近年は、晩婚化が進み、その結果、出産の高齢化も増加しています。高齢で妊娠、出産をすることは母体にリスクを伴うだけでなく、卵子や精子も何らかの影響をうけることになり、染色体に異常をきたす原因にもなります。
その結果も関連して、ダウン症の発症率が増加しているといわれています。ここでは、ダウン症発症の原因や検査についてまとめてみました。
ダウン症とは?
出生時までに何らかの異常や障害を持つ疾患を先天性疾患といいます。なぜ、その異常や障害が起こるのか、原因は明確になっていません。
ダウン症は正式名称を「ダウン症候群」といい、先天性疾患のなかでも代表的な染色体異常による疾患の一つです。根本的な治療法はなく、個人個人の症状に応じた治療を行うことになります。
ダウン症の原因
通常染色体は、同形同大の一対の染色体が22対と2本の性染色体で構成されています。ダウン症は、21番目の染色対の数や構造に異常がみられます。
卵子や精子がつくられる過程での染色体の異常が原因になります。母親の年齢が高くなるにつれて染色体の分離に異常が起きやすいと言われていて、これに伴いダウン症も母親の年齢が高いほど発症率が高くなるといわれています。
ダウン症の発症率は、約1000人に1人の割合で発症するといわれています。現段階では、染色体の異常がなぜ起きるのかという原因は、明確になっていません。
ダウン症の種類や症状
ダウン症は染色体の状態によって、「標準トリソミー型」「転座型」「モザイク型」の3つの種類の型に分類されます。
標準トリソミー型
ダウン症の90~95%の割合一番多い型で、通常22本あるはずの染色体が23本あり、一本多く存在します。染色体異常の原因は、偶発的におこるものであり、両親からの遺伝の関係はありません。
転座型
ダウン症の5~6%にみられます。21番目染色体の一部分が他の染色体にくっついた状態になっています。染色体異常の原因は、半々で、偶発的に起こるものである場合と、遺伝的要素が原因となる場合は、約半分の確率だといわれています。
モザイク型
ダウン症全体の1~3%という、稀にみられる型です。21番目染色体がトリソミー型の染色体細胞と、正常な染色体細胞が混ざっている状態になっています。通常、両親の染色体は正常であることが多いです。
ダウン症の症状
ダウン症の外見から見た身体的特徴は、丸い顔、つりあがり気味の目、平たくて小さい鼻、顎や耳が小さく、内眼角贅皮(上まぶたの内側が目に被さった状態)などがあり、特徴的な顔立ちになります。
個人差はありますが多くの場合、身体症状や合併症を伴い、筋緊張の低下、精神遅滞などの症状がみられます。知的発達や性格は、個人差がありますが、近年は適切な教育が普及されています。
専門施設や療育施設があり、早期から適切な療育を行うことが効果的だといわれています。適切な療育を受けることによって、知的面の発達の改善や社会への適応能力も安定することができます。
ダウン症の合併症
合併症として最も多いのが、先天性心疾患(生まれながらに持っている心臓、大きな血管の構造の異常)や消化管奇形(胃、食道、小腸、大腸、などの消化管の発達が不完全であったり、位置の異常)を伴うことが多くあります。
個人差があり、起こる合併症も重症度も様々でほとんど合併症のない場合もあります。中には周りが気づきにくい病気もあるので、病院で定期的に診察を受けることが重要です。
ダウン症の検査方法
近年は、高齢出産(35歳以上の出産)の増加に伴い、ダウン症の発症率も増加しています。両親の年齢だけが原因になるわけではありませんが、不安な場合、妊娠中にダウン症の可能性や確定率の検査をすることができます。出生前に検査をすることで、早期に病気を発見して治療を早く始めることもできます。
検査には、あくまでもダウン症の可能性として調べる検査と、ダウン症の確定率として精度の高い検査があります。検査に関する日数や費用は、検査機関によって違いがあるので、一般的なものでまとめてみました。
超音波検査
超音波エコーをお腹にあて、医師の目視により、胎児の状態をダウン症の症状(胎児の首元にみられるむくみ、首の長さが短い、手足が小さいなどの症状)と比較して胎児の異常を調べる、ダウン症の可能性を判断する検査です。
血清マーカー検査
妊婦から採血し、血液の成分を調べて胎児の染色体に異常があるかどうかの確率を調べる、ダウン症の可能性を判断する検査です。検査結果で陽性と出た場合は、この検査だけで判断するのではなく、羊水検査や絨毛検査などのより精度の高い確定診断を受けることが重要です。
妊娠週数が15~21週位まで検査が可能です。検査の結果は10日後位にわかります。費用は1~2万円位です。
新型出生前診断(NIPT)
妊婦から採血し、血液中の遺伝子や染色体を検査する方法です。染色体や遺伝子を調べることで、診断の確定率が99%の精度が高い検査だといわれています。検査の精度が高いうえに、流産などのリスクもないメリットの多い検査ですが、年齢制限があり35歳以上の妊婦でないと受けることができない検査です。
妊娠週数が10~18週位まで検査が可能です。検査の結果は2週間後位にわかります。費用は約20万円位です。
羊水検査
妊婦のお腹に、注射をして摂った羊水で検査をする方法です。確定診断なので、検査結果が99%の高い精度の検査です。300人に1人の割合で流産になるリスクがあります。
妊娠週数が15~18週位まで検査が可能です。検査の結果は2週間後位にわかります。費用は、約15万円位です。
絨毛検査
妊婦のお腹に注射をして摂った、胎盤にある絨毛の細胞を検査する方法です。羊水検査と同様で、確定診断なので検査結果が99%の精度が高い検査です。300人に1人の割合で流産になるリスクがあります。
妊娠週数が9~13週位まで検査が可能です。検査の結果は2週間後位にわかります。費用は約15万円位です。
最新の出生前診断
2014年の秋に導入された最も新しい検査です。血液検査と超音波エコーを組み合わせた検査です。新型出生前診断のようにな年齢の制限はありませんが、確率の精度が80%位と新型出生前診断よりも精度が少し低くなります。
妊娠週数が11週~14週位まで検査が可能です。検査の結果は2週間後位にわかります。費用は2万5千円位です。
新生児の診断
ダウン症の新生児期の特徴として哺乳不良、弱い泣き声、筋緊張低下があり、新生児の血液検査で染色体の検査を行うことで、ダウン症の診断が確定できます。
まとめ
高齢出産の場合や、ダウン症や他の病気などの不安がある場合は、不安を抱えたまま妊娠中を過ごすよりも検査を受けた方がいい場合もあります。それぞれの家庭によって、事情や考え方は違い、何が正しいという答えはありません。
出生前の検査を行う際に、最初に、専門の医師やカウンセラーがカウンセリングを行う病院が増えています。この時に、それぞれの検査の内容やリスクなど詳しい説明を受けることになります。その説明を聞いたうえで、検査を受けるかどうかを決めます。検査を受けた結果が陽性だった場合も考えて、ご夫婦でダウン症についての知識を持ち、きちんと話し合ったうえで、検査の決断をされたほうがいいでしょう。
関連記事として、
これらの記事も合わせてお読みください!