印環細胞癌ってどんな癌?スキルス胃がんとの違いや治療法を知ろう!

印環細胞癌という名はよく知られていません。見つかりにくい形で消化管にバラバラ散在するタイプの癌です。この癌の予後は一般に良くないと言われ、宣告を受けた方は失意の底に沈むと伝えられます。しかし、末期症状の癌というわけではありません。

事実、寛解に至る方もいらっしゃいます。むやみに目をそらしてしまう時間はありません。印環細胞癌について正しく知ることで、必要な治療を受ける時期を逃さずにすみます。

印環細胞癌の特徴

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印環細胞癌、この変わった名前はどこからくるのか、それは一体どういうものかについてご説明します。普通、癌と名がつけば身体の部位の名称や臓器の名がつきます。

もちろん、それも細胞レベルの癌化ですから違和感ありません。わざわざ、細胞癌というあたりに違和感を感じる方は多いと思います。しかし、この名称は他の癌と分けるだけの意味があるのです。

印環細胞癌の名の由来

さきほどもお伝えしたように、癌はだいたい存在する部位の名称に由来します。印環細胞というのは、従来の解剖学名称ではなく、病理学的な名称です。電子顕微鏡で発見できるもので見た目では分かりません。

消化管の粘膜上皮を内視鏡で採取し、病理検査で彩色すると癌細胞が細胞膜の周りに着色して出てきます。細胞は円形なので、癌細胞が細胞膜を縁取る形で滲み出てくる様がリング状なのです。全体的ならリングには見えませんが、散在するので環がくっきりと際立ちます。

癌細胞が環状の印鑑を押したように見えるので、印環細胞癌とよびます。

発生しやすい部位

消化管全体に可能性があるとはいえ、圧倒的に胃が好発部位です。各消化管別の印環細胞癌については後で詳しくご説明しますので、ここでは大まかな傾向についてお話しいたします。

胃癌には一般的に11種あるといわれています。乳頭腺癌・管状腺癌・高分子型・中分子型・低文化腺癌・充実型癌・粘液癌・腺扁平上皮癌・扁平上皮癌・カルチノイド癌そして印環細胞癌です。これは世間でよくいわれるステージ分類でなく、組織型の分類です。

大腸で発生する印環細胞癌は珍しいとされています。全結腸癌の0.2~2%で、胃に比べるとほんのわずかといえます。大腸印環細胞癌の特徴は40代の発症が多く、癌年齢としては若年層といえます。男女比に差はありません。

胃と違って構造が長いので、患部の表面積はとても広いものになります。ここから転移すると周辺の臓器全体に影響を及ぼすので、問題は深刻になります。検査の方法も胃ほど選択肢はありません。ただでさえ早期発見の難しい性質なのに、大腸という構造が更に難易度を上げます。

直腸に関しては、更に稀な病気です。印環細胞癌の発生率は0.2~0.5%とされているもののデータを取るほどの病例がないくらいです。

印環細胞癌とは

発生する原因が不明で、自覚症状がありません。何らかの異常で受診した時には、他の癌に似た状況で見つかります。印環細胞癌そのもので何か痛みや苦痛があるわけではありません。これが早期受診ができなくなる大きな理由です。

低分化腺癌や印環細胞癌というのは文化度が低く、元の正常な細胞の形を維持できません。形のクッキリしたものや盛り上がりをみせるようなものなら認識できやすいのですが、粘膜の下にベタッとあって、なおかつバラバラ散在しています。

悪性度が高く、進行が速いと言われるのは、早期発見しにくく広範囲に存在するからです。早期発見できなければ生存率も高くなりません。

他の癌と混じって発見されることもあります。印環細胞癌そのものが悪化した場合もあれば、他の癌が独自に進行していて、同時並行もあり得ます。この場合、粘膜上皮と胃壁の二重に癌を持つことになり、治療法の選択も難しくなります。

生存率は個人差があるとしかいいようがありません。現在の癌の余命算出はステージで分類されます。しかし、印環細胞癌だけでステージを計るということができないので、統計がありません。生存率に関しては、病理的に分類された印環細胞癌でなく、消化器系の癌として、また転移した癌などから複合的に判断されるからです。

印環細胞癌はスキルス癌と同じように見なされ、時に混同されますが本来は違うものです。粘膜上皮に上がらず、胃壁の下で増殖するなど似た点もありますが、その後のありかたが違います。

骨やリンパなどに転移してしまうと、生存率は一気に低くなります。このあたりがスキルス胃癌と何となく似ているのかもしれません。難易度が似ているだけで、本来の成り立ちが違うので混同しないように気を付けましょう。

印環細胞胃癌とスキルス胃癌の違い

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消化管の腺癌が印環細胞癌であるとお伝えしました。発生する場所で発生率が大きく変わるので、同じ印環細胞癌であっても部位によって特徴が違います。逆に同じ場所でも、似て非なる癌もあります。印環細胞癌とスキルス胃癌が同じものという間違った認識も、修正したいところです。スキルス胃癌というのは知名度のある癌ですが、印環細胞癌と混同されるとすれば、スキルス胃癌も実はよく知られていないということでしょう。

印環細胞胃癌

スキルス胃癌と同じように予後不良と警戒される癌です。粘膜上皮に異常なく、レントゲン所見では発見できません。胃壁の下に勢力を伸ばし、しかも散在して1か所に留まらないため、大きな範囲を患部として想定しなくてはなりません。

もし、印環細胞癌だけで発見できたなら、それは早期発見といえます。定期健診で胃カメラを飲んで組織検査したり、PET検査、CTなどで発見できたら予後は良好です。

しかし、だいたい印環細胞癌は他の癌細胞組織と共に悪化した状態で見つかり、従って悪性度が高いのです。形が定まらず、組織の形状に柔軟に適応して増殖する、というのが拡大速度を上げているので、発見した時には既にかなりの量になっています。

もともと粘膜上皮になく深度の深いところで根を張るので、飛び石のように横に張り出すだけでなく、深部組織への転移も早いのです。

印鑑細胞癌の転移症例として、腹膜播種というのがあります。腹膜にまるで種を播いたかのようにバラバラと散らばる転移の方法です。腹膜には血管や神経が通っているので、そうなるよ非常に厄介です。

腹膜幡手が考えられる時、手術前に腹腔洗浄細胞診という検査をします。生理食塩水で腹腔内を洗浄し、その液体を回収して生理検査を行います。血行性転移や腹膜幡手の場合、もう手術だけでは治療できない場合があります。

自覚症状がないまま発見できたとして、内視鏡で一部だけ取るだけでは、対策になりません。胃の上部に発生しやすいので下部まで癌細胞が散在していると考え、胃の全摘出を勧められます。

外科的処置としては、開腹手術か腹腔鏡による胃の切除が一般的で、転移が多いと化学的療法が選ばれます。

スキルス胃癌

このスキルス、とは「硬い」という意味です。俗に硬癌と呼ばれますが、胃の組織が硬化して硬くなります。

よく印環細胞癌と同じように考えられて、告知されると患者は家族もろともショックが大きいのですが、そもそもの成り立ちが違います。

確かに印環細胞癌もスキルス胃癌も、粘膜上皮に上がらず胃壁に沿って広がります。早期発見しにくい、見つかった時は組織に深く浸透して転移しやすいという意味では共に難易度が高いものです。

印環細胞癌が細胞そのものの癌化であるのに対して、スキルス胃癌は、癌細胞をつなぎとめるヤドヘリンという物質がないために大きく盛り上がらず、水を撒いたように底辺で広がるのです。

最終的には組織が線維化して硬くなります。このため、検査では胃カメラで器質を調べるだけでなく、バリウム検査もして胃の動き方も観察するのです。

印環細胞癌が早期の姿であるのに対し、スキルス胃癌は末期症状に近く、そのため予後の悪い癌として知られています。11種類ある胃癌の中で約1割を占めるので、決して少ないとは言えません。

スキルス胃がんについては、スキルス胃がんの症状とは?特徴や原因、治療方法を紹介!

早期発見の方法と治療法

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最近の癌は検査方法が簡単で、安価なものが普及しました。病院でもネットでも、昔のように痛い思いや不快な目にあって、いわゆる検査倒れするようなことは減ったと思います。ここで新しい問題として、誤診とは言えないまでも、一部の検査だけで安心してしまうケースもあります。

定期的な生体検査

よく最近は高齢者の間で、マーカー数値という言葉を聞くようになりました。これで全ての癌数値が表示されているかのように解釈されている方も少なくありません。

胃癌はマーカー数値では出てきません。胃カメラで粘膜上皮を観察し、生体組織を採取して病理検査に出す、これが胃の器質的な検査です。表面に現れる癌に対しる早期発見が、極めて容易で極小サイズならその場で取り切れます。

粘膜の表面に出てこない、印環細胞癌やスキルス胃癌であっても、細胞の採取と病理検査で大きな診断材料となります。

自覚症状を目安にしていては危険です。一応、傾向を知っておくのは重要ですが、胃癌の自覚症状といわれる胃痛や不快感、貧血や黒便がないから大丈夫と安心してしまうことは早計なのです。

知識が逆に不利益を生むケースとなりかねません。

同じ病院ばかりで検査しない

ついつい、いつものかかりつけ医で検査しがちです。国もそうあるべきを推奨していますし、常態を知る医師の存在は重要です。

しかし、医師も同じ人間ばかりでは慣れが出ます。先入観で診てしまう可能性もあります。これもまた、別の意味で知識が逆に不利益を生むケースです。

全く初対面の医師なら不審に思えることでも、かかりつけ医では知りすぎて様々な解釈をしてしまい、発見が遅れることもないことはありません。

まとめ

癌の早期発見は、ご縁ともラッキーともいえるものです。これだけ医学が発達しても、いつも検査しているのに分からなかった、という話は絶えません。問題は、癌の告知をされた後のご本人とご家族の理解です。印環細胞癌と言われただけで、末期宣告されたような感じになるのではなく、印環細胞癌が発見されたこと自体が早期にあたるので、治療できる方法があるという視点に立って勇気を出してほしいものです。

  
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