hspとは?その特徴や受け入れ方を知って、対処しよう

人にはそれぞれ個性があります。気の短い人、ゆったりと何かを待つのが苦痛ではない人、穏やかな人、おっちょこちょいな人…一人一人それぞれ異なるからこそ、人との出会いが楽しく、また、人間として成長の場にもなるものです。

しかし、そのような“その人ならではの性質”が、生きづらさにつながっている人もいます。

皆さんは「HSP」という言葉をご存知でしょうか?これは、あまりにも感受性が強く、それが起因して生きづらさに留まらず、日常生活にまで支障が出てくる人のことを示します。

感受性が強いと聞くと、豊かに感情を表現できたり、ほかの人にはない素晴らしい才能を持ち合わせているような印象を抱きがちですが、人によっては、長所でもあるべきその性質が、苦痛の源になっていることもあるのです。

そこで、ここでは、HSPとはどのようなものなのか、少しでも苦痛を和らげる方法はあるのかなどを、ご紹介いたします。

HSPの人に見られる特徴

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HSPは、アメリカの心理学者であるエイレン・アーロン博士が提唱したものです。「Highly Sensitive Person」の頭文字をとったもので、「非常に敏感な人」という意味を示します。

実は、5人に1人がHSPであるとも言われており、日本人はとくに多く見られるのだそうです。また、エイレン・アーロン博士は、これは「病気」ではなく「生まれ持った特性」であるにも関わらず、多くの人から共感を得られないのだと述べています。

では、HSPを抱える人たちには、どのような特徴があるのでしょうか?

ほかの人に比べて、些細なことにもよく気がつく

HSPの人は、情報を脳で処理する際に、HSPでない人に比べて、深く情報処理する能力を持っていると言われています。「よく気がつく」というよりは「気がつきすぎる」という表現の方が近いかもしれません。

しかし、人間だけではなく、犬や猫、鳥や馬などの、人間以外の100種類以上の生物がHSPを持っており、決して珍しいことではありません。

「よく気がつくこと」だけにフォーカスせず、その先のアクションを踏まえて見直してみると、「よく気がつく→慎重に行動する」という流れが自然です。すなわちこれば、生き残るために生物として備わっている能力の一つであるとも言えるのです。

しかし、そのような慎重さは、多くの人に“神経質”、“引っ込み思案”といった印象を与え、本人がそのようなつもりがなくても、「内気な人」と思われることもしばしばあるようです。

物事に圧倒されやすい

1つの情報を深く処理するHSPの人は、情報を取り入れる量や時間、情報の種類によって混乱を起こしやすい傾向にあります。

たとえば、1時間に10の情報が来ても、通常の人であれば何の問題もなく、単なる情報として受け入れられると仮定してみましょう。しかし、HSPの人にとっては「気がつきすぎる」という特性から、1時間に10の情報量は、あまりにも多すぎて混乱を招いてしまうのです。これは、長時間新しい経験をするような環境にさらされた場合も同様です。

また、暴力的なテレビや映画を見ると、それが作られた物語の1シーンであるにも関わらず、「誰かが人を殴っている」といった刺激の強い画にダメージを受けます。

すると、わけもなく暗い気持ちになったり、「どうしてこんなシーンを作ったのだろうか」「これらのシーンは何を伝えたいのだろうか」というように内に情報を深く掘り下げてしまうことで、憂鬱さを招くトリガーになってしまいます。

コミュニケーションが苦手

HSPの人達にとっては、人とのコミュニケーションで疲弊することも珍しくありません。

人の顔色や、声色、表情や仕草、言葉などを、無意識のうちに「情報」として取り入れてしまうため、相手を気遣いすぎたり、その場は難なく過ごすことができても、一人になった途端、どっと疲れが出てくることがあります。

とくにネガティブな気持ちのときには、「もっとこうすれば良かったのではないか」「相手はこんなふうに返してほしかったのではないか」と自分を責めてしまうケースも多々あるようです。

また、1対1のコミュニケーションに限らず、3人、4人の場合にはさらに“情報量”が増えるため、余計に疲弊しやすくなります。さらには、たとえ自分がその会話に参加していなかったとしても、友達同士や家族が喧嘩している環境にさらされると、双方の言い分や気持ちが理解できるため、関係のない自分までも、まるで喧嘩に参加したかのように疲れてしまうのです。

こういった傾向が起因し、徐々に人とのコミュニケーションに対する苦手意識が強くなり、先にも述べた「引っ込み思案」あるいは「気にしすぎ」といった印象を周囲に与えてしまいます。

しかし、人によっては少し異なるケースもあります。それは、よく気がつく特性から、他者が喧嘩しているときの仲裁役になることが多くなるパターンです。

現在の状況と相手の言い分、すれ違っている部分がどこかといったことを双方に伝え、喧嘩による感情の高ぶりで、お互いが見えなくなっていることを明確にしてあげることで、仲直りへ導く役割を担ってしまうのです。

このような機会が増えると、徐々に疲弊するだけではなく、自分の感情を押し込めてしまうケースもあるので、人との間で大きな生きづらさを感じてしまうことになります。

HSPチェックリスト

HSPを提唱するエイレン・アーロン博士は、HSPの傾向を見分ける以下のようなチェックリストを公表しています。以下の項目に当てはまるものが多い場合は、HSPの傾向があるかもしれません。

  • 周囲の環境の変化に敏感に気がつく
  • 強い刺激を感覚に受けると圧倒されやすい
  • 人の気分や感情に左右される
  • 痛みに非常に敏感である
  • 忙しい日が重なると、一人で刺激から逃れる場所に閉じこもりたくなる
  • カフェインが苦手である
  • 強い光や香り、大きな音などにすぐに圧倒される
  • 想像力が豊かで、よく空想に耽ることがある
  • 美術や音楽などの芸術に深く感動する
  • 短時間にたくさんのことをすると混乱する
  • 他人が困っているときなどに、解決する方法をすぐに探す、あるいは提案する
  • 暴力的な映画やテレビを見るのが苦手である
  • 生活の変化に混乱する
  • 誰かと競争させられたり、観察されると緊張し、本来の力を出せなくなる。
  • 幼少期に、親や教師に「繊細だ」「敏感だ」「内気だ」と言われたことがある。

HSPを「生きづらさ」につなげないために

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エイレン・アーロン博士が述べたように、HSPは「病気」ではなく、「特性」なのであれば、本来ならば、もっとその特性を前向きに捉え、才能につなげられるはずです。

しかし、周囲との調和を意識する日本ではとくに、HSPといった特性は「生きづらさ」につながりやすいようです。このように問題視されているのも、それが病気だからではなく、マイナスに捉える人が多いことが起因しているのではないでしょうか。

そこで、ここでは、どのような視点を持てば、HSPの人たちが生きづらさを緩和できるのかといった、“捉え方”をご紹介いたします。

HSPだということを肯定的に受け入れる

HSPの人は、自尊心が低い傾向があるとも言われています。とくに周囲の共感を得られなかった経験が重なると、「自分は周りとは違うんだ」「こんな自分ではダメなんだ」とマイナスに物事を捉えてしまいがちです。

これでは、生きづらくなるのも無理はありません。しかし、角度を変えて、物事や感情を見てみるとどうでしょうか?

人と会うと、すぐに疲れてしまうのは、人の気持ちや感情を汲み取るのが上手な証と言えます。臆病なのではなく、慎重なのです。傷つきやすいのは、感性が豊かで繊細な心を持っている何よりもの証と言えるでしょう。

また、そのように、いろいろなことに気がつくということは、その分、気がつかない人に比べて考えることも多いはずです。すなわちそれは、人間的な成長や学びの機会を多く得られるということにもつながります。

自分が得た感情や情報を、そのまま心にしまうのではなく、一度プラスの言葉に置き換えてから胸にしまう癖をつけることで、少しずつ、自尊心を取り戻すことが大切です。自尊心を取り戻すということは、「鈍感になる」ということではありません。心身ともに健康に生きていくためには、自尊心なくして、ほかの人と共存するのは困難です。

生きる方法の一つとして、自分を肯定できる程度の自尊心を持ちましょう。

コミュニケーションのあり方を見直す

誰とでも上手くコミュニケーションをする必要はありません。HSPではない人にも、コミュニケーションが苦手な人はたくさんいます。

大切なのは、「他人とコミュニケーションをとることを諦めない」ということです。HSPの人は、気疲れするのを避けるため、コミュニケーションをとるのが億劫になってしまう人が多く見られます。

しかし、いくら他人の感情がわかると言っても、本当の気持ちは、当の本人のものなのです。“相手の気持ち”を“自分の気持ち”にする必要はなく、“相手の気持ちは相手のもの”であることをいつも心に留めておきましょう。

「つらいんだろうな」と相手の気持ちがわかったら、それを自分のものにしないということです。「~とあなたは思うのね」と心で述べて、感情を相手へ返しましょう。

一方、人の気持ちがよくわかるという傾向は、視点を変えると、誰かが喜んでいるとき、HSPの人はほかの誰よりも大きく共感できるということにもつながります。喜びは分かち合えることで、何倍にも膨らみ幸福感を双方にもたらします。

つらい気持ちに共感したら、感情は相手へ返し、嬉しいことに共感したときこそ、自分のことのように、思う存分共感することができれば、それは最高のコミュニケーションと言えるのではないでしょうか。

人間関係のあり方を見直す

コミュニケーションで述べたことは、人間関係においても同じことが言えます。すべての人と上手く関係を築く必要はありません。自尊心を持ち、HSPである自分が無理なく付き合える人や、自分を理解してくれる人達と絆を深めれば、広くなくとも、深く強い絆が生まれます。

人は、自分以外の人との間で成長を繰り返し続けていくものです。コミュニケーションを諦めず、人との関わりを楽しみ、疲れたらゆっくりと休む…自分らしく健やかに生きられるあり方を探しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。アメリカ合衆国の初代大統領ジョージ・ワシントン氏や心理学者のカール・ユング氏も、HSPだったと言われています。

感受性が強いということは、「生きづらさ」ではなく「一つの個性」であることを本人や周囲が理解し、それらをいかに肯定的・多角的に捉えていくかが、自分の人生を満喫するためのキーポイントと言えるでしょう。

「良い」「悪い」といった、人の判断基準を敏感にキャッチするのではなく、様々な物事に対して自分はどう思うのかといった「自分の判断基準」を、しっかりと持っておくことも大切です。

  
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