「○○で痩せる!」「○○ダイエット」など、世の中のダイエット旋風とも言うべき“スリム志向”は、留まる気配を見せません。雑誌を開けば、必ず「痩せる」「体型を変える」といった、ダイエットに関する記事が掲載されていると言っても、決して過言ではないでしょう。
世の中の女性、あるいは男性までもが、少しでもスリムに、美しくなろうと努力をしています。若い世代層をターゲットとするアパレルメーカーでは、以前では考えられないような、小さなサイズ展開の洋服を生産しているところもあるようです。
しかし、その一方で、痩せすぎの女性が増えていることが、深刻な問題にもなっています。生まれつきの体質で太れない女性や、何らかの病気が原因で痩せすぎている場合など、いろいろなケースがありますが、度が過ぎると、健康にも悪影響を及ぼすことがあるのです。
そこで、ここでは、痩せすぎると生じる様々な問題や、改善方法をご紹介いたします。
痩せすぎの基準とは?
平成26年度に厚生労働省が発表した、国民の健康と栄養における調査によると、いわゆる「痩せ型」と呼ばれる体型だと判定される人は、男性で5%、女性はなんど10.4%にも昇るという調査結果が出ました。とくに、女性は年々増加傾向にあり、20代の女性では6人に1人が痩せ型だと言われています。
しかし、現在、このような傾向が生む「痩せすぎの女性の増加」は、社会問題にもなっており、海外では、痩せすぎの女性をモデルとして雇用することを禁止する法律が、制定されたほどです。
では、痩せすぎか否かを判定するには、どのような基準があるのでしょうか?早速見ていきましょう。
BMI指数値の基準
ダイエットをしたことがある人ならば、「BMI指数」という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。
BMI指数とは、身長と体重から、その人の肥満度を示した指数で、世界保健機関(WHO)や米国国立衛生研究所(NIH)などでも用いられている、国際的な基準として知られています。
日本では、BMI指数が18.5未満を「低体重=痩せすぎ」とすることを、日本肥満学会が定義しています。
BMI指数は、【体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)】という計算式で算出することができます。痩せていることが、美しくあるための最低条件のように認識されている現代では、意外と簡単に18.5を下回る人が多く、標準値とされる22前後の場合は、ぽっちゃりだと言われることもあるようです。
自分のBMI指数を改めて計算し、客観的に自分の身体について、見つめ直す必要がありそうです。
現代の男女が思う「痩せすぎ」の基準
ダイエット志向の強い現代ではとくにそうですが、女性にとっての「痩せている=スタイルが良い」という基準は、男性にとって「痩せすぎ」に類することは珍しくありません。
- 脂肪が少なすぎて肋骨が出ている
- すでに細めに作られているSサイズの洋服や、スキニーパンツが緩い
- メリハリがなく、手足が棒のように細い
など、以上のような女性に対しては「痩せすぎ」という印象を抱くようです。女性らしい曲線には、胸の膨らみやお尻の丸みが欠かせません。
しかし、テレビや雑誌などで人気の芸能人の中には、上記の項目に当てはまる人も多く、その人たちを「可愛い」「綺麗」の基準にしてしまうと、痩せすぎが美の基準になってしまいます。
日常生活で感じる「身体の重さ」
よく、「太ると身体が重く感じる」という言葉を耳にしますが、これは、痩せすぎの場合においても同様です。ぽっちゃりと呼ばれるような、ふくよかな女性でも、健康であれば身体が軽く感じ、休みの日にはアウトドアを楽しんだり、買い物に行くなど、生活を軽やかに過ごすことができます。
しかし、痩せすぎの人の場合、体力の消耗が激しいため、太ったときと同じように身体が重たく感じることがあります。
ストイックにダイエットに取り組んで、急激に体重を落とした人などで、痩せたのに身体が重たく感じる場合は、痩せすぎの可能性があります。もう一度、自分のダイエットについて見直してみましょう。
痩せすぎの原因は?
では、痩せすぎてしまうのには、どのような原因が考えられるのでしょうか?痩せすぎの女性たちには、本人が痩せすぎであることに気づき、悩んでいる場合と、本人が気づいていない場合があります。
なぜそのようなことが起こるのかは、原因を見ると、明確になってきます。
偏った食生活
本人が痩せようという意識がなくても、痩せてしまうことがあります。いえ、痩せるというよりは「やつれる」と述べたほうが正しい表現かもしれません。
例えば、仕事の忙しさにかまけて、インスタントラーメンばかり食べたり、甘いものが好きだからと、お菓子などを食事の代わりにしている場合、圧倒的な野菜不足に陥ります。
これだけ聞くと、カロリーはしっかり摂取しているように感じる人もいるかもしれませんが、私たちの身体が機能を果たすためには「必須栄養素」というものが必要です。
タンパク質や炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラルなど、これらの栄養素をバランスよく摂ることで、一つの栄養素がほかの栄養素と手を組んで、身体に吸収されます。
しかし、偏食をしていると、ある栄養素を摂取しても、それを吸収するための栄養がないため、身体に吸収することができないのです。
このような食生活をしている人は、身体がひょろりとやつれてしまうだけではなく、肌荒れなども引き起こしている可能性があります。
体質・遺伝
なかには、どれだけ食べても太れないという女性もいます。このような女性たちは、プールに行ったり温泉に行って、自分の身体を晒すことを嫌う人が多いようです。
これには、遺伝が関係しているとも言われていますが、一方では、食べているものや生活環境が、両親と子供で自然に似てくることの方が、大きく影響しているという意見もあります。
また、もともと、生まれつき胃腸が弱く、食べ物を上手く消化できない人も、痩せすぎの傾向があるようです。
この場合、食べてもすぐに胃が痛くなったり、下痢をしてしまうため、栄養素が正常に吸収されず、食べても太れなくなってしまうのです。
摂食障害
摂食障害とは、食べ物を口にすることを極端に拒み、自分が許した食べ物・飲み物しか口にしない「拒食症」や、満腹感がわからずに、ひたすら食べ続けてしまう「過食症」、過食したことを相殺するために食べ吐きを繰り返す「過食嘔吐」といった症状が現れる病気を示します。
ダイエットが原因と思っている人も多くいるようですが、ダイエットはきっかけに過ぎません。家庭環境やいじめ、自己否定など、何らかの“心の歪み”がこのような症状を引き起こす「心の病」と呼ばれる病気の一つです。
摂食障害の女性たちは「痩せていること」、あるいは過食症の場合は「食べること」で自分の精神状態を保っているのです。そのため、前者の場合、もうそれ以上痩せると命の危険があるということを周囲が伝えても、「まだ痩せなくてはならない」と思い込み、自分の身を削ぎ落とそうとしてしまいます。
摂食障害は、難病指定されている病気でもあり、克服するためには、様々なことに向き合わなければならない難しい病気です。しかし、克服して、病気になる前以上に、人生を楽しんでいる人がいるのも事実です。
病気
「痩せる」という字は「やまいだれ」がついています。すなわち「病」を示すということです。もともとは、健康的な身体つきだったのに、あるときを堺に急激に体重が落ちている場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。
例えば、甲状腺の病気になると、身体の成長に大きく関係するホルモンが正常に分泌されなくなるため、基礎代謝が必要以上に上がります。これは、常にジョギングをしている状態と同様です。このような状態では、痩せすぎを招くのも仕方ありません。
他にも、糖尿病やガン、肝臓の疾患などでも、どんどん痩せてしまうことがあります。
ダイエットをしているわけでもないのに、急激に痩せた場合には、まず病院で精密検査を受けることをおすすめします。
痩せすぎを改善する方法は?
痩せすぎていると、様々な問題が生じます。「疲れやすい」「免疫力が低下する」といった症状のほかにも、女性の場合は、妊娠や出産に大きく関わる問題が生じるのです。
痩せすぎによって、ホルモンのバランスが崩れると、月経が止まったり、排卵が正常に行われなくなるため、赤ちゃんが過ごすための身体の準備ができなくなってしまいます。
痩せすぎを改善して、女性らしい健康な身体を手に入れましょう。
食生活の改善
「カロリーは摂っているのに栄養素が偏っている場合」、「栄養バランスを見て食事をしていても、摂取カロリーが少ない場合」どちらの場合でも、痩せすぎを引き起こす大きな原因になります。
しかし、毎食ビタミンやミネラル、タンパク質…といった栄養素を考えるのは大変ですし、食事を楽しめなくなっては元も子もありません。ですから、まずは、多くの「食材」を摂取することを考えてみましょう。
お米、肉、魚、野菜など、いろいろな食材を偏ることなく摂取することで、栄養バランスはかなり改善されます。
さらに、余裕が出てきたら、色鮮やかなメニューになるよう意識してみましょう。野菜を摂るときは、葉物野菜だけではなく、人参やパプリカ、大根などの色味のある野菜を取り入れることで、さらに栄養不足を改善することができます。
筋肉をつける
痩せすぎの人は、筋肉がつきにくい、あるいは筋肉をつけようとしていない人が多いと言われています。筋肉が衰えると、痩せすぎだけではなく、身体の歪みや胃下垂など、さらに痩せすぎを悪化させるような症状を引き起こす原因にもなります。
有酸素運動に加え、無酸素運動などの筋トレを行いながら、良質なたんぱく質を摂ると効果的です。
筋トレだけをしても、筋肉をつくる栄養素がなければ意味がありません。上項目にあげた食生活の改善と合わせて、しっかり食べて、身体に必要な筋肉をつけることで、痩せすぎが招くだるさや、疲れやすさなどもかなり改善されます。
病気を治す
摂食障害や、何らかの内臓疾患によって痩せすぎている人は、まずはその病気を治すことが第一です。摂食障害の治療の場合、薬を用いて治療を行うこともあるようですが、根本的な心の問題を解決しなければ、また違った形で、ほかの問題が生じてきます。
「美しいとはどういうことなのか」「自分の心は何に傷ついてしまったのか」「納得できないことは何なのか」など、心の問題としっかり向き合い、いろいろな価値を、様々な角度で見たり、考えたりする必要があります。一人で悩まずに、専門の医療機関に相談してみましょう。
内臓疾患による痩せすぎには、重症度の高い病気もあります。急激な体重減少に加え、だるさや痛み、吐き気、食欲不振などの症状が見られた場合には、早めに病院を受診することが大切です。
心の病気も、身体の病気も、根本を改善して初めて、健康的な肉体が取り戻せるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。痩せすぎによって、月経が止まっている場合は産婦人科で相談してみるのも良いでしょう。
そして、「痩せている=美しい」は誰が決めた価値観なのかを、今一度考え直してみる必要があるのではないでしょうか?自分の美しさは、どこがどうなると美しいのか、その美しさは身体つきに左右されるものなのかを、自問してみましょう。
また、太れなくて悩んでいる場合においても、その人が、それで健康的に過ごしているのであれば、何の問題もありません。
痩せすぎていても、健康であれば、仕草や立ち居振る舞いなどでも、十分に女性らしさは出せるものです。
いずれの場合においても、心身ともに無理をせず、「生きやすい身体」でいることが、何より大切です。