広汎性発達障害という障害の名称をご存じでしょうか?なじみがあまりない言葉かもしれませんね。
広汎性発達障害は、主に社会でのコミュニケーションを取るために必要な脳の領域の障害といわれています。症状の軽さ重さは個人によって異なりますが、症状が重い場合は知的障害も含まれるといわれています。
社会性や人とのコミュニケーションにおいて、適切な行動がとれない症状が特徴です。
今回は、広汎性発達障害について、特徴を中心に見て行きましょう。
広汎性発達障害ってどんな障害?
そもそも、広汎性発達障害とは一体どんな障害なのでしょうか?まずは、広汎性発達障害がどういった障害を指すのか、説明していきましょう。
広汎性発達障害というのは、人が社会で生きていくうえで必要なコミュニケーション能力や行動がとれない発達障害の総称です。
主にアスペルガー症候群、自閉症、レット症候群、小児期崩壊性障害、その他特定できない広汎性発達障害などが、広汎性発達障害に含まれるとされています。広汎性発達障害という、一つの病気ではなく、複数の発達障害をまとめた言葉ということですね。
そしてこれらの障害は、社会におけるコミュニケーション能力や対人との関わり合いで活用される脳の領域に関する障害を指しているとされています。
つまり、社会的なコミュニケーション・良好な対人関係をとるのが非常に困難ということです。
具体的な症状としては、極端にかたよった興味と関心、人とのコミュニケーションを取るのが困難、社会性の未発達、同じ行動を常時取る、想像力の欠如などが主な症状とされます。
広汎性発達障害の特徴は?
さて、そんな広汎性発達障害ですが、どんな特徴を持っているのでしょうか?一つ一つ見て行きましょう。
言葉に問題がある
- 言語の発達が遅れている
- 独り言が多い
- 同じ言葉を何度も繰り返す
- 言葉一つ一つを覚えるまでに時間がかかる
- 相手の言った言葉を同じように繰り返す
このように、言葉に関する問題が挙げられます
人とのコミュニケーションが困難
- 人の言葉の意味を理解できない
- 冗談やたとえなどで言われた言葉を、そっくりそのまま受け止めてしまう
- 相手の気持ちを考えることができない
- その人にとって不快な言葉を発してしまう
- 自分のことばかりを喋る
- 明らかに場違いな言葉を発してしまう
このような特徴の結果、人の気持ちを汲み取ることができなくなります
こだわりが強い
- ある一つの作業に対して、必ず一定のルールや順序に従う、執着する
- 少しでも順序が変わることに対応できない
唐突な変化を目の当たりにするとパニックを起こすこともあるそうです
興味や関心が極端に偏っている
- 興味や関心を向ける対象がごく限られている
- 一度興味を持つと、とことんのめり込む
興味のあることがらに対しては非常に熱中するため、興味の分野の専門的な知識を持つこともあるようです。このように偏った関心や興味などは、前に述べたこだわりの部分と強く関わっているとも考えられますね。
人間関係に支障が出る
- 相手に対しての興味や関心が極端に薄い
- 逆に相手に対して非常に強い興味を抱き、必要以上に関わろうとする
コミュニケーションが取れない点でも触れましたが、悪気なく人を傷つける言葉を発してしまうのも、この人間関係の問題ともつながるでしょう。相手に興味を持つか持たないかの両極端なので、他人と自分との距離をはかることが困難だと考えられます。
感覚が過敏もしくは鈍い
- 大きな音が苦手
- 周囲の騒音に耐えられない
- 食べものの好き嫌いが激しい
- 光を嫌がる
- 臭いに気づきにくい
- 感覚が鈍い場合、痛みに気づかない
- 大きな怪我をしても気づかない
- 気温の変化に鈍い場合、季節からずれた服を着る(例:寒い日に半袖を着ている)
食べものの好き嫌いは、こだわりの特徴とつながりますね。
想像力が未発達
- 先のことを想像できず不安になる
- 知らない場所に行くと不安になる
- 相手の気持ちを想像できない
この想像力の未熟さが、対人関係でのトラブルを招いてしまうといえるでしょう。
このように、広汎性発達障害の特徴は多岐にわたります。いずれの特徴も、人とのコミュニケーションを正常に取れない原因と考えられますね。
広汎性発達障害の原因は一体なに?
それでは、この広汎性発達障害が起こる原因は一体何なのでしょうか?
実のところ、現在の医学では、はっきりとした原因は解明されていません。ただし、原因であると考えられる要素はあります。
遺伝によるもの
広汎性発達障害全体に視点を置いてみましょう。原因は遺伝子や染色体に何らかの異常が生じることで発症するとされています。先天的な要素ですので、生まれつきの機能不全によるともいえるでしょう。
後天的な要素によるもの
幼少期にかかった病気や、生まれ育った環境、環境ホルモンによる影響などの後天的・外的な要素も原因の一つとして考えられています。
育て方が原因ではない!
先ほど述べたように、現代の医学では、広汎性発達障害の原因は遺伝的要素とされています。
ここで誤解しないで欲しいのは、広汎性発達障害は親の育て方や本人の性格は全く無関係であるということです。発達障害を持った本人や親に責任はありません。育て方が悪い、しつけが悪い、子供本人の気の持ちようではないのです。親や子供自身に責任がないということを、しっかりと理解してくださいね。
大人の広汎性発達障害
さて、ここまで広汎性発達障害の特徴を述べてきましたが、この発達障害は子供だけに発症する障害なのでしょうか?実は、大人になってから広汎性発達障害が発覚するというケースもあるのです。
広汎性発達障害の原因というのは、遺伝子や染色体異常による遺伝的要素であることは、すでに説明したとおりです。これは先天的な原因ですので、大人になってから広汎性発達障害が急に襲ってくることはありません。
つまり、大人になって初めて、今まで気づかなかった広汎性発達障害の症状を自覚するということですね。
大人になってから自覚するきっかけは、主に社会人となる時期が多いとされています。社会に出ると、パターン通り・マニュアル通りのやり方では解決できない事態に出くわすことがありますよね?広汎性発達障害の特徴の一つである「臨機応変な対応ができない」ことが、ここで壁となるのです。
また社会ではコミュニケーション力を必ず要求されます。想像力の欠如やコミュニケーション力不足により良好な人間関係を築き上げることができず、社会で孤立してしまうのです。
社会に出るまではあくまで個性として捉えてきたものが、こうしたトラブルにより、発達障害であったと発覚するということだと考えられます。
大人の発達障害の特徴
大人の広汎性発達障害の特徴としては、次のものが挙げられます。
- コミュニケーションが取れない
- 想像力が乏しい
- 感覚が極端に鋭いもしくは鈍い
- 落ち着きがない
- 感情をコントロールするのが難しい
- 急激な変化に対応できない。
社会に適応するためのコミュニケーション力が足りないために社会に溶け込むことができず、孤立してしまう結果につながるのです。
またこのように社会にうまくなじむことができず、自分がだめな人間であると思い込んだり、何をやってもうまくいかないのだと考え込んでしまうこともあります。
これらの症状は、発達障害の対策や治療などをせずに放置すると現れる二次障害の特徴のひとつといわれています。
発達障害の大人に向いてるお仕事
広汎性発達障害は、急激な変化に対応できなかったり、臨機応変な対応ができないという特徴があります。それと対になるように、決まった順序・パターンに強いこだわりを持つという特徴もあります。
パターン化した作業に向いているということですから、毎日決まった作業が出る事務的仕事は向いている職種といえるでしょう。
また一度興味を持ったものごとにはどこまでものめり込んでいく特徴から、研究者や芸術家といった一つの分野を深く掘り下げることが必要な職業にも向いています。
広汎性発達障害を治療するには?
広汎性発達障害は遺伝的要素が原因の一つとして考えれていますが、はっきりした原因はいまだ解明されていません。そのため、確かな治療法というのはまだ見つかっていないのが現状です。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害を持つ人をあらゆる面で支援するための専門的な機関です。ここでは発達障害者本人やその家族からの相談を聞くだけでなく、発達障害者に応じた療育・支援などの助言、また就職の支援なども行っています。
療育
療育というのは、発達障害の子供を支援するための治療と教育をいいます。発達障害者一人一人に合ったトレーニングや治療、親や家族への教育などが行われます。
広汎性発達障害と付き合うコツ
広汎性発達障害と接するにあたり、
- 視覚的なもの(イラストや写真など)を用いて説明する
- ゆっくりとしゃべる
- できたことを褒める
- 安心できる環境を整える
といった具体的な支援方法が提示されています
まとめ
広汎性発達障害とは?
・社会において必要なコミュニケーション力などで必要な脳の領域による障害の総称。
特徴は?
- 他者とのコミュニケーションが取れない
- 言葉において問題がある
- こだわりが強い
- 興味や関心の範囲が狭く、興味を持つと非常にのめり込む
- 感覚が極端に鋭い、または鈍い
- 想像力が乏しい
原因は?
・現在でもこれという原因は不明。遺伝子や染色体異常による遺伝的要素が原因と考えられている
大人でも広汎性発達障害になる?
・大人になってから広汎性発達障害を発症するということはなく、大人になってから症状に気づくということはある
治療方は?
- 特定の治療法はなし
- 発達障害者支援センターで支援を受けることができる
- 療育を行う
- 広汎性発達障害を理解し、発達障害者が安心できる環境を整える、また接する
以上が今回の記事のまとめとなります。広汎性発達障害はコミュニケーション力に関わる障害です。どういった発達障害なのか知ることが、発達障害者を支える一歩になるのではないでしょうか。