肩甲骨の痛みの原因は?左右の痛みの症状で分かる病気は?治療法や対処法も紹介!

肩甲骨を知らない人は、いないのではないでしょうか?頭蓋骨と並んで子供でも知っている骨の一つですよね。それは、肩甲骨が比較的大きな骨で、しかも肩や腕を動かす際に、その動きが視認できるからでしょう。

肩甲骨に痛みが現われる場合、この肩甲骨の大きさがキーポイントになります。というのも、その大きさ故に肩甲骨につながる筋肉や神経の数が非常に多いのです。そして、これらの神経が予想もしない内臓から肩甲骨に痛みをもたらす場合があるのです。

そこで、今回は肩甲骨周辺に現われる痛みについて、痛みの原因となる疾患や痛みの現われる仕組みの概要をまとめてみましたので、参考にしていただければ幸いです。

肩甲骨とは?

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まずは、肩甲骨に関する基礎知識をおさらいしたいと思います。

肩甲骨とは?

肩甲骨は、人の肩を構成する骨格組織の一つです。肩甲骨は、内臓を保護するように存在する肋骨を背中外側から覆うように位置する三角形状の大型の骨です。

そして、肩甲骨は、人の肩に左右一つずつ存在して対をなしています。

肩甲骨につながる筋肉

この肩甲骨につながる筋肉の数は、非常に多いことが知られています。

  • 上肢帯筋(棘下筋・棘上筋・肩甲下筋・小円筋・大円筋・三角筋)…肩を動かす筋肉
  • 棘腕筋(広背筋・僧帽筋・小菱形筋・大菱形筋・肩甲挙筋)…背中を動かす筋肉
  • 上腕筋(上腕三頭筋・上腕二頭筋)…腕を動かす筋肉
  • 胸腕筋(小胸筋・前鋸筋)…胸を動かす筋肉
  • 肩甲舌骨筋…舌骨を動かす筋肉

肩甲骨の役割

肩甲骨は、このように非常に多くの筋肉の起点や終点になることで、上半身の動きを自由にする役割を担っています。

特に上肢帯筋との関係では、肩関節が自由に上下左右と動かすことを可能にしています。この肩関節の動きは、人を含む霊長類と四足歩行の哺乳類との最大の違いと言っても過言ではありません。

また、棘腕筋や上腕筋との関係では、肩から先にある腕の動きに自由を与えています。ですから、肩甲骨がなければ肩や腕を自由に動かすことはできないのです。

さらに、棘腕筋の一部や胸腕筋との関係で、肋骨を引き上げる作用もあることから、姿勢の維持にも寄与しています。

肩甲骨の痛みの概要

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このように様々な筋肉とつながる肩甲骨は上半身の動きの自由度を高めます。一方で、肩甲骨が様々な筋肉とつながることに起因して、肩甲骨周辺は痛みが現れやすい部位でもあります。

そこで、肩甲骨周辺の痛みについて明らかにしたいと思います。

肩甲骨の痛みの症状は千差万別

肩甲骨は上述の通り多くの筋肉とつながっています。また、多くの筋肉とつながっているということは、その筋肉を動かすための多くの神経や血管も通っているということでもあります。

したがって、肩甲骨に現れる痛みについては、本当に人それぞれ、千差万別と言えるでしょう。すなわち、現われる痛みについても、肩にコリが感じられるような軽いものから、電気が走るような強い痛みのものまで、人それぞれに多様な痛みが生じます。

肩甲骨の痛みを敢えて分類してみると

このような肩甲骨に現れる多様な痛みについて、敢えて痛みの発生部位別に分類するならば、次のような3つに分類できます。

  • 左右両方の肩甲骨の全体的な痛み
  • 右側の肩甲骨の痛み
  • 左側の肩甲骨の痛み

左右両方の肩甲骨の全体的な痛み

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では、左右両方の肩甲骨に現われる全体的な痛みについて、どのような疾患があるのか見ていきたいと思います。

肩こり

肩こりは、首筋から肩甲骨のあたりの筋肉(僧帽筋)に生じる不快感・こり感・痛みなどの症状の総称です。当初は筋肉の不快感やこり感といった症状が、慢性的になってくると筋肉や肩甲骨周辺に痛みを感じるようになります。

肩こりの原因

肩こりは、何らかの原因によって筋肉が持続的緊張・継続的収縮を起こすことで、局所的に血液の循環障害(血行障害)が生じて疲労物質が蓄積することによって生じると考えられています。

そして、この筋肉に持続的緊張・継続的収縮を引き起こす原因は、次のようなことが挙げれます。

  • 猫背などの姿勢の悪さ
  • PC作業など継続的に前のめりになる姿勢
  • ショルダーバッグなど重いもので長時間筋肉に負荷をかける
  • 冷房による冷え
  • 運動不足
  • ストレスなどの心因性疲労

肩こりの解消法

肩こりを解消するには、筋肉の緊張や収縮をほぐして、局所的な血液の循環障害を改善することが必要です。次のようなことを意識すると、肩こりが解消される可能性があります。

  • 姿勢を良くする、姿勢を良くしようと意識する
  • 適度に肩甲骨周辺の筋肉を動かす、ストレッチを行う
  • 入浴などで温めることにより血流を良くする

肩こりの治療方法

上記の解消法で肩こりが解消されない場合、次のような治療が行われます。

薬物療法

消炎鎮痛剤、筋弛緩剤などが投与されます。消炎鎮痛剤で代表的な外用薬は湿布ですが、内服薬も用いられることがあります。

理学療法

鍼灸、マッサージ、温熱療法、運動療法などを通じて、肩甲骨周辺の筋肉の動作能力を回復させます。

それでも肩こりが続く場合

治療を行っても、肩こりが解消しないようならば、別の疾患を疑うことになります。何らかの重い疾患の前兆かもしれません。

頸椎症(けいついしょう)

頸椎症は、首の骨である頸椎が加齢によって、ひびが入ったり、徐々に潰れたりするなどの変性に伴って現われる首や肩甲骨付近の痛みなどの症状の総称です。

頸椎の変性は、老化現象であって30代以降の誰にでも生じますが、痛みなどの症状が現われることで初めて頸椎症と診断されます。

頸椎症は、症状の現われ方で次の3つの疾患に分類されます。

  • 変形性頸椎症
  • 頸椎症性神経根症
  • 頸椎症性脊髄症

変形性頸椎症

変形性頸椎症は、頸椎の変性によって首の痛みや肩こりに似た症状(肩甲骨付近の筋肉の不快感・こり感・痛み)が現われる疾患です。

変形性頸椎症の治療は、肩こりの場合と同じく薬物療法や理学療法による治療が行われます。また、痛みの生じる姿勢を避けたり、適度な運動によって首や肩甲骨付近の筋肉をほぐしておくことも重要です。

頸椎症性神経根症

頸椎症性神経根症は、変形性頸椎症の症状に加えて、腕にしびれや痛みが現われる疾患です。腕のしびれや痛みについては、どちらか片方の腕に現れることが多いとされています。

腕のしびれや痛みの原因は、頸椎の変性によって、頸椎から腕につながる神経根が圧迫されることです。

頸椎症性神経根症の治療も、変形性頸椎症とほぼ同じ治療方法がとられます。痛みが強い場合は、局所麻酔による神経ブロック療法が行われる場合もあります。

頸椎症性脊髄症

頸椎症性脊髄症は、変形性頸椎症の症状に加えて、両手や両足にしびれが現われる疾患です。また、箸が使いづらい、字が書きづらい、ボタンがかけにくいといった手先の細かい作業が不自由になる手指の運動障害、歩行障害、排尿障害が現われる場合もあります。

これは、頸椎の変性によって、脊髄が圧迫されることが原因です。

頸椎性脊髄症の治療は、手指の運動障害・歩行障害・排尿障害が現われていなければ、変形性頸椎症と同様に薬物療法や理学療法が選択されます。

手指の運動障害・歩行障害・排尿障害が現われている場合は、外科手術による治療が行われます。

頸椎椎間板ヘルニア

首の骨である頸椎は、7つの骨で構成されています。そして、その頸椎の間には、椎間板という軟骨が存在し、衝撃緩和の役割を担っています。

頸椎椎間板ヘルニアは、何らかの原因によって椎間板が後方に飛び出してしまうことで、脊髄や神経根を圧迫してしまう疾患です。

頸椎椎間板ヘルニアの症状

椎間板が飛び出す場所によって、頸椎椎間板ヘルニアの症状は様々な現われ方をします。

  • 首の痛みや肩こりに似た症状(肩甲骨付近の筋肉の不快感・こり感・痛み)
  • 腕や手先の痛み、しびれ、手指の運動障害
  • 歩行障害、排尿障害
  • 頭痛、めまい、目の奥の痛み

頸椎椎間板ヘルニアの原因

頸椎椎間板ヘルニアは、様々な原因によって発症します。

  • 加齢による頸椎椎間板の変形
  • 猫背など姿勢の悪さが長期間に及んだことによる頸椎椎間板の変形
  • スポーツなどの衝撃による頸椎椎間板の変形
  • 外傷による頸椎椎間板の変形

頸椎椎間板ヘルニアの治療方法

症状が比較的軽い場合は、薬物療法や理学療法を選択します。場合によっては、神経ブロック療法も行われます。

一方で、歩行障害や排尿障害など重い症状の場合は、外科手術による治療が行われます。

肋間神経痛

肋間神経痛は、何らかの原因によって肋骨に沿って走行する神経が圧迫されて生じる痛みのことです。肋間神経痛は疾患名ではなく、あくまで症状であることには注意が必要です。

肋間神経痛の原因は、多くの場合で不明とされていますが、姿勢を変えるちょっとした動きで神経痛のような激痛が走るのが特徴です。

胸部に痛みが現われることが多いとされていますが、肩甲骨の内側に痛みが現われたり、肩甲骨の内側が突っ張るような感覚が現われたりすることがあります。

右肩の肩甲骨の痛み

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次に、右側の肩甲骨に現われる痛みについて、どのような疾患があるのか見ていきたいと思います。肩こりがなかなか解消されず、しかも右側だけという場合は、次のような内臓疾患が隠れているかもしれません。

肝臓疾患の関連痛

右側だけの肩甲骨周辺に肩こりに似た症状(肩甲骨付近の筋肉の不快感・こり感・痛み)が現われる場合は、肝臓疾患の関連痛の可能性があります。肝臓疾患の例を挙げるならば、肝がんなどが考えられます。

関連痛とは?

関連痛は、痛みの原因となる疾患が発生している部位とは異なる部位に感じる痛みのことです。つまり、肝臓に何らかの疾患が発生したのに、肩甲骨周辺に痛みを感じることを関連痛と言います。

関連痛は、放散痛とも呼ばれます。

関連痛の発生メカニズム

身体の隅々まで張り巡らされた神経は、脳から脊髄を通じて各部位に分岐していきます。ですから、身体の各部位で痛みを受けると、痛みの信号を脊髄を通じて脳に送ります。つまり、痛みの信号が身体の各部位から脊髄に集約されて脳に伝えられるのです。

このように痛みの信号が脊髄に集約されてから脳に伝えられることで、脳が痛みの発生元を正確に判別できないことで生じるのが関連痛です。

簡単に言いますと、脳が神経によって届けられた痛みの信号を誤認知しているのが関連痛と言えます。たとえば有名な脳の誤認知の例では、かき氷を食べて喉の神経が刺激されたのに、こめかみが痛くなるということが挙げられます。

肝臓疾患の関連痛が肩甲骨周辺に現われる理由

では、肝臓疾患の関連痛が肩甲骨周辺に現れるのは、どうしてでしょうか?

それは、肩甲骨につながる小菱形筋や大菱形筋を支配する神経が肝臓ともつながっているからです。したがって、肝臓から発せられる痛みの信号が集約される過程で、肩甲骨付近と神経と集約されるために、脳が誤認知していると考えられるのです。

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれていますから、肝臓疾患を覚知するには重要なサインと言えるかもしれません。

胆道(胆管・胆のう)疾患の関連痛

肝臓疾患の関連痛の場合と同様に、右側だけの肩甲骨周辺に肩こりに似た症状(肩甲骨付近の筋肉の不快感・こり感・痛み)が現われる場合は、胆管や胆のうなどの胆道疾患の関連痛の可能性があります。

胆道疾患の例を挙げるならば、胆石発作、胆管がん、胆のうがんなどが考えられます。

胆道疾患の関連痛が肩甲骨周辺に現れるのも、肩甲骨につながる小菱形筋や大菱形筋を支配する神経が胆道にもつながっていることが原因です。胆道も肝臓も、身体の右側にある臓器ですから、脳の誤認知も右側に現われるのですね。

左側の肩甲骨の痛み

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では反対に、左側の肩甲骨に現われる痛みについて、どのような疾患があるのか見ていきたいと思います。肩こりがなかなか解消されず、しかも左側だけという場合は、次のような内臓疾患が隠れているかもしれません。

心臓疾患の関連痛

左側だけの肩甲骨周辺に肩こりに似た症状(肩甲骨付近の筋肉の不快感・こり感・痛み)が現われる場合は、心臓疾患の関連痛の可能性があります。

心臓疾患の例を挙げるならば、心筋梗塞や狭心症などが考えられます。心筋梗塞の前段階が狭心症です。狭心症の主症状は前胸部の痛み・動悸・不整脈などですが、関連痛として左肩甲骨周辺に痛みが現われる場合があります。

心臓疾患の関連痛が肩甲骨周辺に現われるのも、メカニズムは右側の臓器の場合と同様で、左右が逆転したイメージです。心臓は左側にある臓器ですから、脳の誤認知も左側に現われるということです。

胃腸疾患の関連痛

心臓疾患の場合と同様に、左側だけの肩甲骨周辺に肩こりに似た症状(肩甲骨付近の筋肉の不快感・こり感・痛み)が現われる場合は、胃腸疾患の関連痛の可能性があります。胃腸疾患の場合は、左肩甲骨の下部や内側にこり感や痛みを感じることが多いようです。

胃腸疾患の例を挙げるならば、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどが考えられます。もちろん、これらの疾患の主症状は胃腸部に現われますが、神経集約後の脳の誤認知として肩甲骨周辺にも痛みが感じられることがあるということです。

膵臓疾患の関連痛

膵臓は胃の後方背中側に位置していますので、胃腸疾患の場合と同様に、左肩甲骨の下部や内側にこり感や痛みを感じることが多いようです。このように左側だけの肩甲骨周辺に肩こりに似た症状(肩甲骨付近の筋肉の不快感・こり感・痛み)が現われる場合は、膵臓疾患の関連痛の可能性もあります。

膵臓疾患の例を挙げると、膵炎、膵臓がんなどです。

まとめ

いかがでしたか?肩甲骨周辺に現われる痛みについて、痛みの原因となる疾患や痛みの現われる仕組みなどについて、ご理解いただけたでしょうか?

肩甲骨周辺の痛みの大部分は、やはり肩こりです。肩こりも慢性化してしまうと、とても辛い痛みを生じます。また、加齢による頚椎症も良く見られます。加齢による頸椎の変性は、老化現象であるので、誰にでも発症可能性があるからです。

しかし、肝臓・胆のう・心臓・胃腸・膵臓といった肩甲骨と関係のなさそうな臓器の疾患が、人の神経と脳の不思議な仕組みによって、肩甲骨周辺に痛みをもたらすこともあるのです。いわゆる関連痛と呼ばれるものです。

ですから、肩こりのような症状が感じられたら、放置せずに肩こりの解消法の実施や治療をしてみてください。そして、それでも解消しないようならば、病院でしっかりと検査してもらうことをお勧めします。もしかしたら、命に関わるような内臓の疾患が隠れているかもしれませんから。

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