耳垢塞栓とは?症状や治療法、予防方法について紹介!

耳かきで耳の中をガサガサかいて、思いのほか大きな耳あかが取れると、少し嬉しくないですか? しかし喜んでばかりもいられません。耳あかが増えすぎると、耳の穴が詰まってしまいます。これを「耳垢塞栓(じこう・そくせん)」といいます。「耳あか」の正式名称は「耳垢(じこう)」といいます。

なので「耳はこまめに掃除しましょう!」といいたいところなのですが、しかしあまり頻繁に耳掃除をすると、それはそれで別の問題を引き起こすのです。

耳垢の成分

耳

耳垢が詰まるメカニズムを解説する前に、耳垢とはなんなのかということをみてみます。耳垢は主に2つの「材料」からできています。1つは体の内側から耳の穴に滲み出てくる「分泌物」です。

もう1つは、耳の中に舞い込んできた空中のホコリなどの「異物」です。この2つが混ざり合ってあの独特の物体を生み出すのです。

分泌物とは

指を耳の中に突っ込んでみてください。その指が触れている部分を「外耳道(がいじどう)」といいます。この外耳道に分泌物を運んでくる「管(くだ)」は2種類あって「耳垢腺(じこうせん)」と「皮脂腺(ひしせん)」といいます。「腺」は「体内の細い管」のことです。

皮脂腺からは、「皮脂」が分泌されています。皮脂腺も皮脂も、体の表面であればどこにでも存在しています。皮脂は壊れた細胞で、「グリセリン脂肪酸エステル」といいます。壊れた細胞なので、基本的には老廃物なのですが、体に良い効果もあります。皮脂は皮膚の表面に膜をつくるので、体を防御する効果が期待できるのです。ただ「脂(あぶら)」ですので、「油(あぶら)」と同じように劣化します。皮脂は定期的に洗剤などで洗い流す必要があります。

耳垢腺からは、「アポクリン」が出てきます。汗の一種です。そしてこのアポクリンも、実は体に良いことをしています。アポクリンの成分は「リゾチーム」「IgA」「IgG」などで、これらはいずれも抗菌作用があり感染防止に役立っているのです。また、これはあくまで「説」なのですが、耳垢が放つ微量の臭いが昆虫の侵入を阻んでいるそうです。

異物とは

次に耳垢を作る2つめの「材料」である異物について解説します。異物には①空中に舞っているホコリや塵のほか、②耳の穴に落下した「皮膚の表面の細胞」や、③抜け落ちた耳の穴の毛です。

カレーに例えると、①②③の異物はいわば「具」です。カレーの「スープ」が分泌物です。分泌物と異物が混ざり合って耳垢ができあがるのです。

耳垢の種類

乾燥

次に耳垢の種類について紹介します。

乾燥耳垢

耳垢には「カサカサ」と「ジュクジュク」の2種類あります。カサカサ系は乾燥耳垢といい、一般的には「ミミクソ」「コナミミ」などと呼ばれています。日本人の8割が乾燥耳垢です。色は灰色から白色です。魚のウロコのようにはがれ落ちることもあります。

湿性耳垢

ジュクジュク系のことを湿性耳垢といいます。俗に「アメミミ」「ヤニミミ」と呼ばれています。日本人の2割がこのタイプの耳垢をもっています。湿性耳垢になるのは、耳垢腺から出てくる分泌物が多いためです。再びカレーで例えると、湿性耳垢はスープカレーのような状態になっているということです。

また湿性耳垢には、シアル酸という成分が多く含まれています。シアル酸は水を吸いやすい性質を有するので、空気中の湿気を耳垢に取り込んでしまうのです。

耳垢塞栓の症状

音

耳垢が詰まると、聞こえが悪くなります。音は「波」です。鼓膜に音の波が伝わり、鼓膜が震えることで「聞こえる」という認識が生まれます。耳垢が大量に存在すると、音の波の伝わりが悪くなるので、聞こえに影響するのです。

しかし耳垢塞栓の症状は難聴だけではありません。

無症状

耳垢塞栓は、聞こえが悪くなる直前まで無症状のことがあります。また、無症状だからこそ耳掃除を怠ってしまい、耳垢がどんどんたまっていくのです。「耳垢塞栓の無症状」の特徴は、無症状の後に突然難聴になることです。

鼓膜に固着

難聴状態になっても放置し続けると、耳垢が鼓膜に張り付いてしまいます。これを固着状態といいます。危険な状態といえるでしょう。耳垢塞栓の治療の原則は耳垢を取り除くことですが、鼓膜に固着していると取り除くときに鼓膜を傷つけるリスクが高くなります。

また、耳の機能は聞こえだけではありません。平衡感覚や重力を感じることにも、耳の重大な「仕事」です。耳垢塞栓によってこうした「仕事」がさまたげられると、めまいや立ちくらみといった症状が起きます。

炎症

耳垢塞栓はゴミが長期間貯まり続けている状態ですので、耳の穴の皮膚の表面が炎症を起こします。こうなると治療は長期化します。まず炎症を抑える治療を行ってから出ないと、耳垢の除去に取り掛かれないからです。

耳垢塞栓の治療

スライム

少量の耳垢は耳かきで取り除けますが、耳の穴をふさいでいる耳垢塞栓では、医者にかかってもすぐに「ひっかいて取る」ことはできません。

柔らかくする

まず大量の耳垢を柔らかくします。「耳垢水」という薬を使います。この薬は自宅で使います。数日後に再び来院して、いよいよ取り除く治療に取り掛かります。

吸引と鉗子

耳垢を引きはがしても皮膚を傷つけないくらいにまで耳垢が柔らかくなったら、まずは吸引器を使います。バキュームです。それで取り除けない耳垢は、耳垢鉗子(じこうかんし)という器具を使って取り除きます。耳垢鉗子は、いわば治療用の耳かきです。

リスク

治療のリスクでは出血です。医師としては「十分に柔らかくなった」と判断して、耳垢鉗子で耳垢をひっかくのですが、完璧にはいかないのです。

また、一度に大量の耳垢を取り除くと、めまいを引き起こすことがあります。特に高齢者は、ふらふらになって立ち上がれなくなることもあります。そこで、ふらつくリスクが高い患者には、3~4回に分けて取り除きます。治療と治療の間に数日置くので、すべてを取り除くのに1週間以上かかることもあります。

耳垢塞栓の治療で出てくる耳垢の量は、小指の先ぐらいに達することもあります。ある耳鼻科医は「取れた耳垢を見せると、大抵の患者さんは大喜びします」と述べています。

耳垢の取りすぎに注意!

耳痛い

さて、耳垢塞栓の恐さをご理解いただけましたでしょうか。しかし耳掃除は、しすぎもよくないのです。耳は繊細な器官ですので、毎日のように綿棒や耳かきで耳の穴に刺激を与えていると、簡単に傷ついてしまいます。

実は最近は、耳かきブームなのです。つまり、耳垢塞栓より、耳のかきすぎによる被害の方が深刻なのです。

外耳炎

耳掃除を頻繁にやりすぎると、耳の穴の皮膚に傷ができてしまいます。ここから細菌やカビが侵入し炎症を起こします。これを外耳炎といいます。

詳しくは、外耳炎の治し方を紹介!症状によって変わる治療方法とは?を読んでおきましょう。

かさぶた

耳のかきすぎによる出血は、微量なことが多いです。そのため、出血したとは気付かずに、知らぬ間にかさぶたができていることがあります。耳かきは目で確認しながら行うことはほとんどありませんので、綿棒などがかさぶたに触れると「ミミアカが大量にある!」と感じてしまいます。

それで余計に強くひっかいてしまい、耳の穴の皮膚の傷が広がってしまうのです。

正しい耳掃除

綿棒

1.5センチ

耳鼻科医がすすめる耳掃除の方法は、綿棒を1.5センチほど入れて取る方法です。綿棒を挿入するときは、綿棒を耳の穴の皮膚に触れないようにします。耳の穴の皮膚に触れながら綿棒を押し込むと、耳垢を奥に送り込んでしまうからです。耳垢が奥に入って取り除けなくなると、耳垢塞栓の原因となります。

綿棒を1.5センチほど挿入した時点で、綿棒を皮膚に押し当ててください。押し当てたまま引き抜きます。

1.5センチがポイントです。耳の穴の入口から鼓膜までは2.5センチしかありません。ですので綿棒の挿入部分が2センチだと、ちょっとした弾みで鼓膜に触れてしまうのです。

2週間

耳掃除を毎日行うなんてとんでもありません。1週間に1度でも多いくらいです。医師がすすめるのは2週間に1度です。この数字に驚いている人は、耳をかきすぎています。耳かきは快感をもたらすので、癖のように耳掃除をする人がいます。徐々に頻度を減らしていってください。

耳掃除については、耳掃除のコツはある?頻度や正しいやり方について!を読んでおきましょう。

まとめ

耳垢ごときに悩まされないようにしましょう。かかなさすぎも、かきすぎも禁物です。適切な処置を行い、健全な聞こえを確保してください。

  
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