心膜炎の症状とは?原因や治療方法を理解しよう!

心臓の病気は命に関わるため、その知識はかなり広まっています。心筋梗塞や狭心症、弁膜症について詳しく説明できなくても、これらの病名を聞いて「恐い」と感じない人はいないでしょう。

しかし心膜炎についてはいかがでしょうか。そもそも心膜とはなんでしょうか。心膜炎の恐さを易しく解説します。さらに「心膜」と「炎症」についての基礎知識もみてみましょう。

心膜炎の症状

心臓

心膜炎は、心臓を覆っている膜、心膜が炎症する病気です。心臓周辺の異変ですから、さまざまな痛みが出てきます。

胸痛

心膜の炎症により、胸痛が引き起こされます。痛む場所は胸骨の下です。胸骨は左右の肋骨を前方でくっつけている骨です。「ずーん」という鈍い痛みと、「きゅーっ」となる鋭い痛みの両方が起きます。

痛みは、次第に首や肩に拡散します。これらの痛みは、運動をしたり咳をしたりすることで強くなります。

呼吸困難

炎症により心膜が腫れることから、肺を圧迫して呼吸が苦しくなります。呼吸の苦しさを紛らわそうと咳をすると、胸痛が強まりさらに呼吸が苦しくなるという悪循環に陥ります。

発熱

胸痛は我慢する人が多く、我慢を重ねると発熱や悪寒がします。さらに脱力状態になることもあります。

低血圧とショック

こうした症状を放置すると、低血圧になります。低血圧が長時間続くと、ショック状態に陥ります。ショックによって死亡することも珍しくありません。このような状態になっているときは、病名は「心膜炎」から「心タンポナーデ」に変わっています。

つまり、心膜炎は心タンポナーデを引き起こすことが怖いのです。心タンポナーデについても詳しく解説します。

心膜炎の原因

袋

なぜ心膜という臓器が炎症を起こすのでしょうか。それを知るには、心膜について知っておく必要があります。

心膜とは

心臓は、脳と並ぶ最重要臓器です。心臓の停止は、動物の完全な死を意味します。ですので心臓は、いろいろなものに守られています。まず皮膚によって守られています。次に肋骨によって守られています。肋骨の形はうまい具合にドーム型になっています。これは心臓と肺を守るための形といってもいいでしょう。

心臓はさらに「袋」によって守られています。医学用語では「袋」の意味で「嚢」という漢字が使われます。「嚢」は「ふくろ」とも「のう」とも読みます。それで心臓を包む袋のことを「心嚢(しんのう)」と呼びます。

この心嚢がかなり丈夫な構造をしていて、なんと2枚の膜でできているのです。この膜のことを「心膜」というのです。心膜と心膜の間には、潤滑液が入っています。そのため、心臓の鼓動によって2重の心膜が擦れあっても摩擦が最小限で済むのです。

心膜は、心臓を物理的な衝撃から守っているだけでなく、感染からも守っています。なぜ感染から守れるかというと、「心臓は心膜によって完全に包まれている」からです。ところがこの「完全に包んでいる」ことが、心タンポナーデという深刻な病気を引き起こすことになるのです。

感染

心膜は心臓を感染から守ります。ということは、心膜自身は感染の危険が高いということです。心膜に炎症を起こす病原菌は、レンサ球菌やブドウ球菌、グラム陰性桿菌といった細菌が挙げられます。

さらに、ヒストプラズマ、コクシジオイデス、カンジダ、ブラストミセスといったカビに感染しても、心膜炎が発症します。また、まれにではありますが、エキノコックスなどの寄生虫によっても心膜炎が発症します。

心臓への衝撃

そのほか、心臓に衝撃を与えるものは、心膜炎の原因になります。外傷によって発症することもありますし、尿毒症という病気も心臓を害し心膜炎につながります。

また、心筋梗塞が原因になることもあります。心筋梗塞は心臓の細胞が死ぬ病気です。つまり、リンゴが腐ることによって、リンゴを包んでいる紙が破けるようなものです。

心膜の炎症とは

炎症

心膜炎は心膜の炎症です。目に炎症が起きれば結膜炎ですし、胃に炎症が起きれば胃炎です。心膜炎を理解するには、炎症への理解が欠かせません。

防御

炎症は実は体を守る行為、つまり防御です。細胞や組織が破壊されたときに、熱を持ったり膨らんだりして、破壊攻撃を仕掛けてきた相手を蹴散らしているのです。

炎症の症状

炎症が起きると、まず①発赤(ほっせき)が起きます。次に②発熱が起きます。炎症が起きている場所は③痛みが走りますが、これは痛みを出すことで「ここがやられている!」と知らせているのです。そして④腫れます。さらに、炎症した場所は動きが鈍くなります。動きが悪くなることを⑤機能障害といいます。この5つが炎症の症状で、「炎症5徴候」といいます。

炎症細胞

なぜ炎症5徴候が起きるかというと、炎症を起こす細胞が活発になるからです。その細胞を「炎症細胞」といいます。炎症細胞には「好中球」「リンパ球」「マクロファージ」などがあります。炎症細胞は、外敵と闘う戦士であり、傷ついた臓器を修復する救護隊でもあります。つまり炎症5徴候は、戦士が闘い、傷をいやしている証拠でもあるのです。

つまり心膜炎をはじめとする炎症は、「体に悪いこと」ではなく、体を健康に戻そうとする「良いこと」なのです。

心タンポナーデとは

ダム

炎症は体を正常に戻そうとする闘いですが、その闘いがあまりに活発すぎると体に大ダメージを与えます。それが心膜だと命に関わります。

水が溜まる

心膜は2枚あります。心臓は2枚のビニール袋によって保護されているようなものです。心膜と心膜の間には潤滑液があって、摩擦を小さくしています。潤滑液は、減れば補給され、減らなければ補給されないため、その量は10~20cc程度で一定です。

心膜炎が発症すると、この潤滑液を一定量に保つ機能が働かなくなり、潤滑液が増えすぎることがあります。つまり心臓を包むビニール袋の中に、水がどんどん溜まっていくのです。

「心臓は心膜によって完全に包まれている」状態です。つまり心膜内に溜まった水は逃げ場がないのです。

心臓が動けない

心膜は心臓を守る袋なので、とても頑丈です。ですので簡単には破けません。その袋の中に水がどんどん溜まれば、中の心臓が圧迫されます。

心臓は縮んだり膨らんだりして、血液を全身に送ったり、全身の血液を集めたりしています。しかし心臓が水圧によって圧迫されると、縮んだり膨らんだりすることが困難になります。つまり、血液を全身に送る力が弱まり、全身の血液を集める力が弱まるのです。これが、心タンポナーデのメカニズムです。

症状

血液が体内を循環しないということは、全身の細胞に酸素が届きにくくなっているということです。酸欠状態です。心タンポナーデの症状は、息苦しさや胸の苦しさから始まります。それでも酸欠状態が改善されないと、意識を失ったりチアノーゼが起きたりします。

最終的にはショック状態に陥り、死んでしまいます。

心膜炎の治療

入院

心膜炎は、心タンポナーデに進んでしまうことで命が危険にさらされることから、心膜炎の治療は心タンポナーデの予防の側面があります。

入院が必要

心膜炎の原因は様々であり、かつ、心膜炎の合併症が重大であることから、心膜炎が疑われると入院して検査をします。ウイルス感染の有無を確かめる検査や、CT、MRI、エコー検査も行います。心臓の動きを常時監視する必要もあります。

水を抜く

水が溜まっている場合、心タンポナーデを発症する前に「水抜き」をします。胸の上から心膜に向かって空の注射器の針を刺し、針先を水が溜まっている場所に到達させ、水を吸い取るのです。これを心膜穿刺術といいます。「穿刺(せんし)」とは針を刺すという意味です。

その針が心臓を突き刺してしまったら一大事なので、心膜穿刺術は蘇生設備があるところで行います。

薬物療法

心膜炎では薬も有効です。心膜炎を引き起こしている原因別に薬を使い分けます。抗凝固薬、プロカインアミド、フェニトイン、NSAID、プレドニゾンといった薬が使われます。

まとめ

ウォーキング

心膜炎はがんと異なり、1年や2年で突然現れることはありません。

必ず外的な原因があります。ですので、外的原因を除去することが予防の第一歩となります。心膜炎も心臓の病気ですから、まずは生活習慣の改善から取り組みましょう。

  
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