湿潤治療とは?注意点や失敗しない方法を紹介!

皆さんは”湿潤治療”という言葉を聞いた事がありますか?昔は「傷には消毒液を付けて乾燥させなければいけない」という考えが主流でしたが、現在ではそれは逆効果という説も出ています。そこで新しく出てきた治療法が”湿潤治療”です。

この治療法は傷が早く治ると言われていますが、誤った治療をしてしまうと大変な事になる可能性もあるのです!今回は”湿潤治療”について詳しく見ていきましょう。

湿潤治療とは

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湿潤治療の考え

湿潤治療(湿潤療法)とは、擦過傷や熱傷などの皮膚潰瘍を治療する際に消毒液やガーゼを使用せずに完治を目指す事を言います。「消毒をしない」「水道水でよく洗う」「乾かさない」を3原則として治療を行います。モイストヒーリング・閉鎖治療・潤い治療などと呼ばれる事もあります。

湿潤療法の考えとしては、「ヒトには自己治癒力がある為消毒液などを使わずとも自然に傷が治る」というものです。傷口の治療を行うというよりも細胞を培養する様なものです。

  • 消毒液は傷のタンパク質と反応する事によって細菌を殺す効力がある一方で、再生していく人体の細胞を殺す効力もあるという事
  • 傷が乾燥する事によって再生していく細胞が死んでしまい、細胞の再生を遅らせる事
  • 軽度の擦過傷は浅い部分の組織には常在細菌に対する耐性が高いので、懐死組織や異物が見られなければ消毒をしなくても感染症になる事がほとんど無い事

この3つの点に注目され湿潤治療が考案されました。

怪我をすると傷口から血ではなく透明な液が出てきた経験はありませんか?それは浸出液といって血液中の血漿成分からなる薄黄色の液体の事で、細胞培養液が含まれているので傷口を再生させる作用があります。傷口に消毒液を付けることによってその浸出液も一緒に消毒されてしまい自力で再生するのを遅らせてしまうのです。そうならない為に消毒液を使わず治療します。

傷が渇くとカサブタになります。カサブタになると中にばい菌を残したまま蓋をしてしまうので傷が化膿してしまい傷跡が残りやすくなります。そうならない為に乾かさずに治療します。

どういう治療を行うのか

湿潤治療はいたって簡単な手順で行えます。

1.傷口を綺麗な水でよく洗い流します。

土やホコリなどが付いている場合は擦らず優しく洗い流して下さい。傷の中に何か異物が入っている場合は無理矢理自分で取らずに病院に行くようにし湿潤治療を止めましょう。

また、出血が多すぎる場合も自分で治療するのは危険なので止めましょう。

2.傷口に創傷被覆材を装着します。

出血が治まったら傷口に装着しましょう。家庭にあるものでラップなども使用可能ですが市販でも湿潤用が売られています。装着する前に保湿目的でワセリンなどをラップに塗ってから行うと乾燥を防ぐので良いです。

3.創傷被覆材を暫く貼ったままにします。

傷が完治するまで続けて下さい。傷の色がピンク色になり新しい皮膚が出来ます。そうすると痛みが無くなり完治した合図になります。新しい皮膚はしみになりやすいので紫外線は避けるようにして下さい。

4.創傷被覆材から浸出液が染み出てきたら取り換えるサインになります。

これを繰り返し行っていく簡単な治療です。この治療を行っている時は消毒はしないでください。また、カサブタが出来てしまうと湿潤治療になりませんので、創傷被覆材の交換以外に空気に触れさせないようにして下さい。

湿潤治療のメリット

痛みを感じにくい

消毒液を浸かって治療する際に多く使用されるガーゼですが、傷が渇いてガーゼと傷口がくっつき剥がす時にとても痛いという経験ありませんか?湿潤治療ではガーゼを使わないので痛みを感じる事がありません。また、空気に触れる事が無いので痛みを感じる事が少なくなります。

カサブタが出来ない

カサブタが出来るとついつい弄ってしまいたくなりますよね。弄るつもりが無くてもに服などにカサブタがひっかり、剥がれて出血をしてしまう事もあります。カサブタを無理に剥がしてしまうと傷跡が残る原因になります。

しかし空気に触れる事が無い湿潤治療はカサブタを作らないので、綺麗に傷が完治します。

傷の回復が早い

消毒液を使った治療の場合は滲出液を

湿潤治療をする時の注意点

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湿潤治療には失敗する場合も少なくないので行う場合は気を付けなければいけません。

湿潤治療の問題点

一時期、湿潤治療(ラップ療法)が流行り雑誌やテレビなどで取り上げられた際に適応を誤った時の危険性に触れず、治療法を推した為に色々な問題が起きたと言われています。トラブルとしては「敗血症」や「感染症」を引き起こすといったものになります。

学会によると、熱傷治療に精通していない医師がラップ療法を行い、未熟な管理を行った結果、感染症を生じたり、敗血症を起こして死亡したりする例が報告されているという。

引用元:https://www.m3.com/open/clinical/news/article/161526/

医師が治療したにも関わらず、トラブルが起こり死亡してしまった例があるようです。本当に自分で判断して安易に湿潤治療を行って良いのでしょうか?

判断を誤ったり間違った方法をしてしまうと傷口が腐り、脚を切断したり重度の感染症になったりする事例があります。

●細菌感染して化膿する

化膿は傷口に細菌が感染した時に起こります。傷口を水で洗う際に綺麗に洗ったと思っていても落とし切れていなかったり、家庭に置いてあるラップに知らないうちに菌が付いていて、その菌と一緒に傷を覆ってしまうと感染症を引き起こす可能性があります。

細菌が全身に回ると菌血症や敗血症に

菌が入っている事に気付かずに治療を続けていると、細菌が全身に回ってしまい高熱や意識障害を起こす菌血症や敗血症を引き起こす可能性があります。

菌血症とは、無菌である血液中に細菌が入り込んでしまう事をいいます。敗血症と同じと思われている人がいるようですが敗血症は、感染を原因として全身に炎症が起きる状態の事で菌血症は、細菌が血液中に存在する状態の事です

菌血症は放置していると細菌性髄膜炎や感染性心内膜炎などの病気になってしまうので、早めに治療する必要があります。症状は普通出ませんが乳幼児ですと38度以上の高熱が出る場合があります。

敗血症とは先ほど述べた通り全身に炎症が起きる状態の事です。命に関わる臓器障害が起きるので緊急で治療する必要があります。

湿潤治療をしてはいけない傷

湿潤治療はどんな傷にでも有効なわけではありません。

「深い刺し傷」「噛み傷」「凹凸が激しい傷」「広範囲の傷」「水膨れがある傷」「感染症のある傷」「滲出液が出ていない傷」

これらの傷には湿潤治療は向いていないだけでなく、傷を悪化させてしまう可能性が高くなるので注意しましょう。

湿潤治療を失敗しない為に

●自分でする時は軽い傷だけにしましょう!

いくら簡単に治療が出来ると言っても限界があります。大きな傷や損傷の激しい物はしっかり病院で治療してもらいましょう。

●一番最初の洗い流しを十分に行いましょう!

軽い傷と言っても甘く見てはいけません。傷口は綺麗に洗い流して菌が傷口に残らないようにする事が大事です。

医療用の創傷被覆材以外は使わないようにしましょう!

家庭にある食用品ラップを使用すると、そこに付着した菌が侵入する可能性があるので開封して暫く経っている物は使用しないようにして下さい。新品のラップであれば菌が付着する可能性が低くなりますが、医療用の物が一番安全です。

●治療中に問題が発生したらすぐに中止しましょう!

治療中に痛みや痒みなどが出てきたらすぐ治療を中止して、病院に診察に行ってください。

傷に良い食べ物がある?

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早めに傷を治す為に食事に取り入れたい栄養素があります。何もせずに湿潤治療だけ行うよりも、体の内部からも早めに傷が再生するようにサポートしてあげましょう。

※効果には個人差があります。

皮膚の再生を助ける食べ物

●亜鉛

皮膚や細胞の再生を促進させる効果が期待されます。ケラチン組織という皮膚の組織が丈夫にしてくれます。「牡蠣」「そら豆」「ごま」「卵」「アーモンド」「大豆」などに多く含まれます。

●ビタミンB

ビタミンB群の中でもB2・B6・B12は皮膚粘膜が炎症を起こしている時に健康に再生する効果が期待されます。「レバー」「納豆」「チーズ」「ごま」「たらこ」「牡蠣」などに多く含まれています。

皮膚を強くする食べ物

●ビタミンA

皮膚粘膜を傷付かないように強くする効果が期待されます。「レバー」「牛乳」「うなぎ」「ほうれん草」などに多く含まれています。

●ビタミンE

過酸化脂質が出来ると細胞が壊れやすくなってしまうので、過酸化脂質が出来ないように摂取すると良いとされています。「かぼちゃ」「ほうれん草」「アボガド」「すじこ」などに多く含まれています。

傷を早く治す食べ物

●ココア

ココアは病原菌を抑える効果が期待されていて、傷が早く治ると言われています。実際に毎日ココアを飲んでいる患者さんの傷が早く完治していると報告があります。

●ビタミンC

ビタミンCにも傷を早く治す効果が期待されます。「レモン」「キウイフルーツ」「グレープフルーツ」「ほうれん草」などに多く含まれています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。家庭でも簡単に行える治療なので軽く手を出してしまう治療法ですが、傷の種類や誤った治療法で取り返しの付かない程に悪化してしまうんですね…。自分で行う事に不安がある方はしっかり病院で診てもらうようにしましょう。

  
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