既視感(デジャヴ)とは?そのメカニズムや感じやすい人の特徴を紹介!

初めて会った人なのに以前にも会ったことがあるような気がしたり、初めて行った場所なのに何故か以前に来たことがあるように感じられる、という不思議な体験をした人は少なくないはずです。

このような初めての経験であるはずなのにもかかわらず、過去に経験したことであるかのように感じることを、既視感(きしかん)あるいはデジャヴ(デジャビュ)現象と言います。

誰もが疑問に感じると思いますが、どうして人間は既視感やデジャヴ現象といった不思議な感覚に陥るのでしょうか?そこで今回は、このような既視感・デジャヴ現象の発生メカニズムや感じやすい人の特徴などについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。

既視感とは?

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そもそも既視感とは、どのような感覚のことなのでしょうか?既視感やデジャヴという言葉を目にしたことがあっても、その言葉の意味を改めて調べたことのある人は多くないと思います。

そこで、まずは既視感・デジャヴという言葉の意味について、ご紹介したいと思います。

既視感とは?

既視感(きしかん)とは、実際には一度も経験・体験したことが無く初めての経験・体験であるはずなのにもかかわらず、過去に経験・体験したことであるかのように感じることを言います。

既視感は、フランス語でdejavuと表記され「デジャヴュ」と発音されます。また、フランス語に由来する英単語もdejavuと表記され「デジャヴ」あるいは「デジャブ」と発音されます。これらの「デジャヴュ」・「デジャヴ」・「デジャブ」は外来語(カタカナ語)として日本でも定着しており、既視感と同じ意味あるいは類語として用いられます。

既視感やデジャヴという言葉は、日常会話の中でも使われるほど一般化している一方で、心理学の関連用語としての側面も持っていますが意味するところに変わりはありません。

未視感

ちなみに、このような既視感・デジャヴの対立概念を未視感(みしかん)と言います。すなわち、未視感とは、普段から見慣れているにもかかわらず、初めて目にしたかのように新鮮で未知のものとして感じることを言います。未

視感は、既視感・デジャヴほど世の中に広く定着している言葉・表現とまでは言えませんが、フランス語でjamais vuと表記され「ジャメヴュ」と発音されます。

多くの人が感じる不思議な感覚

既視感・デジャヴは、とても不思議な感覚あるいは違和感であって、ほとんどの人が人生の中で1度や2度は感じたことがあると言っても過言ではないでしょう。

例えば、初めて会った人なのに以前にも会ったことがあるような感覚に襲われるのが既視感で、具体的には「どこかで見覚えのある顔なのに、会った場所や日時が全く思い出せない」といったようなモヤモヤした気持ちや違和感が残ります。

また、初めて訪れた場所なのに何故か以前に来たことがあるような感覚に襲われるのが既視感で、具体的には「海外旅行は初めてなのに、その海外旅行先の風景や光景を目にした途端に、頭の中で同じような風景や光景の記憶が鮮明に浮かんでくる」といった非常に不思議な感覚が残ります。

過去に経験や体験したことならば、脳内で思い出のシーンや場面の記憶が蘇ってきても不思議ではありません。しかしながら、既視感の場合は、明らかに過去に経験や体験していないにもかかわらず、過去の記憶が蘇るかのような錯覚に陥るのです。

このような正体不明の不思議な違和感である既視感・デジャヴは、健常者であっても好発することが珍しくなく、調査対象者の約7割が既視感を感じたことがある、つまりデジャヴ経験があると回答した調査もあるほどです。

既視感の発生メカニズムについて

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このように既視感は、実際には一度も経験・体験したことが無いのにもかかわらず、過去に経験・体験したことであるかのように感じられることを言い、多くの人が感じたことのある不思議な感覚です。

それでは、このような既視感・デジャヴは、どのようなメカニズムで現れるのでしょうか?

既視感の発生メカニズムは未解明

実は、既視感・デジャヴが心理学(認知心理学)や医学(脳神経学)などで研究対象として目を向けられたのは、20世紀後半に入ってからです。そして、既視感・デジャヴを研究するに当たっては、そもそも既視感・デジャヴの実験での再現性が乏しいため、実験を通じた客観的かつ科学的な研究方法も確固としていません。

このように研究対象としての既視感・デジャヴについては、学問的な知見の蓄積が浅いことと、そもそも既視感・デジャヴを実験で再現することが難しいことが理由となって、思うような進展はありません。ですから、既視感・デジャヴの発生メカニズムについても、現状では未解明であり謎のままなのです。

それでも、既視感・デジャヴについて、様々な角度から解き明かそうという試みが為されています。

既に見た夢

19世紀後半から20世紀前半にかけて精神分析学を創始した精神科医で心理学者のジークムント・フロイトは、既視感・デジャヴとは無意識のうちに既に見た夢だと言っています。

そもそも夢は睡眠中に無意識的に見るものですから、意識的に思い出そうとしても思い出せるものではありません。無意識的に見たものを、意識的に蘇らせることは非常に困難です。

ですから、過去に無意識的に見た夢が頭の中に蘇ったものが既視感・デジャヴであり、その既に見た夢の内容について深く思い出せないのも当然だとするのです。

予知夢・前世記憶

前述のように既視感・デジャヴは、未だ客観的かつ科学的に解明されているわけではありません。それゆえ、超心理学的なアプローチから、予知夢や前世記憶などと関連性を求める見解も存在します。

超心理学とは、現在の自然科学では説明ができない現象について研究する学問とされ、テレパシー・予知・透視・念力など、いわゆる超能力を研究対象とします。超心理学の中には、科学的な手法を用いて解き明かそうとするグループもあれば、神秘性やオカルト要素に傾斜するグループもあるので、超心理学に対して懐疑的な見解も多く存在しています。

そのため、既視感・デジャヴについても予知夢や前世記憶などとの関連性を強調する見解が存在するものの、その信ぴょう性の低さから多くの懐疑的な批判が寄せられています。

心理学や医学の見地からの仮説

心理学や医学的な見地からは、フロイトの見解にしても、超心理学的な見解にしても、既視感・デジャヴと夢を関連づけることには無理があると考えられています。というのも、既視感・デジャヴとして感じるような夢を実際に見ていたのかすら証明することができないからです。

そして、心理学や医学的な見地からは、既視感・デジャヴを説明するための複数の仮説が立てられています。

過去の記憶との混同

既視感・デジャヴを説明するための仮説の一つとして、過去の記憶との混同が挙げられます。

そもそも物事や出来事の記憶については、物事や出来事を体験した瞬間の印象が最も強く残り、その物事や出来事を体験した日時や場所などの周辺情報は曖昧になりがちです。すると、その強く残った印象と同じような場面に遭遇した場合に、その印象に引きづられる形で周辺情報も同じように一致したものと脳が錯覚・混同してしまうと考えられるのです。

例えば、初めてハイキングに行った山頂から見た山岳風景を見て既視感を感じた場合、過去にテレビ番組で見た山岳風景に心打たれた体験があり、テレビの中の「山岳風景」の印象が強烈に残っていた一方で、「テレビ番組で見た」という周辺情報は曖昧になっていたと考えられるのです。そして、実際にハイキングで見た山岳風景の印象と過去のテレビで見た山岳風景の印象に類似性があって合致したことにより、テレビで見たという曖昧な周辺情報が過去に経験したかのように補正・混同され、最終的に過去に経験したという思い込みに至ると考えられるわけです。

ですから、何らかの過去の記憶と現在の認知との間で、物事や出来事の瞬間的な印象に類似性がある場面に遭遇した際に、記憶の周辺情報に混同が生じて錯覚が生じることにより、既視感・デジャヴが生じると説明するのです。難しく言うと、過去の記憶と眼前の光景の類似性による記憶の自己組織化と説明されます。

瞬間的な二重の認識の発生

瞬間的に複数の神経ルートから同じ認知信号が送られ、その認識のタイムラグによって既視感・デジャヴが発生すると考える仮説もあります。

物事や出来事が脳で認識され記憶に至るには、視覚や聴覚などの感覚として認知された情報が神経信号となって神経系を通じて脳に送られます。そして、脳は送られてきた様々な神経信号を総合して特定の認識を形成し、その認識が脳で記憶されるに至ります。この認知から認識して記憶する過程では、理論的に人間では感じ取れないほどの極小のタイムラグが発生すると考えることができます。

それゆえ理論的に考えると、この極小のタイムラグの間に、別の神経ルートを通じて同じ情報が脳に伝わり、一瞬のうちに脳内で同じ認識が二重に発生すると考えることもできるのです。つまり、極小のタイムラグの間に、脳内では瞬間的に二重の認識が発生して、その二重の認識が瞬時に繰り返し現れることによって、既視感・デジャヴが生じると考えるわけです。

この仮説の見解は、とてもテクニカルで理論上の仮説に過ぎないかもしれませんが、既視感・デジャヴが生じる原因・発生メカニズムとして十分に可能性があるものと言えるかもしれません。

自分の予想イメージとの結合

既視感・デジャヴを説明するための仮説として、頭の中で自分自身が想像や予想したイメージと現実の世界とが結合する、と説明する見解もあります。

人間の頭や心の中は、私達が考える以上に創造性に富んでいて、様々な想像や妄想が繰り広げられます。また、物事の進み具合を先回りして予想・予測する能力に長けている人もいます。

それゆえ、このような想像力が拡大していくと脳内に写真画像や映像のような具体的なイメージが記憶されたり、物事に習熟すると一瞬先のイメージが予想・予測できたりするようになります。そして、そのような想像や予想されたイメージと現実の世界における認識が類似すると、想像や予想のイメージと現実の認識が結合して既視感・デジャヴが生じると考えられるのです。

この点、頭の良い人ほど既視感・デジャヴを感じやすいという研究報告データが存在します。知識が豊富であれば、より具体性のあるイメージを想像することができますし、頭の回転が早ければ、人よりも一瞬先のイメージを予想しやすいのかもしれません。

このように頭の中で自分自身が想像・予想したイメージと現実世界における認識が類似して重なると既視感・デジャヴが生じるという仮説も、あながち間違った見解・解説とまでは言えないでしょう。

既視感を感じやすい人の特徴

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このように既視感・デジャヴについては、様々な角度から解き明かして説明しようという試みが為されていますが、実際のところは既視感の原因やメカニズムは未解明なのが現状です。

一方で、既視感・デジャヴを多くの人が感じたことがあるのも事実です。それでは、既視感・デジャヴを感じやすい人には何か共通性があるのでしょうか?

そこで、既視感・デジャヴを感じやすい人の特徴について、ご紹介したいと思います。

若者ほど感じやすい

前述したように既視感・デジャヴが研究対象となったのは最近のことですが、それでも心理学や医学的見地から様々な調査や研究が行われています。

その中のある調査では、調査対象者の約7割が既視感・デジャヴを感じたことがあるとし、調査対象者の年齢では若い人ほど好発していて、年齢を重ねるに連れて既視感・デジャヴを感じなくなることが明らかになっています。

この点、子どもの方が既視感・デジャヴを感じやすいのかというとそうではなく、調査によると年齢的には思春期の15才程度から成人の25才程度が、最も既視感・デジャヴが好発する年齢層のようなのです。

ただし、思春期未満の子どもに既視感・デジャヴという概念を理解させて調査結果を得るには、理解力・言語力などの点で困難さが伴います。それゆえ、もしかしたら子どもの方が、既視感・デジャヴを感じているのかもしれません。このあたりにも、既視感・デジャヴの研究方法の難しさが感じられます。

いずれにしても、思春期以降の人間に限定すれば、25才程度までの若者ほど既視感・デジャヴを感じやすく、25才あたりを境界線として年齢を重ねるほど既視感・デジャヴを感じにくくなっていくとされています。

旅行好きの人は感じやすい

ある調査では、既視感・デジャヴを感じることと旅行をする頻度に相関性があるとの指摘がなされています。つまり、既視感・デジャヴを感じやすい人は、既視感・デジャヴを感じにくい人に比べて、旅行好きで旅行に行く回数・頻度が多いのだそうです。

たしかに、旅行をするということは、普段の自分の行動範囲の外に出ていくわけですから、新たな体験・経験が多く得られます。新たな体験・経験が多くなれば、過去の記憶との混同にしても、認識の二重発生にしても、自分の予想イメージとの結合にしても、既視感・デジャヴを発生させる機会が増えることを意味します。

ですから、既視感・デジャヴを感じることと旅行をする頻度に相関性があるとの調査報告については、一般の人も非常に納得のしやすいものだと言えるのではないでしょうか。

ストレスとの関係性

別の調査では、既視感・デジャヴを感じた人は、既視感・デジャヴを感じる直前に強いストレスを受ける状況に置かれていたケースが多い、との指摘もされています。そのストレスとは、精神的なストレスだけにとどまらず、肉体的なストレスも含まれるようです。

いずれのストレスであっても、強いストレスの下に置かれれば、自律神経が不調に陥ったり、脳の機能低下が生じることは、医学的には既に明らかになっています。このような脳の機能低下や神経活動の低下が進めば、脳の記憶について何らかの異常が起きても不思議ではありません。

ですから、日頃から強いストレスに晒されている人は、既視感・デジャヴを感じやすい人であると言えるかもしれません。

まとめ

いかがでしたか?既視感・デジャヴ現象の発生メカニズムや感じやすい人の特徴などについて、ご理解いただけたでしょうか?

たしかに、既視感やデジャヴといった言葉や概念は、日常生活の中でもよく使われ、社会的にも広く定着していると言えるでしょう。しかしながら、既視感・デジャヴという現象の原因や発生メカニズムについては、現在の科学技術をもってしても未だ解明には至っていません。というのも、既視感・デジャヴという現象を、実験において再現することができないからです。

このように既視感・デジャヴという現象は、感覚的にも不思議な体験なのですが、現在の自然科学ですら仕組みが分からないという意味でも不思議な現象なのです。

  
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