伝えたいことを言葉に変え、言葉を声に出して届けることで、初めて「会話」というコミュニケーションが生まれます。そして、会話中の声のトーンや抑揚は、言葉のニュアンスや、話しての印象を大きく変える力があります。「発音」も、その一つと言えるのではないでしょうか?
例えば、ビジネスシーンにおいて、言葉をはっきりと発音し、明確にものごとを伝えることは、踏まえておくべきビジネススキルとも言っても過言ではありません。
しかし、何らかの原因で、円滑な発音ができない「舌足らず」と言われるような話し方になってしまう人もいます。おっとり聞こえるその話し方に、可愛らしいと感じる人もいるそうですが、実は、健康面に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
そこで、ここでは、舌足らずの原因と、その改善方法についてご紹介いたします!
舌足らずになる原因は?
舌足らずは、単なる話し方の癖ではありません。どのような原因があるのか、早速見ていきましょう!
舌の力が弱い
舌の力が弱いとは、どういうことでしょうか?まず、鏡の前でチェックしてみてください。舌をまっすぐ前に出すつもりで、グーっと『前へ』伸ばします。
この時、舌先がちゃんと、床と平行に、前へ向かって伸ばせている人はOK!問題ありません。一方、横から見たとき、舌先が下へ向いている人は、舌の力が弱いと言えるでしょう。
口を閉じているときは、上前歯の根元あたりに舌の先がついており、上顎のカーブに、舌がくっついている状態が、舌の正常な位置です。しかし、舌の力が弱い人は、上顎に舌がつかず、ベタっと下におりています。
これを「低位舌」と言うのですが、このような状態では、舌がうまく動かせず、滑舌も悪くなるため、舌足らずな話し方をせざるをえなくなります。
それだけではなく、無呼吸症候群や、二重顎の原因にもなるのです。
舌癖
「舌癖」という言葉をご存知でしょうか?口を閉じているときに、舌を正常な位置に置けず、常に歯を押している「舌の癖」のことを舌癖と呼びます。
試しに、唾を飲み込んでみてください。舌先が、上前歯の付け根あたりから離れ、舌が歯を押し出すように動き、歯に触れてしまった人は、舌癖があると言えます。
人間は、1日に約1500回も飲み込む動作をしているので、舌癖のある人は、そのたびに歯を押しているということになります。その結果、歯と歯の隙間が広がったり、上下のかみ合わせが悪くなることで、その隙間に舌が入り、舌足らずな話し方になってしまいます。特に、サ行・タ行・ラ行・ナ行などが発音しにくくなる傾向にあるようです。
無意識に口を開けていることが多く、口輪筋も低下するため、口角が下がっていたり、口を閉じているのに歯が見えるというのも、舌癖のある人の特徴です。
口呼吸
実際に口呼吸をしてみると、わかりやすいかもしれません。舌が正常な位置(上顎にくっついている状態)にあると、呼吸ができないはずです。口呼吸をするためには、舌の力を抜いて、だらんと下に下ろさなければならないのです。これは、先ほど述べた低位舌の状態です。
呼吸は、常に行っていること…いわば「習慣」ですから、口呼吸をしていると、舌の力がどんどん低下してしまいます。
また、舌癖と口呼吸は密接に関係しており、舌癖によって歯並びや噛み合わせが悪くなり口呼吸になるケースが多く見られます。
口呼吸は、舌足らずの原因になるだけでなく、口臭や虫歯、歯周病にもなりやすくなり、身体に良くないことばかりなので、ぜひ改善したいポイントとも言えるでしょう。
舌の形
舌を上顎の方へめくると、舌裏の中央に「舌小帯」と呼ばれる細い筋が見えます。舌小帯が生まれつき短かっったり、肥満によって分厚くなっていると、舌の動きを制限するため、舌足らずの原因となります。
生まれつき舌小帯が極端に短い場合、いくらトレーニングしても、顎に負担をかけてしまうため、手術が必要になることもあります。実は、芸能人にも、発音・発声改善のためにこの手術を受けた人がいるそうです。
また、舌も身体と同じように太ります。ある時期から滑舌が悪くなったと感じる人は、体重が増え始めた時期と照らし合わせてみると、原因が明確になるかもしれません。
舌足らずを治す方法は?
生まれつき、極端に舌小帯が短い人を除き、舌足らずはトレーニングや、日頃の心がけによって改善することができます!声を出さずに、その場でできるものもあるので、ぜひ、読みながらチャレンジしてみてください♪
日頃の心がけにおいても、すぐに始められるものばかりです。それでは早速、見ていきましょう!
口を閉じて舌を動かす体操
①口を閉じた状態で、舌先を下唇の間に差し込むようにします。ちょうど下の前歯を舌が乗り越える感じです。
②舌先に力を入れ、舌を左右に動かします。力をいれたまま舌で歯をなぞっていくイメージです。中央から右端へ動かし、右端へ到達したらそのまま左端へ…これを3往復ほど行います。『じっくり、ゆっくりと動かす』ことが、ポイントです!
③下唇と同じ要領で、上唇と上前歯の間に舌を入れ、動かします。
このトレーニングは、舌の筋肉を鍛えるのに効果抜群です!継続して行うことで、ある日突然効果を実感する人が多いようです。
ガムを使ったトレーニング
今、ガムを噛んでいる人がいたら、舌を鍛えるチャンスです!舌全体を使って、口の中で、ガムを上顎に貼りつけるように、押し広げます。
均一な厚みになるよう、何度も、もごもごと舌を動かしてみてください。舌先側ではなく、舌の真ん中と後方を意識して動かすと、さらに効果的です。誤ってガムを飲み込んでしまわないように、十分気をつけながら行ってください。
「あえいおう」体操
「あーえーいーおーうー」というボインをはっきりと発音する、発声練習では代表的な体操です。しかし、舌を鍛える場合、とくに意識して欲しいポイントがあります。
それは、「あーえーいー」の発音。できるだけ口の形を変えず、舌の動きだけで、「あ」「え」「い」を言い分けるよう意識しましょう。これが、思いのほかなかなか難しいのですが、低位舌の改善に役立ちます。
そして、「おーうー」は口をしっかりと動かして発音しましょう。そうすることで、舌の力と、口周りの筋肉を同時に鍛えることができます。
ひとり言でこっそり練習
舌の力を鍛えるには、たくさん喋って、とにかく動かすことが大切です。そしてできるならば、はっきりと口や舌を動かすことを意識して話すのが理想的ですが、人との会話でそれを実践するのはかなり勇気がいることでしょう。
そこで、ひとり言をトレーニングに活用しましょう。お風呂に入りながら、今日の出来事や、感じたことを喋ってみるのです。喋る速度も、通常と同じ速さで構いません。
- 喉をしっかりと開く(母音の発音練習)
- 舌と唇をはっきり動かす(子音の発音練習)
この二点に注意して、喋ってみましょう。とくに、喉の奥を開くと、驚くほど言葉の輪郭がはっきりしてきます。
「スマートな口もと」を心がける
舌の力が弱い人や舌癖がある人は、口もとの印象がやや暗めです。口がポカンと空いていたり、唇が閉じきれていなかったり、口角が下がっているなど…本当は明るい性格なのに、その表情から、第一印象で真逆に捉えられてしまう可能性もあります。そこで、次の2点を心がけてみましょう♪
- 唇を閉じて、口角をあげる:口輪筋が鍛えられ、たるみの防止&改善にもなります。
- 舌を上顎につける:二重顎の予防&改善にもなります。
まるで、少し微笑んでいるような表情になるのではないでしょうか?上の2点を意識すると、その時点で、二重顎になる部分のお肉が喉へ引き寄せられるため、顔全体をスッキリ見せることができます。
さらに、口を閉じるので、口呼吸から鼻呼吸へシフトできるメリットもあります!スマートな口もとで、小顔効果&アンチエイジング効果も実感してみてください。
歯並びを改善する
とくに子音の発音では、歯と舌をぶつけて発音するものが多いため、サ行・タ行・ナ行の発音が舌足らずになってしまう人は、歯並びを改善するのも、一つの方法です。
正面から矯正器具が見えない「舌側ブラケット矯正」や、取り外しが可能な「マウスピース矯正」など、今は、昔より矯正方法の種類が多くなっているので、気になる人は、歯科医師に相談してみるのも良いかもしれません。
歯並びの改善は、舌足らずだけではなく、虫歯の予防、口呼吸や顔の歪みの改善など、様々なメリットがあります。改善費用は決して安いとは言えませんが、思い切ってチャレンジしてみるのも良いでしょう!
何より、笑顔が素敵になるというのが、一番のメリットと言えるのではないでしょうか。
ダイエット
最近は、太っていない人の無理なダイエットや、短期間での極端な減量が問題になることもあります。しかし、身体を動かすのが億劫になるほど太ったことを実感したり、健康を害すほどの皮下脂肪がついている場合は、やはり、ダイエットが必要です。
舌足らずな話し方が気になりだした時期と、太り始めた時期が重なる人は、余分な脂肪を落とすことで、舌の厚みも減り、言葉をはっきりできるようになります。
つい毎日ジュースを飲んでしまう人は、飲み物をお茶やジュースに変えたり、電車やバスですぐに座席に座ってしまう人は、立つように心がけるなど…生活スタイルを大幅に変えずとも、生活習慣を見直すことで、できることはたくさんあるはずです。
生活するうえで「必要ない癖」を治す感覚で、ダイエットをスタートさせると良いかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?舌足らずを改善すると、話し方だけでなく、たくさんのメリットがありますね。身体に対するメリットに限らず、はっきりと明確な発音は、その人に知的な印象を与えてくれます。
そして何より、「話すこと」を楽しめるのではないでしょうか。誰かに何かを伝えたい気持ち、そして、それが伝わる喜びは何ものにも代えられません。舌足らずから卒業し、人と話したくなるような口もとで、たくさんの人に会いに行きましょう!
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