安楽死、誰もが聞いたことがある言葉だと思いますが、実際には日本では、禁止されています。安楽死とは、肉体的、精神的苦痛からその対象者を救済するため、薬物投与などの方法で、苦痛なく人為的に死を早めることを言います。
同じようなもので尊厳死というものもありますが、実際には違い安楽死はこれを認める法律を決めている国もあります。確かに、死の病にかかっているとか、とてつもない痛みを伴う病気、意識がなく介護をする人が苦労をせざるを場合などは、その本人も家族も辛い部分があるため、死なせてあげたいということは、わからないでもありません。
特に現在の医学の進歩は、身体だけが生きていて脳死のまま何十年もベッドで横たわっていたり、逆に頭は冴えているのに、身体がまったく動かないというような状況では、非常に辛いものがあります。
今回は、その安楽死やその方法などについて、紹介いたします。
安楽死の種類
安楽死の種類について紹介します。
積極的安楽死
本人の意思により、その要求に応じ自殺の幇助を行うことです。本人が不治の病であるとか精神的疾患で、どうしても生き長らえるのを拒否した場合、医師やその団体が手助けすることです。
これはあくまでも自殺ではなく、医師の手にかかり、死を迎えることとなります。
消極的安楽死
本人の意思、もしくは、本人が意識のない状態で、本人の親、配偶者、子が治療を継続しないとか延命をしないということで、死に至らしめることです。
こちらの場合は、別の呼び方として自然死とも呼んでいます。こちらは、かなりの例があります。
尊厳死
尊厳死は、延命措置をしないで自然死を選ぶことです。人間の尊厳を保って自然に死にたいということで、安楽死とは違う趣旨の定義がなされています。
日本では、この尊厳死が行われていることは事例としてかなりあります。そしてまた、本人もそのことを事前に家族等に話しているケースが多いようです。
各国の安楽死事情
他国は安楽死の状況はどういった感じなのでしょうか?
アメリカ
オレゴン州、ワシントン州、バーモント州、モンタナ州、ニューメキシコ州、カルフォルニア州が認めています。非常に不思議なのですが、このような重大なことを州法でのみ定めているのです。
国が認めているのではないのです。実際、安楽死を求める人が、その州へ引っ越して安楽死をするといいます。
スイス
ここではかなり有名な二つの団体があります。ディグニタス、エグジットという自殺幇助機関があります。これは第三者機関で、民間ということになります。ともに会員制で、一定に料金が発生しますが、病気で末期的症状であるなどの場合により、消極的幇助を行うことが出来るということです。
また、それ以外にも、治療が困難とか、余命が短い人などに対して、医師が安楽死を認めれば、そのための薬を調合し、自殺幇助を促すことが出来ます。
スイスのこの幇助機関がスイス以外の国の人も、この機関を利用できるため、各国から安楽死を求めてやってきます。ですが実際には料金もそれ相応の額がかかり、その安楽死の費用だけでなく旅費も合わせると、負担金額はかなりなものになります。
オランダ
世界で一番最初に安楽死を合法化した国でもあります。ですが、その認可はかなり厳しく、当人が正常な精神状態の時で、耐え難い苦痛を伴う末期的症状のみに認められるとされています。
オランダは、下に説明するポストマ事件が発端で、法律の整備が早々にされたのです。実際、その事件も理解ある判決であり、その裏では過去にも秘密裏で安楽死を行っていた背景もあるのです。
カナダ
この国では積極的幇助は認められていません。ですが、消極的幇助は認めています。
コロンビア
ガン、エイズなど末期的患者に対してのみ、本人の意思と家族の同意を得ることにより、自殺幇助が認められています。
ベルギー
こちらも他国同様、耐え難い肉体的、精神的苦痛の状態で認められるといいます。
ルクセンブルク
末期の病気であり、二回以上安楽死の要求をすると、認められるという。本人の意思と二人の医師の判断により、審査団が決定するといいます。
ドイツ
安楽死という形では認めていませんが、患者自身が治療を拒める法律があります。そうすることにより、尊厳死として自然死が可能になっているようです。さらに患者からの文書で安楽死をするための薬を調合する命令が出来るので、実質上は、安楽死を認めているようなものと考えてもいいかと思われます。果たしてこの解釈が安楽死を認めているかというと、なんともいえない部分があります。
安楽死の過去の例
安楽死にまつわる事件を紹介します。
ポストマ事件
オランダのポストマ医師が、脳溢血で半身不随の母をモルヒネで安楽死させた事件です。裁判所は、苦痛をやわらぐ目的でのモルヒネ投与は容認されるとの判断で、問題は致死量を投与したこととし、被告人を執行猶予1年、刑は禁固刑1週間という判決をくだした。
判決の軽さから、実際には安楽死を認めるものと多くの人は判断できると解釈できそうです。これなどは、当人はいくら刑を受けてもかまわないという気持ちなのでは?と思います。身近な人を愛する故の行為とするならば、同情という解釈ができるケースかと思います。
安楽死を望んだ女性
メイヤードさんは悪性脳腫瘍で、余命数ヶ月という状況になり、アメリカで安楽死が認められているオレゴン州へ移住し、医師から処方された鎮痛剤を服用し亡くなりました。病状が激しくなる前に、自らの命を絶つことをきめ、SNSやユーチューブでもアップされ、いろいろなメディアが取り上げました。
この際は、世界的に論議を巻き起こしました。確かに家族にしても回りの人にしても、例え病気でも生きて欲しいと考えます。ですが当人にとっては、意識がなくなるようなことが解っていて、その世話を回りの人のさせることを考えると、安楽死の道を選びたくなる気持ちも解らないでもありません。
チリの14歳の少女
幼少より難病に苦しむ14歳の少女が、大統領に安楽死を求める許可を嘆願したのです。ユーチューブでもツイッターでも話題となり、物議をかもしました。実際大統領と面会しましたが、結局は認めることはありませんでした。
ただ、多くの方の同情が集まり、安楽死という認識を改めさせるニュースとなったことは事実です。このようなまだ本当に若い子が、死について考えざるを得ないということは、つらいものではあります。
おそらく、多くの人はこのニュースを聞いて、本人の希望通りにさせてあげたらいいのに、と考えたのではないでしょうか?
夫との安楽死を望んだ女性
カナダ在住のカウンビア夫妻は、夫が心臓病で長く生きられないため、奥さんも一緒に安楽死をしようとスイスへ向いました。安楽死を認めるスイスでは、健康な人を認めるわけにはいかず、却下されたとのことです。
ところが皮肉なことに、逆に奥さんがガンで先に亡くなり、夫が生きながらえているのです。ほんとうに、人生というのは不思議なものです。そして、皮肉なものです。
安楽死を求めた殺人犯
パーティーの帰り、19歳の女性をレイプし殺害したブリーケンは、30年の服役以後も刑務所にいるのが耐えられないと、安楽死を希望し認められた。
ところが、殺害された女性の姉が安楽死をさせて楽をさせるより、服役をして罪をあがなうよう裁判所側に依頼をして安楽死を取り消されたそうです。こちらも、理にかなっているということもあり、賛否両論で世間を騒がせました。
日本での事件
日本での安楽死にまつわる事件を紹介します。
名古屋安楽死事件
被告の息子は、患者であった父親に毒入りの牛乳を、母を介して飲ませ安楽死させた。裁判所は、本来であれば医師より行われる場合と倫理的に当てはまる場合のみに容認するということで、この事件を殺人罪として判決を下した。
ただ、この事件により安楽死の用件が定まったとの見方があります。
東海大学安楽死事件
これは、末期のがん患者にその家族から依頼されて治療を中止し、さらに楽にさせて欲しいと塩化カリウムを注射し死に至らしめた事件である。
結局懲役2年、執行猶予2年という判決になったが、今後の安楽死がどのように人々に影響を及ぼすかを問う裁判でもあるのではないかと思われます。
日本における安楽死法の状況
日本でおいても安楽死の法律整備は、医師たちの会合などで話されていることは、事実です。
ベースにある法案は、医師二人による判断で死期が近いこと、本人の希望の確認、病気など改善の希望が見えない症状の場合には、延命治療を止めても責任を問われないという、原案があるが、まだまだ多くの反対者で、まだ整備されていないというのが現状です。
その方法
では実際、安楽死を認めているところではどのような方法で行われているのでしょうか。スイスでは、ペントバルビタールという薬を飲むそうです。そうすることにより、眠りにつき、やがて呼吸が浅くなり、こん睡状態となり心臓が止まるということです。
また、医師に処方させる薬として、鎮痛制薬剤を致死量分医師により処方させるのが一般的です。基本的に上記の国のほとんどが、延命治療をしないように、延命治療を行わず、自然死を望んでいます。
まとめ
安楽死をめぐることに関しては、日本においては本格的に議論されていない部分があり、そういう意味では速やかに法制度も決める方向に進むべきと思っている人は少なくありません。
現に、その患者やその家族の苦しみと、経済的な事情を汲み取ると、かなりの家計への負担増が問題になっているのも事実です。また、日本の医療費のふくらみも考えないといけない部分もあります。
現に少子高齢化という状況を迎えています。超老人国家となり、ますます税による収入は減る一方、膨大な医療費の膨らみはどうしようもない状況にまで来ています。本当にこの問題に関して考えないと、国家の安泰が保てなくなることもありえます。もっと考慮し、考えないといけないのではないのでしょうか。
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