ジョギングやウォーキングの際に、音楽を聴いたり、電車の中で動画を見るのに、イヤホンを使ったりと、イヤホンを利用することは日常生活の中でも多いのではないでしょうか。特にイヤホンをつけて大音量で聴くと非常に気分がよくなったりします。
そんなイヤホンを日常から取り入れている方で、最近なんだか耳が聞こえずらいなと感じる方、もしかしたら、イヤホンが原因かもしれません。最近、若い方を中心に「イヤホン(ヘッドホン・イヤホン)難聴」と呼ばれる騒音性難聴(音響性外傷)が増えています。
少し意外かもしれませんが、イヤホンは聞き方に気を付けないと難聴になることがあると言われています。音を聞く際に、通常は空気で伝わる過程で弱まる音の周波数が、弱まることなく直接耳に伝わることで、内耳にダメージを与えます。その為、イヤホンを使うのが習慣になっていると、徐々に音が聞こえずらくなってきます。今回、イヤホンで難聴になる3つの原因と5つの解決方法をご紹介します。
イヤホン難聴とは?
難聴とは、耳の機能が低下し、音が聴こえずらくなる病気です。難聴になってしまう原因は様々ありますが、イヤホン難聴とは騒音性難聴と呼ばれる病気の1つで、大きな音で長時間イヤホンを使って音を聞き続けることで発症します。
パチンコ店やゲームセンター、コンサートなど音がうるさい場所に長時間居て急に外にでると、耳がジーンとして聞こえずらいと経験された方も多いと思います。その状態が続いて治らなくなった状態をイヤホン難聴と呼びます。
イヤホン難聴の症状は?
イヤホン難聴になると、下記のような3つの症状が起こります。
- 両耳の聞こえが低下する
- キーンと耳鳴りがする
- めまいがする
これら3つは同時に起こるのではなく、1つだけ起きたり複数重ねて起きたりと人によって症状は様々あります。また、この症状は自分では気づきにくい為、人に「聞いてる?」など何度も注意されることがある方は、この症状を疑った方がいいかもしれません。
イヤホン難聴の兆候は?
イヤホン難聴になる前に、兆候が見られます。イヤホン難聴の兆候を10個ご紹介します。
疑いのある方は、これらの10個に当てはまるかどうかチェックしてみてください。
- キーンと耳鳴りがする
- 少し聞こえずらくなったなと感じる
- 耳が詰まる感じがする
- 特にヒソヒソ話が聴こえずらい
- 雑音の中の音が聞き分けずらい
- テレビの音が大きいと言われたことがある
- 相手の言ったことを、推測で判断することがある
- 離れたところから人の呼びかけに応じにくい
- 複数の人と話すと会話がよく分からなくなる
- 耳の奥の痛みや頭痛を感じることがある
これらの中で1つでも当てはまる方は、軽度難聴の可能性があるので、早めに耳鼻咽喉科での受診をオススメします。
イヤホン難聴になる原因は?
イヤホン難聴の病気の怖さは徐々に進行していく為、本人が気づきにくいことです。イヤホン難聴は、耳の内耳にある蝸牛と呼ばれる音を感じる器官にある感覚細胞がダメージを受けることで起こります。
原因は、イヤホンを使って「大きな音で聴く」「長時間に渡って聴く」「周波数の高い音で聴く」といった3つが挙げられます。今回、詳しい理由をご紹介します。
大きな音で聴く
音が大きいほど、耳にかかるダメージが大きくなります。イヤホン難聴は80デジベル以上の音を長時間連続で聴いていると生じやすいと言われています。
この80デジベルとは社内で音楽を聴いていて、電車の音が聴こえるくらいだと言われています。音の大きさを表す単位としてデジベルが使われます。デジベルだと少し分かりずらいので、各デジベルがどれくらいの身近な音を表しているか、見てみましょう。
■音の大きさの単位デジベルの身近な例
- 120デシベル:飛行機のエンジンの近く
- 110デシベル:自動車の警笛(前方2m)・リベット打ち
- 100デシベル:電車が通るときのガードの下 、ドライヤーの音
- 90デシベル:犬の鳴き声(正面5m)・騒々しい工場の中・カラオケ(店内客席中央)
- 80デシベル:地下鉄の車内・電車の車内・ピアノ(正面1m)
- 70デシベル:ステレオ(正面1m、夜間)・騒々しい事務所の中・騒々しい街頭
- 60デシベル:静かな乗用車・普通の会話
長時間に渡って聴く
大きな音をどのくらいの間イヤホンで聞いたかという、「時間」もこの病気の重要なポイントです。長時間大きな音を聞くと耳を痛める原因となります。聴覚を損なわないようにする為、各音圧に耐えられる最長限度時間を見てみましょう。
長時間音楽を聞きたい場合は、60デジベルの音で聞きましょう。60デジベルの音(普通の会話の音)であれば、長時間聴いても耳を痛めないと言われています。
■デジベルごとの最長限度時間
- 120デシベル:回避しないと耳を痛める原因になります。
- 115デジベル:15分
- 110デシベル:30分
- 105デジベル:1時間
- 100デシベル:2時間
- 95デジベル:4時間
- 90デシベル:8時間
寝る前にイヤホンをして音楽を聞いたまま眠りにつく方もいますが、危険な行為ですので、すぐに止めましょう。
周波数の高い音を聴く
周波数の高い音ほど、耳に負担がかかりやすいです。イヤホンの周波数は、スピーカーなどで聞くのと比べると周波数が高いです。
スピーカーなどで音楽を聴くときには、高い音の周波数は空気中で弱まり耳に伝わりますが、イヤホンは空気を通さずに弱まることなく直接耳に伝わる為、長時間使用し続けると大きな負担をかけます。
イヤホン難聴5つの改善策とは?
一度ダメージを受けたイヤホン難聴の治療法は残念ながらありません。最悪の場合は、聴力が回復しない場合もあると言われています。
その為、難聴を防ぐためにも、少しでも異変を感じたなら、まずは耳鼻科に行き検診をしてください。
また、イヤホンの使用の見直しをする必要があります。今すぐに出来る5つの改善策をご紹介します。
適切な音量で聴く
イヤホン難聴は80デジベル以上の音を長時間連続で聴いていると生じやすいと言われています。この80デジベルとは社内で音楽を聴いていて、電車の音が聴こえるくらいだと言われています。その為、その状況で電車の音が聴こえないと、音量が適切でなく大きいということになります。
電車の中はクーラーの音や人の声、電車の音など様々な雑音が入ってきやすくボリュームを上げてしまいがちですが、周りの音が聴こえない程度に上げてしまうと、基準である80デジベルを越えてしまい、知らないうちに難聴になる可能性が高まります。まずは、音量を上げるのを止め80デジベル以下の適切な音量で聴くように調整しましょう。
どうしても、音楽を長時間聴きたい方は、60デジベルであれば、長時間聴いていても難聴になるリスクがないと言われています。60デジベルとは人が話している会話の声と同じくらいの大きさです。
そのくらいの音で聞くと難聴になるリスクを抑えることが出来ます。しかし、特に疲れていると感じている時は、体がダメージを受けやすいので、音量や時間に特に注意してください。
耳を休ませる時間を作る
イヤホンを利用して音を聞いた時間の3倍の時間は耳を休ませる必要があると言われています。
大きな音による耳の不調というのは、時間おけば回復します。しかし、イヤホンを使った音楽は、大音量による、耳のダメージが大きいのにも関わらず、長時間利用している為、回復する時間が少なくなりがちです。
負担が回復しないまま、使用し続けて負担が蓄積してしまう傾向にあります。どれくらいイヤホンで音楽を聞いたか把握し、その3倍の時間はイヤホンの使用を止めて、静かな場所で耳を休ませましょう。
耳鳴りや耳が詰まった感じがしたら、イヤホンの使用を止める
キーンと耳鳴りがしたり、耳が詰まったような耳閉塞感や圧迫や痛みは、耳からの出ているヘルプサインです。このような症状を感じた方はすぐにイヤホンの使用を止めてください。
イヤホンの使用を止めても改善されない方は、すぐに耳鼻咽喉科での検診をされることをオススメします。
ノイズキャンセリング機能の付いたイヤホンを使用
音量を上げる必要があるのは、周りからの雑音を防ぎ、自分の好きな音楽を集中して聞こえるようにする為だと思います。そんなに音量を上げなくても、雑音を低減してくれる「ノイズキャンセリング」という技術があります。
音は波です。その為、逆の音波が流れると、音を打ち消してしまうという性質があります。ノイズキャンセリングとは、周囲の雑音を拾い、その音と逆の音波を発生させることにより、雑音を打ち消します。気になる雑音が消えるため、音量を上げなくても、静かな環境で自分の好きな音楽を楽しむことが出来ます。
遮音性の高いイヤホン、ヘッドホンを利用する
イヤホン難聴を改善するのには、イヤホン・ヘッドホンの選び方も重要なポイントです。
イヤホン自体の遮音性を高めれば、音を大きくしなくても音楽が聴こえやすくなります。その為、遮音性の高いものを選びましょう。
【選ぶポイント】
■ヘッドホンを利用する
イヤホンよりは、遮音性が高いのが、ヘッドホンです。特に開放型よりも、密閉型のほうがおすすめです。遮音性が高いほど、大音量にする必要がなくなります。
■イヤホンは耳栓タイプ(カナル型)を選ぶ
イヤホンは通常タイプ(インナーイヤー型)と耳栓タイプ(カナル型)の2種あり、耳栓型の方が耳にフィットし、遮音性が高いです。
これらの選ぶポイントを抑えて、イヤホンを選んだりヘッドホンに切り替えましょう。
遮音性の高いものを使用して、音楽を大音量で流すと、更に耳にダメージを与えるので、音量調整は大切です。
まとめ
■イヤホン難聴とは?
難聴とは、耳の機能が低下し、音が聴こえずらくなる病気です。
・イヤホン難聴の症状は?
イヤホン難聴になると、下記のような3つの症状が起こります。
- 両耳の聞こえが低下する
- キーンと耳鳴りがする
- めまいがする
・イヤホン難聴の兆候は?
- キーンと耳鳴りがする
- 少し聞こえずらくなったなと感じる
- 耳が詰まる感じがする
- ヒソヒソ話が聴こえずらい
- 雑音の中の音が聞き分けずらい
- テレビの音が大きいと言われたことがある
- 相手の言ったことを、推測で判断することがある
- 離れたところから人の呼びかけに応じにくい
- 複数の人と話すと会話がよく分からなくなる
- 耳の奥の痛みや頭痛を感じることがある
■イヤホン難聴になる原因は?
- 大きな音で聴く
- 長時間に渡って聴く
- 周波数の高い音を聴く
■イヤホン難聴5つの改善策とは?
- 適切な音量で聴く
- 耳を休ませる時間を作る
- 耳鳴りや耳が詰まった感じがしたら、イヤホンの使用を止める
- ノイズキャンセリング機能の付いたイヤホンを使用
- 遮音性の高いイヤホン、ヘッドホンを利用する
以上、イヤホン難聴に関するまとめはいかがでしたでしょうか。
イヤホン難聴は日々進行していく病気なので、気づかれない方が多いです。また、この病気の怖いところは、一度かかったらそのダメージは治らないということです。
難聴になる前に耳から危険信号が出ているので、それを見逃さずに、改善することが大切です。今回、少しでも心当たりがある方は、イヤホンの使い方の見直しと、、耳鼻咽喉科での検診をオススメします。