシングは歯周病予防に効果があります。
定期的に歯科を受診する
歯科というと虫歯を治しに行くことが多いですが、定期検診も受けましょう。虫歯や歯周病、口臭の予防にもなります。
かかりつけのお医者さんがいるということは、いざというときにとても役に立ちます。セルフケアとプロのケア両方が大切です。また、転院が必要になった場合に紹介状を書いてもらえばスムーズに治療を進められます。
舌の痛みは何科を受診する?
舌の痛みや病気が気になったときは、耳鼻咽喉科や口腔外科を受診しましょう。歯科口腔外科は歯科のなかでも、虫歯や歯周病以外の病気全般を扱う診療科です。一般の歯医者さんではできない大きな手術や口腔ガンの治療などを行います。
舌の痛みと悪性腫瘍
舌の痛みなどの異変を感じて一番気になるのは癌かどうか、腫瘍は悪性なのか良性なのか、ということではないでしょうか。簡単ではありますが腫瘍ができた場合の症状をまとめてみましたので、ご自分の自覚症状などと比べてみてください。やっぱり気になるというのであれば早めに病院を受診して検査を受けましょう。
口腔がん
50歳以上の男性に多く発症します。炎症やしこりのある腫瘍ができ、出血、痛みを伴います。進行すると、飲み込んだり咀嚼したりが困難になり、口が開けづらいといった症状が出てきます。また、他のリンパ節に転移することがあります。
悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)
いわゆる「ホクロの癌」です。これが口の中にもできることがあります。痛みや痒み、炎症などがある場合は注意です。また、無症状の場合もあります。
悪性リンパ腫(あくせいりんぱしゅ)
腫瘤、潰瘍などが大きくなり、痛みや歯のグラつき、鼻づまりなどを伴います。進行してどんどん大きくなると周囲の組織と癒着したり、食事や会話が困難になったり呼吸困難などが見られます。
まとめ
舌は味覚・触覚を感じ、飲む・噛む・しゃべる働きをしている
舌の変化から体の不調をある程度推測することができる
口の中が汚れていると、様々な病気を引き起こす
舌の痛みを感じる疾患は口内炎のようなものから深刻な病気まで様々
舌の痛みは口腔外科を受診する
うがい、手洗い、歯みがきを徹底して病気に備える
舌の痛みにもいろいろな原因があることがわかりました。私たちにできることは、体調管理をしっかりして、免疫力を上げて風邪を引きにくい体づくりをすることです。睡眠や食事を規則正しくとり、ストレスを抱えすぎないようにしてください。
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