場面緘黙症とは?症状・特徴・原因・治療法を知ろう!

自分の子供が普段家ではとってもお喋りなのに、幼稚園や学校に行くと何故か喋らなくなる、または特定の友達しか喋らない、なんて事はありませんか?

「うちの子は内気な性格で」「普段はお喋りだけど人見知りで」と、性格的または時期的な問題だと思っていたら実は場面緘黙症という病気なのかもしれません。

では、場面緘黙症はどのような特徴があるのでしょうか?またその原因と改善方法を詳しく調べてみました。

場面緘黙症とは何か?

子供

あまり聞きなれない病名ですよね。自閉症やアスペルガー症候群などに比べあまり広く知られていないのがこの場面緘黙症で「喋れないのは家庭環境や育児のせい」など、周囲の偏見で多くの親御さんが心を痛め悩んでいるのが現状です。

この場面緘黙症とはどのような症状や特徴があるのかご紹介します。

場面緘黙症の症状

場面緘黙症は普段は問題なく話すのに、学校や職場などの「特定の場所」で言わなければいけない状況にたたされると不安や緊張から声を発する事が出来なかったり、小声になったり、質問に対しての回答が出るまで時間がかかったりする状態を指し、不安障害の症状の一つとされています。

緘黙(かんもく)とは「押し黙る」「口を閉じて何も言わない」という意味で場面緘黙症は選択性緘黙症とも言われ、選択された場面や特定の人に対して話さない状態が1カ月以上続くことがあります。

この症状は2歳から5歳の間に発症するとされていますが実際は6歳から8歳の間に診断される事が多いようです。これは言語や知能には全く問題がないうえに、生まれ持った性格(先天性)なものだと判断されてしまうため、普段生活しているうえではほとんど気付かれないからです。

「小さい頃、学校で友達や先生の前で話せなくて悩んでいたけど、大人になって初めて場面緘黙症という言葉を知った」「話せない自分が悪いのだと責めていたけど、場面緘黙症という不安障害の一つと知って、病気のせいなのだと分かったら安心できた」など、本人も大人になるまで気付かない事が多いようです。

場面緘黙症の特徴

場面緘黙症は人によって症状が違うことはあるのでしょうか?実際、場面緘黙症の方のさまざまな症状や特徴を調べてみました。

【場面緘黙症の特徴】

  • 普段、家族や慣れ親しんだ人とは問題なく話す。むしろ、とてもお喋りであることが多い
  • 学校や公共の場で、言葉が頭に浮かんでくるけど緊張して声を発する事が出来ない
  • 学校のトイレに行きにくかったり、給食を食べられない、体育などで着替えが出来ない場合がある
  • 学校で全く話せない場合や特定の人だけ、または2、3人と小声で話すことができる
  • 話せない事から表情がこわばってしまう。または無表情になってしまう
  • 幼い頃から喋らなくてもいいブロックやつみきなどの一人遊びが好きだった
  • 人との交流を避けてしまう傾向がある
  • 身体が硬直して思うように動かせないことがある(緘動)
  • 「話せない」という点から、学校での行事や活動などに対しても消極的になってしまう傾向がある
  • 自分から積極的に友達の輪に入ろうとはしない一方で、集団の中に身を置くのは苦にならず、傍らから眺めて楽しそうにしたりみんなの会話を聞いたり、非言語的手段(ジェスチャーや表情など)を用いてコミュニケーションを図ろうとする
  • 小さいことにも気をつかってしまう、繊細な性格。また執着傾向、完璧主義、知的好奇心が旺盛・感性豊か、などの性格的特徴がある

場面緘黙症の発症率

場面緘黙症の発症率はアメリカの資料によると1000人に7人と言われているようです。多くは幼い頃、2歳から5歳の間に発症するとされていますが日本では1000人に2人、または1000人に3人と明確な発症率の詳細はわかっていません。

また、男の子より女の子のほうが1.5~2倍も発症率が高いようです。

場面緘黙症の原因は何か?

子供2

場面緘黙症は幼い頃に発症するというデータがありますが、では一体何故そのような症状が起こるのでしょうか?また、原因は何なのでしょうか?

本人による、気質の問題(遺伝的要素)

場面緘黙児は行動抑制的な気質を元々もっていると言われており、先天的に不安になりやすかったり、内向的な性格に多いようです。また、脳の中の扁桃体の過剰反応により、人より数倍も不安や恐怖を感じやすくなると考えられます。

例えば一般的には不安に感じたり緊張する必要のない場所、人、状況で過度に不安を感じたり緊張してしまう状態を指します。これは扁桃体の異常が原因とされているようです。

環境や言語問題

幼少期、引っ越しにより転園(転校)が多く新しい環境や言語(方言)の違いが原因となる場合や、言語の異なる外国に暮らしたり両親またはそのどちらかの母語が異なる場合に発言を要求されるとストレスとなり、場面緘黙症の原因となる場合があります。

また、場面緘黙症の20~30%は会話・言語障害を併せもっていると言われています。このことによって余計に話したくても話せない状況が重なり症状の悪化に繋がってしまいます。

場面緘黙症を「家庭環境のせい」と誤解される方が多いですが両親のしつけや育て方で緘黙になってしまうわけではなく、また虐待やネグレクト、トラウマ(心的外傷)との因果関係も明らかになってはいません。発症にはさまざまな要因が関わっており、子供によって発症要因は異なるのです。

場面緘黙症の主な治療方法

治療方法

場面緘黙症はどのくらいで治るのでしょうか?ここでは4つの治療方法と、周囲の接し方をまとめてみました。

場面緘黙症はどのくらいで治るの?

こちらは様々な見解があり適切な治療法を用いれば1~2年で克服できるというデータもあれば、特別なことをしなくても自然に治る場合、放っておいたら治らないという見解もあります。しかし、自然と治ったという方をしっかり検証すると偶然行ってきたことが完治に繋がったり、偶然治療環境になっていたケースがあったそうです。

重要なのは、早期発見と対応力、周囲の大人の理解を深めることです。そして何よりも両親が子供の気持ちに寄り添って一番の理解者になってあげることが大切なのです。

様々な見解がありますが、放置したり間違った方法での対処は症状改善が遅れるだけではなくうつや他の不安症状、不登校や人間不信など二次的な問題が発生する可能性があります。治療開始は早ければ早いほど完治に繋がるのです。

4つの治療法

専門家の下での主な治療法は以下の4つになります。

①遊戯療法

言葉を使った表現が未発達の幼児に対する心理療法の中で最も一般的なのが遊戯療法です。遊びを通じて適応力や自己表現を養うものなので、子供に話すことを強制させたり、言葉での自己表現を強いることがないため負担なく楽しく治療を行うことが出来ます。

集団治療を行うことにより人間関係の構築効果も期待できます。

②行動療法

行動療法とは、適応の破綻を引き起こしている行動パターンに対しある一定の理論によりアプローチ、行動を修正し、結果的に破綻に至らないようにする治療法です。場面緘黙症の治療では、系統的脱感作と呼ばれる手法を用いられます。

系統的脱感作とは不安や恐怖が引き起こされる刺激群を特定し、自律訓練法などのリラクゼーション訓練や、リラックス状態になる訓練を行うことです。

不安を引き起こす刺激を段階的に繰り返し提示することで恐怖や不安反応などを克服する方法になります。

③認知行動療法

認知行動療法は基本的な理念は行動療法と一緒ですが、行動療法が外に現れた行動の改善を重視するのに対し認知行動療法は「なぜ不安に感じるのか」といった内的要因も治療することを目的としています。

子供が抱える不安や恐怖が現実とどのくらい食い違っているかを日常を通して具体的に明らかにし、場面ごとに行動や感情のコントロールの方法を学びます。

④薬物療法

行動療法やカウンセリングなどの他の療法を組み合わせて行う薬物療法というのもあります。これは不安や緊張感を和らげる薬を用いるもので、効果は個人差があります。副作用の可能性もあるので分量や使用方法は主治医の先生と相談しながら使用しましょう。

場面緘黙症のお子様への接し方

場面緘黙症はその症状から「恥ずかしがり屋」「人見知り」「寡黙で無愛想」と周囲から誤解が受けやすいですが「話さない」のではなく「話せない」症状なのです。

症状改善のためには両親や周囲の理解が必要です。ここでは3つの子供への接し方を紹介します。

①話すことを強制しない

強制して話させるようなことはしないようにしましょう。話したいことが声に出ず、一番悩んでいるのは本人です。強制させることによりますます話せないことによる不安や恐怖で症状が悪化したり、改善が遅れたりします。

大切なのは両親が子供の気持ちに寄り添い、一番の理解者になってあげることです。

②周囲への理解

場面緘黙症の症状は誤解されやすいことから、からかわれたりいじめに発展するケースがあります。重要なのは周囲の大人がきちんと理解してあげることです。

親戚や学校に場面緘黙症のことを知ってもらい、サポートや援助を受けられるよう両親が周囲へ連絡したりコミュニケーションをとっていきましょう。

③医療機関へ相談

大人になれば自然に治ると言われているものの、そのまま放置しておくとうつや他の不安症状、不登校や人間不信などの二次的な問題が発生する場合があります。大事なのは早期発見、早期治療です。まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

症状について詳しく聞いてもらい、しかるべき医療機関を紹介してもらうのがよいでしょう。

まとめ

愛情

以上、今回記事のまとめになります。場面緘黙症はあまり広く知られていないことから周囲から誤解されやすいのが現状です。

また、原因も明確になっていないためどのように接したらよいか、治療したらよいか悩まれている方が大勢いると思います。

焦らず、まずはお子様に寄り添って1番の理解者になってあげましょう。是非、今回の記事を参考にしてみて下さい。

  
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