筋膜炎とはアスリートたちが、よく起こす症状です。筋膜炎は過度な運動の結果、足底やふくらはぎや筋肉を包む膜が、疲労することで起こる病気です。ですが筋膜炎とついている病気の中で、とても恐ろしい病気もあります。それは壊死性筋膜炎と壊疽性筋膜炎です。これについても、少し見てみたいと思います。
そもそも筋膜とは何かわからないと、筋膜炎が分からなくなります。筋膜を分かったうえで筋膜炎を見ていくと、非常にわかりやすいと思いますので、筋膜について少し詳しく見てみました。それでは一緒に筋膜炎を見ていきましょう!
筋膜とは
筋肉は聞いたことがありますが、筋膜とは一体私たちの身体の、どの様な機能を果たしているのでしょうか?
筋膜の例え
筋肉は良く耳にしますが、筋膜はあまり聞いたことがありません。スポーツをされる方はご存知かもしれません。筋肉は身体を動かす機能ですが、筋膜は身体を支える機能なのです。身体を支える機能は、身体を動かす機能から見ますと、黒子すなわち裏方に徹する機能とみられます。
筋膜は骨や内臓、血管、神経、筋肉のすべての身体を覆っています。筋肉の周りについているものは筋膜、心臓を包んでいるものは心膜、骨についているものは骨膜と呼ばれますが、筋膜は身体全体に繋がっているので、全身ウエットスーツや、全身タイツのような機能をしています。頭の上から身体をすっぽり、全身ウエットスーツを着た感じで、組織を守っています。
筋膜の機能組織
筋膜は人間の身体の組織が、きちんと適切な位置に配列され、配置されているように、形づけられていることになるのです。身体の組織がいびつになると、スムーズに身体は動くことができません。
筋膜は結合組織の一つで、色々な臓器や骨や筋肉を、支えている膜なのです。全身に連なる三次元からなる結合組織で、それは身体の上からウエットスーツを、すっぽり被ったような役目をしています。ウエットスーツをどこかで引っ張ると伸びますが、離すともとに戻ります。
筋膜の種類
筋膜を大きく分けると浅筋膜(せんきんまく)深筋膜(しんきんまく)の2つに分けられます。深筋膜には筋膜、筋上膜、筋周膜、筋内膜の4つに分けられます。
浅筋膜
浅筋膜というのは皮下組織の中にある層で、皮下組織の中の中央にある、全身を覆っている明確な層になっています。主に身体を守る働きをしていて、皮下筋膜ともいいます。ウエットスーツのような、身体全体を覆う膜だと、考えて頂ければ良いと思います。
深筋膜
深筋膜は第2の骨格と言われる、腱の膜のような筋膜で、いわゆる腱膜筋膜と言い、筋膜そのものを覆うものです。筋肉の固定や筋肉と接する組織の、摩擦を軽減するための、筋の反応を助ける作用があります。これを大きく分けると4つの層に分類されます。
筋膜
筋膜とは腱やじん帯、骨などに付着して、それぞれの筋肉を覆っている膜です。
筋上膜
筋上膜とは筋膜のすぐ内側にある膜で、筋肉や筋群を覆っている膜です。
筋周膜
筋周膜とは数十個の筋繊維を束ねている膜の事です。
筋内膜
筋内膜とは筋繊維単体を覆っている膜の事です。
筋膜は6層構造になっていて、筋膜の層は強度をより強くするのに、適した構造になっています。
筋膜の成分
さて筋膜は何でできているのでしょうか?筋膜の成分について、近年新しく発見されたようです。以前は筋膜は、伸縮性のあるエラスチンと、伸縮性のないコラーゲンの、2つの成分から、作られていると考えられていました。
エラスチンによって、自由に伸縮するのですが、コラーゲンが程よく、伸びを食い止めてくれて、この2つの成分がバランスを取ることで、着心地の良い全身のウエットスーツが、作られていると考えられていました。
しかし近年コラーゲンを、しなやかにしているのは、ヒラルロン酸の存在であると、明らかになってきました。ヒアルロン酸により、コラーゲン繊維はムコ多糖類の、基質の性状は粘稠性(ねんちゅうせい)のねばりっけのある性能で、ムコ多糖類のヒアルロン酸に、よるところの影響が、非常に大きいことが解ってきたのです。
コラーゲン繊維の摩擦をなくして、滑り良くする機能の滑剤(かつざい)は、ヒアルロン酸によるものの、影響であることが最近解ってきました。
ヒアルロン酸の増加は、筋膜組織内の水分移動を減少させます。コラーゲン繊維の増加は、筋膜組織の線維化に、つながることになるのです。この様な変化は骨格を動かす骨格筋の、弾力の低下に影響している、可能性が高いと思われています。
▼粘稠性(ねんちゅうせい)
粘稠性とは濃い粘りっ気のある性質の事です。
▼滑剤(かつざい)
滑剤とは摩擦をなくして滑りを良くすることです。
筋膜の状態
身体の歪みが原因で、筋膜同士が絡まったり、コリや怪我をすると、筋膜が痛んでコラーゲンが癒着して、伸縮性が無くなったりします。筋肉が衰えてくると、筋膜に筋肉が引っ付いてしまうので、筋膜への負担が増してきて歪みに繋がります。
昔の怪我や手術の痕が、天候の悪い時にうずくことがありますが、怪我が治っているのに、不思議に思われるかもしれません。それは手術や深い怪我で、筋膜を切ってしまうと、中々元の状態に戻らないのです。その部分がツレて、筋膜の周囲の動きが、悪くなってしまいます。どのあたりが、痛いのかわからない、特定できない違和感のある、痛みが出てくるのです。
筋膜が損傷することで、身体のバランスは崩れます。古い傷の筋膜の損傷が、身体の思わぬ不調に、繋がることが多いのです。古傷の筋膜を整えるには、筋肉を整えることによって、痛みが軽減することがあります。
筋膜炎とは
やっと筋膜炎にたどり着けましたが、筋膜を理解しないと筋膜炎が解らないので筋膜について詳しく調べてみました。
さて筋膜炎はこの筋膜が炎症を起こすことです。筋膜が炎症を起こすことは、筋肉や骨・内臓を覆っている膜が、炎症を起こすことになるのです。それが筋膜炎です。
そして筋膜炎が炎症を起こすという事は、筋膜が脱水を起こした状態という事です。ヒアルロン酸が凝縮して、コラーゲン繊維の配置が、変化していることを示しています。
丁度ウエットスーツがどこかで、引っ張られている感じなのです。
筋膜炎の原因
さて筋膜炎を起こす原因は、一体どこにあるのでしょうか?
筋膜炎になる人はどの様な人ですか?
筋膜炎の原因はアスリートたちの、筋肉疲労による筋肉の負担に、よるところが多いようです。またアスリートたちだけでなく、立ち仕事や合わない靴などを履いていると、筋膜炎の原因として、症状が出るように思われます。慢性的に疲労がたまりやすい人は、筋肉炎を起こしやすくなります。
また年齢的には40~50代の中高年に多いことから、加齢による老化が大きな原因のように考えられます。
筋肉炎は筋肉や骨・内臓を覆っている筋膜が硬くなるのが原因です。
筋膜炎のメカニズム
筋膜炎のメカニズムを見てみると、筋膜は先でもお話ししましたが、ウエットスーツを頭から身体全体に、着ているようなものです。そのウエットスーツの一か所をどこか引っ張ると、ウエットスーツは、その部分が引っ張られます。引っ張るのをやめると元に戻ります。
これはヒアルロン酸が、コラーゲン繊維をしなやかにしているのと、エラスチンの作用によるものです。しかし同じところを引っ張っていると、筋膜が炎症を起こしてきます。筋膜が炎症を起こすという事は、ヒアルロン酸が凝縮して、コラーゲン繊維の配置が、ずれることになるという事です。
どこか一か所でつれたり、ねじれたりすると動作は、スムーズに動作しなくなります。筋膜でのツレやねじれは、コリやけがの事なのです。
また古い傷や手術などで、筋膜を損傷した場合にも、筋膜炎を起こすことがあります。身体のバランスが崩れるわけですから、思わぬところに不調が出ることがあります。
筋膜炎の種類
筋膜炎の症状には、大きく分けて結節性筋膜炎、壊死性筋膜炎、壊疽性筋膜炎、足筋膜炎、腰筋膜炎、があります。足筋膜炎、腰筋膜炎以外は、病変による疾患です。ですから筋膜炎の考え方も全く違ったものになります。
結節性筋膜炎
結節性筋膜炎とは、皮下深部に出来る、腫瘍に似ているが、まだ判定のつかない病変です。1955年にKonwalerが皮下の、偽肉腫性繊維腫症として報告しました。その時に結節性筋膜炎と名付けたのが最初で、代表的な良性腫瘍様病変として、専門家の間ではよく知られています。大体20代から50代に発症しています。
結節性筋膜炎は局所にできる、線維芽細胞が増殖する症状で、良性の筋膜から発症する疾患です。原因は線維芽細胞が増殖することです。
壊死性筋膜炎
壊死性筋膜炎は筋膜に沿って、皮膚深部で急速に、壊死が広がっていきます。細菌感染に掛かった部分の、患部の皮膚は赤くはれ上がり、高熱を出して皮膚の組織が、死滅してしまいます。壊死性筋膜炎は、時にショック死の可能性のある、重篤な病気です。
壊死性筋膜炎は初期段階では、赤みが薄いですが、すぐに症状は悪化して、患部に激痛を覚え、同時に腫れや赤みがでて、皮膚の下に悪臭を伴う、水泡や気泡を生じて、壊死が始まります。壊死性筋膜炎の皮膚の色の変化は、赤から赤紫、黒色に変化していきます。
壊死性筋肉炎の、炎症を起こさせる菌には、レンサ球菌属やクロストリジウム属など複数いますが、多くの場合複数の、細菌の組み合わせにより発症します。
死亡率は全体の30%と非常に多いです。治療は外科的手術と、抗生物質の静脈内投与を行います。
壊疽性筋膜炎
壊疽性筋膜炎は肛門周囲膿瘍や、外傷や尿路感染が切っ掛けで、細菌感染による急激な、広がりが起こり、高熱や激痛を伴います。筋膜に茶色い膿が、しみ込んでいるようになっていて、手術で患部を取り除くにも、広範囲に切開しないといけません。また独特な悪臭があります。
細菌により敗血症になって、死にいたることもあり、病気の数としては少ないですが、壊疽性筋膜炎になると、治療がとても大変になります。集中治療室で、強力な抗生物質を使って、注意深く、治療しなければなりません。糖尿病の患者さんに、多く発症しています。
原因は細菌が皮下組織に侵入して、腐敗ガスや毒素をだして、細胞組織を腐らせるのが原因です。また壊疽性筋肉炎の事を、フルニエ症候群とも言います。
死亡率は10%で男女比は25対1と、圧倒的に男性に多いです。また50~70代の人に多く発症しています。
足底筋膜炎
スポーツなどによる筋膜炎の、使い過ぎにより起こります。筋肉が疲労を起こしているときは、安静にして、筋肉を休ませることにより、筋膜炎も治ってきます。
肥満度の大きい人や、足首の関節が硬い人は、足底筋膜炎を起こしやすくなります。足首の関節は、衝撃を吸収する作用があり、足底のアーチにも衝撃を、吸収する作用があります。両方の吸収する作用が、衝撃が起こった時に分散して、衝撃を吸収することが出来ますが、足首が硬いと衝撃を、吸収することが出来ないため、足底筋膜炎になってしまいます。
腰筋膜炎
腰部筋膜炎も腰の筋肉の、使い過ぎで起こります。また同じ姿勢を続けていると起こります。楽な姿勢をとって、安静にしていれば治ります。症状は腰から背中にかけて、痛みの症状が起こります。腰に重さ・だるいの違和感などの症状が起こります。
筋膜炎の治療
筋膜炎の治療はあるのでしょうか?
トリガーポイントとは
良く筋肉などの整体をやられる中で、トリガーポイントという言葉を、聞かれたことがあると思います。トリガーポイントとは、一体どのようなポイントなのでしょうか?
トリガーポイントとは身体のコリの、隠れたポイントの事なのです。筋膜と筋肉の癒着しているポンとなのです。筋膜が全部つながっているので、トリガーポイント自体の、その部分は痛むことはほとんどなく、関連する別の部分に、痛みが出てくるのです。
ですからトリガーポイントの、筋膜と筋肉の癒着をほぐしてあげることで、痛みやしびれはすっきりと解消されます。動かしにくい部分や、もともと動かさない部分があるのを、意識してほぐす事によって、筋膜炎が解消されるのです。
トリガーポイントとは、筋肉を短くするのにともなう、筋膜の機能障害を起こさせる、ポイントという事です。それ自体が痛みを伴ったり、痛みを誘発する原因にもなります。器械的に連結する部位での、抵抗を小さくすることにより、新たなトリガーポイントを、生む原因となります。
詳しくは、トリガーポイント注射とは?効果や特徴を知ろう!どんな症状に効く?副作用はある?を読んでおきましょう。
ヒアルロン酸の凝縮を改善
筋膜炎の起こるのは筋膜の、ところでもお話ししたように、ヒアルロン酸の凝縮によるものが、筋膜炎となりますので、ヒアルロン酸の凝縮を改善することが、筋膜炎の治療となります。
ヒアルロン酸の凝縮を改善して、コラーゲン繊維配列、配置を正しく行う必要があります。そのためにはヒアルロンサンの、脱水改善が必要となります。そうすることでヒアルロン酸の、凝縮が改善でき、コラーゲン繊維配列が、正しく行われるようになります。
ヒアルロン酸の脱水改善を行うためには、運動で改善を試みたり、局所的に熱を加えることで、ヒアルロン酸の凝縮改善を、行うことが出来ます。またコラーゲン繊維の、配列を正しくするには、一定方向にストレッチや牽引を加えて、コラーゲン繊維の配列に働きかけます。
一番大切なことは、筋肉機能の異常をきたしている、個所を見つけることで、痛みの症状が出ているところが、異常をきたしている場所にはなりません。
一番の治療は安静にして、自然治癒するまで、次のスポーツを行わないようにします。筋肉を休めて、筋膜の炎症をとることです。
筋膜炎の予防
筋膜炎の予防はまずは、激しい運動をやめることです。続けていると肉離れなどに発展します。次に氷を患部に立てて、幹部を冷やします。冷やしたら患部に包帯などを巻いて、患部を心臓より高い位置におきます。
筋膜炎の予防は激しい運動をしないこと以外に、同じ姿勢をやらないことです。仕事などでどうしても、同じ姿勢を続けないといけない場合は、できるだけ時間を見て、姿勢を変えることが大切です。
まとめ
筋膜炎について見てきましたが、お分かりいただけましたでしょうか?筋膜炎はスポーツや仕事などで、同じ姿勢をするために、起こるのかと思っていましたが、中には細菌による恐ろしい筋膜炎の、疾病があることを知ることが出来ました。
また筋膜はどの様になっているのかという事も、分かって頂けたと思います。筋膜はウエットスーツのように、なっていますので、どこか一か所でも支障をきたすと、あちこちが炎症を起こすことになります。
その為にも筋膜の、ヒアルロン酸の凝縮を和らげることが、必要となってきます。筋膜炎を治すには、ヒアルロン酸の凝縮を和らげる事だと、覚えておくと良いかもしれません。