蛋白漏出性胃腸症とは?症状や原因、治療方法を紹介!

足や顔のむくみが気になると言う方はとても多いのではないでしょうか?実はこのむくみ、とある病気のサインということも十分あり得るのです。だからこそ、何で起きてるのだろうか?という疑問を持つことが大切になるのです。

今回はむくみを起こす引き金のひとつ、蛋白漏出性胃腸症という病気について紹介させて頂きます。消化管など内臓の病気から派生するものなので、知っておいて損はないです。

蛋白漏出性胃腸症とは何なのか?

腸

蛋白漏出性胃腸症は血漿蛋白の内、アルブミンが消化管内にもれ出ることによって起きる低蛋白血症とそれに付随する症候群からなります。以前は本態性低蛋白血症と言われていました。

メネトリエ病で血漿アルブミンが胃液中に以上に漏出していたことから確立されました。

蛋白漏出性胃腸症の原因は何なのか?

胃

蛋白漏出性胃腸症には原因が色々ありますが、腸リンパ系異常、毛細血管透過性亢進、消化管粘膜上皮異常の3つが大きな原因として挙がってきます。

それぞれ個別に詳細を説明させて頂きます。

腸リンパ系異常

腸リンパ系異常の場合、腸壁から静脈に至るリンパ管の形成不全や閉塞による腸リンパ拡張症、収縮性心膜炎、リンパ管腫瘍、腸結核、クローン病、非特異性多発性小腸潰瘍症などにより蛋白漏出が起きます。

毛細血管透過性亢進

毛細血管透過性亢進の場合、アレルギー性胃腸症、リウマチ疾患、アミロイドーシスなどで血管の透過性が亢進し、蛋白漏出が起きます。

消化管粘膜上皮異常

消化管粘膜上皮異常の場合、クローン病、潰瘍性大腸炎、消化管の悪性腫瘍、メネトリエ病などにより、蛋白漏出が起きます。

ちなみに

上記の3つ原因として起こりますが、場合によっては複合して起きるケースもありますので、1つの原因だけでなく、これらが合わさって蛋白漏出性胃腸症が起きると考えた方がいいのかもしれません。

蛋白漏出性胃腸症の症状にはどんなものがあるのか

下痢

蛋白漏出性胃腸症の症状として、浮腫いわゆるむくみが代表的な症状です。発症初期の低蛋白血症により起き、顔面や脚など限局性のものから胸水や腹水を伴う重篤なものまで様々です。

リンパ系の場合は乳び性の胸水や腹水が見られます。低カルシウム血症の場合はTrousseau徴候、Chvostek徴候という症状が見られます。下痢や悪心、嘔吐、腹痛、食欲不振、脂肪便が見られます。小児の場合は下痢を伴います。

成長期の場合、発育障害や痙攣発作、感覚異常、手足痙縮等が起こり、重篤になる場合もあるのです。

浮腫とは何なのか

蛋白漏出性胃腸症の代表的な症状として浮腫があると説明させて頂きましたが、浮腫とは何なのか補足説明させて頂きます。

浮腫は顔や手足などに水分が溜まって表れる腫れのことを指します。細胞組織の液体と血液の浸透圧のバランスが崩れて腫れが生じます。血圧上昇や血管透過性亢進といったものが原因として挙げられます。ということは蛋白漏出性胃腸症に見られる毛細血管透過性亢進は浮腫の原因だと明確に言えるのではないでしょうか?悪性腫瘍の場合は浸透圧のバランスが崩れて浮腫が起きるといったこともあり得るのです。

浮腫をアプローチする際、全身性浮腫か局所性浮腫かどうかの判断を行ってからアプローチを行っていくことになります。低アルブミン血症の場合は全身性浮腫に相当します。全身性浮腫の場合、重力の影響により足先から腹部、胸部、顔面へ浮腫が進行していくのです。つまり、腹水や胸水が起きうる可能性があり、ここまでくると尿量減少などかなり深刻な症状も見られます。ちなみに局所性浮腫には深部静脈血栓症や痛風、偽痛風といった聞き覚えのある病気が挙げられます。

浮腫があるかどうか見る際は浮腫のある部位を押さえて、圧痕や弾性が見られるかどうかを調べていきます。これにより、心不全などから来るのか、好酸球性血管性浮腫などから来るのかといったことを鑑別できるのでとても重要です。

蛋白漏出性胃腸症の診断

検査

蛋白漏出性胃腸症はα1-アンチトリプシンクリアランス検査や蛋白漏出シンチグラフィ、血液検査などを行って診断していくことになります。

蛋白漏出性胃腸症を起こす病気は様々でその原因を追究する必要が出てきます。これにより蛋白漏出性胃腸症の根治に繋がるというわけです。ここでは蛋白漏出性胃腸症で行われる検査を紹介していきます。

まずどこに受診したらいいの?

上記でも説明したように、蛋白漏出性胃腸症の症状としてむくみがあります。もしも、原因不明のむくみが見られた際は総合病院の内科を受診するのが基本となります。

α1-アンチトリプシンクリアランス検査

消化管への蛋白漏出が見られるかどうかを知るのに行われる検査です。腸管から漏出し、便中にα1トリプシンが認められるかどうかを見ていくことになります。3日間採取して行われます。

蛋白漏出シンチグラフィ

蛋白漏出を直接見るために行われます。98mTc-HSAを静注した後、一定時間毎に撮像して、どこに蛋白漏出が起きているかを見ていく検査になります。

血液検査

血液検査では、低蛋白血症、低コレステロール血症、低カルシウム血症、鉄欠乏性貧血、リンパ球減少、好酸球増加といった所見が見られます。

アレルギー性胃腸症や好酸球性胃腸症などのアレルギー疾患を診断する際は好酸球やIgEの検査を行います。抗核抗体などで全身性エリテマトーデスといった自己免疫疾患の検査をしていくことになります。

上部および下部消化管内視鏡検査

クローン病や潰瘍性大腸炎、消化管腫瘍、メネトリエ病、クロンカイト・カナダ症候群といった消化管疾患を検査するために行います。消化管病変からの生検病理組織検査は確定させるのにとても有効と言えるのです。

消化管粘膜生検

腸リンパ拡張症やアミロイド―シスの診断に用いる。

造影CT検査

胸水や腹水、腸管壁肥厚、リンパ節腫脹、血管閉塞の有無を見る。

X線検査

蛋白漏出の有無を検査する。

鑑別疾患として何があるのか

蛋白漏出性胃腸症なのかどうかを鑑別する疾患として、摂食障害、吸収不全症候群、ネフローゼ症候群、肝不全、慢性炎症性疾患、リンパ管異常といったものがあり、上記の検査などを通して病態を把握することが大切なのです。

膠原病の有無を鑑別する際はどこを見るのか

関節炎や顔面紅斑、皮膚硬化、筋力低下、目や口の乾燥症状を見て、膠原病の有無を判断していくことになります。もちろん、血液検査などの所見と合わせて、より正確に診断していかなければなりません。

予後予測はどうなのか

蛋白漏出性胃腸症の予後予測は原因となる病気により変動し、栄養状態が劣悪の場合は免疫力が低下します。結果、感染症などにかかるリスクも大きくなる。

そのため、蛋白漏出性胃腸症単一というより、その人の病態全体を把握して予後予測を行い、治療方法を考えていくことが必要となると言えるのではないでしょうか?基本的には予後は良好なのですが、成長期の低栄養で発育障害が認められる場合もあります。

蛋白漏出性胃腸症の治療について

豆腐

蛋白漏出性胃腸症の治療について移ります。原因が多くあるため、場合によっては重篤なものになる場合もあります。そのため、早期発見と早期治療が重要となってきます。浮腫が見られた場合、医師の診断を仰ぐことが求められます。

薬物療法

浮腫や低蛋白血症が見られた際は利尿薬やアルブミンを投与します。これにより、浸透圧を維持し、水分量を調節する。

下痢や腹痛が見られた際は止痢薬や抗コリン薬、整腸薬が投与されるのです。炎症性疾患やアレルギー性胃腸症にはステロイド薬で炎症や免疫を抑えます。抗プラスミン薬を用いてびらん性胃腸炎やメネトリエ病の治療を行ったりします。後は状態に応じて、カルシウムや鉄分、脂溶性ビタミン、ビタミンB12、葉酸などを投与して、鉄欠乏性貧血などの改善を行っていくことになります。

最近では、ソマトスタチンアナログという薬が有効とも言われています。これは消化管ホルモン産生腫瘍や先端巨人症、下垂体巨人症といった病気に用いられる薬なのですが、消化管閉塞といった消化器系の病気にも有効ということで注目されているのです。効果として、成長ホルモンの過剰な分泌を抑えるというものがあります。

食事療法

食事療法は高蛋白低脂肪食を基本とし、消化吸収されやすい中鎖脂肪酸からなるトリグリセリドなどを摂取していくことが重要となります。また必須脂肪酸を欠乏させないためにも脂肪乳剤の経静脈投与を併用していきます。

下痢や低栄養状態が著しい場合は高カロリー輸液を行う。アレルギー性胃腸症に対してはカゼイン水解乳や成分栄養剤を投与していくことになります。これは牛乳蛋白のアレルギーを持っている場合を加味してのことです。

外科的治療

保存的治療では十分な効果が得られず、病変が限局している場合は手術を行っていくことになります。

メネトリエ病、クローン病、多発性潰瘍、ポリポージス、悪性腫瘍の場合は病変部位を切除して改善を図っていきます。腸リンパ拡張症はリンパ管静脈の吻合や後腹膜繊維の除去などを行っていきます。収縮性心膜炎の場合は心膜剥離術や心房開窓術を行ったりする。ヒルシュスプルング病や血管腫なども外科的治療を行い、改善を図っていく必要があります。

まとめ

今回、蛋白漏出性胃腸症について紹介させて頂きました。

この病気は様々な病気が原因で引き起こされるものでもしかしたら身近な人がかかっているという可能性も十分あります。なので、蛋白漏出性胃腸症単一の問題だろうと考えるのではなく、なぜこの病気が起きているのだろうか原因を探り、因果関係を把握することが重要となってきます。

これにより、どのような治療アプローチを行えばいいのかも変わるからです。いずれにしても、早期発見と早期治療を行うことが基本となりますので、むくみが起きたと思ったら一度医師の診察を受けてみるのをおすすめします。

  
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