食道ヘルニアとは?症状や原因、治療方法を詳しく紹介!

食道ヘルニアと言う病名を聞いた事があるでしょうか。この病気自体は自覚症状も無く、軽度であれば治療の必要もありません。ですが胸焼けや吐き気を引き起こす「逆流性食道炎」を併発させる重要な原因の一つとなっています。

食道ヘルニアは日常生活に深く密接した病気です。正しい知識を身に付け、しっかりと病気と向き合い健康的な生活を送りましょう。

食道ヘルニアについて

食道

まずは食道ヘルニアについて知っておきましょう!

食道ヘルニアってどんな病気?

正式名称は”食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニア”と言います。胸部と腹部の間には横隔膜という隔壁があり、その横隔膜が胸腔と腹腔を隔てる仕切りとなっています。

仕切りといっても横隔膜には多数の穴が開いており、その中で食道が通る穴の事を”食道裂肛”と呼びます。本来、腹腔内にあるべき胃の一部がこの食道裂肛を通り胸腔側へ飛び出してくる症状を食道裂肛ヘルニアと言うのです。また中高齢の女性に多く見られる事も特徴です。

食道ヘルニアの原因

食道ヘルニアになる原因はいくつかあると言われています。

・先天性の食道ヘルニア

生まれつき体質で食道裂肛が緩く、胃の一部が飛び出しやすい状態にある人もいるようです。

・後天性の食道ヘルニア

高齢になると共に身体全体の組織が緩くなると、食道裂肛も同様に緩い状態となり食道ヘルニアの症状が現れます。また、腹腔内の圧力が高くなると胸腔側へ押し出される力が強くなり、胃が食道裂肛へと飛び出す事がわかっています。

腹圧が上昇する要因として、喘息(ぜんそく)や慢性気管支炎などで日常的に咳が多い人、肥満などがあり、食道ヘルニアが現れやすいと言われています。また他の例として、妊娠中の人は症状が出やすくなっています。これは妊娠で子宮が大きくなり胃が圧迫される事によるものです。

食道ヘルニアの症状

胸焼け、胸痛、つかえ感の三つが主な症状であるとされています。また胸腔側に進入してきた胃が、肺や心臓を圧迫し酷い場合は呼吸困難、動悸、頻脈などの症状が現れる事もあります。

症状が現れやすいとされるシチュエーションとして以下のものが挙げられます。

  • 睡眠時(明け方に現れやすい)
  • 背中を曲げ、前かがみになるような作業中(農作業や草むしりなど)
  • 食後(コーヒーやチョコレート、酒、油などを摂った時に症状が出やすいとされています)
  • 喫煙時 など

合併症

食道ヘルニアは他の病気を引き起こす可能性があります。代表的なものが”逆流性食道炎”であり、そのメカニズムはこうです。横隔膜は本来、食道を締め付ける事で胃の内容物が食道側へ戻るのを防ぐ役割を持っています。

ですが食道ヘルニアになった場合には食道の締付けが甘くなり逆流が起こりやすくなる事で、逆流性食道炎を引き起こしやすくなってしまうのです。

食道ヘルニアの治療

診察

先述したように、食道ヘルニアは軽度で自覚症状が無ければ治療の必要が無い病気とされています。

ですが症状を感じるようになれば、合併症を起こしている可能性がありますので早目に病院で診察を受けるようにしましょう。

検査

検査法として主にX線造影、内視鏡検査が用いられます。その他、食道内圧の測定やpH測定などの方法もあります。検査の結果、胃の飛び出し方により食道ヘルニアが数種類に分類されます。

  • ①胃の上部が食道を押し上げる形で食道裂肛から飛び出す「滑脱(かつだつ)型」。一番頻度が高く症例が多いのがこのタイプです。
  • ②胃の一部のみが食道裂肛から飛び出す(食道や接合部はそのまま)「傍(ぼう)食道型」。
  • ③1と2の両方の症状が見られる「混合型」の三種類です。

また、胃周辺の検査と同時に心電図、胆石症、大腸憩室症の検査を勧められる場合があるようでです。これは食道ヘルニアの合併症として起こる可能性が高い為です。

検査費用は病院によってまちまちですので事前に問い合わせてみると良いでしょう。

治療法

薬を服用する

内服薬を用いて胃酸の分泌を抑え、腹圧の上昇を抑制し症状を改善させます。この際「H2ブロッカー」や「プロトンポンプ阻害薬(タケプロン、パリエット、オメプラール、タケキャブなど)」などの薬が用いられます。

市販されている「ガスター」などの胃腸薬も効果があると言われています。

手術による治療

手術の方法

薬を飲んで症状が改善されても、根本的な治療にはなりません。一時的にヘルニアの症状を抑えられても、薬の服用をやめれば再発する可能性が高い慢性的な病気です。薬による効果が得られなかったり再発を頻繁に繰り返す場合は手術が必要と考えられます。他にも若い年齢で発症し、この先長期に渡り薬の服用が必要になる場合や、毎日の薬の服用が難しい人には手術を勧められる事もあるようです。

手術では胸腔側へ入り込んだ胃を元の位置に戻す事が第一です。更に食道裂肛を縫縮(縫って縮める)するなどの方法で緩んでしまった食道裂肛を小さく縮めます。その後、胃底部を食道に巻きつける「ニッセン法」などを使用し再び逆流してしまう事を予防する措置が行われます。また元来は腹部を大きく切り開く開腹術により手術が行われていましたが、最近は術後の傷口が小さくて済む「腹腔鏡」による手術が一般的となってきています。

基本的にこの手術は胃や食道などの臓器を切除する訳ではありません。形を整える形成手術です。ですので術後に胃が小さくなる事はありません。また手術費用は症状の進行具合にもよりますが、10~15万円程度と言われています。

術後の後遺症など

・術後の安静機関は個人差がありますが殆ど必要ないとされています。入院期間も3日程度と比較的短く済みます。

・術後2~3週間程度、食事の際「つかえ感」を感じることが多いようです。食べたものが胃に入る前に一度止まってしまうようなイメージです。これは手術により胃と食道の継ぎ目あたりの組織が一時的にむくんでしまう事によると考えられています。お粥など軟らかい食事から徐々に慣らして行きましょう。

・つかえ感が長期間続き、実際に食べたものが詰まってしまったり、場合によっては嘔吐を繰り返してしまう事があります。手術で行われた逆流防止の措置や縫縮により食道が細くなり過ぎていて、食べ物が通過するのに十分な広さを確保できていない事が原因とされています。この場合狭くなっている部分を風船で拡張する措置(バルーン拡張術)を行ったり、度合いによっては再手術が必要となる場合があります。

・物が逆流しにくくなると同時に胃の中のガスも食道側へ排出しにくくなる場合があります。その結果「げっぷ」が減り「おなら」が増えるといった症状が現れる事があります。

食道ヘルニアの予防

健康

食道ヘルニア自体は自覚症状が殆ど無く日頃から意識するのは難しいかもしれません。ですが場合によっては胃がんや食道がんの原因ともなる決して甘く見てはいけない病気なのです。

そして食道ヘルニアの原因は日常生活に大きく係わっています。正しい予防法を身に付け病気のリスクを減らす事を心掛けましょう。

できるだけ体勢、姿勢に気をつける

生まれつきの体質や、加齢による食道裂肛の緩みは予防ではどうしようもありませんが、できるだけ胃が飛び出さないよう背中を曲げたり、前かがみの姿勢にならないように注意する事で少しでもリスクを減らす事ができます。

就寝時に上半身を少し高くする事も効果があるとされています。

腹圧の上昇を防ぐ

高い腹圧は食道ヘルニアの大きな要因の一つです。腹圧が高くなる原因は人それぞれですので思い当たる内容があれば改善に努めましょう。

呼吸器の疾患を治療する

喘息などで日常的に咳が多い人は慢性的に腹圧が高くなっています。まずこちらをしっかりと治療し咳を抑え、腹圧を正常に保つ事で食道ヘルニアの予防に繋がります。

肥満の改善

肥満も腹圧を高める原因です。また、他の肥満による健康被害も考えられますので、バランスの良い食生活と適度な運動で肥満の解消に努めましょう。決して無理なダイエットは禁物です。

腹部を締め付ける服装を止める

仕事などでどうしても必要な場合は致し方ありませんが、その分普段着はユルめの服装を着用するなど極力腹部を圧迫しない服装を心掛ける事が重要です。

腹筋を鍛える

自覚症状が出ていない段階では腹筋を鍛える事で腹圧の上昇を抑える事ができるとされています。肥満解消の観点からも腹筋を重点的に鍛え、効果的な予防となるよう心掛けましょう。

食事に気を付ける

油っこいもの、酸っぱいもの、刺激物、糖分などは胃酸の分泌を促進させ胃酸の逆流にも繋がります。極力控えた方が良いでしょう。食べすぎ、飲みすぎもNGです。

ストレスを溜めない

ストレスを受けると自律神経が乱れ筋肉の収縮が上手くできず、食道裂肛が緩い状態になる場合があります。また、ストレスには胃酸過多や肥満にも繋がるとされ良いことがありません。「病は気から」という言葉そのものですね。

まとめ

食道ヘルニアについてポイントをまとめました。

【食道裂肛とは】

  • 胃の一部が腹腔から胸腔側へ入り込むヘルニアの一種である
  • 自覚症状が無い場合、治療の必要はありません
  • 逆流性食道炎や胃がんなどを併発する可能性がある

【原因】

  • 先天性、後天性の両方がある
  • 体質や加齢により食道裂肛が緩くなっている
  • 体質、体型、姿勢、呼吸器の疾患などで腹圧が高い

【治療・予防】

  • 内服薬で症状を抑えられるが根本的な治療には手術が必要になる
  • 日常生活の中で腹圧を抑える行為を心掛ける

【最後に】

自覚症状が少なく気付きにくい病気かもしれません。例えば人間ドックなどで胃の検査をした際に食道ヘルニアが見つかる事があります。内容をよく知らずに名前だけ聞くとドキっとしてしまうかもしれませんが、普段の日常生活の中で予防をする事も可能です。症状が無くても一度検査を受ける事をオススメします。

  
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