男尊女卑を女性が感じるにはどういう場面?男尊女卑の歴史も知ろう!

「男尊女卑」という言葉は、いわゆる女性差別の問題と絡めて良く用いられるので、知らない人は少ないのではないでしょうか。「男尊女卑」とは、男性を重視・優先させて、女性を軽んじる考え方のことを意味します。この「男尊女卑」という考え方こそが、女性差別の底流に流れる考え方と言えるでしょう。

現在は、日本国憲法によって性別による差別は禁止されていますが、女性側からすると未だ男尊女卑と女性差別は残っていると感じる場面が少なくありません。そこで今回は、「男尊女卑」の歴史、女性が男尊女卑を感じる場面について、ご紹介したいと思いますので改めて女性差別を考える参考になれば幸いです。

「男尊女卑」の歴史

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そもそも「男尊女卑」という考え方は、いつ発生したのでしょうか?女性差別について議論するのであれば、まず「男尊女卑」という考え方の成り立ちについて知っておく必要があるでしょう。

そこで、まずは「男尊女卑」という考え方の歴史について、ご紹介したいと思います。

狩猟採集の時代

歴史的にみると、農業や牧畜が広まる以前の狩猟採集の時代にあっては、男尊女卑という概念は存在しなかったと考えられています。

その理由は、狩猟については体格に勝り力が強い男性が担当し、木の実などの採集は女性が担当することで、上手く仕事を男女で分担していたからです。むしろ、狩猟採集の時代では、子供を産む女性の神秘性が崇拝の対象されていたと考えられています。例えば、縄文時代の土偶などは、女性を模したものが多く出土しています。

ですから、狩猟採集の時代にあっては、性別による合理的な役割分担はあっても差別は存在しなかったと考えられ、いわば男尊女尊社会あるいは母系優位の女性社会であったと言えるのです。

農業・牧畜が広まって以降の時代

人間社会で農業や牧畜が始まると、穀物の貯蔵や家畜の増加といった形で富が蓄積していきます。そして、天候不順などが起きると食料不足により、蓄積した富の争奪を目的に戦乱が生じます。戦乱では体格に勝り力の強い男性に優位性があります。それゆえ、男尊女尊社会あるいは母系優位の女性社会が崩れ、父系優位の男性社会へと移行していくようになります。

このような流れは世界的なものであり、放牧民族や農耕民族といった民族性は関係ありません。戦乱が発生するのは概ね紀元前7~4世紀頃ですが、ほぼ同じ頃にヨーロッパではキリスト教の聖書が生まれ、中国では儒教などが生まれています。聖書や儒教などは、後の男尊女卑思想の根拠となるものです。そして、世界各地で戦乱を繰り返す中で、男尊女卑思想が宗教と結びついて、徐々に強化されていくことになるのです。

特にヨーロッパにおいては、中世の封建社会によって女性の結婚に税金が課されたり、キリスト教では女性の処女性が重視されるなど、女性蔑視の価値観が社会に浸透していきます。

近代から現代までの時代

第一次世界大戦では大量破壊兵器が登場して、徴兵された男性が多く犠牲になった結果、女性が労働力として社会進出します。

ここに至り、再び女性は男性と同様に仕事をするようになり、女性の参政権獲得を目指す女性解放運動が始まります。そして、第二次世界大戦が終わると、現在に続く性差別撤廃を訴える第二次女性解放運動が始まり、先進国を中心に男尊女卑思想を覆す法律の整備がされていくわけです。

ただし、先進各国でも法律上は男女平等であっても、社会から男尊女卑思想が根絶したわけではありません。例えば、会社で女性社員が男性からセクハラを受けた、というニュースが日本だけでなく世界でも無くならないことからも明らかです。

日本社会における男尊女卑の歴史

日本においても狩猟採集中心の縄文時代にあっては、男尊女卑の考え方は存在しなかったと考えられています。農耕文化が広まる弥生時代以降は、日本でも戦乱が発生しはじめるので、徐々に男尊女卑の考え方が広がっていきます。鎌倉時代以降に封建制が深まっていくにつれ、武家社会では政略結婚など女性が政治の道具として利用されるなど男尊女卑の考え方が広がっていきます。一方で、農民や商人の社会では、武家社会ほどではなかったようです。

しかしながら、江戸時代に入って江戸幕府が朱子学を官学と定めたことで、日本社会で広く女性を下に位置付ける男尊女卑思想を含む儒教思想が広く定着していきます。そして、明治時代になって課税を世帯ごとに行うために家父長制が民法に規定されます。ですから、日本社会全体に男尊女卑思想が完全に浸透したのは、明治民法によると言えるでしょう。

日本でも第一次世界大戦あたりから西欧の影響で男女同権を訴える思想が女性知識人の一部で起こり始めますが、女性参政権の獲得は第二次世界大戦後の民法改正によってです。以降は、日本も男女平等の法律整備を進めますが、西欧の先進各国よりも進展は遅く、社会にも男尊女卑思想が未だ残っています。

女性が男尊女卑を感じる場面

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このように男尊女卑の考え方は、非常に長い時間をかけて人間社会に浸透しています。それゆえ、男女平等を図る動きは人間という共同体の歴史からみれば、まだまだ日が浅いものにすぎず、法整備がされても男尊女卑の考え方が根絶されたとまでは言えません。

そこで、多くの女性が男尊女卑だと感じる場面について、ご紹介したいと思います。

女性に結婚と出産を求める社会的風潮

女性が男尊女卑だと感じてしまうケースの最たるものは、妙齢の女性に対して結婚と子供を産むことを暗に求める社会的な風潮と言えるでしょう。

例えば、20代から30代の未婚女性に対して「女性なのに、まだ結婚しないの?」あるい「どうせ寿退社するんでしょ?」といった発言や、既婚女性に対しても「子供は、まだ?」あるいは「早く子供を作らないと、大変だよ」といった発言が浴びせられます。

たしかに、多くの女性が結婚をして子供を生んできたという客観的な事実が存在します。しかしながら、そのような事実が生じた理由は、男女平等の社会整備が不足していたために、多くの女性には選択肢が主に結婚と育児しかなかったからです。

現在は男女平等の法整備が進み、セクハラ防止への意識も高まりつつありますが、それでも上述のような発言があるということは、まだまだ社会的に男尊女卑の考え方が残っていることを示す証左と言えるでしょう。

家事や育児は女性の仕事だとする男性の価値観

女性が男尊女卑だと感じてしまう場面として、家事や育児は女性の仕事だとする男性に根強く残る価値観も挙げられるでしょう。

たしかに、育児において赤ちゃんへの母乳での授乳は、物理的に母親である女性にしかできません。しかしながら、ミルクでの授乳は女性でなくとも父親である男性にもできますし、そもそも子育ては妻と夫が共同して行うべきものです。

また、夫婦で共働きをしていても、なぜか料理や洗濯といった家事は妻である女性に押し付けられる傾向が強いとされます。夫婦の合意で女性が専業主婦となっているならまだしも、夫婦ともに仕事をして、いずれもお金を稼いでいるにもかかわらず、夫である男性の家事分担比率が少ないのは、根強く男尊女卑の考え方が残っていると言われても仕方ないでしょう。

結婚時の改姓

現在の日本の民法では、男女が結婚すると夫婦同姓とすることになっており、夫婦別姓は認められていません。そして、結婚に際しては夫か妻の姓のいずれかを選ぶわけですが、現在は全体の95%以上が夫である男性の姓を選んでいるのだそうです。

夫婦となる男女が話し合って合意の上で、男性の姓を選択しているのならば問題ないかもしれません。しかしながら、仕事上で旧姓を使いたい女性にとっては、このような事実上は男性の姓への変更を強いる制度に対して、男尊女卑の考え方が残っていると感じられる可能性は否定できないでしょう。選択的夫婦別姓制度についての議論もされているようですので、今後の展開に注目が集まります。

職業に関する女性の取り扱い

女性が男尊女卑だと感じてしまうケースは、職業に関する女性の取り扱いにも多々生じます。

男女雇用機会均等法など法整備がされてきたことで、職業選択に関して明らかな女性差別は無くなってきています。例えば、以前はほとんど男性に限定されていた航海士などの職業でも、現在は女性航海士が増えてきています。

しかしながら、細かく見ていくと、職業に関する女性への間接差別は残っていたりするのです。例えば、会社に来客があった際に、来客へのお茶出しは女性の仕事とされているケースがあります。女性だけがお茶出しをしなければならない合理的な理由は存在しません。

また、大手企業では無くなったようですが、家族手当の支給は世帯主に限定する社内規定がある会社もあるようです。この場合、世帯主は夫である男性がほとんどですから、女性は手当が支給されません。

さらには、医師や警察官など女性の場合だけ殊更に「女医」や「婦警」と呼んで特別視するのも、一種の女性差別であって差別用語と言えるかもしれません。というのも、男性がそれらの職業についても特別視されないからです。

まとめ

いかがでしたか?「男尊女卑」の歴史、女性が男尊女卑を感じる場面について説明してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?

男尊女卑の考え方は、人類の歴史の中で牧畜や農耕がはじまり富を蓄積できるようになってから、長い時間をかけて浸透し人間の意識の中に定着してきました。そして、第二次世界大戦後に先進国を中心に女性解放運動が起こり男女平等の考え方が広まりつつありますが未だ道半ばであるので、男尊女卑の考え方が完全には払拭されていません。それゆえ、女性差別や女性に対するセクハラといった言動が絶滅しないわけです。

ですから、これからも女性が根気よく男女平等を訴えていくことで、男尊女卑の考え方を払拭していくことが必要と言えるでしょう。ぜひ本記事をきっかけにして、改めて女性差別について考えてみてください。

  
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