ADHDは遺伝するの?実は原因すら解明されていなかった

ADHDは軽度だと大人になってから判明することも多く、最近では結構注目されている病気だと思われます。

読者の方にはそのような大人もいれば、自分も実はADHDなんじゃないかと疑っている方もいらっしゃるでしょうし、身内にADHDの方がいて、手っ取り早く知識を取り入れたい方もいらっしゃるかと思われます。

今回はそのような方々が特に気になっているであろう「ADHDと遺伝」について紹介したいと思います。

そもそもADHDって?

疑問

社会での自分の立ち振舞いについて悩んでいるうちにここにたどり着いてしまった人のために、まずはADHDについておさらいしたいと思います。

ADHDとは?

ADHDとは注意欠陥多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Desorder)のことで、多動性、衝動性、注意力の欠如を伴う発達障害です。

小学生の10人に1人はADHDの診断基準に達していると言われているほどに身近な病気であり、その症状は総じて社会のルールに沿って生きることに困難が生じるものとされていますが、ただの個性と捉えられそうでもあります。

症状の例として

・注意力散漫、集中力の欠如

・落ち着きが無い

・時間や期限が守れない

・衝動を抑えられない

・段取りを組むのが苦手

・情報をまとめるのが苦手

などです。

大人と子供で症状が違う?

ADHDはほとんど子供のうちに判明するのですが、前述の通り大人になってからADHDだと判明することも多いようです。大人と子供で症状が違うと言うよりは、大人と子供の生きる社会が違うことはもちろん、子供の頃にADHDだと判明しても成長するにつれ多動性が薄れてくることもあり、具体例は少々違って見えます。しかし大人にしても子供にしても多動性、衝動性、注意力の欠如に基づいています。

・子供の症状

授業中などに落ち着いて座っていることができない。お喋りが多い。順番待ちが出来ない。他の人の行動を遮ってしまう。気が散りやすい。興味のあることには没頭してしまう。順序立てて物事を行うことが出来ないなど。

・大人の症状

落ち着きが無い。思ったことをすぐに口に出す。衝動買い。ケアレスミスが多い。時間を守れない。順序立てて物事を行うことが苦手など。

他にも似たような発達障害を見かけるのだけど…

まず特に勘違いしてはならない点ですが、ADHDは知的障害ではありません。

知的障害を伴うADHDの子供もいることや、授業中に教室を歩き回るというADHDの子供の特徴が知的障害と混同されてしまいがちですが、ADHDであるが故に知能が遅れているということはありません。

むしろ大人になってからADHDだと判明する場合、学力の面では優秀だった方もいます。複雑な大人の社会に身を置くことにより、それまで知能でカバー出来てたことが一気に出来なくなり、子供の頃は「子供のすることだ」と見過ごされていたことも、大人になって周囲からの指摘で自覚するようになるのです。

また、ADHDと似たような症状を持つ発達障害が以下になります。

・アスペルガー症候群

ADHDとアスペルガー症候群の症状は、根本的なところではよく似ています。しかし、ADHDに比べアスペルガー症候群の症状は極端で融通が利きません。

例えば双方ともに興味のあることに没頭しやすいですが、ADHDの場合は飽きっぽく興味の対象がコロコロ変わりますが、アスペルガー症候群の場合は長期間に渡り一つのことに固執します。

また、ADHDの場合は計画的な行動が苦手ですが、アスペルガー症候群の場合は計画したことを遂行することに固執し、臨機応変な対応が苦手です。

アスペルガー症候群については、アスペルガー症候群が成人に現れた時の症状は?対処方法も紹介!の記事を参考にしてください!

・自閉症

発達障害は大きく3つに分類され、自閉症とアスペルガー症候群は「自閉症スペクトラム」という同じグループに属していますが、大きな違いとしては乳児期の言語発達の遅れや、意味の無い言葉を発する、オウム返しが多いということがあります。

また、行動パターンに強い執着があり、予定外のことが起こるとパニックを起こし、自傷行為に走ることもあります。

・LD

LDとADHDには似たような症状も多くあり区別が難しいですが、LDは学習障害であるという決定的な違いがあります。学習障害とは言っても知的障害ではなく、特定の分野が極端に不得意で、他の分野については平均的、得意分野についてはとても優秀ということもあります。

ADHDは遺伝しやすい…と言われつつもまだ仮説の域を出ない

研究

長い前置きになってしまいましたが、肝心のADHDと遺伝の関係性についてまとめていきたいと思います。

ADHDの遺伝についてはまだ解明していない

ADHDの子供がいる家庭では、家族も発達障害を抱えているというケースが多いため、ADHDの遺伝説は濃厚とされています。

ただし、発達障害の子供がいる家庭の100%がそうと言うわけでもなく、同じ細胞から生まれた一卵性双生児でも片方だけが発達障害を抱えて生まれてくるということもあります。そもそもADHDの遺伝子自体が見つかっておらず、医学会では研究を進めてはいるものの、まだまだ仮説の域を出ないといったところです。

本質的な原因は判明している?

まだまだ研究の段階にあるADHDですが、どういったことが原因でADHDの症状が起こるのかは判明しているのでしょうか。

実はこの件についてもまだはっきりとしたことは分かっていませんが、最も有力な説は脳の前頭葉の働きが悪いという説です。前頭葉は物事を論理的に考えるといった働きを担っていて、運動に関わる神経や感情をコントロールする神経から出る「ドーパミン」という伝達物質によってその力を発揮します。

ADHDの人たちはこの「ドーパミン」の伝達に異常があるために、多動、不注意といった症状が出てしまうのではないかと言われています。またドーパミンは快楽(=好きなこと、気持ちいいこと)によって大量に発生するために、全く伝達されないということは無いのです。

例えば「ハイになる」と言った状況がドーパミン発生の典型的な一例で、快楽が多く生み出されれば、ADHDに限らず他の発達障害の人でもきちんとドーパミンが伝達されるのです。好きなこととなると熱中し出すことについても、ドーパミンが関係しているからだと考えられています。

環境が原因とする説

また、ADHDは多因子性疾患であり、遺伝や前頭葉の働きの他に育てられた環境が原因で発症するものだという説もあります。

原因として挙げられているもののひとつが砂糖や添加物などの食品です。ただし砂糖、特に添加物は食品としての歴史が浅いため、本当にADHDの原因かどうか判明するまでにはまだまだ時間がかかるそうです。

他に原因として見られているのが、あまりやる人はいないと思いますが妊娠中の母親の飲酒や喫煙です。更に大気汚染や出生時のトラブルなどが挙げられていますが、残念ながらどれも仮説の域を出ません。またADHDの親を見て育つことや、周囲からの「あの人はADHDだ」という評価によって、子供のADHDが悪化するという説もあります。

ADHDは前向きに受け止めていくこと

親子

ADHDの完全治癒はまだ難しいです。そう言った病は悲観せずにうまく付き合っていくことが重要なのです。

悲観はうつ病のもと

ADHDの子供の親御さんや、ある日突然ADHDだと診断されてしまった社会人の方は、まず将来が不安になり自分の人生を悲観するでしょう。

しかし前述の通りADHDである自分を悪い意味で受け入れてしまうと、症状の悪化だけでなくうつ病を併発する可能性もあるのです。ADHD関連のサイトを訪問すると、ADHDでも社会で活躍している方の名前がよく並んでいます。

そう言った例もあることを認識し、前向きな気持ちで治療を受けることが最善策なのではないでしょうか。

治療しながら環境を整える

もしADHDの疑いがあればまずは医師に相談し、必要な環境を整えましょう。就学中のお子さんであれば、学校への相談も不可欠です。

また現代の治療方法には薬物の投与や心理療法、苦手分野のトレーニングなどがあり、こうした訓練には極力非ADHDに近付けるという目的がありますが、極めて完治に近い状態ばかりでなく、個人の特徴をプラスに持っていくことも期待するようにしましょう。

まとめ

ADHDはまだまだ未解明の病であり、ADHDだと診断された方やそのご両親はつらい思いをされるかと思われます。しかしこう言った悲観が症状を余計悪化させるというパターンが少なからずあることは事実です。何が好きか、何が苦手かを見極め、適切な処置を施していくのが重要ですね。

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