一度太ってしまうと、痩せるのはなかなか難しいですよね。運動不足だと、すぐ太りますが、運動して痩せるのは大変な苦労です。
食事制限は効果的ですが、食べるのを我慢するのは辛いですね。「運動と食事制限」の組み合わせがベストとわかっていても、なかなか長続きするものではありません。「痩せた!」という成果が上がるまでには、時間もかかります。ちょっと油断をすれば、リバウンドしてしまいます。
楽して、短期間で痩せられる方法はないものかしら?・・・と、だれもが考えますよね。そこで、今注目されているのが「脂肪溶解注射」です。脂肪を分解する薬液を注射して、脂肪を溶かして排出してしまうのです。
「脂肪溶解注射」で、本当に痩せられるのかしら?失敗することはないの?・・・「試してみたいけれど、心配だ」という人も多いようです。「脂肪溶解注射」の効果、そのメリット・デメリットについて、お伝えしますね。
脂肪溶解注射とは?
脂肪溶解注射は、「メソセラピー」とも呼ばれています。脂肪を分解する薬液を気になる部分に注射して、脂肪を溶かしてしまいます。溶けて液化した脂肪は血管を通り、尿といっしょに体外に排出されます。
「楽して短時間に痩せられる」とか「気になる部分が痩せられる」「半永久的に痩せられる」などと言われ、「痩せたい」人達に注目されています。
[脂肪吸引と脂肪溶解注射は、どう違うの?]
「楽して短時間に痩せる」方法として、「脂肪吸引」と「脂肪溶解注射」があります。どちらも、美容整形外科(美容形成外科)で行います。
脂肪吸引
「楽して短時間に痩せられる」方法として、少し前までは、「脂肪吸引」が人気でした。「脂肪吸引」は、「痩せたい部分をメスで小さく切開し、管を体内に挿入して脂肪を吸引する」痩身法です。確実に脂肪が減少しますし、脂肪細胞を吸い取ってしまうのですから、リバウンドの心配もあまりありません。
ただ、切開する傷口は小さくても、外科手術に違いはありませんので、感染症などのリスクがあります。体質によっては傷がケロイド状に残ることもあるので、顔など見えやすい部分は避ける方が賢明です。
また、脂肪が吸引しきれずに残ると、ボコボコした塊になってしまいます。外科手術ですから、何ヶ所も一度に吸引することはできません。一ヶ所について10万円から30万円かかるので、全身あちこち脂肪吸引すると、費用はかなり高額になります。
ただ1回の施術で効果が上げられるので、短期決戦向きです。でも、運動不足や食事の質と量を改善しないと、再び太ってしまいます。
「身体にメスを入れるのは、イヤ」「感染症が怖い」という人達は少なくありません。そういう人達には、「脂肪溶解注射」が向いています。
脂肪溶解注射
大豆等に含まれるタンパク質を成分とする薬液を脂肪のついてしまった部分に注射して、脂肪を溶解します。溶解された脂肪は血液とともに血管を通り、尿となって体外に排出されます。注射ですから、メスで切開する必要がなく、傷痕や感染症の心配がありません。
傷痕が残る心配がないので、身体の各部位から顔まで、どこの部分にも注射できます。
ただ、脂肪吸引のように、1度の施術で効果を上げることはできません。脂肪のつき具合は部位によって違いますが、1ヶ所につき3~5回はかかるようです。人によっては、もっと施術回数を必要とします。
施術費用は病院によって違いますが、1回の施術が30,000~100,000円と言われます。かなり安い費用で施術するところもありますが、薬液に混ぜ物をすることがあるので、効果が出ないどころか、とんでもない副作用を引き起こすことがあります。
ちなみに、美容整形(美容形成)外科病院は、原則として保険診療が使えません。全部自費になります。
[脂肪揉み出し痩身法と脂肪溶解注射は全く違う]
「脂肪を溶かして体外に排出する」痩身法という点では、「脂肪揉み出し痩身法」と「脂肪溶解注射」は似ているように聞こえます。しかし、「脂肪揉み出し」は、注射やメスなどの器具を使用しないで、人の手だけで行います。ですから、美容整形外科のような病院やクリニックではなく、エステサロンで行います。施術も医師ではなく、エステティシャンです。
脂肪揉み出し痩身法は、効果の点でかなり疑問があります。溜まって固まった脂肪を揉んで柔らかくしても、溶解して液化させるわけではありませんから、血液とともに運ばれて排出されるとは考えにくいのです。「ウエストなどが細くなった」と言う人もいますが、体重はほとんど減少しません。ウエストなどが細くなるのは、身体を揉むことで血流が良くなり、むくみがとれただけです。
施術はかなり痛く、回数も10回以上かかるようです。費用も決して安いとは言えません。
メリットについては、「脂肪揉み出し」も「脂肪溶解注射」も同じ文句が並んでいますが、エステサロンと美容整形外科では、根本的に違います。
脂肪溶解注射のメリット
脂肪溶解注射のメリットは、何よりも「楽して痩せられる」ことです。でも、「適度な運動」と「腹八分目」を心がけないと、せっかくの効果も台無しになってしまいます。
身体にかかる負担が少ない
脂肪を溶かす薬液を注射するだけですから、身体にかかる負担が少なく、施術時間も短くて済みます。そのため、ストレスも少なくなります。
1回だけで効果が出ることはありませんが、平均3~5回程度、1~2ヶ月くらいで効果が出ます。食事制限と運動に頼る痩身法では、もっと時間がかかりますし、ストレスもかなり大きくなります。また、ダイエットで急激に痩せるのは、身体に大きな負担をかけます。
気になる部分だけ痩せることができる
「お腹周りはスリムになりたいけれど、バストは痩せたくない」ということが、ありますよね。脂肪溶解注射なら、気になる部分だけ、ピンポイントで痩せることができます。
気になる部分は、お腹・太腿・お尻・二の腕ですよね。ポッコリお腹や、タプタプした二の腕、背中についた脂肪も、とても気になります。
「痩せたい部分の脂肪が落ちず、痩せたくない部分ばかり痩せてしまう」ということがよくあります。気になる部分だけ痩せられるのは、大きなメリットですね。
顔から痩せる人もいれば、顔の脂肪が落ちにくい人もいます。顎の下などの脂肪を取ると、丸顔がシャープな感じになったり、全体に小顔になったりします。顔の脂肪はふつう2~3回で取れるようです。
リバウンドしにくい
食事制限で痩せる時は、脂肪細胞が小さくなるだけです。脂肪細胞がなくなるわけではないので、高カロリーの食事に戻すと、再び脂肪細胞が大きくなります。これがリバウンドです。
脂肪溶解注射では、脂肪を溶解して排出してしまうので、脂肪細胞がなくなってしまいます。成人の脂肪細胞の数は変わらないので、脂肪細胞がなくなってしまうと、増えることはありません。脂肪細胞がなくなるので、再び脂肪が大きくなることもありません。それで、リバウンドしにくいのです。
「脂肪溶解注射では、半永久的に痩せられる」と宣伝していますが、「半永久的」というのはちょっと疑問です。リバウンドしにくいことは確かですが、「脂肪吸引」と同じで、自分で痩せたわけではありません。脂肪溶解注射をしても、食習慣や生活習慣を改善しないと、当然、再び太ることになります。
栄養バランスのいい食事を腹八分目にとるようにして、適度に運動するようにしないと、せっかくの脂肪溶解注射がムダになってしまいます。
血流が良くなり、脂肪代謝も良くなる
脂肪を溶解して血液とともに血管を通り、尿として排出するので、血液の流れが良くなります。血流が良くなれば、全身に酸素が十分行き渡り、脂肪が燃焼しやすくなります。つまり脂肪代謝が良くなるわけです。
脂肪溶解注射をすると、脂肪が溶けてなくなるだけでなく、脂肪代謝の良い痩せやすい体質になります。ですから、注射をして痩せた後も、適度な有酸素運動(スロージョギングやウォーキングなど)を続ければ、スリムな体型を維持することが楽にできます。
セルライトにも効果が期待できる
皮下脂肪がつくと、多くの人にセルライトができます。
セルライトとは、脂肪細胞が体内の余分な水分や老廃物を取り込んで肥大化し、コラーゲン線維と癒着して固まったものです。老廃物は下半身に溜まりやすいので、セルライトもお尻や太腿の裏側など贅肉(ぜいにく)のつきやすい部分にできます。
セルライトができると、脂肪代謝が悪くなり、脂肪細胞がますます肥大化して血管を圧迫し、血流を妨げます。老廃物が脂肪細胞に溜まりやすくなり、ついに脂肪細胞同士がくっついて塊を作ります。こうなると、外から見ただけでも、デコボコしたセルライトができているのがわかります。
セルライトは、食事制限や運動などふつうの痩身法では、なかなかとることができません。脂肪を溶解する「脂肪溶解注射」なら、血流が活発化して脂肪代謝も良くなるので、セルライトにも効果が期待できます。
脂肪溶解注射のデメリット
脂肪溶解注射は「楽に、短期間に痩せられる」理想的な痩身法のように思われます。でも、メリットがあれば、必ずデメリットがあります。脂肪溶解注射のデメリットをしっかり把握しておかないと、とんでもない失敗をすることがあります。
痛みや腫れ、熱感がある
脂肪溶解注射をすると、体内の脂肪細胞が溶解され、破壊されます。脂肪細胞が溶解・破壊されるために、痛みや腫れ、熱感を生じることがあります。たまにかゆみが出ます。
脂肪溶解注射は、病院によって薬剤が異なります。そのため、生じる痛みや腫れ、熱感が違ってくるのです。
痛みや腫れが激しいこともあるので、脂肪溶解注射は休日など時間に余裕のある日に受けることをオススメします。
痛み・腫れ・熱感・かゆみなどが我慢できないほど激しい時は、すぐに医師の診療を受けてください。
[痛み]
施術時には塗り麻酔(麻酔クリーム)と極細の注射針を使うので、ほとんど痛みはありません。感じるとしても、わずかな痛みです。
ふつう、施術後1~2週間程度、筋肉痛のような軽い痛みがあります。しかし、痛みが激しくて、仕事や勉強が手につかないこともあります。
我慢できないほど痛かったり、1~2週間経っても痛みが消えなかったりした時は、すぐに施術した美容整形外科の医師に相談してください。
[腫れ]
施術後に、軽い腫れ・むくみ・内出血を起こします。たいてい、数日間で消えます。しかし、数日経っても、腫れがひかず、むくみや内出血がとれなかったり、施術後に大きく腫れて、内出血がひどかったりする場合は、すぐに施術した美容整形外科に行ってください。
[熱感がある]
脂肪細胞が溶解・破壊されるため炎症が起きます。そのため、熱感や痛みが生じます。たいてい、施術後、しばらくすると熱感は消えていきます。
熱感がなかなかとれなかったり、痛みとともにひどくなったりする場合は、アレルギーを起こしている疑いがあります。すぐに施術した美容整形外科で診てもらってください。
肌がたるんだり、デコボコになったりする
脂肪溶解注射で急激に脂肪が減ると、肌がたるんだり、デコボコになったり、小ジワができたりすることがあります。これは、激しい無理なダイエットをして急激に痩せた場合にも起こります。時には、肉割れを生じることもあります。
肉割れは、急に太ったり痩せたりして、皮膚が急に伸びたり縮んだりする時に生じます。皮膚の細胞が急激な変化に追いつかず、傷つけられ破壊されてしまうのです。妊娠線も肉割れです。
せっかく脂肪溶解注射でスリムになっても、顔がたるんだり、小ジワができたりしては、ガッカリです。肌がデコボコしたり、肉割れを起こしたりでは、水着を着ることもできません。
脂肪溶解注射を受ける前に、美容整形外科医とよく相談する必要があります。また、施術を受けた人に感想を聞いたり、病院の評判を調べたりすることをオススメします。
費用がかかるのに、効果が出ない
脂肪溶解注射は脂肪細胞を溶解・破壊する薬剤を注入するのですから、1回に多量の薬剤を使用することはできません。また、あまり強い作用の薬剤も、身体の負担が大きくなるので使用できません。ですから、体質によっては、なかなか効果が出ないことがあります。
脂肪溶解注射は1回で効果が出ず、1ヶ所について数回かかります。全身あちこち行うと、相当な費用がかかります。人よって薬の効き目が違いますから、何回も回数を重ねないと効果が出ないこともあります。
1回の施術が30,000~100,000円といいますから、事前に医師とよく相談して計画を立てることが大事です。
脂肪溶解注射ができない人もいる
糖尿病・高血圧・高脂血症・腎臓疾患・肝臓疾患・心臓疾患などの持病があると、脂肪溶解注射はできません。妊娠中・授乳中の場合もNGです。成長期の人も避けてください。
まとめ
脂肪溶解注射は、食事制限や運動療法などの痩身法に比べると、楽に短時間で痩せることができます。でも、薬剤によって、体内の脂肪細胞を溶解して破壊するのですから、身体に負担が全くかからないわけではありません。メリットばかりに目を向けないで、デメリットについても、よく知っておくことが大事です。
美容整形とは言っても、病院やクリニックで施術を受けるのですから、施術する医師を慎重に選ぶ必要があります。信頼できる医師と事前によく相談して、費用や効果、失敗例について、くわしく聞くことをオススメします。
また、脂肪溶解注射を受けるとともに、食生活や生活習慣を改善すると、痩身効果が上がりやすく、スリム体型を維持できます。「楽して痩せる」ことはできないのです。