足の付け根にしこりを見つけてしまうと、とても不安になりますよね。普段なかなか見える部分ではありませんが、お風呂や着替える際にひょんな事から気が付いてしまい、気が気で無いという方もいらっしゃるかと思います。
足の付け根には大きなリンパ節のあつまりがあるので、風邪や怪我など、ちょっとしたことでリンパ節が腫れてしまう事は多々あります。リンパの一時的な炎症であれば心配はありませんが、他の病気によってしこりが出来る事もあるので注意が必要です。
重い病気が原因であった場合、放置すると症状が重くなる事があります。足の付け根にしこりができた場合、どのような病気の可能性があるのかについてまとめました。
足のリンパについて
足の付け根にしこりが出来た場合、一番先に疑われるのは鼡径リンパ節の腫れです。
リンパ腺は鳥類と哺乳類にあるもので、リンパ球という免疫機能を持つ血液細胞を作る組織が集まって出来たものです。リンパ節はリンパ管の中に存在しています。そのリンパ管の中でリンパ節は濾過装置のような役割をしており、ウイルスや病原体などが体内の奥に入り込むのを防いでいます。その為体内に病原菌などが侵入してきた際には、この機能が働き、リンパ管の通っているところが腫れることで、しこりが確認できるようになります。
リンパは体中をめぐっており、中継地点にいくつかの節を作っています。一つのリンパ節は米粒〜そらまめ程度の小さなものですが、これが体中に600個程度あります。リンパ節は後頭や耳の後ろ、脇、顎の下などに存在しており、このうち、鼡径リンパ節と呼ばれるものが足にあるリンパ節です。
鼡径リンパ節は足の内側前面部にあり、比較的手で触って判断がしやすいリンパ節です。足の一番付け根の内側に一列にリンパ節が並んでおり、内股部分にもいくつかのリンパ節が存在しています。
リンパ節の腫れの特徴
リンパの腫れによるしこりは痛みがなく、触るとぐりぐりと動く感覚がある事と、弾力のある柔らかい感触があるのが特徴です。リンパの腫れは身体に細菌が侵入した場合などに起こるもので、風邪をひいた場合や怪我をした場合、女性の場合は生理前に腫れてしまう事があります。
また、悪い場合だとリンパ節にがんがある場合がありますが、この場合はしこりに触っても動きがなく、硬い感じがするという特徴があります。癌によるリンパの腫れは痛みを伴わず、気が付きづらい場合があります。心配な場合は医療機関を受診しましょう。
しこりが症状として現れる病気
しこりが現れる病気には様々なものがあります。癌や鼡径ヘルニアの場合や、感染症の場合には特に注意が必要です。中には、別段悪い症状を起こさないものも存在します。見た目的に気になる場合にのみこのしこりを取り除く事が必要なだけのものもあります。
まずは危険度の低いものから紹介していきます。
良性腫瘍
腫瘍というのはできもの全般の事を指す言葉で、悪性のものを癌、そうでないものを良性腫瘍と呼びます。良性と悪性の大きな違いは、どこまで広がってしまうかという点にあり、癌が規律なく所構わず増えてしまうのとは違い、良性腫瘍は自分の持ち場を超えて広がる事はありません。
足の付け根にできる良性腫瘍の代表的なものは、粉瘤、アテロームなどです。それぞれの違いは以下の通りです。
粉瘤・アテローム
皮膚の表面にできる袋状の腫瘍です。いらない角質が溜まってしまい悪臭を伴うため衛生的に良くないのと、放っておいても治る事はないので、袋ごと摘出する簡単な手術をする治療が最も良いとされています。
しこりの周りを押すと白いあぶらのような物が出て来るという特徴があります。
大きさは1cmに満たないものから10cmを超えるものまで様々で徐々に大きくなったり、中には急激に大きくなるものもあります。触っても痛みを感じない場合がほとんどですが、稀に痛みを感じる物があります。
しこりが大きく目立つようになったり、痛いが発生する場合は整形外科か皮膚科を受診しましょう。
脂肪腫
脂肪組織が局所的に増殖したものです。脂肪組織外まで増殖する事はないので良性腫瘍とされています。ほとんどが皮膚と筋肉の間にできますが、稀に筋肉の間、骨の近くなどにできる事もあるようです。
やわらかくゴム状の感触で、大きさの変化があまりありません。粉瘤と違い悪臭の問題がないので、痛みがない場合は経過を見るだけでよいのですが、どうしても気になる場合などは手術で取り除く場合があります。
40代から50代の女性に多く発症のケースが見られます。殆どの場合が1つほどの単発で発生する場合が多いですが、稀にいくつもの脂肪腫が出来る場合もあります。この脂肪腫が出来る原因は今のところわかっていません。なので有効な予防法は無いのが現状です。
発症が確認された場合には直ちに病院に行く必要はありませんが、痛みなどを伴う場合は早めに医者にかかりましょう。この病気の可能性がある場合は整形外科に行くのが最適です。
手術が行われる場合でも、日帰りで行えるので入院の必要はありません。
脂肪肉腫
脂肪含んだ細胞が悪性化すると、この脂肪肉腫になります。悪性腫瘍ですが、この病気自体が危険というよりは他の臓器への転移が怖い病気で、良性と悪性の中間のように分類されています。
症状は良性腫瘍である脂肪腫と似ており、大きさが変化するという特徴を持っています。しこりというよりかはコブのような形をしています。足にできた脂肪肉腫の場合では命に関わるケースは少ないですが、周りの臓器を圧迫する事があるので早めの治療が必要になります。四肢に出来た場合での死亡確率は2%程となっています。
しかし、四肢に出来やすい脂肪肉腫ですがこの脂肪肉腫は稀に後腹膜に発生する場合があります。この場合は死亡率が一気に高くなり20%程の死亡率となります。胃や腸などが入っているお腹の前側の部分が腹膜であり、そこから背中側の部分の腹膜の外が後腹膜になります。この部分にも脂肪が存在するためそこに脂肪肉腫が発生することがあります。
腎臓・尿管・膀胱などの臓器が後腹膜に位置していて後腹膜臓器と呼ばれます。この部分に脂肪肉腫が出来た場合は注意が必要です。この場合はお腹が膨れてきたや腹部の圧迫感で腹痛や吐き気が症状として現れます。
原因
この脂肪肉腫が発生する原因は染色体の異常によって出来たキメラ遺伝子が原因であると考えられており、これは誰にでも確立で起こります。四肢に確認できた場合は早期に治療が行なえますが、それ以外の場合にはなかなか早期の発見が難しい特徴があります。
発生箇所により圧迫される臓器から自覚症状が現れます。膀胱なら尿の頻度が多くなり、腸を圧迫すれば便秘や腹痛などの症状が現れます。
進行が進むと他の臓器などのへの転移の可能性があるので定期的な身体検査は怠らにようにしましょう。
癌
癌ができると硬いしこりができます。また、癌によってリンパ節が炎症を起こし、リンパ節が腫れる事があります。癌によるしこりは1~2cm程度のものが多く、触っても動きがなく硬い感じがする事と、段々大きくなるという特徴があります。
硬い感じがするしこりは他の病気と大きく違う所なので、見つけた場合は注意しましょう。
中には固くなく水を含んだ様なグミのような感触の柔らかい物もあります。この場合は良性の場合が多いでしょう。しかし、良性のしこりの場合でも悪性のものに変化する可能性がありますので注意深く観察をしましょう。また、異変があればすぐに診察を行うようにしましょう。
原因
癌が発生する原因は細胞の生まれ変わりにあります。人間の細胞は90〜120日ほどで新しい細胞に生まれ変わります。その時に、細胞が正常に生成されずに間違った形で生まれ変わってしまいます。その場合には本来はその細胞を省く機能が白血球に備わっているので、省かれるのですが、これが行われなかった場合に癌となります。
これは誰にでも起こりうることで65歳以下では10人に1人、75歳以下では5人に1人は癌が発生します。
この様な悪性のしこりが発生する確立は10%ほどです。しかし、10%と発症の確立が低いことが発見を遅くしている原因でもあります。少しでも異変を感じた際は、自己判断せず医者に診断してもらいましょう。
鼠径ヘルニア
身体の一部が正しい位置からはみ出てしまう「ヘルニア」が鼠径部で起きる病気です。一般的に脱腸と呼ばれるのがこの病気です。
先天性の場合もありますが、成人の場合は身体の組織が弱くなっている場合や便秘気味・肥満気味の人に起こりやすいと言われています。鼠径ヘルニアには、外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、太ももヘルニアの3つのタイプがあり、外鼠径ヘルニア・内鼠径ヘルニアの場合は腸壁の外側、太ももヘルニアの場合足の血管側にヘルニアが起こります。
ヘルニアが起こると、筋肉の外側に腸がはみ出します。しこりに見えているのは腸なので、やわらかく、横になると引っ込むという特徴があり、これが他の病気によるしこりとは大きく違います。また、立っているのがつらい、息苦しいなどの症状が出ます。
放置していると、飛び出した腸を筋肉が締め付ける事につながり、壊死してしまう恐れがあるため治療が必要です。太ももヘルニアの場合特にこの傾向が強いので気をつけましょう。近年では日がえりでの手術も可能になっています。
原因
加齢による筋肉の衰えや、若い人でも長時間の立ち仕事などでお腹の筋肉に負担がかかりすぎ、発症する可能性があります。その他にも喘息や便秘などが関係して併発してしまうこともあります。
最初はこのしこりのようなものは柔らかいものが多く、押すと引っ込み痛みも感じません。しかし、経過と共に痛みが発生するようになり、硬くなったり、引っ込まない場合は悪化の傾向で緊急に手術をしなければいけない場合もあります。
梅毒
梅毒トレポネーマという細菌に感染して起こる病気で、母子感染や性的接触により人から人に細菌感染する性感染症の病気です。多様な症状が出るためなかなか何の病気が分かりづらく、症状が進行すると臓器に腫瘍が発生します。現在は抗生物質があるためそこまで悪くなる事はありませんが、昔を舞台にした映画などでは「梅毒にかかって鼻が取れる」というようなかなり重めの話を見かけます。
梅毒でしこりが発生するのは、かなり初期の段階で、感染した部位にちいさなしこりや湿疹が出ます。これらはあずき大程度の赤いしこりで、押しても痛みがなく、軟骨のような感触です。しこりは一ヶ月ほどで自然になくなりますが、菌は身体に残っているので、点滴や薬での治療が必要です。
性器ヘルペス
ヘルペスウイルスによるウイルス性感染症です。性器ヘルペスの場合、下半身の神経に潜伏する所が特徴です。むずがゆさや赤いぶつぶつができ、激しい痛みを伴います。全身に長期間の影響がなく、命を脅かす病気ではありませんが、痛みが強いのでかかってしまうととてもつらいと言われています。
病気に抵抗するためにリンパ節が腫れる事があります。
鼠径リンパ肉芽腫
性病の一つで、日本では非常にめずらしいですが、アフリカや東南アジアではよく見られる病気です。クラミジアという菌に感染する事で起こります。
鼠径リンパ節が腫れて圧迫すると痛みを生じます。発熱、頭痛、湿疹などが併せて起こる事があります。
変形性股関節症
鼠径部には股関節があるため、ここで炎症が起きるとしこりが診られる事があります。加齢や怪我などによって関節の軟骨がすり減ったり骨の変形が起こる病気です。
初期には足の付け根のこわばりがあり、歩き始めに痛みが起こります。症状が進行するにつれて歩きにくさや痛みが強くなり、日常生活に支障が起こります。炎症が起こるので、リンパ節が腫れる事があります。
特に女性に発症の偏りが見られます。変形性股関節症の症状によく似た股関節の病気には突発性大腿骨頭壊死症や大腿骨頸部骨折や慢性関節リウマチや股関節炎などがあります。
足の付け根にしこりを見つけたら
前述の通り、様々な病気の可能性がありますが、一般的にはしこりが段々大きくなる場合や弾力がなく硬い場合、外から触ったときにぐりぐりと動く感じがない場合に大きな病気の可能性があるとされています。
- 粉瘤…整形外科
- 脂肪腫…皮膚科か形成外科
- 変形性股関節関節症…整形外科
- リンパ節の腫れ…内科
での治療が行われます。生理周期との関連がある場合は婦人科を受診すべき場合もありますが、自分では分かりにくい事も多いので、この病気、と決めつけずに診察を受けるよう心がけましょう。
風邪によるリンパ節の腫れの場合、すぐに風邪薬を飲む事でリンパが働かなくなり、風邪がいつまでたっても治らない場合があります。安静にして栄養を取り、水分を採って治す方がよいでしょう。
同様に、怪我によるリンパ節の腫れの場合も、消毒液を多用するよりも自然治癒力を活かした方がよい事があります。もちろん深い傷やかみ傷の場合はすぐに医療機関に行きましょう。
足の付け根のしこりの予防方法
様々な病気によってしこりができる可能性があるので、予防方法を絞る事はできませんが、リンパの腫れは身体の免疫力が低下している際に起こりやすい症状です。また、リンパの流れが滞ることもよくありません。ストレスを溜めず、休息をしっかり採るように心がけましょう。
効果の期待できる予防法、対処法を紹介します。
運動
また、リンパは心臓につながっていないので、心臓のポンプ機能に頼る事ができません。筋肉の力で流れているので、筋肉を鍛える事で流れをスムーズにし、滞りを避ける事ができます。
基本的にはリンパの腫れは体内に侵入した菌を撃退するためにリンパが戦っているときの現象として引き起こるものなので、時間とともにこの腫れは治まっていきます。女性では生理前などにこの様な症状が現れることがあります。
しかし、時間が経過してもこの腫れが引かないときや、大きくなったり硬くなるなどの変化が見られる場合はこの症状の変化を記録しておき医師に報告しましょう。
マッサージ
リンパマッサージをする場合、膝にあるリンパ節から鼡径部のリンパ節に向けてマッサージします。そんなに力を入れる必要はなく、撫でるような力で十分です。リンパマッサージ前に水を飲んでおくと効果がより出ると言われています。足のむくみ解消にも効果が期待できるので、ぜひ試してみて下さい。
特に股関節部分に症状が現れている場合のマッサージ方法としては床にあぐらをかいて座り、股関節に手をあてがい、上半身の力を抜いて体重をかけながら息を吐きつつゆっくり押していきます。上から下に流すようにしてマッサージを行うと良いでしょう。
まとめ
しこりは癌の症状の一つとして良く聞かれるため、見つけてしまうと癌ではないかと気になってしまいます。リンパ節の腫れであれば、基本的にはそれほど心配しなくても大丈夫です。普段から規則正しい生活を心がけ、免疫力を高めておく事でリンパ節の腫れを防ぐ事ができ、他の病気に対しても抵抗できるようになります。
しかし、明らかに大きさが変化している場合や、ぐりぐりと動く感覚がなく、硬いしこりの場合や、しこりに痛みがある場合、他の症状が同時にある場合には放っておかず、早めに医療機関での診断を受けて下さい。
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